転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3996話

「これが、プーティン?」

 

 運ばれてきた料理を見て、そんな風に呟く。

 クーデリアも、少し意外といった様子で目の前の料理に視線を向けていた。

 この店は、先程の女から教えて貰った、美味いプーティン……カナダの名物料理を出す店だ。

 その店で頼んだところ、運ばれてきた料理は山盛りのフライドポテト。

 勿論、ただのフライドポテトという訳ではない。

 皿の上の大量のフライドポテトには、たっぷりのチーズと赤いソースが掛かっている。

 いわば、フライドポテトのチーズとソース掛けとでも呼ぶべき料理だった。

 

「そうだよ。カナダ名物のプーティンだ」

 

 運んできたウェイトレスは、俺とクーデリアの意表を突かれた様子を見て、面白そうにプーティンという料理について説明する。

 皿にたっぷりとあるフライドポテトに掛かっているチーズは、正式には牛乳を酵素で固めてチーズカードという奴が掛かっており、フライドポテトの熱によって溶けている。

 赤いソースは肉汁を使って作ったグレイビーソースらしい。

 ちなみにフライドポテトは二度揚げするのが美味さの秘訣らしい。

 うーん……名物料理という事でもっとそれらしい料理が出てくるのかと思ったが、これはちょっと予想外だったな。

 

「まぁ、名物料理と言ってもファーストフードの一種だしね。気楽に食べてちょうだい」

 

 そう言い、ウェイトレスはテーブルの前から立ち去る。

 ウェイトレスがいなくなると、俺とクーデリアはそれぞれ視線を交わし……まずは食べてみようという事になり、お互いに手を伸ばす。

 まずはチーズもグレイビーソースも掛かっていない、フライドポテトだけを手に取り、口に運ぶ。

 二度揚げしている為だろう。サクリとした食感と芋のホクホク感が楽しい。

 一応何も掛かっていない状態のフライドポテトにも、下味という事で塩味はついているので、食べにくいという事はない。

 続いてチーズを付けたフライドポテトを口に運ぶと、チーズが掛かっていても二度揚げのお陰かフニャリといった食感にはなっていない。

 フライドポテトの美味いところは、この食感だ。

 揚げてから時間が経ったフライドポテトは、サクリとした食感がなくなり、美味くない。

 このフライドポテト……というか、プーティンはチーズやグレイビーソースを掛けるのを前提としているので、しっかりと二度揚げしてるのだろう。

 もっとも、こうして二度揚げをしても時間が経てばどうしてもフライドポテトの食感は悪くなるのだが。

 つまり、美味さの持続時間が長くない料理……といったところか。

 そんな風に思いつつ、次にグレイビーソースの掛かった部分を口に運ぶ。

 うん、グレイビーソースというのは肉汁を使ったソースだ。

 ステーキとかローストビーフとかで使う事が多いソースだな。

 そういういかにも肉! といった料理に負けないようなどっしりとした美味さを持つソースだったが、フライドポテトにもその味はしっかりと合うな。

 続けて、チーズとグレイビーソースの両方を一緒に食べても……これもまた美味い。

 

「美味しいわね」

 

 クーデリアも、プーティンの味を楽しめたのだろう。満足そうに言う。

 

「ああ、美味い! って程に美味い訳じゃないけど、一度食べると手が止まらないというか……そんな感じの美味さだな」

「そうね。これぞファーストフードといったところかしら」

 

 そんな風に会話をしながら、プーティンを片付けていく。

 結構な量があったのだが、クーデリアが言うように食べる手が止まらないのでどんどんその量は減っていく。

 カナダの名物料理、恐るべしって感じか。

 

「それにしても、どうせならもう少し雰囲気のある場所で食事をしたかったところですが」

 

 少しだけ不満そうな様子のクーデリア。

 まぁ、クーデリアにしてみれば、これは折角のデートなのだ。

 どうせならもっと雰囲気のいいレストランとかで、夜景を見ながら食事をする……というのはクーデリアにしてみればそのように望んでもおかしくはない。

 それ以外にも、クーデリアが考えていたようなデートとか、そういうのもあるのだろうが。

 

「まぁ、こういうのも俺達らしいと言えばらしいデートだろう?」

「むぅ……アクセルはこういうのに慣れているからそう言うのかもしれませんけど、私は初めてなんですからね」

 

 不満そうな様子で言うクーデリア。

 

