転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4002話

 火星に向かい、地球にある共同宇宙港を出発してから1日が経ち……

 

「ここまで予想通りだと、笑えてくるな」

 

 ヴィー、ヴィーという、グランに流れる警報音を聞きながらグシオンに乗りつつそんな風に思う。

 もう少しでドルトコロニーのある宙域に入るといったところなのだが……そのタイミングで、こちらに向かってくるMS部隊を確認したのだ。

 それも、ちょっとやそっと……具体的には、地球から共同宇宙港に向かう時のシャトルを包囲した時のMS部隊と比べると、圧倒的に多い。

 それこそ、以前ドルトコロニーの一件で出て来た艦隊よりもその数は多いだろう。

 それはつまり、アリアンロッド艦隊に所属する者が独断で行ったのではなく、ラスタル・エリオンの命令で動いている可能性が高い事を意味していた。

 ここまでの戦力を出しておきながら、実はラスタルが関係ないとかはないと思う。

 もっともマクギリスの話を聞く限りでは、ラスタルは決して無能という訳ではない。

 でなければ、アリアンロッド艦隊をここまでの精鋭に育てるのは難しかっただろうし。

 そうなると今回の戦いにラスタル本人が出て来ている可能性は少ないか。

 そうなったらそうなったで、面白そうだとは思ったんだが。

 ここでラスタルを倒すなり、あるいは捕虜にする事が出来れば非常に大きいだろうし。

 

「アクセルさん、グシオンの整備は完璧です! ……けど、あのミロンガ改やサラマンダーって機体じゃなくていいんですか?」

 

 格納庫でグシオンの整備をしていたメカニックの1人がそう声を掛けてくる。

 

「あまりあの機体は他の連中に見せたくないんだよ。特にサラマンダーはな」

 

 アリアンロッド艦隊がここまで俺達……というか、俺に執着してるのはサラマンダーが関係している。

 以前のドルトコロニーの一件で、アリアンロッド艦隊はサラマンダーによって大きな被害を受けた。

 ナノラミネートアーマーを無効化するグラビトンガンポッドとか、ラスタルの興味を引くのに十分だったのだろう。

 だからこそ、本来なら管轄外である共同宇宙港の側までやって来て、俺達を捕らえようとした。

 もっとも、ガエリオが来たせいでそれは無駄になったが。

 それが無駄になったからこそ、今度は十分な戦力を用意して来た訳だ。

 ……ドルトコロニーの一件で結構な被害を与えたと思うんだが、それを含めて考えてもよくここまで戦力を回復出来たな。

 それだけ本気という事なのだろうが。

 

「じゃあ、俺はコックピットで待機してるから、いつでも出撃出来るように準備を頼む」

 

 メカニックにそう言い、俺はグシオンのコックピットに乗り込む。

 

「さて……ブリッジ、聞こえているか?」

『はい、何でしょうか?』

 

 ブリッジに通信を送ると、そう返事がある。

 映像モニタに表示されたのは、フミタンだった。

 

「フミタン?」

『はい。お嬢様からの指示がありまして』

 

 そう言うフミタンだったが、その言葉には納得出来るものがあった。

 実際、フミタンはブリッジクルーとしても非常に有能なのは分かっている。

 だからこそ、クーデリアもフミタンにブリッジで手伝うように指示したのだろう。

 あるいは指示ではなくお願いか。

 まぁ、俺としても有能なフミタンがこうしてブリッジにいてくれるのは助かるんだが。

 

「そうか。それで状況はどうなっている?」

『現在、アリアンロッド艦隊との交渉……いえ、交渉と呼んでもいいのかどうか分かりませんが、とにかく交渉をしています。戦闘になるまではもう少し時間が掛かるかと。そちらの準備はどうでしょう?』

 

 戦闘になるまではと言うフミタン。

 これはフミタンも今回の一件は戦闘がなしでどうにかなるとは思っていないんだろうな。

 実際、俺もその意見には賛成だが。

 

「こっちの方は問題ない。見た感じ、マーベルや昌弘達も問題はないな。鉄華団やタービンズの方はちょっと分からないが、多分大丈夫だろう」

 

 これは大袈裟でもお世辞でもない。

 鉄華団とタービンズは、それが出来る組織だというのをこれまでの経験から分かっているからだ。

 ……実はタービンズとはそこまで一緒に戦った事はないのだが、テイワズ傘下の中でも有数の集団だ。

 それに……こう言っては何だが、現在タービンズで使えるのは百里だけだ。

 パイロットはアミダだし。

 本来なら、百里はラフタの機体なのだが、1機しか出撃出来ないとなると、やはり出撃するのは最も技量の高いパイロット……アミダになるだろう。

 ラフタやアジーも決して技量が低い訳ではないが、それでもアミダには1歩も2歩も劣ってしまう。

 それでもラフタとアジーは、シャドウミラーだとマーベルには敵わないものの、昌弘達を相手にすれば8割から9割くらいの勝率を誇るだけの腕前ではある。

 昭弘もラフタやアジーには勝つのが非常に厳しいらしい。

 そのくらいの腕利きなのだ。

 

