ちょうど鉄血のオルフェンズ編の第1部が終了したところなので、タイミング的にここかな、と。
4000話の記念なので、それなりの話数になる……かも?
現在まだ書いている途中なので、正確に何話になるのかは分かりませんが。
ただ、私はボクシングについて漫画でしか知らないので、詳細なルール等は間違って認識していたりするかもしれません。
実はここが違うというところもあるかもしれませんが、その辺についてはそういうものだとスルーして下さい。
俺の拳が相手の頭部を打ち抜き……そのまま崩れ落ちる。
「そこまで!」
レフェリーが止めると、俺は視線を観客席に向ける。
これは本物の試合ではなく、プロ試験だ。
よって、観客はいないが……俺の所属するジムの会長である、仲代ジムの会長……通称、おやっさんが拳を握って笑みを浮かべる。
そんなおやっさんの様子を見ながら、俺はこの世界に来た時の事を思いだしていた。
正直、何でこの世界に来たのかは全く分からなかった。
気が付けば何故か公園のベンチで眠っていたのだ。
急いで山奥まで影のゲートで転移してゲートを設置してみたが、ホワイトスターには繋がらない。
……もっとも、今までも何らかの理由でゲートが機能しなかった事はあったので、そこまで焦るといった事はなかったが。
ただ……問題なのは、この世界は今まで俺が転移した世界のように、戦争とかそういうのがない世界だった事だ。
いや、正確には俺が転移したのは日本だったから戦争とかはなかったという事か。
戦争とか紛争とか、そういうのは恐らく世界のどこかでは普通に起こっていたのだろうし。
ともあれ、人型機動兵器とかそういうのが存在しない世界なのは間違いない。
あるいはペルソナ世界やネギま世界のように生身での戦いのある世界か?
そうも思ったが、特に超能力とか魔法とか……ましてや、ペルソナとかはない。
ちなみに情報収集の為に図書館とかに置かれてある新聞で日時を確認したところ、何と1990年だった。
えっと……これ……どうすれば?
1990年となると、ネットの類もまだない……いや、アメリカとかにはあるのか?
ともあれ、日本にはそういうのは存在しない。
当然ながら携帯とかも……あれ? でも背中に背負う巨大な携帯電話とかは見た覚えがあるような、ないような。
ともあれ、一般的ではないのは間違いない。
俺にとっては、あって当然のネット。
これがないと……何だったか。ポケベル? そういうのを使っていると何かで見た覚えがある。
数字しか送れないので、0833でおやすみ。09106で起きてる。……こんな風に暗号っぽい感じの奴だったか。
ともあれ、表立っての戦闘がある訳ではないとなると、裏の世界での戦いとか?
それなら表沙汰になっていないのも理解出来る……そう思って色々と調べたのだが、結局のところそれらしい情報は何もなかった。
とはいえ、何の意味もなかった訳ではない。
裏世界という事で、ヤクザとかそういう連中の事務所に忍び込んだのだが、そこにあった金をごっそりと入手出来たのだから。
具体的には、贅沢をしなければ30年くらいは働かなくてもいいくらいの現金であったり、金の延べ棒だったり、宝石だったり。
そんな訳で生活状況は調えられたのだが……問題なのは、ヤクザの事務所とかでも裏の世界の超能力者とか、そういうのの情報はなかった。
そこまですると、もしかしたらこの世界は実はそういう戦いのない世界なのではないか? と思い……次に俺がやったのは、役所に忍び込む事だった。
もっとも、今度は別に何かを盗むといった訳ではない。
コンピュータに俺の戸籍を忍び込ませる為だ。
……正直、1990年の役所ってコンピュータを使っているのかどうかは分からなかったが、普通にあった。
これは東京だからなのか。
もしかしたら地方に行けば、紙で戸籍とかを保存してるのかもしれないな。
ともあれ、空間倉庫から取り出したハッキングツールを使い、上手い具合に俺の戸籍をでっち上げた訳だ。
これがマクロス世界とか……もしくはホワイトスターにあるコンピュータとかなら、技術班謹製のハッキングツールとかでも難しかったかもしれないが、1990年のコンピュータなら楽勝だ。
接続端子の問題についても、液体金属で対処可能だったし。
そんな訳で、今の俺はアクセル・アルマー18歳。
外見年齢は10代半ばだったが……うん。まぁ、それは何となく気分でそうした形だ。
敢えて理由を挙げるのなら、基本的に俺の行く世界の主人公は10代が多いからという感じだな。
