転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4015話

「予想外にあっさりと到着したな」

 

 ガランのブリッジで、映像モニタに表示される地球を見てそう感想を口にする。

 乗っているのがグランではなくガランなのは、グランはやはり艦長がシーラだからというのが大きい。

 そしてシーラは現在火星に残っている。

 前回来た時は間違いなく大きな騒動になるというのもあって、かなりの戦力を連れてきたものの、今回はそうではない。

 なので、シーラは火星でシャドウミラーの仕事を行っていた。

 他にも何人もが向こうに残っており……前回一緒に来た主要メンバーのうち、一緒に来たのはマーベルくらいだ。

 事務員のサヴァランは勿論、クランクやアインといった面々も今は火星に残っているのだから。

 また、鉄華団側でも主要メンバーは前回よりも少ない。

 まず、鉄華団を率いるオルガはいない。

 ……まぁ、俺が地球に行くのはMSとかを空間倉庫に収納してるからだしな。

 そういう意味では、オルガが来る必要はない。

 敢えて来る必要となると……アーブラウ軍の軍事顧問としての仕事に際して、蒔苗に挨拶をするとか、アーブラウ軍となる予定のお偉いさんとしっかりと顔を合わせて意思疎通をするか。

 とはいえ、顔合わせなら通信とかでも出来るしな。

 

「アリアドネを使うとこんなに早く来られるのね」

 

 俺の隣でマーベルが映像モニタに表示された地球を見ながら言う。

 

「アリアドネの航路については、地球から火星に戻る時も1回使っただろう? ……同じ事で驚いていた俺が言うのもなんだけど」

 

 実際、地球から火星に戻る時にアリアドネは使ったが、火星から地球に行く時にアリアドネを使うのはこれが初めてなのも事実。

 行きと帰りではやはり色々と違うのだろう。

 高密度デブリ帯は元ブルワーズだった者達にとって庭に等しい。

 そういう意味ではアリアドネの航路を使わずとも移動出来るのだが、それでもやはり楽なのは余計なデブリとかがないアリアドネの航路なのだ。

 ……もっとも、その高密度デブリ帯もいつまでも同じという訳にはいかない。

 シャドウミラーでは、そろそろまた高密度デブリ帯でエイハブ・リアクターの収集をしないかという話が出ているし、鉄華団の方からも一緒に連れていって欲しいという要望があった。

 シャドウミラーの利益だけを考えるのなら、わざわざ鉄華団を連れていく必要はないのだが、鉄華団側にもしっかりと稼いで貰って相応に大きくなって貰う必要がある。

 それにグシオンとバルバトスの改修の時にオルガと話したが、鉄華団の金は俺が予想しているよりも大分少ないらしい。

 ハーフメタルの採掘は、まだもう暫く時間が掛かるらしいし。

 今のところは鉄華団も何とかなっているが、鉄華団には入団希望者がかなり増えており、そのような者達に対する給料とかも考えないといけないしな。

 だからこそ、出来るだけ早く金が手に入る仕事は必要な訳だ。

 そういう意味では、アーブラウ軍の軍事顧問についても毎月相応の報酬が発生するので、稼ぐという点では悪くない。

 悪くないが、それでも何かあった時の為に収入は複数あった方がいいだろう。

 

「それにしても、軍事顧問とか。正直なところ、こういう仕事は初めてだな」

「あら、そうなの? アクセルならそういう仕事を何度も経験していてもおかしくはないと思ったんだけど」

「模擬戦の相手とか、そういうのなら別だけどな。この場合の軍事顧問というのは、包括的なものだろう?」

 

 それこそ補給のイロハとか、MSの操縦とか、整備の仕方とか……場合によっては、書類の書き方とかから教えないといけないのか?

 ……いや、さすがに書類については向こうでどうにかする筈だ。

 ともあれ、軍事顧問ともなれば戦っていればいいだけではない。

 それだけに、かなり面倒な事になるだろう。

 もっとも、この軍事顧問の仕事に俺はそこまで関わらない予定だが。

 何しろ、こう見えてシャドウミラーを率いる立場にあるのだから。

 そうである以上、俺としては本拠地である火星にいる必要がある。

 

「そう言えば、ドルトコロニーには寄らなかったけど……どうなってるのかしら?」

 

 マーベルの言葉に、ニュースか何かで見た記憶を思い出す。

 

「一応ドルト側が妥協したとか何とか、ニュースで見たな。具体的にどのくらい妥協して、どれだけ労働者側の待遇が改善されたのかは分からないが」

 