『アクセルさん、どうやら限界のようです。戦闘準備をお願いします』

『分かりました。ですが、私達も理不尽な暴力には力で対抗します。シャドウミラーの力、存分に味わって下さい』

 

 フミタンの言葉に続き、シーラがそう言ってくる声が聞こえてきた。

 交渉決裂か。

 もっとも、アリアンロッド艦隊にしてみれば最初から交渉でどうにかしようとは思っていなかったのだろうし、当然の流れだが。

 もし交渉でどうにかするのなら、それこそ無条件降伏とかでないと駄目だろう。

 そして当然ながら、こちらにそのつもりはない。

 

「分かった。……マクギリス達が喜ぶ顔が目に浮かぶよ」

 

 そう言うと、フミタンが微かに眉を顰める。

 ドルトコロニーの一件もあって、フミタンはマクギリスがあまり好みではないらしい。

 自分がノブリスの手の者だったというのをクーデリアに教えたのだから、それを不満に思ってもおかしくはない。

 

『そうですね』

 

 短く言葉を返すフミタン。

 マクギリスにしてみれば、敵対する相手であるラスタルの戦力が減るのは大歓迎だろう。

 あるいは俺達との関わり合いについてラスタルから追及される可能性もあるが、そのくらいなら容易に躱すだろう。

 寧ろそれを理由として、ラスタルを責めるといったような事すらしかねない。

 ……もっとも、そのような事が出来るのはこの戦いで勝利するという前提があっての話だ。

 もしこの戦いで負ければ、それは俺達にとっての破滅を意味するのだから。

 

『アクセル、出撃を。……あの無礼者共に、仕置きをお願いします』

 

 フミタンに代わり、シーラが映像モニタに表示されてそう言ってくる。

 これは……アリアンロッド艦隊を代表してシーラとやり合った者が何を言ったのかは分からないが、見るからにシーラは怒っている。

 それこそ、すぐにでも自分の力で敵を滅ぼしたいと思う程に。

 ……本当に、向こうの連中は一体何を言ったんだ?

 

「分かった。どのみちここでの勝利は俺達にとって大きな利益となる。手加減をするつもりはない」

 

 これは事実だ。

 何しろ俺達……シャドウミラーと鉄華団は、アリアンロッド艦隊と戦って勝った事はないのだから。

 実際にはドルトコロニーの一件で勝利をしているのだが、あの時に使ったサラマンダーは俺達の機体ではなく、所属不明機という扱いになっている。

 その為、俺達は地球外縁軌道統制統合艦隊を相手に勝利したり、地球で蒔苗の亡命していた島を襲った艦隊にも勝利はしたが、アリアンロッド艦隊を相手に勝利はしていない事になっている。

 だからこそ、ここで公的にアリアンロッド艦隊に勝利しておくというのは、大きな意味を持つ。

 アリアンロッド艦隊がギャラルホルンの最精鋭であるというのは、広く知られた事実だ。

 そんなアリアンロッド艦隊と正面から戦って勝利したとなれば、俺達の名前は決定的に広まるだろう。

 同時に、マクギリスと敵対しているラスタルが率いるアリアンロッド艦隊が負けたいう噂は、ラスタルにとって大きなマイナスとなる。

 

『では、お願いします』

 

 そう言い、通信が切れる。

 

『シーラ……怒ってたわね』

 

 マーベルのグレイズからの通信に頷く。

 

「そうだな。……一体、向こうは何を言ってきたのやら」

 

 何となく……本当に何となくだが予想は出来る。

 アリアンロッド艦隊を引きいている者達は、ギャラルホルン最精鋭という事でプライドが高い。

 ましてや、俺達は火星出身だ。……タービンズは違うが。

 選民意識の強いギャラルホルン、その中でも精鋭と呼ぶべき存在のアリアンロッド艦隊の者達にしてみれば、火星出身者が自分達に逆らうというのは許せないだろう。

 あるいはシーラの性格を考えると、厳しい事を言われたのかもしれない。

 なまじ美貌の持ち主だけに、そんなシーラの口から厳しい言葉を発せられると、男として許容出来なくてもおかしくはない。

 他にも、その美貌故に言い寄られたのをきっぱりと断ったとか……さすがにそれはないか?

