転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4019話

 結局新兵の……いや、まだ訓練は始まっていないから、新兵にもなっていないのだろうが、その視察についてはあれで終わってしまった。

 蒔苗としても、あのような様子を見せつけられてしまった以上は、他にどうしようもないと判断するしかなかったのだろう。

 そんな訳で、次に俺達がやって来たのは軍事基地となる場所に用意された施設。

 具体的には、シャドウミラーと鉄華団が軍事顧問として仕事をする事務所だった。

 2つの会社が入るからというのもあるだろうが、どちらもそれなりの広さを持つ建物だ。

 その建物には既にコンピュータや机、椅子、棚……他にも事務作業をするのに必要な物は一通り揃っている。

 この様子を見る限りだと、それこそ今からでもすぐに仕事を始められそうな感じだ。

 

「へぇ、これは凄いな」

 

 そう感想を口にしたのは、お世辞でも何でもない。

 火星にあるシャドウミラーの拠点にも、シーラが使っているこういう事務処理とかをする為の部屋はある。

 あるのだが、設備的にここの方が整っている。

 ……まぁ、中には仕事場の環境を少しでも良くする為に、自分でクッションとか、コンピュータ用の各種アクセサリだとか、そういうのを買ってる者もいるので、そういう者達にしてみればここよりも自分が使いやすいように整えた環境の方がいいと言うかもしれないが。

 

「ほっほっほ。喜んで貰えたようで何よりじゃ」

 

 先程の一件は忘れたように、蒔苗が俺の言葉を聞いてそう言う。

 実際には本当に忘れた訳ではなく、俺の案内とかが終わった後であの責任者は話を聞かれたりするのだろうが。

 その辺については、アーブラウの代表という自分の立場を理解しているからこそなのだろう。

 

「そうだな。これだけの場所を用意してくれたのなら、文句はない」

 

 もっとも、コンピュータについては使う前にしっかりと確認する必要もあるだろうが。

 もしかしたら、何らかの妙なソフトがインストールされている可能性もある。

 そうであった場合、部外秘のデータとかを勝手にどこかに流してしまうかもしれない。

 そうならないようにするには、やはり前もってチェックしておく必要があるのだ。

 

「ふむ。では次は宿舎を見に行こうかの」

 

 そう言う蒔苗に引き連れられ、俺達は移動するのだった。

 

 

 

 

 

「うん、ここも悪くはないな」

 

 蒔苗に連れてこられた宿舎は、それなりの施設だった。

 現在俺達が泊まっている高級ホテル程ではないにしろ、それなりに広さを持つ部屋。

 ホテルの格として考えれば、中の下、もしくは中の中といったところか。

 軍事顧問として雇われた者達が使う部屋としては、十分すぎる。

 ただ、地球支部の者達は絶対にこの宿舎を使わなければならないという訳ではない。

 人によっては他人がいると落ち着かないとか、あるいは夫婦で、もしくは家族や恋人と一緒に暮らしたいと思う者もいるだろう。

 そういう者達は、アーブラウ側が用意してくれたこの宿舎ではなく、街中に部屋……もしくは家を借りて住んだりも出来る。

 勿論そうなれば、この宿舎とは違って相応の賃貸料が必要になるが。

 一応それでもある程度の補助は出る事になってるけど。

 

「この宿舎を使えるのなら、快適に仕事も出来そうだな」

「そう言って貰えて何よりじゃよ」

「ちなみにこの宿舎を使うのは俺達だけか?」

「うむ、その予定じゃ。このような重要な場所である以上、あまり部外者は入れない方がいいじゃろうし。……なお、その辺の関係もあって掃除の類は業者を呼ぶといった事は出来ないようになっておるが、構わんか?」

「それは仕方がないだろう」

 

 掃除の業者なんて、それこそスパイとかが入り込みやすい場所だ。

 あるいはスパイではなくても、何らかの書類とかゴミとかを盗んで、それを売るとか。

 その辺の心配を考えれば、掃除は自分達でやった方がいい。

 そういうのが苦手な者もいるだろうが……うん。そういうのについては俺がどうこうと考えるようなものじゃない。

 地球支部にいる者達が自分で考える事になるだろう。

 見ると、それなりに本格的なキッチンもある。

 自炊をしたりも出来るのだろう。

 ……問題なのは、自炊は出来るかもしれないが、実際に自炊をする者がどれだけいるのかと疑問になる。

 地球に来た時は、アトラを始めとして料理を出来る者達が毎日の食事を作っていた。

 軍事顧問をするようになると、当然ながらアトラはいない。

 多分食堂とかが用意されているのだろう。

 カナダ料理とか、そういうのを楽しめたりもするのだろう。

 もっとも、カナダ料理というのは以前クーデリアと一緒に食べたフライドポテトを使った奴が有名らしいのだが。

 他の料理は……いや、別にどうしてもカナダ料理を食べないといけない訳じゃない。

 問題なのは、料理人の腕だろう。

 そんな風に思いながら、俺は宿舎の見学を続けるのだった。

 

