転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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3999話

 シャトルのクルーに頼まれ、俺は操縦席に向かう。

 本来なら、こういう時にわざわざ俺を呼ぶといったような事はない。

 そのような例外をしているのは、アーブラウの上層部から……より正確には蒔苗から決して俺達に失礼がないように言われているからだろう。

 特に蒔苗は俺の能力……魔法について知っているので、可能な限り俺と敵対したいとは思わない筈だ。

 ましてや、シャドウミラーや鉄華団にこれから作る予定のアーブラウ軍の軍事顧問になって欲しいとまで言ってきているくらいなのだから。

 そんな諸々についてを考えれば、蒔苗やアーブラウの上層部が俺達の扱いは可能な限り丁寧にするようにとシャトルの艦長……機長? いや、やっぱり艦長の方が分かりやすいか。とにかくその艦長に指示するのはおかしな話ではなかった。

 

「すいません、アクセル代表」

 

 シャトルの艦長が、操縦室に姿を現した俺を見て、そう謝罪してくる。

 

「気にするな。今回の件は別にお前達に問題はない」

 

 これは俺の本心だ。

 これで例えばギャラルホルンの最精鋭であるアリアンロッド艦隊の名前を恐れ、何も言わずに俺達を売り渡すといった事をしたのなら、相応の対処はしただろう。

 だが、この艦長はすぐに俺を呼び、どうすればいいのかと相談している。

 そういう意味では、この艦長は優秀だと思う。

 とはいえ……問題なのは、この状況からどうするのかという事なんだよな。

 いや、正確にはどうにかするだけなら簡単だ。

 それこそ空間倉庫に入っているグシオンなり、ミロンガ改なり、あるいはサラマンダーなりを使って、シャトルを包囲しているアリアンロッド艦隊のMSを撃破すればいいだけなのだから。

 だが……それを行うと、間違いなく大きな騒動となる。

 今となっては、最悪そうしてもいいんだが……それでも、出来るのならそうしない方がいいのも間違いはない。

 そうなると、臨検に付き合うか?

 それはそれで、向こうがどのような難癖を付けてくるのか分からない。

 これが俺1人ならどうとでもなるのだが……

 

『どうした、返答を貰いたい。こちらはアリアンロッド艦隊、これからそのシャトルの臨検を行う。大人しくこちらの指示に従うように』

 

 通信から聞こえてくる声。

 少し意外だったのは、命令口調ではなかった事だろう。

 ……いや、正確にはこれもまた命令口調ではあるのだが、それは職業上そうする必要があるからというもので、高圧的な感じではない。

 そういう意味では、このMS隊はまだマシといったところか。

 さすがアリアンロッド艦隊……ギャラルホルンの中でも精鋭と呼ばれている者達だ。

 いやまぁ、この程度でそういう風に評価されるのもどうかと思わないでもないが。

 

「どうします?」

「そうだな。……うん? いや、どうやら俺達が返事をするよりも前に事態が動くらしい」

 

 シャトルのレーダーに、こちらに接近してくるMSが表示される。

 実はこれがアリアンロッド艦隊の応援のMSだったら、それこそ俺がどうにかするしかないが……さて、どうだろうな。

 そこまで焦らないのは、やはり本当に最悪の場合は俺の力で何とか出来るからだろう。

 シャトルが包囲されている以上は守るのは難しいかもしれないが……それは難しいであって、不可能ではない。

 いざとなれば何とでも出来る自信があった。

 

「これは……一体どういう事でしょう?」

 

 艦長の言葉に首を横に振る。

 

「分からないが、今は様子見だな」

「……この状況でも動じないとは……さすがアーブラウの英雄ですな」

 

 外見年齢でいえば、俺よりも年上の40代くらい。

 この手のシャトルの艦長としては熟練の技量の持ち主だろう。

 そんな人物が尊敬の視線を向けてくるのには、思うところがない訳でもない。

 ただ、相手には何かを企んだりといったようなことはなく、純粋に俺を尊敬していたり、好意的な思いを抱いているのだ。

 それが分かるだけに、何とも言いにくい。

 ちなみに英雄云々というのは……言うまでもなく、蒔苗のプロパガンダだ。

 蒔苗的には、俺達を軍事顧問として雇う時の為の布石であったり、他の国やギャラルホルンに対する牽制だろう。

 そのプロパガンダによって、俺達は否応なく有名になってしまった。

 それも蒔苗を救った英雄として。

 これ、多分だが鉄華団だけでやっていれば、こういう事にはならなかったんだろうな。

 鉄華団が基本的に子供しかいないのに比べて、シャドウミラーは俺を筆頭に20代の者が結構いる。

 その辺から考えた蒔苗の行動だったのだろう。

 そして俺達が英雄になったので、抱き合わせ商法的に鉄華団も同様に英雄として紹介された訳だ。

 なので、英雄という言葉を否定しようとは思わない。

 そうすると、これから地球で行動する上で色々と面倒な事になりそうだし。

 