 それでも一応、労働者側……ブルーカラー側の勝利だと思っていいだろう。

 火星に戻ったら、サヴァランにも教えてやろう。

 恐らく喜ぶだろうし。

 確か、デモを主導した人物はサヴァランとも親しい相手だって話だったし。

 もっとも……ドルトコロニーの一件は、半ば偶然上手くいった結果でしかない。

 俺達が関与したからこその結果でもある。

 実際、ドルトコロニー程ではないにしろ、労働条件や労働環境の厳しい場所で同じように抗議デモを起こした者達もいるらしい。

 だが、それらは全てギャラルホルン……というか、アリアンロッド艦隊に鎮圧されたらしい。

 アリアンロッド艦隊にしてみれば、俺達との一件で大きく評判を落としている。

 ドルトコロニーに一件については、まだサラマンダーという未知の存在が相手だったから、明確に俺達の仕業とは考えていないだろう。

 いやまぁ、実際にはそれこそ俺が地球の島で使ったミロンガ改とのエナジーウィング繋がりで恐らくは半ば俺の仕業だというのは知られてるかもしれないが……その件は今のところ公になっていない。

 だが、その次……俺達が地球での依頼を終えて火星に戻ろうとした時の件は話が別だ。

 まずはシャトルで共同宇宙港に向かった時。

 ぶっちゃけ、恐らくこの時がアリアンロッド艦隊にとって最大のチャンスだったのだろうとは思う。

 だが、それを察知したガエリオがやって来てしまう。

 これがせめて地球外縁軌道統制統合艦隊の中でも何でもないMSパイロットであれば、アリアンロッド艦隊も無理を通せたのかもしれないが、ガエリオが来てしまった。

 セブンスターズの1家、ボードウィン家の次期当主。

 そんな相手を前にすれば、例えアリアンロッド艦隊に所属する者であっても、無理強いは出来ない。

 ましてや、その時に俺達がいたのは地球外縁軌道統制統合艦隊の勢力圏だったのだから。

 そのような悪条件が重なればどうする事も出来ず、大人しく引き下がるしかない。

 引き下がるしかなかったのだが、その後……共同宇宙港で俺達が自分達の船に乗って火星に向かって出発した後で、再びアリアンロッド艦隊が襲ってきた。

 それも今度はMSを大量に引き連れて。

 その戦いでも、アリアンロッド艦隊は大きな被害を出して負けたのだ。

 勿論、アリアンロッド艦隊としては、自分達が負けた件は可能な限り情報を隠しているだろう。

 しかし、それでもあれだけの大敗を完全に隠せる筈もない。

 結果として、アリアンロッド艦隊の評判がかなり落ちているらしい。

 ……そうなると、当然アリアンロッド艦隊としても黙っていられない訳で。

 何とか自分達の下がった評判を上げようと、最近では暴徒の鎮圧とかに頻繁に出ているらしい。

 ドルトコロニーの成功を見た、他のコロニーも自分達の待遇を改善しようと頑張ってはいるのだが……タイミングが悪すぎたな。

 そんな風に思いながら、俺はマーベルと会話を続けるのだった。

 

 

 

 

 

「おお、アクセル。よく来てくれた」

 

 エドモントンにあるホテル。

 それも普通の旅行客が使うようなホテルではなく、地位のある人物が使うようなホテルの部屋で俺は蒔苗と会っていた。

 こちらからは、俺とマーベルと鉄華団からはチャド・チャダーンという男が同席している。

 このチャドというのは、鉄華団側のヒューマンデブリでは昭弘に次ぐNo.2といった地位の男らしい。

 その為、軍事顧問として鉄華団の地球支部を任されたらしい。

 シャドウミラーの地球支部の方は、元ブルワーズの大人だけどな。

 ちなみにアーブラウ側では、蒔苗の他にもラスカーがいて、それ以外にも何人か見覚えのある者、ない者がいる。

 見覚えのない者は、一連の事態が終わった後で蒔苗の派閥に入った者なのだろう。

 もっとも、それでいてこの場にいるという事は、相応の能力を持っているのだろうが。

 

「ああ、通信でも話していたように、ようやく準備が出来たんでな。結構な数のMSは持ってきたから……明日でいいか?」

 

 既に時刻は午後5時近く。

 これからMSとかを見せるのは……まぁ、倉庫とかでなら明かりがあるので問題はないだろうが、それでも時間的に人を集めるのは問題だろう。

 それにMSを出すのは当然俺が空間倉庫から出す訳で。

 蒔苗を始めとして、俺が魔法を使えるというのは知ってる者は知ってるが、知らない者は知らないのだ。

 そうである以上、わざわざ知らない相手に自分からそういう能力を持っているのですと教えるようなつもりはない。

 

