転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4028話

 石動の口から出た、俺なら邪魔になるような事はない。

 その言葉は、完全に俺の意表を突いた。

 普通に考えれば、それは俺ならどうにかしてスキップジャック級を運用するというのを示しているのだろう。

 だが……俺の魔法、正確には魔法ではなく空間倉庫だが、それについて知ってる者であれば、それは別の意味を持つ。

 持つのだが……俺はマクギリスに対して、魔法については教えていなかった筈だ。

 どこから漏れた?

 そう思ったものの、この世界においては必要だったりする事もあって、色々な相手に魔法について知らせている。

 だとすれば、どこから情報が漏れてもおかしくはない。

 勿論、普通なら俺が魔法を使えると聞いても、妄想もいい加減にしろとか、帰って休めとか、病院を紹介するとか、そういう事をするだろう。

 だが、マクギリスは違ったらしい。

 

「なるほど。……その言葉の意味については詳細を聞いてるか?」

「いえ。何か特別な意味があるのですか?」

 

 この様子を見ると、どうやら本当に石動はその辺の情報について知らされていないらしい。

 あるいは単純にそれを隠すのが上手いだけなのかもしれないが。

 

「そうだな。マクギリスには昇進の祝い以外にも『さすがだ』と伝えておいてくれ」

 

 今回の一件を見る限り、マクギリスは俺の魔法についての情報は持っていても、確信まではしていなかったのだろう。

 ……この世界において魔法は空想上の存在なのだから、それも当然なのかもしれないが。

 ただ、それでも疑った。

 何故そこで魔法が実際にあると判断したのかは、俺にも分からなかったが。

 ただ、マクギリスは俺をアグニカ・カイエルと勘違いした。

 もしかしたら、その辺に理由があるのかもしれないな。

 マクギリスにとって、アグニカ・カイエルというのがどういう存在なのかはまだよく分からないが。

 尊敬というか、崇拝というか、そんな感じだとは思うけど。

 ただ、未だに何故そこで俺にそれが関係してくるのかは分からない。

 もっとも、今はそういうのを考えるよりも前にスキップジャック級について考える方が先だが。

 マクギリスに『さすがだ』という伝言を頼んだ以上、空間倉庫については隠さなくてもいいだろう。

 つまり、その辺についてもマクギリスに知られてもいい訳だ。

 となると、石動にも見せても構わないか?

 ただ、ラスタルの方……より正確にはヤマジンについては、魔法関係は見せる必要もないだろう。

 ……これでヤマジンが技術馬鹿というか未知の技術について知る為だったらラスタルを裏切っても構わないと思っている程に振り切れた性格をしてるのなら、魔法について教えてもいいんだが。

 見る限り、技術者としてはそれなりではあるものの、魔法を見たらラスタルを裏切るかと言われれば、それは微妙なところだろう。

 なので、ヤマジンについては魔法は見せない方がいい。

 

「取りあえずスキップジャック級についての話は分かった。けどそうなると、シャドウミラーで使うのはスキップジャック級じゃなくてハーフビーク級になるぞ?」

 

 あるいは、鉄華団の面々も人員として使えば、スキップジャック級も使えるかもしれないが……それはそれで難しいだろうし。

 シャドウミラーと鉄華団は友好的な組織ではあるし、シャドウミラーを率いる俺と鉄華団を率いるオルガは兄弟分の杯を交わした間柄ではあるが、だからといって別にシャドウミラーが鉄華団を吸収したり、あるいは上位組織といった訳ではない。

 そうである以上、違う組織として友好的な関係であっても……いや、だからこそ、お互いにきっちりと公私の区別を付ける必要があった。

 ……もしかしたら、いずれ将来的にはどっちかがどっちかを吸収するという事になるのかもしれないが、今は違う。

 だからこそ、スキップジャック級の運用に鉄華団を使う訳にいかないのは間違いなかった。

 そうなると、最終的にはハーフビーク級を使うしかない。

 

「それについては問題ないとファリド准将も仰ってました」

「……マクギリスが納得してるのならそれでいいんだが」

 

 マクギリスが俺にスキップジャック級を譲渡した理由は、俺の魔法について確認する為というのがあるのだろう。

 だが、スキップジャック級を使えずにハーフビーク級を使う……ああ、いや。でもそうか。ヤマジン達の艦隊と一緒に来たという事は、ヤマジン達……つまり、アリアンロッド艦隊は知っている。

 また、それ以外にも現在ギャラルホルンで対立している2つの派閥が、揃って火星に向かうというのは当然ながら地球でも大きなニュースになっているだろう。

 つまり、マクギリスが俺にスキップジャック級を譲渡するというのは、地球の者達……あるいは月やドルトコロニーのようなコロニーの者達にも知られているのだろう。

 つまり、その時点で俺にスキップジャック級を譲渡するという情報は広まっている訳だ。

 そうである以上、俺達が使うのはハーフビーク級でもいいと、そういう感じか?

