転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4016話

「うーん……ちょっと、アクセル。起きてる?」

 

 俺の身体に抱きついたまま眠っていたマーベルがそう言ってくるので、俺はそっと顔を近づけてマーベルの唇を塞ぐ。

 

「もう……」

 

 怒った様子を見せつつも、マーベルは笑みを浮かべている。

 そう言ったマーベルは、俺の身体を撫でてくる。

 マーベルの柔かな素肌が触れる感触が気持ちいい。

 そうしてイチャつきながら20分程の朝の気怠い時間を楽しむと、朝の準備を始める。

 特にシャワーは昨夜の行為の残滓をきちんと綺麗にする為に、念入りに。

 そうして準備を調えると、朝食を食べに向かう。

 なお、俺達が泊まったこのホテルは、昨日蒔苗と会談をした高級ホテルだ。

 蒔苗が用意してくれたホテルなので、特に問題はなく泊まる事が出来た。

 ……一応、スライムを使って隠しカメラとか盗聴器とか、そういうのがないのかを確認はしたが、幸いな事にそういうのはなかった

 もしそういうのがあったら、蒔苗達との付き合い方を考える必要もあったのだが、そういう風にならなくてよかった。

 もっとも、隠しカメラや盗聴器の類があっても、それが蒔苗達の仕掛けた物かどうかというのは、正直なところ分からなかったが。

 もしかしたら他の派閥の者達が仕掛けたのかもしれないし、あるいはホテルの従業員が仕掛けた可能性もある。

 ともあれ、そういう事がなかったのは誰にとっても幸運だったのだろう。

 そんな訳で、朝食を食べに向かう。

 

「あ、おはようございます。アクセルさん、マーベルさん」

 

 俺とマーベルを見つけたチャドが、すぐにそうやって挨拶をしてくる。

 してくるのだが……何か妙に照れ臭そうにしてるのは、一体何でだ?

 俺とマーベルが一緒に現れたから、昨夜の行為とかを想像したりとか?

 ……無理もないか。

 チャドも10代後半だ。

 ヒューマンデブリとして育ってきただけに、女と接する機会なんか殆どなかっただろうし。

 とはいえ、シノのように娼館とかキャバクラとかそういう場所に行く機会はそれなりにあったと思うんだが……あるいはそういう場所に積極的に行くのは苦手な、いわゆるムッツリなのかもしれないな。

 とはいえ、別にそれで大騒ぎしたりする訳でもないだろうから、実際には特に問題もないのだろうが。

 

「おう、今日は忙しくなるだろうから、よろしく頼むな。倉庫の警備の方は問題ないか?」

「はい。シャドウミラーの方からも人を出して貰っていますので」

 

 昨日、蒔苗からMS用の倉庫について話を聞いた俺は、蒔苗との会談が終わってからすぐに影のゲートを使って移動し、そこにMSやMW、予備部品、武器、各種弾薬……そんな諸々を出して置いてきた。

 だが、当然ながらそのような場所にMSとかを置いておけば、妙な考えを抱く者もいる。

 そんな訳で、シャドウミラーと鉄華団から人を募って護衛させた。

 なお、護衛をした者には奮発してボーナスを出すと言った為か、希望者が殺到してしまうのはちょっと予想外だった。

 ボーナスと高級ホテルでの一夜……まぁ、金はあった方がいいと思う者は多いのだろう。

 

「昨夜、騒動はなかったんだな?」

 

 一応、騒動があればすぐに連絡がくる手筈になっており、その連絡がなかった以上は問題はなかったのだろうが、それでも念の為にそう聞いておく。

 まぁ、騒動があったと連絡が来たら来たで、俺とマーベルの時間が邪魔されていた訳で……うん。そうなったら、ちょっと乱暴な手段に出た自信はある。

 

「なかったようですね、こちらにも連絡は来てないですし。……それにしても、アクセルさんの空間倉庫って本当に凄いですよね」

「それは否定しない」

 

 今回のようにMSを60機とかは勿論、ホワイトスターすら普通に収納していたし。

 ホワイトスターよりも大きなコロニーの類であっても、普通に収納出来るだろう。

 普通に使っている俺が言うのもなんだけど、自分でも限界がどこまでなのか分からないしな。

 転生特典である事を考えれば、本当に無限という可能性も否定は出来ない。

 ともあれ、今のところはそういうのを気にしないで行動するが。

 

「こういう仕事をしていると、本当に羨ましいと思います」

「その辺は、魔法があるかだな」

 

