転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4033話

「兄貴、MSを売ってくれるのは嬉しいけど、コックピットが潰されてる状態だと安いぜ?」

 

 歳星にあるタービンズの拠点の応接室。

 俺はそこで名瀬と会っていた。

 

「だろうな。別に高く買い取れとは言わない。……とはいえ、あのMSを使っていた海賊に襲撃されたのは、歳星の目と鼻の先だってのは買い取り金額に入れて欲しいがな」

 

 そう言う俺の言葉に、名瀬は帽子で顔を隠す。

 名瀬にしてみれば、その辺については突かれたくないところだったのだろう。

 実際、テイワズにしてみれば今回の騒動はそれなりに問題になっているらしい。

 何しろマクマードがテイワズと同格の存在と宣言したシャドウミラーを率いる俺が、歳星から目と鼻の先で海賊の襲撃に遭ったのだから。

 まさに面子を潰された感じだろう。

 実際、あの件でそれなりの人数が処分されたと聞いている。

 もっとも、その処分というのは厳重注意とかそんな感じの処分らしいが。

 ヤクザ的な特色を持つテイワズだから、小指を切断とか、最悪切腹とかさせるかと思ったが……そこまでさせるような事ではなかったのだろう。

 あるいは最初からそんな事は考えていないのかもしれないが。

 とにかく、今回の騒動で処分された者はご愁傷様だな。

 俺じゃなくて、襲ってきた海賊を……あるいは、その裏にいるジャスレイを恨んでくれ。

 

「ちなみにジャスレイの動きは?」

「アリバイはきちんとある」

「だろうな」

 

 名瀬の言葉にそう返す。

 そもそも、襲ってきた者達はあくまでも海賊であって、ジャスレイが直接襲撃してきた訳ではないのだから。

 リアルタイムで指示でも出しているのならともかく、そうでなければわざわざ俺達が海賊に襲撃されている時に、アリバイがないという事にはならないだろう。

 

「兄貴が思っている通り、今回の件は多分ジャスレイが後ろにいるんだろうな。けど……証拠がない」

「前回もそうだったが、今回もその辺については隠すのが上手いよな」

 

 一種の特技と呼んでもいいのではないかとすら思えてしまう。

 もっとも、本人はそれをそう思うのかは分からないが。

 

「ああ。とはいえ、兄貴達が襲われたのは事実だ。親父もその辺を重要視して、ジャスレイやその手下達の監視を厳しくしている」

「……いっそ、これで暴走してくれると、こっちとしては助かるんだが」

 

 暴走してくれれば、それこそ俺達が直接出るという手段もある。

 あるのだが、残念ながらジャスレイもその辺については十分に理解している訳だ。

 それこそ、以前俺と直接会った時、ジャスレイは俺の殺気を受けている。

 とてもではないが、俺を相手に正面から戦って勝てるとは思わないだろう。

 だからこそ自分達の手で直接攻撃するような事はせず、今回のように誰かを使って攻撃させるといった選択をしてるのだろう。

 

「兄貴の気持ちは分かるけど、ジャスレイの性格を考えれば難しいだろうな。……あいつは自分を大きく見せたがるが、実際にはそこまでの器じゃねえ」

「だろうな」

 

 以前直接ジャスレイを見た時も、器の小ささは理解出来た。

 であれば、やはりこれからも余程の事がない限り直接表に出てくる事はないだろう。

 その余程の事というのは、例えばシャドウミラーが大きな損害を受けた状態でJPTトラストに攻撃をしようとしている……とか、そういう感じか。

 

「いっそ、何らかの理由で俺が死んだり、行方不明になっていたりとか、そういう風にしたらどうだ? そうなれば、ジャスレイも積極的に動くんじゃないか?」

「それはそうだけど……無理とは言わないが、難しいと思う」

「やっぱり難しいか?」

「ああ。兄貴の強さを実際にその身で感じているんだ。そうである以上、ジャスレイも警戒している筈だ」

 

 名瀬の言うように、ジャスレイはそういう事態になったらかなり警戒するだろう。

 そして少しでも怪しいと思えば、実際に行動には出ない筈だ。

 ……しまったな。今更の話だが、どうせならあそこまで脅かさなければよかった。

 もしくは、いっそあの時にジャスレイを始末してしまえばよかったのかもしれないな。

 中途半端に脅してしまったので、それはそれで不味かったんだよな。

 

「いっそ、俺が直接ジャスレイを殺すというのはどうだ?」

「止めてくれ。そうなったら、テイワズの中でも混乱が大きくなる」

 

