転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4012話

「ぐっ……があああああああっ!」

 

 身体中に走る痛み。

 いや、激痛。

 俺はそれに耐えつつ、それまで以上に身体に……より正確には、俺に掛けられた呪いを解呪する為に魔力を振り絞る。

 ブチリ、ブチリと。

 何かが切れる音が身体の中から聞こえる……ような気がする。

 それが実際に身体の中で何かが切れているのか、激痛によって感じる幻覚や幻痛なのか。

 それは分からない。分からないが、それでも俺の中にそのような何か切れている感触があるのは分かる。

 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。

 しかし、呪いの解呪に必要なのは分かっている為、その激痛に耐える。

 あるいはこの痛みこそが呪いの解呪に向かっている証拠なのかもしれない。

 そのように思う事で、俺は痛みに耐える。

 それでも最初……このオルフェンズ世界に来て、シーラから呪いについて聞き、解呪を始めた頃に比べれば、痛みに慣れてきたのも事実。

 実際、解呪を進める……身体に魔力を満たしてそれによって呪いを攻撃するというこの作業は、始めた頃に比べるとかなり長くなっている。

 だが……それでも今も俺は呪われたままだ。

 

「ぐうううううううっ!」

 

 呪いというのが非常に厄介なのは、実感として理解出来る。

 ……何しろ、この呪いはペルソナ世界に存在する神の1人……あるいは1柱とするのかもしれないが、ともかくそんな神が自分の死と引き換えに俺に掛けたものだ。

 そのような呪いである以上、そう簡単に解呪出来る訳もない。

 呪いの解呪という事であれば、木乃香に頼めば出来たかもしれないが……そもそも木乃香を呼べないというのがな。

 唯一この世界に来ることが出来るのは、俺と召喚魔法の契約を結んでいる狛治だけだ。

 とはいえ、それだけでも随分と助かっているのも事実。

 少なくても、俺が無事だというのは狛治経由でレモン達に伝わっているし、俺も狛治を何度か召喚して話を聞いた限り、まだゲートでこのオルフェンズ世界とホワイトスターが繋がっていない事もあり、時間の流れはこっちの方が圧倒的に早いらしい。

 それが具体的にどのくらいになるのかは、正直なところ俺にも分からないが。

 何度か同じタイミングで狛治を呼んだが、その時に向こうとこっちの時間の流れはこっちが早いのは間違いないが、かなり不規則だったし。

 具体的には、向こうの1日がこっちだと10日だったり、1週間だったり、3日だったりといった具合に。

 そこまでのズレがあれば、さすがにおかしいと思う。

 以前からゲートを設置するまでホワイトスターと俺が転移した世界の間に時間のズレがあるというのは実感していたが、そのズレは一定のものだと思っていた。

 狛治のお陰で、その辺りについての情報を知る事が出来た訳だ。

 ……あ、そんな事を考えていると、身体に走る激痛が幾らか収まってきた。

 その事に安堵しつつ、俺は目を開ける。

 すると俺の側にたクーデリアと視線が合う。

 

「……大丈夫なのですか?」

「何とか、だけどな」

 

 そう言い、俺はそのままベッドの上に倒れ込んだ。

 目に入って来るのは、俺の部屋の天井。

 そんな天井を見つつ、痛みと魔力の過剰消費によって荒くなった呼吸を整える。

 俺がいるのは、シャドウミラーにある寝室。

 とはいえ、クーデリアはまだ別の部屋だし、そういう行為をしていた訳ではない。

 何しろ解呪の作業に入ると、俺もそれなり以上に消耗する。

 それこそ、この解呪の作業とギャラルホルンのMS隊50機と戦うのの、どちらが楽かと言われれば、俺は真っ先に後者を選ぶだろう。

 この解呪の作業中に身体に走る激痛は、それだけ凶悪なものだった。

 

「ふぅ……わざわざ見なくてもよかったんじゃないか? 見ていて決して気持ちのいいものでもないし」

 

 そう、寝室にクーデリアがいるのは、クーデリアが俺のやっている解呪を見たいと希望したからだ。

 何も好き好んでそんなのを見る必要はないだろうとも言ったのだが、恋人として見る必要があると言われれば、俺もそれを否定する訳にはいかない。

 そんな訳で、このところ毎日行われている解呪の儀式をクーデリアに見せる事にしたのだ。

 勿論、それはクーデリアだけではなく……

 

「どうぞ、冷たいお茶です」

 

 クーデリアのお付きのフミタンが、俺にお茶を出してくる。

 そっと手を伸ばすが、大量の魔力を一気に、しかも濃密に消費した影響が手が少し震えている。

 筋肉痛的な感じなのだろう。

 もっとも、こうなるのは別にこれが初めてという訳でもないので、少し震える手で冷たいお茶……レモンティーの入ったコップを掴むと、そのまま飲み干す。

 身体に染みこんでいく、レモンティー。

 頭の片隅で、俺の身体は魔力で構成されているのにどこに染みこんでいくんだ?

