転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4027話

「これはまた……」

 

 火星にある共同宇宙港。

 現在俺はそこにいたのだが、その視線の先……より正確には映像モニタには、スキップジャック級とハーフビーク級という2つの戦艦が映し出されている。

 双方共に、艦種としては戦艦だ。

 つまり、宇宙戦艦だな。

 しかし、双方共に宇宙戦艦という種別の割には、スキップジャック級は明らかにハーフビーク級よりも大きい。

 ハーフビーク級のハーフってのは、実はスキップジャック級の半分って意味なのか? ……まさかな。

 とはいえ、セブンスターズの当主級の人物が乗る……のかどうかは分からないが、ともあれアリアンロッド艦隊でそれを率いるラスタルが乗る戦艦として考えれば、主力のハーフビーク級よりも高性能で大型なのは納得出来る。

 納得出来るんだが……

 

「ちょっと、アクセル」

 

 俺の隣で同じ映像を見ていたマーベルが俺の名前を呼ぶ。

 うん、何を言いたいのかは分かる。分かるのだが……それでも、スルーという訳にはいかないだろう。

 

「分かっている。スキップジャック級の大きさだろう? ……マクギリスも、その辺については考えてくれると助かったんだが。もしくはこっちの人数を見誤ったか?」

 

 そう、スキップジャック級が高性能なのは認めよう。

 だが同時にハーフビーク級よりも巨大なその戦艦は運用するのにかなりの人数を必要とするのは間違いない。

 具体的にどのくらいの人数が必要なのかは分からないが、それでも見た感じでは現在シャドウミラーが有している強襲装甲艦2隻と補給艦1隻の人員を全て込みで考えても足りなさそうな感じがするスキップジャック級よりも小さなハーフビーク級なら、現在シャドウミラーが使っている3隻の人員がいれば使えるだろう。

 しかし、スキップジャック級を運用するには現在の倍……あるいはもっと人員が必要となりそうな感じだ。

 一応鉄華団と同様にシャドウミラーもそれなりに新人を集めてはいる。

 実際、そういう新人が既に何人か入ってきているのも事実。

 だが……それでもスキップジャック級を使うのは難しいだろう。

 コレクション的な意味では、非常にありがたいんだけどな。

 ……高性能な戦艦ではあるが、これは多分ホワイトスターに戻った時、技術班に対するお土産とかかな。

 とはいえ、スキップジャック級を使わずにハーフビーク級を使うとなると、マクギリス達に妙な誤解を与えかねない。

 その辺については、前もって説明しておく必要があるだろうな。

 そんな風に思いながらマーベルや他の面々と話していると、やがてこちらに近付いてくる2人の存在に気が付く。

 それが誰なのかは、先程映像モニタで話したのだから考えるまでもなかった。

 マクギリスの腹心の石動と、ラスタルの腹心……という訳ではないが、メカニック系の専門家のヤマジン。

 その2人は、まるで合わせたように……いや、ようにじゃなくて実際に合わせているのかもしれないな。

 ラスタル派とマクギリス派という2つの派閥の代表として火星にやって来ている以上、相手に先を許すことは避けなければならないといった感じで。

 それなら同時に俺と接触すればいいと、そう話し合って決めたのかもしれない。

 俺にしてみれば、その辺りは正直なところどっちでもいいんだが。

 まぁ、面子とかそういうのもあるのだろう。

 やがてその2人が俺の前に到着すると、揃って敬礼してくる。

 

「石動とヤマジン。よく来たな。……それで、火星に下りるか? それともここで話をするか?」

「私は火星に下りたいと思います。ラスタル司令から、MSの整備についてアドバイス出来るのならしてくるようにと言われていますので」

 

 そうヤマジンが言うが、上手い言い訳だな。

 実際にはシャドウミラーの保有MSを確認したいとか、あるいはもしかしたらサラマンダーやミロンガ改を見られる、あるいは直接弄れるという狙いかもしれないが。

 とはいえ、ありがたいのも事実なんだよな。

 シャドウミラーのメカニックは、元ブルワーズだ。

 当然ながら我流であったり、あるいはこれまでの経験から整備をする。

 だが、ギャラルホルンはMSを開発した組織である以上、正統派の知識が残っているのだ。

 ……というか、ヤマジンが来るのなら雪之丞達と一緒に歳星に行かせる必要はなかったか?