「うむ、それで構わんよ」

「なら、後でどこでMSを見るのかを教えておいてくれ。そこにMSとかを運び込むから」

「失礼、アクセルさん。少しよろしいでしょうか?」

 

 俺と蒔苗の会話にそう割り込んで来たのは、見覚えのない男の1人。

 蒔苗の方を見ると、面白そうに笑みを浮かべている。

 普通ならこういう時に割り込んだりすれば注意してもおかしくはないと思うんだが。

 まぁ、この場は別に公の場という訳でもないんだし、そういう意味ではもっと気楽に考えてもいいのかもしれないな。

 

「どうした?」

「その、MSを持ってきたと仰いましたが、こちらが確認した情報によると、輸送艦が一緒にいないという事でしたが……MSはどの程度用意して貰えたのでしょうか?」

「それは見てのお楽しみだな」

 

 なるほど、こいつは空間倉庫を知らない側か。

 そういう意味では、まだ完全に蒔苗に信頼されていないという事か。

 この男がいきなりMS60機に、MWも大量に見たらどうなるかちょっと楽しみだな。

 もっとも、用意したMSはスピナ・ロディとユーゴーだ。

 どちらもMSとしてはありふれている。

 ……もっとも、ありふれているからこそ予備部品とかも入手しやすいし。

 実は少し……本当に少しだけ百錬をアーブラウ軍で使っても面白いかもしれないとも思ったが、それを名瀬に提案したら断られたんだよな。

 名瀬に聞いたところ、百錬と百里はテイワズがMSを作る上で試しに作ったMSで……少し大袈裟だが、コスト度外視とまではいかないものの、かなり高コストになるのを承知の上で作ったMSらしい。

 分かりやすく言えば、ガンダムではないものの、ジーライン辺りを認識すれば分かりやすいか? あるいは、ジム・スナイパーⅡ辺りか。

 なので、今は百錬や百里ではなく、もっと安価なMSの開発をしているらしい。

 名瀬的にも、木星から遠く離れた地球にあるアーブラウの国軍で百錬を使うのはちょっと問題だと思ったのだろう。

 そして現在開発している廉価版の方は、具体的にいつ出来るのかは分からない。

 いやまぁ、弟分だからといって、名瀬もそれを簡単に教える訳にはいかないだろうし。

 なので、ともあれテイワズ系のMSはアーブラウ軍に採用されない事になった。

 もっとも、それはあくまでも今の話だ。

 この先、アーブラウ軍で新しいMSを欲して、その時にテイワズで廉価版のMSが出来ていれば、それを採用するという可能性もあるだろう。

 その辺については後で相談なり商談なりをすればいいだけで、今の時点で考える必要はない。

 

「……分かりました」

 

 質問してきた男は、結局俺の言葉に反論をしたりはせず、大人しく引き下がる。

 微妙にプライドを傷つけられた様子を見せているが、その辺については今回は仕方がない。

 ここで魔法だとか言ったところで、信じるとは思えないからだ。

 いやまぁ、炎獣とかを見せれば話は別かもしれないが……そこまでしてやる必要もないだろう。

 もし本当に必要なら、蒔苗がその辺について知らせるだろうし。

 

「それでMSは用意したが、肝心のパイロットやメカニックの方はどうなんだ?」

「一応用意はしてある。じゃが……何しろ、MSに乗った経験のない者達が殆どじゃ。教える時に手間を掛けさせるかもしれん」

 

 そう言う蒔苗だったが、それは仕方がないとも思う。

 そもそもの話、ここは地球でギャラルホルンが武力を担っている。

 傭兵とかそういうのもいる……のかどうかはちょっと分からないが、それでも火星と比べるとMSやMWというのは一般的ではない。

 であれば、MSとかに乗った経験がないのはそうおかしな事ではなかった。

 

「ただ、MSのシミュレータとかは使わせた方がいいかもしれないな。具体的にいつから正式な訓練を始めるのかは分からないが、前もって出来る事はやっておいた方がいい」

 

 アーブラウ軍の軍人になる事を希望した者がどれだけの能力を持っているのか、そして士気の高さなのかは分からない。

 だが、アーブラウ軍が精鋭になるのか、それとも名前だけのハリボテになるのかは、それこそ所属する者達の技量によって変わってくる。

 そう説明すると、蒔苗は髭を触りながら頷くのだった。

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