転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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番外編174話 はじめの一歩編 第30話

 俺の目の前には、多くの者達がいる。

 その表情に浮かんでいるのは喜びだ。

 楽しそうに家族と一緒に歩き回り、目的の場所に向かっていた。

 ゴウッ、という音が聞こえてくる。

 また、楽しげな気分にさせる音楽も鳴っている。

 

「……何で俺は遊園地にいるんだろうな」

「あら、たまにはいいじゃない。私も日本に戻ってからはボクシングの事ばかりだったし、そういう意味でもこうして遊園地に来るのは悪い気分じゃないわ」

 

 俺の隣で飯村がそんな風に言う。

 ……いや、本当に何でこんな事になってるんだろうな。

 もっとも、こうなった理由は俺が仲代ジムに毎日のように顔を出しているからというのが理由だったりする。

 チャンピオンとしては当然の事なのだと思うのだが、おやっさんから少しは休めと言われ、ちょうどその時飯村がいつものようにジムに来ており……その後、おやっさんと飯村が話をした結果、何故か俺と飯村が一緒に遊園地に来る事になってしまったのだ。

 

「つまり、遊園地というのは飯村のリクエストな訳か?」

「ええ。それに……休日のアクセルを見てみたいと思うのは、そうおかしな話ではないでしょう?」

「それを俺に言われてもな」

 

 元々飯村は俺に……より正確にはプロボクサーとしての俺に注目していた。

 だからこそ、こうしてたまの休日に俺と一緒に……と、そこまで考えたところで、ふと思う。

 

「あれ? 俺が休日なのはともかく、飯村は違うだろう?」

 

 遊園地には子供達がそれなりにいるが、それでも今日は平日だ。

 そんな中、こうして子供達がいるのは……親が今日くらいは学校を休ませてもいいと判断したのか、あるいは学校行事として親子で来てるのか。はたまた小学校に上がる前の子供達だからか。

 その辺りは俺にも分からないが、とにかく子供達がいるのは何らかの理由があったとして、平日である以上は飯村も仕事の筈だった。

 なのに、飯村は私服で……それも記者の仕事をしている時のような地味は格好ではなく、女らしい服を着て俺と一緒にこうして遊園地にいるのだ。

 普通に考えれば、飯村の仕事はどうした? と疑問に思ってもおかしくはないだろう。

 

「ああ、その件については有休を貰ってるから大丈夫よ」

「……お前、まだ日本に帰ってきてからそんなに経ってないだろうに、大丈夫か?」

 

 会社というのは融通が利かない事が多い。

 ましてや、この時代は余計にそうだろう。

 そんな中で、入社してまだ1年も経たない飯村が有休を申請して、そう簡単に通るとは思わなかった。

 もっとも、もし通らなくても飯村なら口で言い負かして無理矢理有休を取りそうな気がするが。

 

「大丈夫よ、有休は使ったけど、今日はアクセルと一緒にいるんだもの。これもまた取材だと思えば、そんなにおかしくはないでしょう?」

 

 おかしくはない……のか?

 まぁ、飯村の言葉を聞けば半ば取材という扱いになる訳だし。

 俺は自分で言うのもなんだが、ボクシング世界ではかなり有名だ。

 全試合1RでKO勝利し、しかもとてもではないがボクシング選手につくとは思えない絶望の大魔王なんて異名までついている。

 他にもゴールデンタイムに流れたインタビューの件もある。

 そんな俺のプライベートを取材するというのは、ボクシング雑誌にとっては有益……そう飯村や藤井の上司が考えてもおかしくはなかった。

 

「まぁ、飯村の方で問題がなければいいんだけどな。……それで、まずはどれに乗る? やっぱり無難なところでジェットコースターとか?」

「どこが無難なのよ。……けど、そうね。アクセルがそれでいいのなら、私は構わないわよ。私もジェットコースターとかは嫌いじゃないし」

 

 そんな訳で、俺と飯村はジェットコースターに乗る。

 当然ながらそれなりに行列が出来ているものの、平日なのでそこまで待たなくてもいいのは助かる。

 そう言えばこういう遊園地で並ばなくても直接乗れる特別なパスポートがあるとか聞いた事があるが、この遊園地はそういうのはないらしい。

 入場する時に幾つかから選べるのだが、そういうのはなかった。

 もしくはそういうのがあっても、特別な……例えばこの遊園地のオーナーとか、そのオーナーから紹介されたとか、そういう人じゃないと貰えないのかもしれないな。

 そんな風に考えつつ、飯村と話をしながら待っているとやがて列が進み、ジェットコースターに乗り込む。

 こういうのって身長制限とかあるらしいが、飯村は女にしては背が高い方だし、10代半ばの外見年齢になっている俺もそこはクリアしているので問題なかった。

 

「少し……緊張するわね」

 

 隣の席に座った飯村がそう言う。

 ジェットコースターは嫌いじゃないって話じゃなかったか?

