屋敷の中に俺の声が響き……次の瞬間、返事は銃弾で返される。
屋敷の向こう側では、護衛達が俺を待ち構えていた。
それは気配で察知出来ていたので特に驚きはないが、いきなり銃撃してくるとは……いや、そこまで不思議でもないか。
向こうにしてみれば、俺は不法侵入者……どころか、れっきとした敵だ。
そうである以上、俺の来る場所が分かっていれば、そこに戦力を集中するというのは間違っていない。
門の前にいた、逃げ出した護衛達よりは仕事に忠実なのだろう。
……生き残る為の本能という意味では間違っているが。
とはいえ、さっきの狙撃手のように殺すのはちょっとな。
この連中はあくまでも護衛であって、ノブリスの手下という訳ではない……いや、直接の手下も何人かいるのか?
いちいち区別するのも面倒だし……まぁ、幸運だったな。
そんな風に思いつつ、俺は自分に命中する銃弾を無視して、重機関銃のトリガーを引いたまま銃口を動かす。
狙うのは、護衛達の頭部……ではなく、胴体……でもなく、足。
まぁ、運が悪ければ足に当たった衝撃で心臓が破裂したりとか、そこまでいかなくても出血多量で死んだり、あるいはショック死をするかもしれないが、その時はその時、不運だったと思って欲しい。
「ぎゃあっ!」
「ひぐぅっ!」
「痛ぁ!」
そんな風に悲鳴を上げる者達が多数いて、俺に撃たれた者達が床に崩れ落ちる。
お? 死人は2人だけか。
ステータスの撃破数が2上がっているのを見て、少し感心する。
20人近くが倒れているのを見て、その者達はそのままにノブリスの部屋に向かう。
この屋敷には以前来た事があるので、まずはそこに向かう。
俺が以前ノブリスと会った部屋は……あれ? 客室だったか、執務室だったか。
ともあれ、まずはノブリスを見つける必要があるのは間違いなかった。
途中で何人かの護衛が現れ、こちらに銃口を向けてくるが……
ガン、と。
足を50口径の拳銃で撃つ。
それによって倒れ込む護衛達がいるのだが、その相手には構わない。
「きゃあっ!」
「……屋敷の外にでも避難していろ」
屋敷の中にいるのは護衛が大半だったが、メイドもいる。
メイドと言えば武装メイドとか思い浮かべるものの、実際にはこの屋敷にいるメイドにそういう者はいない。
……いやまぁ、もしかしたらそういうメイドもいるかもしれないが、今のところ俺が会ったりはしていない。
そんな風にしながら屋敷の中を進み……やがて目的の場所に到着する。
「いないか」
しかし、この場所にやって来ても扉の向こう側には誰の気配もなかった。
それはつまり、この部屋の中にノブリスがいないという事を意味している。
まさか、ノブリスが気配を消すといった事を出来るとは思えないし。
あるいは息を潜めるとかはするかもしれないが、それで気配を消せる訳ではない。
つまりこの部屋の中にはやはり誰の姿もないのだ。
それでもノブリスがどこかに逃げたのなら、その手掛かりがあるかもしれないと扉を開くと……
「プリンを食べてたのか」
テーブルの上には、プリンがあった。
以前ここで食べた、プリンに生クリームや果実をトッピングした、いわゆるプリン・ア・ラ・モードではなく、普通のプリン。
もしかしたら、あのプリン・ア・ラ・モードは客が来た時だけ特別に出すものだったのかもしれないな。
ともあれ、俺の視線の先にあるのは食べかけのプリン。
このプリンを食べている時に、俺の襲撃があったのだろう。
ノブリスの性格を考えれば、襲撃があったと聞いたらプリンを残すのではなく、一口で食べて部屋を移動するとかしそうだけどな。
それだけ焦っていたという事か。
そして焦りの原因は、襲撃してきたのが俺だからというのもあるのだろう。
とはいえ……こうなると、屋敷が広い分、どこにノブリスがいるのか分からないのが問題だ。