 そうして短く言葉を交わすとチャドと分かれて朝食にする。

 ちなみにどうせならバイキング形式の方がいいと思ったんだが、生憎とそういうのはないらしい。

 その辺は多分ホテルの格とかなんだろうな。

 何しろここは政治家とかそういう者達が泊まるような最上級のグレードのホテルだ。

 これがもっと格の低いホテルであれば、朝食バイキングとかそういうのもあるんだろうけど。

 そんな訳で、朝食な訳だが……俺はそれなりにがっつりと食べたいので、サンドイッチを中心にしたモーニングセットを頼む。

 ふと見れば、マーベルも俺程ではないしろ、それなりにがっつり系のメニューだった。

 ただ、サンドイッチではなくガレットだったが。

 ガレットというのは、簡単に言えば蕎麦粉のクレープだ。

 ただし具は生クリームやフルーツではなく、ハムや卵といった食事系のもの。

 

「何?」

「いや、ガレットは久しぶりに見るから。以前どこかで食べた記憶はあるけど」

 

 もっとも、ガレットはフランスとかそっち系の料理だった筈だ。

 そういう意味では、本場のメニューという訳でもない。

 ……エドモントンというか、カナダの名物料理となると、以前クーデリアとデートをした時に食べた、フライドポテトとかを使ったジャンクフードなのだが。

 とはいえ、ジャンクフードというのは抗いがたい魅力があったりするんだよな。

 時間があったら、マーベルと一緒に食べてみてもいいかもしれないな。

 

「……美味しいわね」

 

 ガレットを口に運ぶマーベルがそう呟く。

 実際、俺の食べているサンドイッチも美味いし、コンポタージュやサラダ、それにスクランブルエッグも美味い。

 特にスクランブルエッグは、ふわふわでいながらしっかりと濃厚な卵の味がして……うん。このホテルは当たりだったな。

 他にも色々と追加で注文してみてもいいかもしれない。

 

「本当に美味そうだな。俺も追加で注文するか」

 

 幸い、この宿泊費に関しては一切合切アーブラウ持ちだ。

 料理の注文を遠慮する必要はない。

 まぁ、このホテルの料理を好きに注文出来るくらいには、資金的に余裕があったりするのだが。

 ただ、シャドウミラーの運営を考えると資金的に節約出来るところは節約した方がいいのも事実なんだよな。

 そんな訳で、俺はアーブラウの金でレストランの美味い食事を楽しむのだった。

 

 

 

 

 

 レストランでの朝食が終わり、一段落してから俺達はアーブラウの議事堂にある1室にいた。

 MSとかを見せるとかそういうのも必要だったが、まずはその前に正式に契約を結ぶ必要がある。

 本来ならこういうのはもっときちんと段階を踏んでやる必要があるのだろうが……何しろ今の地球というか、アーブラウの状況はかなり特殊だ。

 下手に時間を掛けて契約についての話を纏めていった場合、どこから横槍が入るのか分からない。

 具体的には、ラスタル・エリオンとか。他にもラスタル・エリオンとか、あるいはラスタル・エリオンとか。

 ……他にもギャラルホルンの現在の体制を変えたくないと思っている者がいれば、十分にちょっかいを出してくる可能性は高い。

 だからこそ、ラスタル・エリオン以外のセブンスターズや、そこまでいかなくてもセブンスターズに準じる家の者が出てくる前に動く必要があった。

 もっとも、火星に戻ってから数ヶ月経っているのを思えば、ラスタル・エリオンを始めとした面々に相応の時間を与えたのは間違いなかったが。

 

「では、これでよろしいですね?」

 

 ラスカーがそう言い、契約書を渡してくる。

 そこに書かれている内容をしっかりと読む。

 この状況で蒔苗達が俺を騙すといったようなことをするとは思えない。

 思えないが、それでもこういう時には何があるのか分からないのでしっかりと契約書は確認しておくべきだった。

 ……それは分かっているのだが、いつも疑問に思うのは、何故こうして契約書というのは分かりにくい書き方をするのかという事だろう。

 一応俺もこの手の書類に慣れてはいるものの、政治班の面々に比べるとどうしても劣る。

 特にこの手の契約書とかについては、レオンやエリナがかなり強い。

 もしこの場にどちらかがいれば、完全に任せただろうな。

 ……オルフェンズ世界のシャドウミラーの中では……あれ? もしかして俺が一番得意なのか?