もっとも、中には20代の主人公の原作の世界も普通にあるので、もしかしたらもしかするかもしれないが。
ともあれそうして一応の住所とかそういうのが決まった後で、どうするべきかと迷っていた。
何しろ今の俺はまだ何をすればいいのか全く分かっていなかったのだから。
そんな訳で公園でボーッとしていたが……その時、ちょうどおやっさんが通り掛かり、声を掛けてきて……まぁ、色々とあって最終的に仲代ジムで世話になる事になった訳だ。
正直なところ、俺がボクシングをやるという時点で色々な意味で反則にしかならないと思うんだが、この世界に俺が転移してきた理由が分からない以上、ただボーッとしてるのもなんだし。
もしくはテロリストとかそういうのを潰すといった事をしてもよかったのだが……まぁ、こちらも付き合いというか、おやっさんと出会った縁もあってボクシングを始める事になった訳だ。
勿論、俺の生身の力……それこそ、混沌精霊としての力を考えると、本気で戦う訳にはいかない。
それこそ舐めプだなんだと言われても、極限まで力をセーブする必要がある。
何しろそうでもしなければ……それこそ俺が本気の1割にも満たない力であっても、容易に人を殴り殺せるだけの力はあるのだから。
まぁ、俺にとっては縁のある事だし、何故かゲートが使えない以上、レモンが迎えに来るまで何もせずに待っているのも何なので、半ば暇潰しも兼ねてボクシングをする事にした訳だ。
……最初はおやっさんも俺の10代半ばの体格を見て、あまり期待は出来ないと思っていたようだったが、それこそ可能な限り手を抜いた状態であっても十分におやっさんの目に留まったらしい。
やっぱりそう力を入れたようにも見えなかったパンチでサンドバッグを破壊してしまったのが悪かったのだろう。
文字通りの意味で粉砕といった感じだったし。
さすがに不味いと思ったのか、おやっさんを始めとする面々は俺の手に異常がないかどうかを心配したが。
とはいえ、当然その程度で俺に問題がある筈もなく。
そして次に伊達……伊達英二とスパーをする事になった
ちなみにこの伊達英二、現在フェザー級の王者らしい。
聞いた話によると、以前世界チャンピオンにも挑戦した事があったらしい。
その試合で負けて引退したものの、カムバックしたんだとか。
そんな訳で、伊達との模擬戦……いや、スパーリングをやったのだが……うん。
取りあえず伊達が次の世界戦に挑戦する時、スパーリングパートナーの心配をしなくなった感じだ。
伊達に妙に気に入られたし。
そんな訳で、最初は適当にボクシングをやりながらレモン達を待つつもりだったのだが、半ば成り行きで練習生からプロコースに入った訳だ。
とはいえ、これは俺にとっても決して悪い事ではない。
俺の戦闘の基本は、それこそ士官学校に通っていた時に習った格闘技をベースに、ネギま世界での能力を組み合わせたものだ。
……実際には魔法とかがメインで、格闘技はおまけみたいな感じになっているが。
そんな訳で、ボクシングを純粋な格闘技として習った事はなかった訳で。
そういう意味では、この世界でボクシングを習えるというのは決して悪い話ではないのだ。
何かで見たが、ボクシングというのは世界最速の格闘技とか言われるらしいし。
そんな訳でボクシングを習い……3ヶ月程度が経ったところで、こうしてプロ試験に参加している訳だ。
ちなみにこのプロ試験……別に相手をKOする必要はないらしい。
勿論、KOさせるのがアピールポイントになるのは間違いないので、多くの者がKOを狙っていくのだが。
そうして俺のスパーが終わったところで、他の選手の動きを観察する。
そんな中で特に目立ったのは……2人。
1人は背が高くフェザー級にはちょっと無理があるんじゃ? と思しき男だったが、薄らとだが殺気混じりなのが気になった。
また、ジャブも何だか妙な構えから妙な軌道を描く代物で、それによって相手を完封している。
そしてもう1人は……何というか、気弱そうな奴。
その割には身体がしっかりと出来上がっている。
小柄な身体で、筋肉の量でフェザー級にいるといった感じか。
ちなみに俺は外見からではそこまで筋肉がついてるようには思えないが、その辺は混沌精霊の力で体重をフェザー級に合わせている。
ともあれ、この男は試合相手のパンチをことごとく回避しつつ、1発パンチを当てて回避したところで、右ストレートを打ち込んだ。
その一撃は強力で、縦に一回転して気絶するという有様だった。
凄いな。
混沌精霊の俺はともかく、あの男は生身の人間だ。
それでここまでやるのだから……もしかして、あの男がこの世界の主人公なのか?
