転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4032話

「シーラ艦長、こちらに近付いてくるエイハブ・ウェーブの反応があります。数はえっとその……」

「焦らないでもいいので、報告は正確にしなさい」

 

 ハーフビーク級のブリッジで、艦長席に座ったシーラがブリッジクルーにそう指示を出す。

 今日中には歳星に到着するだろう場所までやってきたのだが、そこで突然エイハブ・ウェーブの反応があったらしい。

 一応、ブリッジクルーも火星を出立してからそれなりに訓練はしてるのだが、やはり使い慣れたグランやガラン、ジャコバと比べると、まだ慣れないのだろう。

 また、ハーフビーク級だけに純粋に性能が高い……最新型であるというのも、影響してるのかもしれないが。

 それにしても、ハーフビーク級でこれならスキップジャック級を使っていたらどうなっていた事やら。

 そんな風に思っていると、やがてレーダーの担当をしているブリッジクルーが口を開く。

 

「数は3!」

「そう。……アクセル、この宙域で遭遇するという事は……」

「恐らくはテイワズの関係者だろうな。ただ、最悪の可能性として、海賊というのもある」

「……海賊が?」

 

 信じられない……いや、納得出来ないか? とにかくシーラはそんな表情を浮かべる。

 無理もない。

 テイワズは総合商社的な感じの組織だが、実際にはヤクザとかマフィアとか、そういう側面も持っている。

 そんなテイワズの庭先と言ってもいいようなこの辺りで海賊が活動していたら……まずテイワズによって殲滅されるだろう。

 そういう意味では、この宙域は安全な場所な訳だ。

 勿論世の中には絶対という事はないので、中には自分達ならテイワズを出し抜けると思っていたり、テイワズと戦っても自分達なら勝てると勘違いした海賊がちょっかいを出してくる可能性は十分にあったが。

 

「あくまでも、一応だけどな。多分違うと思う。一応、通信を送ってみたらどうだ?」

「そうね。……向こうに通信を。こちらの所属と目的地を知らせなさい」

「はい!」

 

 シーラの指示に従い、こちらはレーダー手とは違って、それなりに素早く設備を使いこなして通信を送る。

 送るが……

 

「駄目です! こちらの通信に反応しません!」

 

 半ば悲鳴のように叫ぶブリッジクルー。

 

「……アクセルとしてはどう思うのかしら?」

「ちょっと難しいな。3機……3隻か? ともあれ、それだけの数がいるのなら全部が通信機能の故障なんて事はないだろうし」

 

 もしそうなら、どんな天文学的な確率だという事になる。

 

「つまり、向こうはこちらと通信をするつもりはないのかしら?」

「その可能性は高いな。さっきの海賊の件も笑い話ではすまなくなるか? ……一応、MS隊には待機させておいた方がいい」

「アクセルはどうするの?」

「グシオンがないしな。それにマーベル達がいるのを考えれば、わざわざ俺が出る必要もないだろうし。どうしても危ないようなら、ミロンガ改を出してもいいけど」

 

 多分そういう事にはならないと思う。

 そう言うと、シーラも頷く。

 シャドウミラーのMS隊もそうだが、やはりマーベルの事を信じているのだろう。

 シーラとマーベルの付き合いは長い。

 俺がダンバイン世界で活動していた時から一緒に行動しており、俺がシーラの力を使ってホワイトスターに戻った……実際には鬼滅世界に転移したのだが、とにかく俺がダンバイン世界からいなくなってから数年、ずっと一緒に行動していたのだ。

 聞いたところでは、その数年も平穏無事といった訳ではなかったらしい。

 ガロウ・ランであったり、何かを企んだ者達の暗躍であったりといったように、戦いになる事もあったが、その中でマーベルはシーラを守り続けたのだ。

 それだけに、シーラがマーベルの強さに信頼を抱くのはおかしな話ではなかった。

 

「マーベルに任せましょう。……MS隊に指示を。未知の存在……恐らくは敵と思しき相手がこの艦に近付いてきています。向こうが攻撃をしてきたら即座に出撃するように」

 

 シーラの指示は、即座に艦内放送によって伝えられる。

 そうなると、俺はどうしたものだろうな。

 MSで出撃する訳ではない以上、ブリッジで様子を見ておくか。

 ……万が一、本当に万が一にもマーベル達が苦戦をした場合は、俺も出撃するつもりだが、俺の場合は影のゲートがある。

 格納庫に転移してそこから出撃してもいいし、もしくは直接宇宙空間に出て、そこでミロンガ改を出してそれに乗り込んでもいい。

 混沌精霊だからこそ出来る方法だったが、手っ取り早く出撃出来るのは悪くなかった。

 

