転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4025話

 テイワズからグリムゲルデが運ばれてきてから1ヶ月ちょっと。

 既にマーベルはグリムゲルデを十分に乗りこなせるようになっており……視線の先では、昭弘の操縦するグレイズを翻弄していた。

 今日はシャドウミラーと鉄華団が合同で模擬戦をやる日。

 どうせならということで、トーナメント形式でやった訳だが……決勝戦はマーベルと昭弘になった訳だ。

 

「やっぱり姐さんは強いですね」

 

 俺の隣でオルガがしみじみとそう言う。

 いつも……というか、人と会う時はスーツを着ているのだが、今はラフで動きやすい服装だ。

 

「そうだな。もっとも、三日月が参戦していれば話は別だったが」

 

 俺のグシオンと同様、三日月のバルバトスも現在テイワズの本拠地である歳星で大規模な改修が行われている。

 そんな訳で、俺も三日月も模擬戦には参加していない。

 ……いやまぁ、俺はともかく三日月は阿頼耶識対応のコックピットに換装したグレイズの予備がまだあるから、それを使えば模擬戦に参加出来ない訳でもなかったのだが。

 ただ、オルガから三日月に今日は休むようにと指示があったんだよな。

 

「すいません、ちょっとミカは身体の調子が悪いようで」

「……病気か?」

 

 スラム街出身で、阿頼耶識の手術を何度も行い、CGS時代は劣悪な環境の中にあった。

 鉄華団になって生活環境は改善したが、これまでの蓄積から病気になってもそういうものかと納得出来る。

 せめてもの救いは、現在の鉄華団なら金に余裕があるし、クーデリアとの関係もあるので病院に診て貰えるという事か。

 

「あー……いや、違います。病気とかじゃありません。実はここ最近、ミカは農業の勉強をしているんですが、それで夜遅くまで起きてて」

「つまり、寝不足による体調不良か」

「すいません、兄貴」

 

 俺の言葉にそうオルガが謝ってくる。

 それに対して、気にするなと言い、改めて模擬戦の方に視線を向ける。

 そこでは昭弘のグレイズの攻撃を回避してるグリムゲルデの姿。

 そんな戦いを見つつ、三日月の行動に感心する。

 いや、寝不足で体調不良になるのはどうかと思うが、俺が初めて三日月と会った時……いや、クーデリアからの依頼を受けて地球に向かった時、三日月はまだ文字を読めなかった。

 そんな三日月が、自分のやりたい農業の為に字を覚え、農業の勉強をしているのだから、驚くなという方が無理だろう。

 具体的にどういう勉強をしてるのかは分からない。

 だが、農業の勉強となると、専門用語の類も必要になるだろう。

 だからこそ、ただ文字を読めるだけではなく、そういう専門用語についても覚える必要がある。

 そういう意味では、三日月は努力家なのは間違いない。

 ……寝不足で体調を崩すのはどうかと思うが。

 

「それで、三日月の方は大丈夫か? 寝不足なら、寝れば大体治ると思うけど」

「まぁ……その、アトラがいるので、多分大丈夫かと」

「なるほど」

 

 オルガの言葉に、そう納得する。

 オルガにしてみれば、三日月とアトラの件は応援しているといったところか。

 三日月はともかく、アトラはぐいぐいと攻めるしな。

 とはいえ……

 

「三日月の件はともかく、オルガの方はどうなんだ?」

「……まぁ、その……ぼちぼち」

 

 おや?

 てっきり自分の事はいいとか、そういう風に言うのかと思ったんだが。

 だが、こうして誤魔化すって事は……気になっている相手がいるのか?

 誰だ?

 そう思ったが、鉄華団に女はアトラ以外に1人しかいない。

 シャドウミラーにはマーベルとシーラがいるが、オルガがこの2人に手を出すとは思えないしな。

 地球にいた時なら、もしかしたらラフタやアジーが候補となっていたかもしれないが。

 もしくは……クーデリアは俺と付き合ってるから、フミタンという選択肢もあるな。

 他にも、別に俺達の身の回りにいる女という訳じゃなくて、オルガが社長として市街地に行った時に会った女とか。

 とはいえ、そんな諸々について考えても、結局一番可能性が高いのは……

 

「メリビットか」

「っ!?」

 

 俺の呟きを聞いたオルガが、慌てた様子を見せる。

 まさかここで俺がピンポイントでメリビットの名前を出すとは思ってもいなかったのだろう。

 