もしくは、とっとと逃げたのかもしれないが。
捜すか。
そう判断し、空間倉庫からスライムを出す。
勿論、この部屋も監視されている可能性があるので、スライムをそのまま出すような事はしない。
最初から細い糸状にして、伸ばしていく。
どんどん、どんどん、どんどん。
そうして伸ばしていったスライムは屋敷中に広がっていく。
扉の隙間、天井の隙間、床の隙間……そんな場所も無視してスライムが張り巡らされていく。
『くそっ、おい、マジか!? この屋敷に侵入してくるなんて正気か!?』
『とにかく、戦力だ戦力! 武器を卸している組織に連絡をしろ! 援軍を呼ぶんだ!』
『ちょ……おい、見ろ! 侵入してきたのはアクセルだけじゃねえぞ! 他にも侵入してきている連中がいる!』
『アクセルめ……あの恩知らずが!』
あ、いたな。
この最後がノブリスの声だ。
そう判断すると、俺はその声の聞こえてきた場所を確認する。
地下……なるほど、地下シェルターか。
逃げられていなかった事を幸運に思うべきだろうな。
襲撃されて尻尾を巻いて逃げ出したというのが知られたら、評判に関わると判断したからこその行動だろうが。
あるいは襲撃してきたのが俺だけだったから、逃げるまでもないと思ったのか。
その辺は俺にもちょっと分からない。
分からないが、それでも今の状況を思えば助かったのは間違いない。
『何だ? おい、アクセルは何故動かない? 何をしている?』
再び聞こえてくるノブリスの声。
だが、なるほど。やっぱりこの部屋には防犯カメラ……いや、隠しカメラでもあるのか。
周囲の様子を確認するが、見て分かるようなカメラはない。
つまりカメラの存在が見つからないように、隠されているのだろう。
そして俺がスライムを使っているのか分からず、一体何故動きを止めているのかが分からないか。
「残念だったな」
そう口にするが……うん? スライムを伝わって声が聞こえてこない。
あれ? これってもしかして……この部屋にある隠しカメラは、あくまでも映像だけを送る奴で、音声は聞こえないのか?
うわ、わざわざ『残念だったな』とか口にしたのに、完全に滑ってしまった形だ。
とはいえ、声が聞こえていないというのは俺にとってもやりやすい。
後は、どうやって地下にあるシェルターまで移動するかだが……それについては、スライムを辿ればどうとでもなるか。
そう判断すると、俺はそのまま部屋を出る。
『おい、アクセルが部屋を出たぞ。どこに向かうか確認しろ』
ちなみにスライムはまだ出しているので、特に問題なくノブリスの声は聞こえてくる。
そんな声を聞きながら、俺は歩き続ける。
そのまま数分が経過し……
『おい、アクセルの奴……もしかしたら、ここに向かっていないか?』
『いえ、ですがこの場所については知ってる者は殆どいません。身内でもそうなのに、アクセルが知ってるとは……』
『だが、映像を見ろ。着実にこちらに向かっているぞ』
『それは……何らかの情報でこの地下シェルターの事を知ったのでは?』
『馬鹿者が。お前がこの場所について知ってる者は殆どいないと言ったのだろうが。それとも……お前が情報を漏らしたのか?』
『そ、そんな事はありません! でしたら、ノブリス様と一緒にこの地下シェルターにいる訳がないではないですか!』
そんな会話を聞きながら、俺は屋敷の中にある一室……図書館に到着する。
ノブリス的に図書館というのは合わないような気がするが、それなりに立派な図書館だ。
この図書館の中に地下シェルターに続く隠し扉があるんだが……まさか、それを隠す為にここまで立派な図書館を作ったのか?
俺の認識だと、ちょっとした市営図書館くらいの大きさはある。
勿論、この図書館よりもっと大きな図書館は幾らでもある……ある……あるのか?