「そうでもないけどな。それより……」

 

 俺が何かを言うよりも前に、近付いてきたMSからオープンチャンネルでの通信が入る。

 普通なら、こういう通信はオープンチャンネルではないのだが。

 そう思ったが、すぐにその意味を納得した。

 オープンチャンネルにて通信をしてきた人物は、ガエリオだったからだ。

 それはつまり、近付いてきたMSの1機はガエリオの機体であるキマリスなのだろう。

 

『こちら、地球外縁軌道統制統合艦隊所属のガエリオ・ボードウィン特務三佐』

 

 ん? 所属が……以前聞いた話によると、ガエリオはマクギリスと同じく監査局の所属だった筈だが。

 そんな疑問を抱くが、今はそれに突っ込むようなことはしない。

 今のところは、まずこの状況がどう動くのかをしっかりと見ておく必要があった。

 

『ガ……ガエリオ様!? な、何故ボードウィン家の貴方がこのような場所に……監査局の所属の筈では!?』

 

 先程このシャトルに通信を送ってきた男が、焦ったように言う。

 それだけ、セブンスターズというのはギャラルホルンの中で大きな存在なのだろう。

 

『おや、知らなかったのかい? 今の私は地球外縁軌道統制統合艦隊に所属してるんだよ。アーブラウで起きた一連の出来事の影響でね』

 

 まるでこちらに説明するかのような言葉。

 いや、あるいはようなではなく、実際にそうなのかもしれないな。

 ガエリオが言う、アーブラウで起きた一件というのは、言うまでもなくイズナリオの不正に関する事だろう。

 それによって地球外縁軌道統制統合艦隊に所属するという事になったのは、マクギリスがやろうとしていたギャラルホルンの革命に繋がる事だろう。

 早速大きく動いたという訳か。

 予想通り、マクギリスの派閥は地球外縁軌道統制統合艦の戦力を取り込む……より正確には、地球外縁軌道統制統合艦隊を率いるカルタを引き込んだ事で、その戦力を中核とした派閥を作ったという事か。

 ラスタル・エリオンが、アリアンロッド艦隊を自分の戦力としているように。

 ちょっと違うか?

 まぁ、多少は違っても似たような感じなのは間違いないので、それについては気にしないでおこう。

 

『く……しかし……』

『そもそも、ここは地球外縁軌道統制統合艦隊の活動範囲だ。アリアンロッド艦隊の活動範囲とは違う。なのに、何故君達がここにいるのかな? これは……ラスタル・エリオンの命令と考えてもいいのかな?』

 

 へぇ、ガエリオも攻めるな。

 ここでラスタルの名前を呼び捨てにするのは、同じセブンスターズであるというのを主張したい為だろう。

 ……もっとも、ラスタルがエリオン家の当主であるのに対し、ガエリオは次期当主だ。

 そういう意味では、ガエリオの方が立場的には弱かったりするんだが。

 勿論、それはあくまでもラスタルに対してのものだ。

 ここにラスタルがいるのならともかく、ここにいるのはあくまでもアリアンロッド艦隊のMS隊でしかない。

 ラスタルの派閥で部下ではあるが、それでもラスタルそのものでもなければ、あるいはエリオン家の関係者という訳でもない。

 だからこそ、シャトルを囲んでいるMS隊にはガエリオを前にどうする事も出来ない。

 ……もしかしたら、実はこれがラスタルの指示でもなしに、このMS隊が自分で勝手に判断しての行動という可能性はあるか?