 どうやら駄目だったらしい。

 とはいえ、俺がそこまでテイワズの心配をする必要は……いやまぁ、これからの関係を考えると、やはりその辺はきちんと対処する必要があるのも間違いないか。

 

「名瀬がそう言うのなら止めておくが、そこまで言うのならしっかりとジャスレイの手綱を握ってくれ。……大丈夫だとは思うが、グシオンに妙な仕掛けがされたり、こっちから派遣しているメカニックにちょっかいを出したりはしてないだろうな?」

「その辺は親父がしっかりとガードしてるから、問題ない」

「……なら、ハーフビーク級とスキップジャック級の調査についてもよろしく頼むぞ。ギャラルホルンから何か妙な仕掛けはされませんでした。けど、ジャスレイの手によって妙な仕掛けをされました……なんて事になったら、洒落にならないからな」

 

 そう言うと、名瀬は真剣な表情で頷く。

 既に俺達が乗ってきたハーフビーク級とスキップジャック級は、歳星のドックに収容されている。

 現在は既に調査が始まっている筈だ。

 ちなみに乗ってきたハーフビーク級はともかく、スキップジャック級の方は色々と苦労した。

 ただ、その辺はマクマードや名瀬の尽力によってどうにか出来た感じだ。

 調査が終わって戻る時も、スキップジャック級は俺が空間倉庫に収納していく形になるだろう。

 とはいえ、火星に戻っても今回のようにスキップジャック級を出すといった事はせず、空間倉庫に収納されたままになるだろうが。

 何しろシャドウミラーで使えるのは、あくまでもハーフビーク級だけなのだから。

 そうである以上、調査が終わったとはいえ、わざわざスキップジャック級を出す必要はない。

 

「分かってる。そっちの方はしっかりとやるよ。貰った金額分の仕事はするさ」

 

 ハーフビーク級とスキップジャック級の調査については、無料に近い金額での仕事だ。

 その代わり、スキップジャック級を調査したデータや、ギャラルホルンで次期主力機に使う予定の新型のフレームの調査結果はそのままテイワズの物となるのだが。

 勿論、その辺のデータはテイワズだけでなく、俺達で共有される。

 ……もっとも、シャドウミラーは純粋な戦闘力はともかく、開発能力という点では非常に低い。

 テイワズのように独自にフレームを作ったりといった事は出来ない。

 新型の戦艦とかは、言うまでもないだろう。

 だからこそ、テイワズとしてもその辺のデータを俺達に渡しても、それを有効利用出来るとは思っていないのだろう。

 実際にはシャドウミラーはシャドウミラーでも、オルフェンズ支部ではなくホワイトスターにある方のシャドウミラーであれば、技術班が普通に再現出来るとは思うが。

 ただ、再現出来るからといって、それを実際に採用するかどうかは微妙なところなんだよな。

 オルフェンズ世界の技術には、興味深い物が多いのは事実だ。

 阿頼耶識であったり、エイハブ・リアクターであったり、ナノラミネートアーマーであったり。

 特にナノラミネートアーマーはビームを無効化するという意味で、非常に大きな意味を持つ。

 ただし、ナノラミネートアーマーが効果を発揮するのは、あくまでもエイハブ・リアクターがあるのを前提としてのものだ。

 うーん、けどエイハブ・リアクターというのは重力関係の技術も使われているんだよな?

 なら、ナノラミネートアーマーが効果を発揮するのに必要なのもその辺が関係していたりするのか?

 だとすれば、同じ重力関係の技術ということで、ブラックホールエンジンでどうにか出来ないか?

 もしブラックホールエンジンに用いられている重力関係の技術でナノラミネートアーマーが使えるのなら、それはつまりシャドウミラーのPTとかにもナノラミネートアーマーを使えることを意味している。

 とはいえ、ニーズヘッグに採用出来るかとなると……どうだろうな。

 何しろニーズヘッグの装甲はSEED世界のPS装甲と、W世界のガンダニュウム合金を組み合わせ、更にT-LINKシステムの機能を持つチップを金属粒子レベルで鋳込んだ、T-LINKフレームで出来ている。

 そこにナノラミネートアーマーを塗っても……いやまぁ、T-LINKフレームには特に影響がないか?