「アクセル、このハーフビーク級ですが……名称をどうするのですか?」

 

 シーラのそんな言葉で我に返る。

 ……そうか、そう言えば今までずっとハーフビーク級と呼んでいたから、個別の名称は決まってないんだよな。

 名前、名前か。……すぐには思い浮かばない。

 

「まだ何も思いつかないな。いっそ、シャドウミラーの面々から募集するのはどうだ?」

「募集……アクセルがそれでいいのなら構いませんが」

「もしくは。いっそグラン・ガランにするとか」

 

 その言葉に、シーラが微妙な表情を浮かべる。

 シーラにしてみれば、グラン・ガランというのは色々と思い出深い名前だしな。

 それに現在でもグランとガランは強襲装甲艦に使ってるし。

 そんな中でハーフビーク級をグラン・ガランと命名すると、混乱してもおかしくはない。

 それこそシャドウミラーが2つあるのと同じような事になる可能性があった。

 うん、そう考えるとやっぱりグラン・ガランは止めておいた方がいい。

 

「自分で言っておいてなんだけど、やっぱりグラン・ガランは混乱しそうになるし、止めておこう」

「そうですね。私もその方がいいと思います。やはり、応募形式にした方がいいでしょう」

「採用された奴には賞品を渡してもいいかもしれないな。……何にするかは微妙だが」

 

 シーラと会話をしていると、再びレーダーの担当が叫ぶ。

 

「エイハブ・リアクターの反応を探知! どうやらMSが出撃したようです」

「……マジか」

 

 正直なところ、迎撃の用意はさせていたものの、実際には敵が襲ってくるようなことはないと思っていた。

 海賊がいるかも云々という話はしたが、それはあくまでも可能性で、実際には何も起きないだろうと。

 だが、そんな俺の予想が見事に外れた形だ。

 え? これマジで海賊か?

 海賊云々という話はしたものの、まさか本当に海賊が出るとは思わなかった。

 シーラとの会話でも出たが、この宙域は既にテイワズの庭とでも呼ぶべき場所だ。

 そこで活動する海賊って……一体どれだけ身の程知らずなんだ?

 

「MS隊は出撃を」

 

 即座に命令するシーラ。

 同時にハーフビーク級の中に緊急事態を知らせるアラームが鳴り響く。

 

「厄介な時に来たな」

「そうですね」

 

 シーラが俺の言葉に頷く。

 今回のハーフビーク級での移動は、一種の慣熟訓練的な意味合いも持っている。

 このハーフビーク級の安全はまだ完全に確認された訳ではないにしろ、それでも出来るだけ早いうちから操縦に慣れておく必要はあるのだから。

 実際、このブリッジクルーでも新しいハーフビーク級のシステムに戸惑う者もいるくらいだ。

 だからこそ、今のうちに慣れておこうという思いがあったのだが……この海賊の襲撃は、その隙を突かれた形だ。

 まさか、海賊達がその辺の状況について何か知っていたとか、そういう可能性は……さすがにないか。

 偶然に偶然が積み重なった結果が今の状況なのだろう。

 とはいえ、災い転じて福と成すとも言う。

 この状況で対処に成功すれば、慣熟訓練としても大きな進展がある筈だ。

 失敗すれば……そうなったらそうなったで、それも経験だろう。

 とはいえ、マーベルがいる以上はこちらが負けるといった心配はない。

 そういう意味では安心して見ていられるのだが……

 

「マーベルさんから通信です」

 

 通信担当のブリッジクルーがそう言ってくる。

 するとすぐにシーラは頷き、それと同時に映像モニタにマーベルが表示される。

 

『敵はどうやら海賊……と言いたいところだけど、少し違和感があるわ』

 

 そう言うマーベルの表情には困惑の色がある。

 

「具体的には?」

『攻撃すると、すぐに逃げるのよ』

 

 俺の問いに、あっさりとそう答えるマーベル。

 ……なるほど、それは妙だな。

 テイワズの庭と呼ぶべきここで海賊行為をしておきながら、ちょっと攻撃されれば逃げる?

 やってる事とその行動がチグハグだろう。

 そうなると、考えられるとすれば……海賊デビューしたばかりの奴とか?