 正直なところ、どうだろうな。

 普通に考えればないとは思う。

 しかし、アリアンロッド艦隊に所属する者達は自分達がギャラルホルンの中でも最精鋭であるという自負を持つ。

 そんな者達が、ドルトコロニーの一件ではサラマンダーに乗った俺にいいようにやられたのだ。

 アリアンロッド艦隊全体ではなく、派遣されてきた艦隊の負けなのだが、それでもアリアンロッド艦隊が負けたのは間違いない。

 しかもそこに追加でクーデリアの演説があり、アリアンロッド艦隊は完全に面子を潰された形だ。

 だからこそ、アリアンロッド艦隊の中にはそれを許せないという者がいてもおかしくはなく……そんな中で、アリアンロッド艦隊、あるいはエリオン家の情報網に俺達がシャトルで移動しているというのが察知されたらどうなるか。

 プライドも実力も高い者達である以上、それを知ったら独断で行動しないとも限らなかった。

 もっとも、これはあくまでも俺の予想でしかない。

 実際にはラスタルの指示という可能性もある。

 マクギリス達から聞いたラスタルの性格からすると、目的の為には手段を選ばないっぽい感じがするし。

 

『……いえ、これは自分達の独断です』

 

 アリアンロッド艦隊のMS隊のパイロットが、ガエリオにそう返す。

 これが本当なのか、それともここでラスタルの名前を出すのは不味いと判断したからなのか、その辺りは分からない。

 分かるのは、これがシャトルの周囲にいるMS隊の独断で行われた事だと、そう口にした事だ。

 ガエリオの事だから、恐らくこの通信もきちんと保存されているだろう。……されているよな?

 あれ? ガエリオの事を考えると、ちょっと心配になってきたぞ?

 うっか凛2世……というのは、失礼か。

 どっちに対して失礼なのか、敢えて明言は避けるが。

 

『なら、職権を侵す行為については、胸にしまっておこう。君達の熱心さによって、本来ならしなくてもいい仕事をしてしまったのだろう?』

 

 それは尋ねている形ではあるものの、そういう事にしておけという言葉だ。

 MS隊の方も、そんなガエリオの言葉に否とは言えず……

 

『分かりました。では、自分達はこれで失礼します。ボードウィン特務三佐にはご迷惑をお掛けしました』

 

 そう言い、通信が切れる。

 言葉そのものはガエリオに謝罪していた様子だったが、不満を押し殺したかのような言葉だったな。

 今回の一件は、アリアンロッド艦隊にとってそれだけ痛いのだろう。

 ……実際、それは分からないでもない。

 俺がサラマンダーのパイロット、あるいはシャドウミラーや鉄華団の中にサラマンダーのパイロットがいると仮定して、このシャトルはMSを積み込めるタイプではない。

 つまり、攻撃されても……あるいは拿捕されても、反撃する手段がないのだ。

 だからこそ、アリアンロッド艦隊のMS隊にしてみればここでサラマンダーのパイロットを確保出来るというのは、非常に大きかったのだろう。

 もっとも、実際には空間倉庫があって、俺は生身でも宇宙空間で活動出来るので、そういう意味ではもしそのような事になってもサラマンダーやミロンガ改、あるいはグシオンで容易に反撃出来るのだが。

 その辺……俺の魔法については、どうやらアリアンロッド艦隊には伝わっていないらしい。

 魔法についてはもう知る人ぞ知るといった感じなので、ラスタルとかならその辺の情報を入手していてもおかしくはないのだが。

 

『うむ、職務に忠実なのはいい事だが、たまには息抜きをするくらいのことはした方がいいだろうね』

『……肝に銘じておきます』

 

 その言葉を最後にオープンチャンネルでの通信は切れ、シャトルを包囲していたグレイズが離れていく。

 もしかしたら……本当にもしかしたらの話だが、離れる時に後顧の憂いを絶つという意味でも攻撃をしてシャトルを撃破しようとか考える者がいるかもしれないと思ったが、幸いにもそのような者はいなかったらしい。

 ガエリオのキマリスや、地球外縁軌道統制統合艦隊に所属するMS隊がいなければ、もしかしたら不幸な事故が起きていたかもしれないが。

 あるいは1発だけなら誤射とするか。

 

『さて、アクセル。久しぶりだね』

 

 オープンチャンネルが途切れると、今度はキマリスがシャトルに触れて、接触通信でそう言ってくる。

 

「そうだな。助けに来るのがちょっと遅かったが」

『そうかい? 私としては十分に早かったと思うが。……まぁ、アクセル以外の者達には不安を与えてしまったかもしれないから、謝っておこう。さて、それはともかくだ。またこういう事が起きないようにする為、共同宇宙港までは私達が護衛しよう。そうすれば、アリアンロッド艦隊がちょっかいを出してくる事はないだろう』

「そうだな。なら、頼む」

 

 ラスタルが出てくるといったような事でもない限り、ガエリオの護衛があるのは大きな意味を持つ。

 そんな風に思いながら、俺はガエリオと会話を交わすのだった。

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