 ふとそんな風に思ったが、ともあれ冷たいレモンティーのお陰で大分落ち着いた。

 紅茶派の中には、レモンティーに限らずこういう冷たい紅茶は絶対に許容出来ないという奴もいたりするが……俺の場合は、そもそも缶紅茶とか、ペットボトルの紅茶……つまり、本物の紅茶ではなく、いわゆる紅茶風飲料の類であっても全く問題なく飲める。

 そういう意味では、俺は紅茶派であっても生粋の紅茶派ではないのだろう。

 

「美味かった」

「ありがとうございます」

 

 俺の言葉に、フミタンが微かに口の端を曲げて笑う。

 フミタンと親しい者でなければ分からないような、そんな微かな笑み。

 それが分かるくらいには、俺もフミタンの事を理解出来るようになってきた。

 何しろ、地球での一件が終わって火星に戻ってきてから、既に2ヶ月近く経っているし。

 ノブリスの落とし前の一件から、そろそろ物資の収集も終わる頃だ。

 それが終われば再度地球に行く事になる訳で、そうなるとまた忙しくなるのは間違いない。

 他にもクーデリアが新しくハーフメタルの採掘場を作るように父親に約束させ、その工事も既に始まっている。

 また、クーデリアは正式に父親から離れて、現在クリュセで会社を作っている。

 色々と手広くやっており、忙しい毎日なのだが……それでもこうしてそれなりに頻繁に会ったりしてる訳だが。

 

「それで……どうなのです? 呪いの方は」

 

 不安そうにクーデリアが尋ねてくる。

 クーデリアにしてみれば、今の光景を見たのだからそれに驚くなという方が無理なのだろう。

 今まで何度も見てきたのならともかく、クーデリアが俺が解呪をしている光景を見るのはこれが初めてだったし。

 だからこそ、こうして心配そうな様子を見せていたのだ。

 

「そうだな。正直なところまだ分からない。……いつになったら解呪が終わるのか」

 

 個人的には可能な限り早く解呪を進めたいとは思う。

 思うのだが、それでもそう簡単に出来るようなことではないのも事実。

 それこそ、場合によってはまだ年単位の時間が必要になってもおかしくはないのだから。

 勿論俺としては出来るだけ早く、可能な限り早く解呪をしたいとは思っているが。

 狛治は基本的に魔法世界で活動している。

 なので、それっぽいマジックアイテム……呪いを解呪出来そうなマジックアイテムを探して貰っているし、それはフェイトも同様だ。

 しかし、今のところ何かそれっぽいマジックアイテムは未だに見つかってはいない。

 ペルソナ世界は……ああ、ちなみにマヨナカテレビの中の世界はやっぱりタルタロスの時と同じく消えてしまったらしい。

 マヨナカテレビの中になら、もしかしたら俺の呪いを解呪出来る何らかのマジックアイテムがあるかと思っていたのだが。

 残念ながら、そういう目論見は潰えてしまったらしい。

 ……まぁ、マヨナカテレビの原因だった伊耶那美大神は俺に殺されてしまったしな。

 そうである以上、マヨナカテレビが消えてもおかしくはない。

 

「そうですか。……でも、無理はしないで下さいね」

「そう言われてもな。この件については、少しでも早くホワイトスターと……本拠地と繋げる必要があるしな。それに火星がホワイトスターに繋がれば、ハーフメタル以外にも地球と貿易出来るようになるしな」

 