厄祭戦の事を考えると、この図書館以上に図書館となるとそう簡単には見つからないような気がしないでもない。
まぁ、その辺については後でクーデリアにでも聞けば分かりやすいか。
クーデリアも代表首相の娘であり、何より大学に通っていた事を思えば、図書館とかそういうのには詳しいだろうし。
「さて……」
とはいえ、図書館に来たのはいいし、どこから地下のシェルターに繋がっているのかは分かるが、問題なのは地下シェルターに向かうにはどうやって隠し扉を開ければいいのか分からないんだよな。
そんな訳で……
ガガガガガガ、という重機関銃の発射音が図書室の中に響く。
だが、さすがシェルターと言うべきか。
重機関銃の弾丸が連続して命中しても扉の前にあった本棚……それも何も入っていない、空の本棚は破壊されたものの、その先にあった扉には一切の被害がない。
「駄目か」
そう思いつつ、ノブリスがどうしているのかをスライムを通して聞く。
『見ろ、アクセルの攻撃でもこの扉はびくともしない! ここにいれば安全だ!』
『ですが、ノブリス様。この地下シェルターに私達がいるということは、安全であると同時にここに閉じ込められた事になります』
『何を言っている? この地下シェルターには数年は生きていけるだけの食料や水がある。……勿論、本当に数年、いや数ヶ月どころか数十日だってここにいるとは考えられんがな。これだけの騒動だ。すぐにギャラルホルンが動く。それまでここにいればいい』
そんな会話が聞こえてくる。
どうやら、俺が既に図書館にいて、地下シェルターに続く扉に向かって重機関銃を撃ちまくっているのは、向こうにも分かるらしい。
いや、考えてみれば当然か。
自分達がいる地下シェルターに続く扉だ。
そこが安全かどうかは、普通なら気になるだろう。
ノブリスのように後ろ暗いところがある者であれば尚更だ。
だからこそ、こっちの状況が分かってる訳だが……
「残念だったな」
その言葉が聞こえてるのかどうかは分からない。
先程の部屋のカメラは音声が聞こえないタイプだったが、地下シェルターに続く扉の前にあるカメラであれば、音声とかも聞こえるような高性能なタイプであってもおかしくはない。
まぁ、その辺は俺も特に気にするつもりはないが。
そんな風に思いながら、俺は重機関銃と拳銃を床に置く。
……拳銃の方、結局殆ど使わなかったな。
いっそ、両方とも重機関銃にすればよかったかもしれない。
次からはそうしよう。
そう考えつつ、俺は地下シェルターに続く扉に触れる。
重機関銃の弾丸が何十発……いや、百発以上命中したが、扉に被害らしい被害はない。
恐らく……いや、確実に何らかの特殊な素材なのだろう。
だが……甘い。
そっと手を伸ばし、扉に触れる。
何があっても地下シェルターに被害が出ないようにだろう。
壁との間の隙間もよくみなければ分からない程にしっかりと密閉されている。
今更だが、空気とかはどうしてるんだろうな。
いや、地下シェルターというくらいだ、その辺についてもしっかりと対応はしてるのだろう。
そんな風に思いつつ、扉に指を突き立てる。
普通なら、そのような行為は指を痛めるだけだろう。あるいは突き指か。
だが……それはあくまでも普通ならの話だ。
混沌精霊の俺にとって、この程度の壁に指を突き立てる……突き刺す? ともあれ、そういうのは容易に出来る。
そのまま扉に指を突き刺すと掌を握るように動かす。
メキ、と一瞬だけそんな音が聞こえたが、次の瞬間には扉は壁から引き千切られていた。
あるいはいっそ白炎で溶かすという手段もあったのだが……フミタンは魔法についてノブリスに報告していなかったという事なので、ノブリスに白炎を見せる必要もないだろう。
いや、だからといってこうして腕力だけで重機関銃でもどうしようもなかった扉を容易に破壊しているのは見られてもいいのかと言われれば、正直なところ微妙なのだが。
それでも魔法っぽいのを見せるよりはいいだろう。
ともあれ、これで地下シェルターの扉は開いた。
後はノブリスのいる場所まで行くだけだが……聞こえてくる声が小さいな。
スライムで確認すると、どうやら今の扉と同じ扉がもう一枚あるらしい。
ああ、なるほど。地下に続く階段の前後……前後? まぁ、表現はともかく、両端に扉があるのだろう。
もし何らかの手段で扉が破壊された時の為に。
今回の一件に関しては完全にイレギュラーでしかないのだろうが。
今のノブリス達の様子も気になるが、ここまで来たらわざわざ向こうの声を聞く必要もないだろう。
そんな訳でスライムを空間倉庫に収納し、扉の先にある階段を下りていく。
カツン、カツンといった音と共に階段を下りていき……やがて、先程と同じ扉の前に到着する。
改めて見ると、扉の横にはパスワードを入力したり、それ以外にも指紋や静脈、網膜を確認する為の装置がある。
あれ? これ図書館にはなかったような?
そう思った次の瞬間、各種装置が壁の中に引っ込んだ。
ああ、なるほど。まぁ、中に入る為の装置をわざわざ表に出しておく必要はないか。
ここの扉にその装置が出たままだったのは、まさか図書館の扉が破壊されるとは思っていなかったのだろう。
そんな訳でそっと手を伸ばして先程同様に力で強引に扉を開く。
扉と壁の隙間から、部屋の中が見える。
「ノーブリース君、あーそーぼ」
アクセル・アルマー
LV:45
PP:640
格闘:313
射撃:333
技量:323
防御:323
回避:353
命中:373
SP:3003
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1986