 とはいえ、実際に俺達がハーフビーク級を使っていたら、マクギリスの派閥の評判は落ちる気もするが。

 マクギリスの事だし、その辺を考えに入れた上で俺達にはハーフビーク級を使って貰おうという考えなのかもしれないな。

 後は……シャドウミラーももっと規模を大きくして、スキップジャック級を使えるようになれという激励も込めてとか。

 実際、これからのこと……オルフェンズ世界の原作では2シリーズ目になるのか、単純に続編になるのかは、それは分からないが、とにかくギャラルホルン同士の内乱が起きる可能性がある以上、シャドウミラーを大きくするのは必須だ。

 しかし、単純に人員を募集すればいい訳でもない。

 来る者拒まずで人員を募集すれば、どこかの組織のスパイであったり、あるいはスパイではなくてもシャドウミラーの内部情報を売ろうと考えるような者が絶対に入ってくる。

 また、MSの操縦技術や事務処理能力とか……そこまでいかずとも、何らかの技術を持っている者なら歓迎するんだが。

 あるいは鉄華団のように、素人を雇って育てるというのもありかもしれないな。

 ただこっちの場合、戦力として使えるようになるまでには結構な時間が掛かるのが問題だ。

 メリットとしては、素人だけに妙な後ろ盾がいる者は少ないという事か。

 シャドウミラーにしろ鉄華団にしろ、多くの者達が注目している。

 その為、少しでも情報を得ようとする者は多い。

 

「取りあえずスキップジャック級の件についてはこれでいいとして……現在、地球の方はどんな感じだ?」

 

 一応地球支部からそれなりに情報は入ってきているものの、それでもやはり実際に派閥争いに参加している者の意見というのは重要だ。

 

「そうですね。一進一退といったところですか」

「……マクギリスの派閥は3人のセブンスターズがいて、ラスタルは1人だけだろ? なのに、一進一退なのか?」

 

 これはマクギリス達が弱いのか、ラスタルがそれだけ傑出した存在なのか。

 地球外縁軌道統制統合艦隊とアリアンロッド艦隊という、戦力の差というのもあるんだろうが。

 

「いえ、今は向こうの派閥にラスタル・エリオンの他にイオク・クジャンという、クジャン家の当主が協力しています」

「……そのクジャン家ってのも、セブンスターズの1つなのか?」

 

 俺の言葉に石動が頷く。

 なるほど、ラスタルもエリオン家だけでイシュー家、ファリド家、ボードウィン家の3つを相手にするのは難しいと判断したのだろう。

 

「そうなると、3家と2家の戦いか。残りの2家はどうなっている?」

 

 そんな俺の問いに、石動は首を横に振る。

 

「駄目です。どちらの家の当主も事なかれ主義なので。どちらかが有利になったら、そちらに味方をするという感じでしょう」

「厄介だな」

 

 いやまぁ、厄介だと思うのはマクギリス達であって、俺がそんな風に思う必要はないのだが。

 ただ、マクギリス達にしてみれば、ただでさえアリアンロッド艦隊という強敵がいるのに、そこで更に風見鶏の2家をラスタル側に渡すという訳にはいかないだろう。

 ……ん? でもそうなると、それはそれで問題があるか?

 もしその2家を引き込んでラスタル達と戦って勝ったとする。

 そうなるとエリオン家とクジャン家は没落するだろうが、のこりの5家でセブンスターズ……いや、5家になるのだから、ファイブスターズか、もしくは新しい名前を考えるのかは分からないが、ともあれそういう事になる。

 そうなると、残った5家のうちの2家……半数近くが事なかれ主義の風見鶏となる。

 勿論、残り3家がしっかりと手を組んでいれば、それでも構わないだろう。

 だが、家と家の関係というのは個人と個人の関係ではない。

 意図せぬところで家の関係が崩れ……そうなると、風見鶏達の存在が厄介の種になってしまう。

 そう考えると、いっそ残り2家ラスタル側にやって、内乱の中で倒してしまった方がいいんじゃないか?