 その辺はホワイトスターと繋がったら、技術班に調べて貰う必要あるだろう。

 もし上手くいけば、ニーズヘッグが更に強化される訳だし。

 難しければ難しいで、そこまで無理をしなくてもいいし。

 

「兄貴?」

「ん? ああ、いや。何でもない。シャドウミラーのこれからについて考えていただけだ」

 

 うん、別に嘘は言っていないな。

 オルフェンズ支部のシャドウミラーではなく、ホワイトスターにある方のシャドウミラーだが。

 とはいえ、俺が異世界から来たというのは名瀬も知らないので、俺の言葉の真意をしる事は出来ないようだったが。

 

「シャドウミラーのこれからか。……聞くまでもないと思うんだが、シャドウミラーはやっぱりギャラルホルンの内乱に参加するつもりなのか?」

 

 そう名瀬が聞いてくる。

 地球からでは、火星よりも木星圏にあるテイワズの方が距離はあるが、しっかりと情報を集めているらしい。

 情報網という点では、間違いなくテイワズはシャドウミラーよりも上だろう。

 テイワズを率いるマクマードは、シャドウミラーをテイワズと同格の組織であると認めた。

 だがそれは、あくまでも俺の個人的な戦闘力を評価しての事だ。

 生身での戦闘力であったり、MSに乗っての戦闘力であったり。

 あるいは俺以外だとマーベルも込みかもしれないが。

 ただ、それ以外……純粋な組織の規模であったり、開発能力であったり、そして情報収集能力であったり。

 それらを考えると、シャドウミラーはテイワズの足下にも及ばない。

 ……逆に言えば、そういうテイワズの勝っている点を全て含めても、俺のいるシャドウミラーには戦闘力という点でテイワズと互角の総合力を持っているというのがマクマードの判断だったのだろうが。

 そういう意味では、マクマードの人を見る目は間違いない訳だ。

 ジャスレイを未だにNo.2にしてるのを見ると、人を見る目が本当にあるのか? と疑問に思わないでもなかったが。

 ともあれ、テイワズはシャドウミラーよりも優秀な情報収集能力があるのは間違いなく、それによってテイワズもギャラルホルンの内乱は避けられない事態だと考えているらしい。

 

「そうだな。多分マクギリス側で参加する事になると思う」

 

 マクギリスを相手にしては、傭兵として雇われてもいいとは言っていたが、ラスタルとマクギリスでは、やはり改革派のマクギリスの方が俺達にとっても有利なのは事実。

 基本的に現状維持のラスタルでは、ギャラルホルンの影響力が強すぎるんだよな。

 なので、俺としてマクギリスの味方をすると思う。

 ヤマジンは一応、ラスタルも現状維持という訳ではなく改革について考えていると言っていたものの、正直なところその言葉をどこまで信じられるか。

 そもそもの話、俺はまだラスタル本人に会った事はないんだよな。

 勿論、顔は知っている。

 アリアンロッド艦隊を率いる人物として、それなりに表舞台に立つ事はあるし。

 だが、それはあくまでも俺が直接会った訳ではない。

 ……あるいは、ハーフビーク級を持ってくる時にヤマジンに任せず、ラスタルが直接自分で来ていれば、もう少し話も変わったかもしれない。

 まぁ、ラスタルの立場を思えば、そう容易く火星に来るといった事も出来ないのだろうが。

 地球と火星の行き来はそれなりに時間が掛かる。

 ラスタル程に忙しければ、火星に来るといった事は出来ないだろう。

 あるいは、俺に地球に来るように命令をするか。

 もしくは、俺と接触するのは諦めてシャドウミラー地球支部と接触するか。

 ……地球支部、か。

 名称的な問題が微妙にあったりするんだが、その辺はどうしたらいいんだろうな。

 今はまだいい。

 地球支部だけで話が繋がるのだから。

 だが呪いが解呪されてホワイトスターと自由に行き来出来るようになれば、オルフェンズ支部となる。

 そうなると、オルフェンズ支部地球支部? もしくはオルフェンズ地球支部?

 やっぱり、鉄華団に吸収合併して貰った方がいいのかもしれないな。

 

「兄貴?」

「ん? ああ、悪い。それでギャラルホルンの内乱だが……テイワズではいつくらいに起きると予想している?」

「そうですね。すぐにという事はないと思います。ただ、1年先になると……もうどうなってもおかしくはないかと」

 

 なるほど、大体1年くらい先の話と考えているのか。

 シーラの予想でもそういう感じだったな。

 マーベルはパイロットとしては腕が立つものの、こういうのはそこまで詳しくないし。

 だからこそ、俺としては名瀬のその言葉に納得するのだった。

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