 そう思ったが、俺が何かを言うよりも前にジェットコースターが動き始める。

 勿論、最初はゆっくり、ゆっくり、ゆっくりとした動きが。

 ……それが余計に、乗っている者の恐怖を煽る事になる。

 そして上り坂を進み……それが頂点に達したところで、ジェットコースターは一気に速度を上げるのだった。

 

 

 

 

 

「……ちょっと、何か言ったら?」

 

 ジェットコースターを降りると、飯村がそう言ってくる。

 

「可愛い悲鳴だったな」

「もう!」

 

 俺の言葉にバンと叩いてくる。

 

「別にジェットコースターに乗って悲鳴を上げるのは、そんなにおかしな事じゃないと思うけどな」

 

 寧ろ悲鳴を我慢する方がどうかと思う。

 俺の場合は、ジェットコースター云々ではなく、人型機動兵器とかに乗ってもの凄い行動をしているので、ジェットコースター以上の速度やスリルを味わっているので、ただ普通に楽しめたが。

 ただし、人型機動兵器の場合は俺が自分でどういう風に操縦するのかを決められるのだが、ジェットコースターの場合は俺の意思でどうこう出来る訳ではない。

 その辺にちょっと違和感があったが……まぁ、そういうものだと納得すれば分からなくもない。

 

「それで、次は何に乗る? こういう場所の定番だと、コーヒーカップか?」

 

 回るコーヒーカップは、この遊園地にもある。

 ……個人的には、コーヒー派ではなく紅茶派なので、紅茶のカップの方が好ましいのだが。

 とはいえ、その辺について拘るのもどうかと思うので、飯村と共にコーヒーカップに向かう。

 幸いそこまで人気は高くないらしく、ジェットコースター以上に並ぶようなこともなく、乗る事が出来た。

 そうしてコーヒーカップに乗ったが、そこまで必死になってコーヒーカップを回したりはしない。

 それなりの回転をしながら、コーヒーカップが動くのを楽しむ。

 ……意外な事に、飯村はコーヒーカップをかなり面白そうに楽しんでいた。

 

「ちょっと意外だったな」

 

 コーヒーカップから下りてからそう言うと、飯村は不思議そうに首を傾げる。

 

「何がかしら?」

「いや、飯村がコーヒーカップでここまで喜ぶとは思わなかったから」

「……何よ。私がはしゃいだりしたら変?」

「そういう訳ではないけどな」

 

 変だと言いたいと思ったが、もしそう言うと飯村が怒りそうな気がする。

 なので、それを否定しておく。

 その後で他の乗り物にも乗っていき……やがて時間は昼になる。

 

「さて、そろそろ昼食だな。何を食べる? それなりに店は揃ってるけど」

 

 この遊園地にはそれなりに食事をする店がある。

 客の数を考えれば、食事を出来る店が多いのはそうおかしな話ではない。

 寧ろ客に対して店が少なければ、それが不満になって多くの者がもうこの遊園地には来ないだろう。

 そうである以上、遊園地としてこういう店を多く用意するのは当然の事だった。

 

「あら、あのお店……日本にも支店があったのね」

 

 飯村が見ているのは、ハンバーガー屋。

 こういう遊園地でハンバーガーとかのファーストフードを食べるのはそれらしい雰囲気ではある。

 あるいはホットドッグとか。

 何となく……本当に何となくのイメージだが、和食のレストランとかは遊園地に似合わないような気がする。

 パスタやピザの類はそれっぽい感じはするのだが。

 ともあれ、俺と飯村はハンバーガーを食べる事にする。

 

「……けど、いいの?」

「何がだ?」

「そんなに食べて」

 

 テーブルの上には、ハンバーガーやポテトが複数置かれてある。

 その大半は俺が注文したものだ。

 

「減量の心配か?」

「……あのね、アクセルはフェザー級のチャンピオンなのよ? しかも次の防衛戦が決まってるんでしょう? なら、今のうちに少しずつでも減量をした方がいいでしょう?」

「その辺は心配いらないって」

「また、そうやって……ボクシングのチャンピオンはそんなに甘くないのよ? アクセルに才能があるのは間違いないでしょうし、練習も頑張ってるのは知ってるわ。けど、食事で気を抜くというのは、ボクサーとしては不味いのよ」

「普段はそれなりに気を付けてるけど、今日は休日だろう? 何だったか……チートデイ? そんな感じで」

「……何かしら、それ」

 

 あれ? チートデイじゃなかったか?