「図星のようだな」

「……兄貴、一体何で……」

「何でも何も、一番可能性が高いのはメリビットだろうと思っただけだ。オルガには、ああいう年上の恋人が似合ってると思うしな」

 

 オルガは自分が鉄華団を率いるという事で、かなり自分を追い詰めるところがある。

 それだけに、オルガが甘えられる相手というのは必須だろう。

 そういう意味では、メリビットがこれ以上ないくらいオルガの恋人として相応しい。

 もっとも、これはあくまでも俺がそう思っているだけで、場合によってはオルガがもっと別の相手に好意を……男女間の好意を抱く可能性もあったのだが。

 

「兄貴……」

 

 何を言えばいいのか、分からないらしいオルガは、何とかそれだけを口にする。

 オルガにとって、多分こういう恋愛沙汰というのは初めての経験なんだろうな。

 スラム街で生きてきたのだから、そういう余裕はなかっただろう。

 ……あ、でもスラム街で女が生きるには娼婦となる者が多いというのは以前聞いたな。

 だとすれば、もしかしたら初体験そのものは終わってる……いや、ないな。

 オルガの性格を考えれば、恋愛感情なしにそういう行為をするとは思えない。

 シノとかなら、また話は別だったが。

 ちなみにシノは模擬戦のトーナメントは1回戦敗退だ。

 もっとも、その相手がマーベルだった事を思えば、情けないとは言わない。

 運が悪かったとしか言えないよな。

 実際、昭弘程ではないにしろ、それなりにマーベルとやりあって見せたのだから。

 大事なところで失敗するだろうというのを克服してきている証拠か?

 そうも思うが、この模擬戦は別に大事なところという訳じゃない。

 ゲーム性を取り入れてはいるが、それでも結局のところ訓練だ。

 

「それで? メリビットとの関係はどこまで進んだ?」

「いや、その……どこまでって……まだ、その、別に何も。ただ、ちょっと気になっているというか、そんな感じなんですが」

 

 もっとこう、一気にがーっと行け。

 そう言いたくなったが、恋愛初心者なのだろうオルガの事を思えば、そういう風に積極的にはいけないか。ただ……

 

「メリビットはいい女だ」

 

 そう断言する。

 オルガはそんな俺の言葉に、視線を向けてくる。

 

「鉄華団の中には多くの男がいる。うかうかしていると、他の奴に持って行かれるかもしれないぞ?」

「それは……」

 

 これは脅しでも何でもない。

 実際、メリビットが美人なのは間違いないし、少し細かい事を気にする様子はあるが、それでも性格はいい。

 それだけに、メリビットに想いを寄せる者は間違いなく鉄華団にも多い筈だ。

 特に鉄華団の主要メンバー……オルガ達は、年齢的にはまだ10代だ。

 年上の美人というのは、非常に気になる存在なのは間違いなかった。

 勿論、それは好意は好意ではあっても、恋愛感情ではなく単なる憧れという可能性もある。

 ……まぁ、それを言うのなら、オルガがメリビットに抱いている気持ちも憧れである可能性があるのだが。

 もっとも、憧れだからといってそれが駄目という訳ではない。

 憧れで付き合うようになり、それが憧れから恋愛関係となってもおかしくはないのだから。

 

「オルガがどう思っているのかは、俺には分からない。ただ、メリビットが好きならしっかりとその気持ちを伝えた方がいい。それで受け入れられるかどうか、あるいはフラれるかどうかは分からないが」

 

 個人的な意味では、メリビットがオルガを嫌ってはいないと思う。

 とはいえ、嫌っていないからといって付き合うかどうかというのはまた別の話だろう。

 

「……分かりました」

 

 俺の言葉に頷くオルガ。

 とはいえ、本来ならこういう恋愛関係で他人が介入するのはどうかと思うんだけどな。

 他人が介入した結果結ばれても、あまり長続きしないと何かで見た覚えがある。

 もっとも、それを言うのならお見合いだったり、誰かの紹介だったり、そういうのも駄目になるという事になってしまうが。

 だが、そういうのが続いているのだから、その辺についてはあまり気にしなくてもいいんだろう。

 そんな風に思いながら模擬戦を見ると……マーベルのグリムゲルデの持つ長剣が、グレイズのコックピットに突きつけられたところだった。

 

 

 

 

 

「アクセルさん、少しいいでしょうか?」

 