 一瞬そう思ったが、すぐにそれを却下する。

 考えてみれば当然の話なのだが、ヤマジンは別にシャドウミラーに所属する事になった訳ではなく、あくまでもギャラルホルンの所属……それもスパイ、というのはちょっと言いすぎかもしれないが、とにかくそんな感じの女だ。

 そういう女を頼りにするのは間違っているだろう。

 かといって、ここで急にシャドウミラーに入りたいと言ってきても、信じられるものではない。

 それこそ鵬法璽とかを使わないと、ヤマジンを信じるのは難しいだろう。

 

「私も火星に下りたいと思います。色々と相談があるので」

 

 ヤマジンに続き、石動もそう言ってくる。

 こっちはまぁ……マクギリス辺りから色々と言われてきたといった感じか?

 ヤマジンよりも信用は出来る。

 

「分かった。じゃあ、2人共火星に下りるということでいいな。ホテルの方はこっちで用意するから、安心してくれ」

 

 勿論、このホテルは市街地のそれなりに立派なホテルだ。

 この2人の立場を考えると、安宿に泊まらせるというのは色々と不味いだろうし。

 何しろギャラルホルンを代表して火星までやって来たのだ。

 そういう相手を粗雑に扱うのは、シャドウミラーという組織に問題があると思われてもおかしくはない。

 そういう風にならないようにするには、やはりしっかりとした対応をする必要があるのだ。

 それは石動やヤマジンも理解しているのか、すぐに頷く。

 ……ヤマジンが微妙に何かを言いたそうだったが、それは多分ホテルじゃなくてシャドウミラーの拠点に泊まりたいとかなんだろうな。

 勿論、その理由はシャドウミラーが所有しているMSや、サラマンダー、ミロンガ改の調査だろう。

 それを知っているからこそ、俺としてはヤマジンをシャドウミラーの拠点に泊める事は出来ない。

 シャドウミラーには大人の男も多い……というか、殆どが男だ。

 基本的に善良な者達だが、それはあくまでも元ブルワーズとして善良な者達という意味での善良だ。

 女として魅力的なヤマジンに色仕掛け……ハニートラップをされると、引っ掛かってもおかしくはない。

 そんな訳で、ヤマジンにはホテルで寝泊まりをして貰おう。

 もっとも、ヤマジンの言うようにメカニックとして色々と教えるとなるとシャドウミラーのメカニック達と接触する事になるので、その辺がちょっと心配だったが。

 まぁ、仕事の時とプライベートの時では違うだろうと期待しておくが。

 そんな風に思いつつ、俺は2人を連れて降下船に向かうのだった。

 

 

 

 

 

「ああ、そのホテルでいい。悪いな」

『いえ、アクセルからの頼みですから』

 

 映像モニタに表示されたクーデリアが、そう返してくる。

 何だかんだと、クーデリアは上流階級育ちで、現在はアドモス商会の社長でもある。

 そんな訳で、予約もなしにホテルを……それも相応の格のホテルで部屋を取るというのは、俺よりもクーデリアの方が向いているのは間違いなかった。

 あるいは、石動とヤマジンが来たという報告を聞いて、俺が共同宇宙港に向かった時には既にクーデリアはそこまで考えていたのかもしれないが。

 せめてもの救いは、一緒に来たのが石動とヤマジン。後はそれぞれの護衛だったという事か。

 もしこれで他にも何十人もが火星に下りてきたりしたら、ホテルで部屋を取るのは難しかっただろう。

 

「悪かったな。今日の埋め合わせはまた今度するよ」

 

 本来なら、今日はクーデリアとゆっくりとする……表現を変えれば、イチャつく日の筈だった。

 しかしそんな中でこうして石動やヤマジン達が来た結果、当然ながらそっちに対応する必要があり、クーデリアとのデートはなくなってしまった訳だ。

 以前とは違い、クーデリアも今は働いている。

 それも俺達の後ろ盾があったり、何よりもクーデリアのネームバリューのお陰で、アドモス商会は急速に業務を拡大していた。

 ……最初はクーデリアの父親が何らかの妨害工作でもしてくるのかと思ったが、幸いにもそういうのはなかったし。

 クーデリアの父親がどのように対応するのか、未だにちょっと謎なんだよな。

 クーデリアをギャラルホルンに売り払っただけに、クーデリアに対して後ろめたい思いを抱いているのか。

 もしくは、自分の所有物が自分に逆らうのが面白くないと思うのか。

 どちらかによって、クーデリアに対しどのように反応するのか変わってくる。

 後ろめたい思いを抱いているのなら、クーデリアのアドモス商会の運営を邪魔する事はないだろうし、クーデリアの行動を面白くないと考えれば妨害行為をしてもおかしくはない。