 いや、けどそれなら余計にテイワズの庭で海賊行為なんかはしないだろう。

 それこそ自殺行為以外でしかないのだから。

 となると……

 

「まさか……」

「アクセル?」

 

 俺の呟きに、シーラが声を掛けてくる。

 そんなシーラをスルーして、マーベルに声を掛ける。

 

「悪いが、何人か……最低でも1人、捕虜にしてくれないか? もしかしたら、それで相手の正体も分かるかもしれない」

『分かったわ』

 

 そう言い、マーベルは通信を切る。

 通信が切れると、シーラが再び口を開く。

 

「どういう事か、説明してくれますね?」

「ああ、マーベルの場合はまず動いて貰わないといけなかったしな。……で、理由だが。もしかしたら裏にいるのはJPTトラストかもしれない」

 

 そんな俺の言葉に、シーラその美しく整った眉を顰める。

 なお、俺の言葉に動きを見せたのは、シーラだけではない。

 ブリッジクルーの面々も、俺のそんな言葉に反応していた。

 そんな中、やがてシーラが口を開く。

 

「理由は?」

「単純に俺達が気に食わないからとか、そういう感じだと思うけどな。……まぁ、これはあくまでも可能性だ」

 

 そう言うが、恐らくこれが正解だろうという思いがあるのも事実。

 何しろ、あのジャスレイだし。

 とはいえ、一応マーベルには捕虜が欲しいとは言ったものの、もし本当に捕虜を捕らえても、そいつがジャスレイの名前を口に出すかどうかは……正直、厳しいと思う。

 理由としては、ジャスレイは色々な意味で小物だが、そうでありつつ有能なところもあるからだ。

 金儲けもそうだし、自分の足跡を残さずに人を使うというのもそうだ。

 実際、以前歳星で俺達を襲ってきた連中は結局ジャスレイの手の者……もしくは、ジャスレイに依頼されて俺達を襲ったという証拠は何も出て来なかったのだから。

 当時の状況的にジャスレイが怪しいのは間違いなかったが、証拠は何もない、そんな状況だったのだ。

 結果として、その後で俺達がジャスレイに絡まれるような事はなかった。

 もっともそれは、明らかにジャスレイが怪しいと思ったマクマードが、俺と敵対をしない為にジャスレイに対する監視を強めたというのもあるし、単純に俺と名瀬、オルガの兄弟分の杯を交わす儀式を終えて、地球に向かったというのもある。

 ……まぁ、その後で夜明けの地平線団の襲撃があったのは、ジャスレイからの情報提供があったからではないかと思っているが。

 ただ、こちらもまた証拠がない。

 ともあれそうして俺達が歳星から離れたので、ジャスレイとしては手を出せなくなった。

 あるいは、俺達が歳星から離れた事で俺達がジャスレイに恐怖して逃げ出した……とでも考えたのかもしれないが。

 ともあれ、結果として暫くジャスレイからのちょっかいはなかったが、今回は再び俺が歳星にやって来た。

 ならば、以前の復讐を……そんな風に考えてもおかしくはなかった。

 

「……なるほど。そう言えば、ガロウ・ランの如き者がいましたね」

 

 俺の説明を聞いたシーラがそう言う。

 もっとも。ガロウ・ランという単語についてはブリッジクルーの面々は理解出来ないといった様子を見せていたが。

 それも無理はない。ガロウ・ランというのは、ダンバイン世界……それも地上ではなく、バイストン・ウェルに存在する者達なのだから。

 

「下劣な悪人といった意味だと思えばいい」

 

 ガロウ・ランという単語に戸惑っているブリッジクルーにそう言っておく。

 実際、その表現は間違っていない。

 とはいえ、ガロウ・ランの中にも善良な者はいるが、全員が全員そういう者達という訳でもないのだが。

 

「まぁ、ガロウ・ランの件はともかくとして、ジャスレイの手の者という証拠があればラッキー程度の感じだな」

 

 つまり、そこまで期待していない。

 もっとも、海賊の襲撃そのものは決して悪い事だけではない。

 MSを入手するチャンスなのは間違いないし。

 ……ジャスレイ、その辺について考えているんだろうか。

 俺達を攻撃しても、それこそ海賊のMSや……場合によっては強襲装甲艦を手に入れ、それを売って俺達を儲けさせているだけだという事に。

 勿論、その戦いでシャドウミラーのパイロットが1人でも死ねば相応の被害を受けたという事になるのだろうが。

 そしてジャスレイにしてみれば、海賊は捨て駒でしかないのだろう。

 だからこそ、シャドウミラーのMSを1機でも撃破出来ればいいといった感じで、海賊達を使い捨てているのかもしれないが。

 ……なお、この戦いでは結局強襲装甲艦は逃がしてしまう。

 MSがピンチになったと見るや否や、あっさりと見捨てて逃げ出したのを見ると……もしかしたら、強襲装甲艦に乗っていたのはJPTトラストの者だったのかもしれないな。

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