だとすれば……おいおい、もしかしてこの世界って実は裏の世界で特殊能力を使った戦いだったり、人型機動兵器を使うのじゃなくて……漫画かアニメかゲームかは分からないが、ボクシングが主題となる原作だったりするのか?
勿論、あの男が主役かどうかは分からない。
もしかしたら、主要メンバーではあっても主役ではないのかもしれないが……ただ、今まで色々な世界の主人公を見てきた身からすると、何となく主人公であるような気がする。
そんな風に思っていると、俺の視線の先では先程の妙なジャブを使っていた男がリングの上にいる主人公と思しき男を睨み付けていた。
何故だ?
そう思ったが、その男が背を預けている壁の側にマウスピースがぶつかって床に落ちた痕跡がある。
多分それが気に食わなかったのだろう。
……主人公と思しき男と同じ時にプロテストを受け、薄らとではあるが殺気を滲ませているのを見ると、あの男が主人公のライバル的な存在なのか?
そんな風に考えていると、主人公らしき男が下りてきたところに向かって殺気の男が近付いて何かを話している。
うん、これを見るとやっぱりライバルなんだろうな。
そんな風に思っている間に話は終わり……そしてプロテストは終了するのだった。
「アクセル、お前の階級には凄い連中がいるな。フリッカージャブを使ったり、お前程じゃないが強力な一撃を持ってる奴とか」
テストが終わって合流したところで、おやっさんがそう言ってくる。
ちなみにフリッカーというのは、あの殺気の男が使っていた妙なジャブの名前らしい。
とはいえ……
「そう言ってる割には、あまり深刻そうに見えないけどな」
「はっ、そりゃそうだろ。俺はお前の力を知ってるんだぜ? あのフリッカー使いや強力な一撃を持ってる奴が10年に1度の才能の持ち主だとしても、アクセルは100年に1度……いや、1000年に一度の才能の持ち主だ。プロでもないお前が伊達とスパーで互角以上にやり合えてるって時点で普通じゃねえんだからよ」
「へぇ、それは聞き捨てならねえな」
おやっさんの言葉にそう言ってきたのは、日本人としては背の高い男だ。
そう言えば、この男の姿も観客席にあったな。
それなりの存在感を持っているので、印象に残りやすい。
その男の隣には、恐らくこの世界の主人公だろうと思っている男の姿があった
「鷹村……聞いてたのか? 困ったな」
おやっさんがそう言うが、その表情には笑みが浮かんでいる。
鷹村と呼ばれた男は、そんなおやっさんの姿を見てから俺に視線を向けてくる。
「こいつが1000年に一度の才能ねぇ……おう、名前は?」
「こういう時は、他人に名前を聞くよりも前に自分から自己紹介をすべきじゃないのか?」
俺の言葉が気に食わなかったのか、ピキリと鷹村の額に血管が浮かび上がる。
「ちょっ、ちょっと鷹村さん! 落ち着いて下さい。こんな場所で騒動を起こしたりしたら、不味いですって。こんな所で騒動を起こしたら、会長に怒られちゃいますよ!」
「ふんっ! ……ったく、俺様は鷹村守だ。ミドル級の世界チャンピオンになる男だ。そのくらい分かっておけ!」
「あー……悪いな、鷹村。こいつは少し前までボクシングに触れたことも何もなかったんだ。何しろ、英二の事も知らなかったくらいだしな」
「……お前……」
何故か鷹村から呆れと哀れみの入り交じったような視線を向けられてしまう。
「えっと、あの……アクセル君っていうんですか? 僕は幕之内一歩です。その……僕も最近まではボクシングに興味がなかったんですけど、鷹村さんに憧れてプロボクサーになろうと思ったんです。同期としてよろしくお願いします」
鷹村のフォローなのか、それとも俺のフォローなのか……ともあれ、幕之内がそう言ってくる。
「アクセル・アルマーだ。アクセルでいい。名前と外見から分かるけど日本人じゃない。とはいえ、国籍は日本だし、日本語も理解出来るから、普通に日本人として接してくれ」
「あ、その……じゃあ、僕も一歩でいいです。その方が慣れてるので」
そうして和気藹々とこの世界の主人公と思しき一歩と話している横で、鷹村はおやっさんと話をしているのだった。