「前から思っていたけど、クーデリアなら食事とかに誘われるとか、そういうのも結構あっただろう?」

 

 飛び級で大学に通っていたクーデリアだが、多少年下であっても身体は少女ではなく女と呼ぶに相応しい男好きのする身体だ。

 顔立ちも整っており、美人と呼ぶに相応しい外見をしている。

 強い意志を示す目をしているが……まぁ、その辺は好みの範囲内だろう。

 また、家柄もクーデリアは火星の中ではという限定だが、上流階級となる。

 そんなクーデリアなのだから、大学でお誘いがあってもおかしくはない。

 

「そう、ね。……ええ、食事の誘いとか、飲み会の誘いとか、そういうのはそれなりにあったわ」

「だろうな。なのに、デートは初めてなのか?」

「……そうよ」

 

 不満そうな様子でフライドポテト……ではなく、プーティンに手を伸ばすクーデリア。

 

「つまりその手の誘いは断っていた訳だ」

「そうなるわね。……私から見ても、欲望丸出しといった感じの人達だったから」

「それはまた……」

 

 シノを見れば分かりやすいが、女にがっつく男というのは好まれない。

 いやまぁ、娼婦とかならいい客……あるいはカモと思うかもしれないが、そういう職業ではない限り、あまり好まれないのは間違いないだろう。

 勿論、人には好みや性癖といったものがあるので、そういう……いわゆる風俗や水商売の女ではない普通に生活している女であっても、シノのような性格を好む奴もいるかもしれないが。

 ともあれ、クーデリアはそういうタイプではないので、シノと同じような性格で欲望丸出しといった感じの男の誘いは断っていた、と。

 ……クーデリアが通うほどの大学なんだから、それなりに頭の良い者達が集まる大学だと思うんだが。

 いやまぁ、世の中には勉強が出来ても馬鹿な奴はいるので、そういう意味ではおかしくないのか?

 

「もっとも、私にはフミタンがいたのでそういう人達からのお誘いも次第になくなっていきましたが」

「そうなのか? ……寧ろ、フミタン狙いがいてもおかしくはないと思うけど」

 

 フミタンも相応に顔立ちは整っており、そしてクーデリア以上に男好きのする身体をしている。

 また……このオルフェンズ世界ではどうなのか分からないが、メイドという職業を好む者も多い。

 そういう意味では、フミタンが狙われてもおかしくはないと思うんだが。

 

「そうね。ただ、途中で私は火星の現状について疑問を抱いたから」

「あー……なるほど。それは微妙に納得出来てしまうな」

 

 そういう率直に女目当ての下心のある奴は、当然ながら容易に抱ける女を好む。

 そんな中で、火星の独立……いや、当時はそこまで大袈裟なものではなかったのかもしれないが、火星の現状を変えようとするクーデリアは近付きがたい相手だったのだろう。

 また、クーデリアもノアキスの7月会議の時のように、そういう集団に所属していたのだから、余計に近付けなかったのかもしれない。

 

「ふふっ、そういう意味ではギョウジャン代表には感謝しないといけないかもしれませんね」

「ギョウジャン?」

「ええ。アリウム・ギョウジャン。私をノアキスの7月会議に出してくれた、テラ・リベリオニスという集団です。もっとも、シーラ先生……いえ、シーラさんはあまり好んでいなかったようですが」

 

 クーデリアがシーラを先生ではなくさん付けで呼ぶのは……まぁ、何となく理解出来る。

 シーラと同じく俺の恋人になったからというのが大きいのだろう。

 だからこそ、このような呼び方になったのだろう。

 その辺については、俺から突っ込んだりはしないが。

 

「そういうものか。なら、俺もそのギョウジャンという人物に感謝したらいいのかもしれないな」

 

 ノアキスの7月会議というのは、シャドウミラーという存在が大きく名前を知られるようになった一件でもある。

 もしノアキスの7月会議がなければ、恐らく俺達はここまで有名になっていなかっただろう。

 それにクーデリアとこうして付き合うようになっていたかというのも、この場合はある。

 

「ふふっ、そうでしょう? もっとも……その、今はあまり良好な関係ではないんですけど」

「そうなのか? そのギョウジャンという奴にしてみれば、クーデリアが活躍するのは嬉しいんじゃないか?」

 

 ここで直接口にはしないものの、クーデリアが活躍をすれば、そのクーデリアを表舞台に出したギョウジャンもまた、相応の影響力を持つ筈だ。

 