 寧ろ、異世界に続く唯一の場所が火星にあるとなると、地球から多くの者達が火星にやって来るだろう。

 現状において、火星というのはせいぜいがハーフメタルの産出地という認識だ。

 多くの者達にしてみれば、火星というのは植民地ではあるが、絞りきってもう何も残っていない場所という認識だろう。

 だが、そんな場所に異世界と繋ぐゲートが存在するとなれば、どうなるか。

 多くの者が集まってくるのは間違いないだろう。

 ……もっとも、そうして人を集めるとなると、それはそれで問題も起きるのだが。

 例えば、アーブラウ以外の国にしてみれば、自分達の植民地であるという事から多くの者達がやって来て、治安が悪化する可能性もある。

 アーブラウも絶対に安心という訳ではないだろう。

 蒔苗がクーデリアと約束した内容がご破算になる可能性も十分にあった。

 ただ、これはあくまでも悪い方に考えた場合の話だ。

 上手くいけば、火星が異世界と繋がっているからこそ、その地を守る必要があるとして、火星が復興――という表現は正しくないかもしれないが――する可能性もあった。

 どういう流れになるのかは、まだ分からない。

 分からないが、それでも火星のこれからを考えればやらないという選択肢はないだろう。

 

「そうなったらいいのですけどね。……けど、それでアクセルが無理をするようなことがあったら、それは私にとって決して幸運な事ではないですよ」

「その辺は気にしておくよ」

 

 そうして俺は体力を回復させると共に、クーデリアと話をするのだった。

 

 

 

 

 

「は? テイワズにか?」

『ああ、そうだよ。以前歳星に来た時は、結局完全に仕上げる事は出来なかったから。それに兄貴も三日月も、結構MSを戦闘で使ってるだろう? そのメンテも兼ねてって思ったんだが』

 

 映像モニタの向こう側で、名瀬がそういって視線を向けてくる。

 名瀬が提案してきたのは、グシオンとバルバトスの改修計画。

 

「それは……助かるかどうかと言われれば助かるけど、一体何で急に?」

『親父からの提案だよ。兄貴達には色々と迷惑を掛けたし』

 

 この場合の迷惑というのが、ノブリスに騙された件なのか、あるいはジャスレイの件なのかはちょっと分からないが。

 

「マクマードからの提案となると、費用の方はどうなる?」

『かなりサービスをするけど、さすがに全額って訳にはいかないと思う』

 

 地球の一件で結構稼いだのは間違いない。

 それにアーブラウ軍の軍事顧問の件もある。

 そういう意味ではそれなりに金に余裕はあるのだが、MSを……それもガンダム・フレームの2機を改修するとなると、結構な金額が必要になるだろう。

 勿論、グシオンとバルバトスはそれぞれシャドウミラーと鉄華団のMSなので、別に俺が2機分の改修費用を出す必要がある訳でもない。

 だが、1機分だけでも結構な費用になるのは間違いないのだ。

 これが例えば大量に存在する……ロディ・フレームとかなら、改修するのにもそこまで金額は掛からないだろう。

 ただし、それはあくまでもガンダム・フレームと比べての話で、ロディ・フレームのMSの改修であっても、結構な金額となるのは間違いないのだが。

 個人的には、そこまでしてグシオンを改修したいかと言われると……微妙なところとしか言えないんだよな。

 それこそ、グシオンでどうしようもない敵が出て来たら……あくまでもそういう敵がいればだが、その時はミロンガ改なり、最悪サラマンダーなりに乗ればいいだろうし。

 そう思うのと同時に、グシオンが強化されるのなら、それはそれで構わないと思うのも事実。

 この世界の原作については終わった……と思うのだが、それも絶対ではない。

 地球に行って蒔苗をアーブラウの代表にして、交渉を纏めた。

 これで大きなストーリーは完結しているので、終わったと判断してもいいだろう。

 だが、マクギリス達の革命についてはまだ何も始まっていないのだ。

 ラスタル率いるアリアンロッド艦隊との戦いとか、ギャラルホルン内部での権力争いとか。

 そんな諸々がまだ終わっていない以上、この世界の原作が終わったとは思えない。

 多分だが、ギャラルホルン内部の権力闘争はこの世界の続編でやるんじゃないだろうが。

 具体的には、ペルソナ世界でタルタロスの一件が終わった後でマヨナカテレビの一件があったのと同じように。

 そういう風な感じなら、まだ色々と納得出来る。

 ……あくまでも納得出来るのであって、本当にそういう風になるのかどうかは分からないが。

 それにそうなれば当然のように俺達は巻き込まれる訳で……痛し痒しといったところか。

 その戦いに参加すれば、傭兵……PMCとしての報酬も貰えるし、敵のMSを倒せばそれも貰える。

 また、アリアンロッド艦隊はギャラルホルンの中でも最精鋭であるだけに、MSの性能もいいんだよな。

 場合によっては、新型機とかを出してくるかもしれないし。

 そういう時に備えるというのなら……

 

「分かった。バルバトスについてはオルガに聞いてみる必要があるが、グシオンについては改修して貰う」

 

 そう、告げるのだった。

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