 勿論、その2家も風見鶏とはいえ、セブンスターズだ。

 その2家には相応の戦力があるだろうし、その戦力がラスタル側に与するとなると、マクギリス達にとってはピンチだろう。

 とはいえ、その戦力差に関してもシャドウミラーを傭兵として雇えば、戦力差は逆転する。

 ……まぁ、純粋に数では負けるが、斬首戦術で敵の司令官……それこそラスタルの乗っているスキップジャック級を撃破したりすれば、頭を失った者達は混乱するだろう。

 最善なのは、その時に俺の解呪が終わってホワイトスターと繋がっている事だな。

 そうなれば数の差についても、メギロートやバッタ、量産型Wの操縦するシャドウでどうにかなるし。

 もっとも、ナノラミネートアーマーの存在を考えるとビーム系の武器を使えないというのは痛いが、幸いな事に一番数の多いメギロートはサークル・レーザーでビームではない。

 ……ナノラミネートアーマーがレーザーとかにどう対処するのかはちょっと分からないが、メギロートのサークル・レーザーも普通のレーザーという訳じゃないしな。

 バッタの方は、武器はミサイルだから、相手を消耗させる為にしか使えない。

 もっとも、バッタは元々数で相手を圧倒するのがメインの攻撃方法である以上、その使い方で間違ってはいないのだが。

 バッタの補充についても問題はないし。

 そしてシャドウは、普通に重力波砲を持ってるので、オルフェンズ世界のMSを相手にしても全く問題なかったりする。

 うん、やっぱり内乱が本格的に起きる前にホワイトスターと繋がっておく必要があるな。

 解呪は毎日のように試してはいるんだが……それでも少しずつしか進んでいないんだよな。

 それでも解呪が進行しているのは、シーラのお陰で分かっている。

 もしこれでシーラがいなければ、そもそも解呪をどうするべきかと悩んでいただろう。

 ……その時であっても、いずれレモン辺りがどうにかしてオルフェンズ世界とホワイトスターの間を繋げるとか出来るかもしれないし。

 ともあれ、シーラが解呪が進んでいると把握してるので、俺も破れかぶれになったりしなくてもいい。

 そういう意味では幸運なんだよな。……今の俺の状況を幸運と評してもいいのかどうかは微妙なところだが。

 それでもこのオルフェンズ世界に来たからこそ、クーデリアと会う事が出来たのは間違いなく、それは幸運だと断言出来る。

 

「アクセル代表?」

「ん? ああ、悪い。ちょっとギャラルホルンで起きるだろう内乱について考えていてな」

 

 嘘ではない。

 最初は間違いなくその辺について考えていたのだから。

 

「そうですか。……やはりアクセル代表も内乱まで発展すると思いますか?」

「間違いなく発展するだろうな。……まぁ、ラスタル辺りがマクギリス達の改革を認めるのなら話は別だが」

 

 俺が聞いた限りだと、ラスタルは現状維持派だ。

 マクギリス達の改革を受け入れるとは、到底思えなかった。

 そうである以上、内乱は遅かれ早かれ起こる筈だ。

 もっとも、内乱が起きるのが遅くなればなる程、地球外縁軌道統制統合艦隊の練度を上げられるマクギリス達には有利になる。

 それはつまり、内乱の起きるのが早くなればなる程、アリアンロッド艦隊を擁するラスタル側には有利になるのだろう。

 そうなると、ラスタルは自分の有利さを活かして少しでも早く内乱を起こしたいと考えているのだろうが、内乱を起こすにも大義名分がいる。

 何となくお前達が気に食わないから……とか、そんな理由で内乱を起こせば、それこそ正当性の問題でマクギリス達に思い切り責められるだろう。

 ラスタルもどうしようもないのならともかく、可能な限りそれは避けたい筈だ。

 それを分かっているからこそ、マクギリスも問題にならないように行動してるのだろう。

 ……そう考えると、今回のスキップジャック級の一件は結構危なかったんじゃないだろうか?

 そんな風に思いつつ、俺は石動との話を続けるのだった。

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