 

 

 

 

「それで、どう思った?」

 

 夜、今日の仕事が全て終わり、夕食を楽しんだ後で俺はホテルの部屋にいた。

 そこで一緒のソファに座り、TVを見ているマーベルに尋ねる。

 ちなみにTVでは現在夜のニュースとしてアーブラウ軍について色々とやっている。

 当然ながら、その中には俺達……シャドウミラーや鉄華団について触れられたのもあった。

 他の国ならともかく、このアーブラウにおいて俺達はかなり有名だしな。

 何しろ一度はアンリの策略によって亡命する羽目になった蒔苗が、見事に復活をしたのは俺達の存在があってこその話なのだから。

 そんな俺達が再び地球にやってきて、いよいよ本格的にアーブラウ軍の軍事顧問として動き始めたのだ。

 報道で取り上げられない筈がない。

 ……もっとも、報道の中には国が軍隊を持つ事でギャラルホルンに目を付けられると主張し、だからこそ軍を持つのは反対だとする者もいる。

 まぁ、それはそれで分からないではない。

 厄祭戦が終わってから……つまり、ギャラルホルンが出来てから300年。

 その間、ずっとその調子でやって来たのだ。

 なら、これからも今まで通りでいいではないかと、そのように主張する者がいるのは分からないでもない。

 もっとも、中にはそれこそギャラルホルンから金を貰っている者もいたりするのだろうが。

 

「どうって、一体何についてかしら?」

「まぁ……色々とだが、総じて言えばアーブラウ軍についてだな」

「難しいでしょうね。もっとも、私達が見た人達……まだ軍人ではないのかもしれないけど、とにかく質が低いわ。そもそも自国の代表を知らないとか、軍人以前に人としてどうなのかしら」

 

 厳しいな。

 とはいえ、マーベルの言ってる事は決して間違ってはいない。

 現在の国の代表についてくらいは、普通なら覚えているだろう。

 勿論、これはあくまでも一般論……例えるのなら、軍人に志願するような者達ならの話だ。

 例えばスラム街の住人とかなら、それこそその日を生きるので精一杯なので、自国の代表について知らなくても仕方がなかったりもするが。

 そういう意味で、やはりマーベルから見てもあの軍人志願者達の評価は低いらしい。

 ……まぁ、蒔苗に絡みに来た時、結構な人数の視線がマーベルに向けられていたしな。

 当然ながら、その視線にあったのは好色な色だ。

 無理もないが。

 マーベルは間違いなく美人と呼ぶに相応しい顔立ちだし、その身体付きも男好きのするものだ。

 凜々しい系の美人で目に力があるので、苦手な人は苦手だろうけど。

 そういう凜々しい系だからこそ強い欲望を抱く者もいるだろう。

 あるいは、くっ殺好きだったり。

 

「……何か妙な事を考えてない?」

「いや、マーベルは凜々しい系の美人で、学校では下級生からお姉様とか呼ばれていそうだと思っただけだよ」

「……」

 

 無言でマーベルは俺の頬を抓ってくる。

 

「痛いな」

 

 実際にはそこまで痛い訳でもないのだが、こういう時はこういう風に言うに限る。

 ……というか、この様子だと多分高校生の時とかはお姉様呼ばわりされたり、バレンタインとかには大量にチョコを貰ったりしてそうだな。

 あ、でもバレンタインで好きな相手にチョコを送るというのは、日本特有だったか?