 模擬戦から10日程。

 シーラから渡された書類を確認しつつサインをしていると、不意にそんな風に声を掛けられる。

 書類から顔を上げると、シャドウミラーの事務室の扉の側にはメリビットが立っていた。

 そのメリビットは、微妙な……本当に微妙な表情を浮かべている。

 そんなメリビットの様子から、何となくここに来た理由が分かった。

 模擬戦の時の、オルガとのやり取りについてだろう。

 もっとも、どういう感情でやって来たのかはちょっと分からないが。

 喜んでるようにも見えるし、照れてるようにも見える。

 怒ってるようにも見えるし、悲しんでいるようにも見える。

 そんな複雑な表情を浮かべているメリビットだけに……このままここで話をするのは不味いか。

 この部屋にはマーベルやシーラ、サヴァラン……他にも何人か事務員がいる。

 そんな者達が仕事をしている中で、オルガとメリビットの恋愛について話すのは不味いだろう。

 となると、どこで話すかだが……まぁ、応接室だろうな。

 まさかメリビットを俺の部屋に連れ込む訳にもいかないし。

 

「じゃあ、応接室に行くか。……それでいいよな?」

「ええ、それでお願いします」

 

 メリビットが頷いたので、この場についてはシーラ達に任せて応接室に向かう。

 拠点はそれ程広くないが、それでも応接室までは少し歩く。

 だが、そうして歩いている間もメリビットが何かを言う様子はない。

 黙ったまま、俺の後をついてくる。

 うーん……この様子を見ると、もしかしたらオルガの告白は失敗だったのか?

 あるいは急ぎすぎたのか。

 何だかんだと、メリビットもオルガとの付き合いはそれなりに長い。

 お互いを知らないからとか、そういう理由で断ったりはしないと思うが。

 そんな風に考えていると、応接室に到着する。

 W世界のデルマイユの家から盗んだ家具程ではないが、それなりに立派な家具が揃えられている。

 一応、それなりの地位の者達がやって来た時にも対応可能なようにしてある。

 ……もっとも、あまり丁寧に接したくはない相手が来たりした場合にもこの応接室を使う必要があるのがちょっと問題だが。

 やっぱりどうでもいい客用にもっと簡素な応接室をもう1つ作ってみてもいいのかもしれないな。

 ソファに座り、空間倉庫から缶紅茶を取り出す。

 メリビットなら本物の茶葉を使った紅茶を好みそうだが、さすがにそういうのは空間倉庫にも入っていない。

 よく考えてみれば、空間倉庫に時間の流れはない訳だから、紅茶を淹れたカップをそのまま空間倉庫に入れておいてもいいのかもしれないな。

 これなら紅茶を淹れるのが得意な奴に頼んで、大量に淹れ立ての紅茶を用意出来るし。

 

「ありがとうございます。……さて、私が今日来た理由は分かっていますよね?」

「オルガの事だろう?」

「……やっぱりアクセルさんが焚きつけたんですか」

「焚きつけたって表現はどうかと思うけどな。背中を押したという風に言って欲しい」

 

 これは俺にとっても正直な気持ちだ。

 それにあの模擬戦の時にオルガの背中を押さなくても、いずれは告白したとは思う。

 ただ、それが遅いか早いかだけの違いだ。

 

「それで? どうしたんだ?」

「……団長と、オルガと付き合う事になりました」

 

 少しだけ照れ臭そうな様子で、薄らと頬を赤くしながら視線を逸らしつつ、メリビットが言う。

 どうやら結果としてそういう事になったらしい。

 お互いの関係は決して悪くはないと思っていたが、メリビットがオルガを受け入れたか。

 

「そうか。おめでとうと言えばいいのか?」

「……ありがとうございます」

「恋人が出来た割には、俺に不満を持ってそうだったのは、何でだ?」

「オルガと付き合う事になった私が言うのも何ですけど、年齢の差を考えて下さい」

「そこまで極端に離れてる訳じゃないだろうに」

 

 メリビットは20代半ばで今の俺とそう違いはないか、少し年下といったところか。

 それと比べると、オルガは10代後半。

 年齢的にすれば10歳も離れていない。

 これが例えば、30歳とか離れているのならメリビットが色々と言いたくなるのも分からないではない。

 だが、10歳も離れていないのなら、ちょっとした年の差カップルという認識でいいと思うんだが。

 まぁ、10代と20代として考えれば、また微妙に違うのかもしれないが。

 そしてメリビットが気にしてるのは、恐らくその辺なのだろう。

 

「そうは言ってもですね。それでも色々と思うところがあるのは間違いないんですよね。……これが友達に知られたら、一体何を言われる事やら」

「でも、幸せなんだろう?」

 

 そう聞く俺の言葉に、メリビットは数秒沈黙した後で頷くのだった。

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