 こうしてわざわざ俺達を捕らえるなり倒すなりする為に送られてきた者達だ。

 その交渉を任されている者……恐らくは艦隊を率いるだろう人物が、そんな事をするとは思えなかった。

 

『ともあれ、頑張りましょう。早く火星に戻りたいし』

 

 マーベルの言葉に頷く。

 本来なら、マーベルにとって地球の方が故郷に近いのだろう。

 世界は違うが、ダンバイン世界においてはマーベルはアメリカ出身だったのだから。

 しかし、このオルフェンズ世界においては火星の方がマーベルにとっては故郷という認識なのだろう。

 俺にとっては……うん。まぁ、大体マーベルと同じ感覚だ。

 俺が産まれたのも地球だったが、今となっては俺の故郷はホワイトスターなのだから。

 そしてこのオルフェンズ世界において故郷というか……拠点? となると、やっぱり火星になる。

 その火星に戻るのを邪魔するのなら、勿論許す訳にはいかなかった。

 他にも色々と理由があるので、アリアンロッド艦隊と戦うのに躊躇はない。

 

『全機、出撃して下さい』

 

 フミタンの声が聞こえ、俺は映像モニタに映っているマーベルに視線を向ける。

 マーベルもまた、俺の視線を受け止め……そして黙って頷く。

 目と目で意思疎通を終え……俺はグシオンで出撃するのだった。

 

 

 

 

 

「部隊全体の指揮はアミダに任せる」

『ちょ……アクセルはどうするんだい?』

 

 まさか自分に指揮を任されるとは思っていなかったのか、アミダが驚きの声を発する。

 普通に考えれば、俺達3勢力の中でシャドウミラーが一番大きな戦力を持っているし、それぞれの勢力のトップが結んだ兄弟分の杯では俺が兄貴分……長男的な存在だ。

 であれば、俺が指揮を執るとアミダが考えてもおかしくはないし、それが自然な流れ……普通なのも事実だ。

 だが……それはあくまでも普通であればの話だ。

 シャドウミラー……ホワイトスターの方のシャドウミラーでもそうだが、基本的に俺のような突出した個として突出し、敵の攻撃を引き付けるのが一番味方の被害を減らせる戦術なのだ。

 いやまぁ、そんなのを戦術と称してもいいのかどうかは微妙なところだが。

 しかし、それが一番有効なのも事実。

 勿論これは、誰にでも出来るようなものではない。

 俺のように高い操縦技術があり、機体の急制動によるGが効果なく、もし万が一機体が撃破されても物理攻撃は意味がなく、生身で宇宙空間を移動出来る俺だからこそ出来る事なのだが。

 

「俺は突出して敵を引き付ける」

『……はぁ!? 本気かい!?』

 

 アミダの驚きの声が聞こえてくるが……

 

「本気だ。というか、今更だろう」

 

 アミダは何だかんだと俺の強さについて知る者の1人だ。

 火星付近で行われたギャラルホルンとの戦いも見ていたらしいし、その後で実際に俺達を襲ってきた事で直接俺の力を知った。

 その後はテイワズに行き、そこでJPTトラストと揉めた結果、そいつらと模擬戦になって俺1人で多数の相手を倒した。

 テイワズから地球に向かう途中で夜明けの地平線団と遭遇し、今回と同じように俺が突出して敵の攻撃を俺に集中させながらも一方的に蹂躙した。

 ドルトコロニーでも、アリアンロッド艦隊を相手に俺が突出し蹂躙した。……その時はサラマンダーだったが。

 地球外縁軌道統制統合艦隊との戦いでも以下同様。

 地球に下りてからは特にそこまで大きな戦いもなかったし、アミダもいなかったので分からないだろうが。……敢えて大きな戦いとなると、蒔苗が亡命していた島で2度行われたギャラルホルンの艦隊との戦いか?

 もっとも、島での戦いは別に俺が前線に出て戦うといったようなことはしていなかったが。

 ミロンガ改でギャラルホルンの軍艦を何隻か破壊したけど。

 島での戦いはともかく、それ以外ではアミダも俺がどういう戦い方をしてきたのか、そして俺がどれだけの実力を持っているのかは知っている筈だ。

 

『それは……ああ、もう。しょうがないね。分かったよ、アクセルの言う通りの作戦で行こうか。アクセル以外のパイロット達も、それでいいね?』

 

 そう尋ねるアミダに、反論の声を上げる者はいない。

 三日月辺りなら不満を持ってもおかしくはなかったが、恐らくオルガから俺達の指示に従うようにと言われていたのだろう。

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