 外国では好きな相手ではなく、世話になった相手にチョコを贈るとか何とか聞いた覚えが。

 ともあれ、バレンタインはともかくとして、この様子だとマーベルが年下の相手にモテたのは間違いないらしい。

 場合によっては、年上の相手にまでお姉様呼ばわりされるなんて事になっていてもおかしくはなかった。

 

「妙な事を考えないの」

「分かったよ。……まぁ、それを言うのなら現時点でも妙な事になってるが。あ、でもこのオルフェンズ世界においては、一夫多妻制とかは普通にあるのか」

「そうね。そういう意味では、この世界に来たのは幸運だったのかもしれないわね。ジャコバ・アオンには感謝しないと」

 

 しみじみとマーベルが言う。

 実際、俺がペルソナ世界から追放されて、妙な空間にいたのを助けてくれたのはジャコバだ。

 勿論、ジャコバがいなくても、いずれはどうにかなったとは思う。

 思うのだが、それでもやはり色々と思うところはある訳で。

 それにマーベルが言うように、一夫多妻制のオルフェンズ世界に転移させてくれたのは俺にとっても非常に助かったのは事実だ。

 もっとも、一夫多妻制とかがなくても相応の実力者であれば、複数の女と付き合ったりしてるのは珍しくはない。

 とはいえ、それでも外聞的な問題を考えると……うん。やっぱり色々と不味い。

 そういう意味でも、一夫多妻制が普通にある世界というのは、マーベルとシーラという恋人がいる俺にしてみれば、非常にありがたい。

 ましてや、この世界ではクーデリアも俺の恋人に追加されたしな。

 ただ、クーデリアとは恋人にはなったが、肉体関係的な意味ではまだだ。

 せいぜいがキスだったり、そこからもうちょっと進んだ行為であったり。

 

「アクセル、また変な事を考えているでしょう?」

「そうでもない」

 

 うん、恋人とそういう関係になるかどうかというのは、別に変な事じゃないしな。

 そう思うのだが、俺を見るマーベルの視線には疑惑の色があった。

 これはちょっと不味いか?

 何とか誤魔化さないと。

 

「それで、アーブラウ軍についてだけど……どのくらいで使い物になると思う?」

「随分と強引な話題の逸らし方ね。でも……うーん、MSを操縦させるだけなら数ヶ月? ただ、MSを使っての戦闘をするとなるとちょっと分からないけど」

「だよな。基礎体力の訓練とかも必要だろうし」

 

 そういう意味では、今日見た連中の中でも自主訓練をしていた者達は期待出来そうだな。

 ああいうのが、将来的にアーブラウ軍のエースパイロットになる……かと言われれば、そうとは限らない。

 勿論、地道な訓練というのは大きな意味を持つし、MSを操縦する上での地盤となる。

 それこそ耐G能力とかそっち関係も、鍛える事が出来るし。

 ただ……世の中にはそういうのを全く無視するようなことが出来る、天才というのがいる。

 特に訓練もしていないのに、何となくでMSの操縦が出来てしまう、あるいはちょっと調べただけでそういう事が出来るような者が。

 MSの操縦をするのに必須の耐G能力に関しても、生まれつき強力な耐G能力を持っている者もいる。

 本当の意味で……それこそ部隊でのエースとかではなく、軍を代表するエース、あるいは世界を代表するエース、歴史に名を残すような本物のエースというのは、そういう天才的な者が多い。

 勿論これはあくまでも俺が今まで経験してきた事からの実感であって、世の中には努力でそういうエースになったという者もいるのかもしれないが。

 そんな訳で、もしかしたら……本当にもしかしたらの話だが、場合によっては蒔苗に絡んできたあの男が天才的なMSの操縦センスを持っている可能性も……ない訳ではない。

 あくまでも可能性だし、限りなく低い可能性だが。

 ……うん、やっぱりそれはないな。

 

「ともあれ、蒔苗としては今日の一件は大きなミスだったのは間違いないだろうな」

「そうでしょうね。……あの責任者の人、どうなると思う?」

「さて、どうなるか。蒔苗の様子だと左遷なら御の字といったところのように思えたけど」

 

 まず確実に左遷だろう。

 余程の何かがなければ、左遷なのは間違いなかった。

 ……問題なのは、その余程の何かがあるのかどうかという事だろう。

 あのような無能であっても、宿舎の責任者となっていたのだ。

 そう考えると、賄賂とかそういうのを使って責任者になっていた可能性も否定は出来なかった。

 だとすれば、その賄賂を貰った者がどう動くか。

 もし自分にも被害があるかもしれないと思えば、そうならないように早めに切り捨てる……比喩的な意味ではなく、物理的にそういう事をしないとも限らなかった。

 まぁ、別にそうなったらそうなったで、俺は構わないのだが。

 あの男に何らかの恩がある訳でもないし。

 そんな風に思いながら、俺はマーベルとの夜の一時を楽しむのだった。

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