「最初はそうだったらしいですけど、その……ここのところ色々とあって、私は目立つようになったでしょう?」

「そうだな」

 

 それについては否定しない。

 話題になったノアキスの7月会議もそうだし、それを始めとして火星での独立運動が強まった。

 そしてギャラルホルンに狙われ、そのギャラルホルンと真っ向から対立もしたしな。

 ドルトコロニーにおいては、地球にも届くように演説をした。

 地球に降下してからは、今日アーブラウの全体会議において演説をした。

 ここまで活躍してしまえば、それはもうギョウジャンの手を離れて完全に独り立ちしている。

 ギョウジャンがクーデリアを思いのままに使おうとしても無理だろう。

 そういう意味では、ギョウジャンにとってクーデリアは大きくなりすぎたのだ。

 

「なるほど、ギョウジャンが面白くないと思ってもおかしくはないな。シーラがギョウジャンを好まないのも、多分その辺に理由があるんだと思う」

 

 シーラの場合は、クーデリアに上に立つ者として色々と教えている。

 だが、ギョウジャンと違ってクーデリアを使って自分が目立とうとか、成り上がろうとか、そういうことは全く考えていない。

 ……ナの国という大国の女王だったのだから、その辺は今更の話なんだろうけど。

 もしそういう立場にいたいのなら、わざわざ俺を求めてオルフェンズ世界に来なくても、ナの国にいればよかった。

 その座を捨ててでも――きちんと玉座は次の世代に渡したらしいが――俺を求めてこのオルフェンズ世界に来たのだから、俺としては男冥利につきるといったところか。

 正確には世界の狭間でジャコバによって見つけられ、マーベルやシーラと一緒にこのオルフェンズ世界に来たというのが正しいのだが。

 

「そうですね。シーラさんには色々とお世話になりました。もし彼女の教えを受けていなければ、今頃どうなっていたか分かりません」

「どうなっていたか?」

「はい。理想を追うのはいいですが、現実を見ることが出来ず、理想だけを追い求めるようになっていたかもしれません」

「理想に溺れて溺死しろ……か?」

「……え?」

「ん? あれ? 何で今……」

 

 今の言葉は、自然と俺の口から出たものだ。

 どこかで聞いたのを覚えていたのか?

 いや、別にそういうのを聞いた覚えはない。

 ないのだが……それでも自然と俺の口から出たのだから、多分覚えていないだけで以前どこかで聞いたのだろう。

 その割には、こう……何だか、ちょっと違和感がない訳でもなかったのだが。

 ともあれ、今ここでそのようなことを考えても仕方がない。

 具体的にどこで聞いたのかは、気にしないでおこう。

 

「どうしたの?」

「いや、今の言葉、どこで聞いたのかちょっと覚えてなくてな」

「そう。……でも、理想に溺れて溺死しろ、か。ちょっと厳しいけど、心に響く言葉ね」

「……そうか?」

 

 心に響くとか言ってるクーデリアだったが、言葉の内容的には溺死しろって言われてるんだぞ?

 こういうのを言うとなると、イザーク、エヴァ、フェイト辺りか?

 

「私はそう思ったというだけよ。……アクセルはそういう風に思えない?」

「どうだろうな」

 

 そうした会話を……とてもではないが恋人同士とは思えない会話をしながらも、プーティンを食べ進めていく。

 美味さの持続時間が短いプーティンだけに、出来るだけ早く食べた方がいいのは間違いない。

 チーズはともかく、グレイビーソースとかがフライドポテトに染みたりしたら、食感とかも悪くなるし。

 

「ふぅ……なかなかに美味しかったわね」

 

 最後のフライドポテトを口に運んだクーデリアが、満足そうに言う。

 

「そうだな。勧められて入った店だけど、悪くなかった」

「あのおばさんには感謝しないと。……出来ればもう少しムードのあるレストランとかがよかったんだけど」

 

 これが恋人になって初めてのデートと考えれば……まぁ、思い出深いデートではあるのか?

 

「軽く腹ごしらえをしたし、これからどうする? 約束の時間までもうちょっとあ……」

 

 あるけど。

 そう言おうとしたのだが、そこで言葉を止める。

 窓の外を見ていた俺のそんな行動に、クーデリアも不思議そうに俺の視線を追う。

 そんな俺達2人の視線の先では、シノが見るからに強面の男に迫られていた。

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