 あるいは面白くないと思っていても、俺達が後ろにいるのでちょっかいを出すようなことは出来ないという可能性もあるだろう。

 

『楽しみにしています』

 

 そう言い、通信が切れる。

 さて、後は……これからが本番だな。

 

 

 

 

 

 シャドウミラーの拠点に到着すると、まずは石動との会談から始める事にした。

 これは特におかしなことではない。

 元々ラスタルとマクギリスでは、マクギリスと友好的な関係にあるのだから。

 寧ろラスタルは、アリアンロッド艦隊が何度もこっちにちょっかいを掛けてきた関係上、決して友好的な関係ではない。

 だからこそ、今回のハーフビーク級の譲渡によって、俺達との関係を修復……いや、別に関係が良好だった事はないんだし、修復というのはちょっと違うか?

 ともあれ、友好的な関係を築こうとしているのだろう。

 そんな訳で、どちらを優先するのかは明らかだった。

 ヤマジンもそれは分かっているので、会談の順番に不満そうな様子は見せていない。

 今はシャドウミラーの拠点を案内されて、色々と見て回っている筈だ。

 ハニートラップとかそういうのを警戒して、案内役はマーベルとシーラに任せてあるが。

 あの2人がいれば、取りあえず問題はないだろう。

 

「さて、前置きとかよりも本題に入るがいいか?」

 

 用意された紅茶を一口飲んでから、石動にそう言う。

 石動は俺の言葉にすぐに頷く。

 

「はい、それで構いません。アクセル代表も忙しいでしょうし」

 

 主にお前達が一緒に来たから忙しくなってるんだけどな。

 そう突っ込みたかったが、それは止めておく。

 

「じゃあ、早速本題に入らせて貰う。……スキップジャック級を持ってきてくれたのは、嬉しい。正直なところ、あんな大型の戦艦を俺達に渡すとは思わなかった」

「ファリド准将はそれだけシャドウミラーを頼りにしているという事です」

「ん? 准将? マクギリスの階級は特務三佐じゃなかったか?」

 

 マクギリスの階級については特に気にしていなかったが、俺が火星で会った時は特務三佐という階級だった筈だ。

 

「はい。ですがファリド准将はファリド家の当主となりましたので」

「ああ、それでか。セブンスターズの1家の当主が特務三佐という階級だと外聞が悪いと」

「……」

 

 俺の言葉に沈黙を守る石動。

 石動にとっては、迂闊に口に出せるような事ではないのだろう。

 それについては、別にどうでもいい……とまではいかないが、そういうものだと思えば、特に不満もない。

 ギャラルホルンにとって、セブンスターズというのは……そう、王族のような存在だ。

 それだけに、王族の1人が特務三佐という地位にいるのは外聞が悪いと判断し、准将としたのは納得出来る。

 いや、寧ろ准将という地位はちょっと低いんじゃないかとも思うが。

 それこそ王族的な扱いなら、大将とまではいかないが中将くらいにはなってもいいような。

 その辺はマクギリスの年齢だったり、ギャラルホルンの中でも最精鋭たるアリアンロッド艦隊の司令官のラスタル辺りの反対があったのかもしれないな。

 

「まぁ、階級については分かった。昇進を祝っていたと伝えてくれ」

「は!」

 

 俺の言葉に石動がそう返事をする。

 

「さて、それでスキップジャック級だが……うん。さっきも言ったように、持ってきてくれたのは嬉しい。嬉しいんだが、あれだけ巨大な宇宙戦艦となると、現在のシャドウミラーの人員では運用する事は出来ない」

「……やはり、ですか」

「やはり? やっぱり予想はしていたのか?」

 

 マクギリスの事だから、シャドウミラーの人員がどれだけいるのかは分かっていてもおかしくはない。

 勿論詳細な人数は分からなくても、大体何人くらいはといったように。

 そうである以上、スキップジャック級については最初から運用出来ないと分かっていた……のか?

 とはいえ、そうなればそうなったで……

 

「なら、何でスキップジャック級を? まさか、ラスタルのハーフビーク級に対抗してそれ以上の奴がスキップジャック級しかないからとか、そういう理由だったりするのか?」

「その……それもあるのですが……私にはよく分かりませんでしたが、アクセル代表であれば邪魔になるような事はないだろうと、そう聞いています」

 

 そう、石動が言うのだった。

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