 いや、サヴァランがいるか。

 ぶっちゃけ、契約書とかについての場合は俺やサヴァランよりも鉄華団のメリビットの方が得意だと思う。

 そんな風に思いつつ、契約書を読んでいく。

 それは簡単に言えば、シャドウミラーと鉄華団がアーブラウ軍の建設に協力し、軍隊が出来た後も一定のレベルになるまでは鍛えるというものだった。

 報酬の額は前もって決められてある通りだし、各種施設……特にこっち赴任することになるシャドウミラーと鉄華団の面々の住居についてもアーブラウ側で用意するとしっかり明記されている。

 他にも細々とした内容があるが……まぁ、簡単に言えば裏切るなという事だろう。

 これだけ大規模な仕事だけに、契約書の内容がここまで細かくなるのは、そうおかしな話ではない。

 ざっと見て、特に問題はないと判断する。

 ……相手が信用出来ない場合、小さな字でこっちが不利になる事を書いたりしてるのだが、俺の力を知っている蒔苗だけに、そんな事はしないだろう。

 もし俺に恨みを買えば、それこそどこにいても……鍵の掛かった密室にいても、影のゲートを使える俺の侵入を防ぐ事は出来ないのだから。

 

「俺は問題ない。チャドはどうだ?」

「えっと……その……問題はないかと」

 

 困った様子でそう言ってくるチャド。

 そうか、チャドはヒューマンデブリ出身か。

 とはいえ、他の者達のように字が読めないという訳ではないのだが。

 もしそうなら、そもそも鉄華団の地球支部を任されたりはしないだろうし。

 それでも文字を読めるというのと、契約書の内容をしっかり確認出来るのは別の話だ。

 

「チャド、ここですぐに返事をする必要はないんじゃないか? 火星にいるオルガ……はちょっと難しいかもしれないな。デクスターやメリビット辺りにしっかりと確認してからの方がいいんじゃないか?」

 

 念の為にそう言っておく。

 何しろ、これは契約書……それもかなり重要な契約書だ。

 ここで適当に返事をしてサインをした結果、後でそんな話は聞いていないとか、そういう風になったらかなり面倒になる。

 俺の場合はある程度こういうのに慣れているからいいけど、チャドは慣れていない。

 また、俺はシャドウミラーを率いる立場だが、チャドはあくまでも地球支部を率いる立場だ。

 そうである以上、ここで全てを決めるといったことはやらない方がいい。

 分からない事があったら、しっかりと理解するまで話し合った方がいい。

 報告、連絡、相談……俗に言うホウレンソウだな。

 

「それでも構いませんよ。もっとも内容的にはシャドウミラーと鉄華団では基本的に同じですが。違うところは、報酬に関してですね」

 

 ラスカーの言葉に、俺は自分とチャドの契約書を見比べる。

 すると、なるほど。報酬については、シャドウミラーの方が幾分か高い。

 もっとも、報酬が高いだけの仕事は任されるのだろうが。

 ……多分だが、これはMSの差だろうな。

 鉄華団のMSパイロットは……いや、MWもだけど、現時点では全員が阿頼耶識を使って操縦している。

 だが当然ながら、地球において阿頼耶識は忌むべき存在として認識しているので、アーブラウ軍のMSパイロットは阿頼耶識の手術をせず、普通に操縦する事になる。

 まぁ、中にはそれでも強さを求めるとか、あるいは何か他に理由があって阿頼耶識の手術を受けようとする者もいるかもしれないが、そういうのがいても少数の筈だ。

 そうなると、MSの操縦訓練をする時や模擬戦の時に鉄華団の面々では教えるのが難しい。

 それに対し、シャドウミラーはヒューマンデブリ出身の者達はともかく、大人組は阿頼耶識ではなく、普通に操縦している。

 だからこそ、アーブラウ軍のMSパイロットやMWパイロットになる者達に教えやすい。

 もっとも、阿頼耶識が駄目という訳でもないのだが。

 阿頼耶識のパイロットは教えるのは難しいかもしれないが、模擬戦の相手としては十分な説得力を持つ。

 何しろ阿頼耶識で操縦しているMSやMWは運動性や反応速度が桁違いだ。

 そのような者達を相手に模擬戦で勝てるようになれば、相応の操縦技術は持っているという事になる。

 そう考えれば……操縦をきちんと教えるのと、模擬戦の強敵としての報酬の違いだと考えれば、納得出来なくもない……か?

 その辺については、それこそオルガやデクスター、メリビットといった面々と相談して、それで納得すればサインをすればいい。

 納得出来ないのなら、また交渉をするなり……最悪、仕事を降りるなりといった事もあるだろう。

 そんな風に思いつつ、俺は契約書にサインをするのだった。

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