 ダイエットをしてる時、週に1度だけ好きなだけ食べたりしてもいい日の事。

 あ、いや。単純にこの時代ではまだその辺についての研究……研究? とにかく研究が進んでおらず、それが知られていないとか?

 もっとも、俺の場合は混沌精霊としての能力で、食べた物はすぐに魔力として身体に吸収される。

 俺が意図的に体重オーバーをしたりしない限り、計量の時に駄目になる事はない。

 とはいえ、まさか飯村にその辺について話せる訳もない。

 

「簡単に言ってしまえば、1週間に1度は好きなだけ食べてもいいって日だよ」

「……本当に大丈夫なんでしょうね?」

 

 怪しげな視線を向けてくる飯村。

 実際、この時代の者にしてみれば、俺の言葉が真実かどうかは分からない。

 単純に減量が嫌だと、俺が適当な事を言ってるように思われても仕方なかった

 

「とにかく、減量については問題ないから心配するな。千堂との試合の時も、減量に失敗するという事はないから」

「……まぁ、アクセルがそう言うのなら信じるけど。でも、いい? もしこんな生活をして減量に失敗するような事があったら、許さないからね」

 

 ボクシングに関係している事だからだろう。

 飯村はしつこいくらいにそう言ってくる。

 俺にしてみれば、その件についてはそこまで気にするような事ではないんだが……それを言えないのはちょっと残念だな。

 

「分かってる、分かってる。俺の減量は完璧だから安心しろ」

 

 そこまで言うと、それでようやく飯村も納得してフライドポテトを食べる。

 俺もそれに続くようにフライドポテトを食べるが……うん、揚げ立てだからカリッとしてるし、中はホクホクだ。

 美味いか不味いかで言われれば、間違いなく美味いだろう。

 ただ……それでも、同じフライドポテトという事では、ナデシコ世界で食べた奴には及ばない。

 あのフライドポテトを売っていた店もチェーン店だった筈だから、そういう意味ではこの遊園地のチェーン店と同じなのかもしれないが。

 もっとも世界が違えば色々と違う事も多い。

 特にナデシコ世界なんかは普通に火星に移住をしていたくらいに進んでいたし。

 それと比べると、この世界の宇宙開発はまだまだなんだよな。

 

「うん、美味しいわね。……アクセルの好みには合わなかった?」

 

 フライドポテトを食べていた飯村は、俺の様子を見てそんな風に聞いてくる。

 それに対し、何でもないと首を横に振る。

 

「いや、普通に美味いと思うぞ。それこそフライドポテトだけで腹一杯になりたいと思う程……というのは、ちょっと大袈裟かもしれないが」

 

 折角ハンバーガーやホットドッグがあるのに、それを食べないのは勿体ない。

 飯村曰く、それなりに有名なチェーン店らしいし。

 そんな訳で早速ハンバーガーを食べるが……うん、まぁ、これも美味いか不味いか言えば美味い。美味いのだが、だからといって絶賛したい味かと言われれば首を横に振るだろう。

 

「どう?」

「悪くはないと思う」

 

 そうして昼食を食べ終わると、デザートとしてアイスを食べる。

 アイスも……遊園地だから仕方がないのかもしれないが、味の割に値段は高めだよな。

 こういうのはしょうがないし、それが嫌なら弁当を持ってきて食べるとかすればいいんだし。

 

「そういう意味では、どうせなら飯村の作った弁当とか食べてみたかったかもしれないな」

「……いきなり何を言うのよ?」

 

 あ、どうやら口に出してしまったらしい。

 

「いや、こういうのもいいけど、折角飯村と2人でデートをしてるんだから、そんな風に思ってもいいだろう?」

「デートじゃないわよ」

 

 即座にそう返す飯村だったが、その頬が薄らと赤く染まっている。

 飯村って、もしかしたらこういう……いわゆる、男女関係には疎いのかもしれないな。

 美人と称しても間違いないし、日本人らしくなくモデルをやっている外国人と同じくらいの巨乳でもある。

 そうなると当然男から言い寄られる事も多かった筈だが……本人の性格からして、そういう経験はあまりないのかもしれない。

 そんな風に思いつつ、俺は飯村と昼食を楽しみ……その後も遊園地での休息を楽しむのだった。

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