転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4040話

「……おかしいですね」

 

 シーラの声に微妙に嫌な予感を覚える。

 現在、俺の姿はスキップジャック級の客室にある。

 結局スキップジャック級やハーフビーク級におかしなところはなかったという事で、用事を終わらせた俺達は火星に向かっているところだ。

 土産として、俺がテストに協力した獅電を数機貰ってきたが。

 この獅電についてはどう使うのかまだ決まっていない。

 何しろ性能そのものは百錬や百里と比べると劣ってしまう。

 まぁ、獅電に使われているイオ・フレームというのが、テイワズ・フレームの劣化版……とまではいかないが、それに近い感じのフレームなので、性能が落ちるのは仕方がないのだが。

 また、獅電以外に1機だけだが辟邪というMSも貰っている。

 この辟邪については、テイワズでもまだ数機のプロトタイプしかない希少なMSらしい。

 ちなみにこの辟邪のコンセプトは、簡単に言えば百里の高機動性と百錬の高出力を両立しつつ、高い操縦性を持つという……まさにテイワズ系のMSでは最高峰の性能を持つMSだ。

 だからこそ、コストとか技術的な面で色々と難しいところもあるらしいが。

 そんな辟邪を土産として持たせてくれたのは、このスキップジャック級の調査を完全には出来なかったという謝罪の件であったり、ジャスレイが裏で動いているらしいラディーチェとかいう奴の一件も関係してるのかもしれないな。

 ともあれ、今は火星につくまで海賊に襲われたりしない限り、安心ではあるのだが……

 そんな中、俺はいつものようにシーラに呪いについて調べて貰っていたところ、先程のような声が出た訳だ。

 

「何があった?」

「……いいですか? これはあくまでも私が見た限りであって、絶対という訳ではありません」

 

 妙に慎重な前置きだな。

 つまり、それだけの何かがあるという事か

 

「分かった。それで?」

「私が見たところ、アクセルの呪いはかなり劣化しています。それこそ、いつ壊れてもおかしくはないと思う程に」

「マジか」

 

 それは俺が願っていた事だ。

 しかし、シーラは何故かそこまで嬉しそうな様子ではない。

 

「……何かあるのか?」

「ええ。今も言ったように、呪いはいつ壊れてもおかしくはありません。これはアクセルが毎日のように呪いに対抗してきたからこその事です」

「……まぁ、毎日のように地獄の激痛を味わったのは間違いないしな」

 

 俺の身体にある呪いをどうにかする為に、身体を動かす事すら難しい激痛が延々と襲ってくるのだ。

 正直なところ、俺だからこそ耐えられたと言っても過言ではないだろう。

 

「ええ。……ですが、問題なのは呪いの最後の一線が未だに残っていることです」

「つまり、もう何回か魔力を身体に流せば、その一線を破壊して解呪が成功するのか?」

 

 シーラの言葉に期待を込めて尋ねるものの、シーラは申し訳なさそうな表情で首を横に振る。

 

「いえ、この様子をみたところ、これ以上はどうにもなりません。……あるいはどうにかなるかもしれませんが、かなりの時間が必要になります」

「どういう事だ? 最後の一線なんだろう?」

 

 最後の一線である以上、もうすぐ解呪が終わる。

 そう思っていたのだが、シーラの様子を見るとどうやらそれは違うらしい。

 そうなると、一体何がどうなっているのか。

 そんな風に疑問に思うのは、おかしな話ではない。

 

「その一線は普通ではないのです。そうですね……分かりやすく説明すると、今までアクセルが魔力を使って消してきた呪いの部分がただの糸であったとすれば、最後の一線。そこに残っているのはただの糸ではなく、針金……もしくはより強度の高い金属の糸なのです」

「だから、今までのように魔力で解呪をしようとしているだけでは無理だと?」

「……そうなります。勿論、長い時間を掛ければどうにかなるかもしれませんが、それには膨大な時間が必要となるでしょう」

 

 膨大な時間か。

 それが具体的にどのくらいの時間なのか分からない以上、俺としてはそちらを選ぶ訳にはいかないな。

 そうなると、もっと何か他の方法が必要になる訳だが……

 

「他の方法はないのか?」

 

 そう聞くと、シーラは申し訳なさそうに首を横に振る。

 

「その道の専門家であれば、あるいはどうにかなるかもしれません。ですが、私に出来るのはあくまでもオーラを見て判別するだけです」

 

 シーラの言葉に、なるほどと納得する。

 実際、シーラの能力を思えば今の俺の身体が具体的にどのようになっているのかは、分からない。

 それはある意味で仕方のないことでもある。

 あるのだが……それでもやはり、何とか解呪したいという思いがあるのも事実。

 

「分かった。なら、取りあえず今はそのままでいいとして、これからもし何かが分かったら、教えてくれ」

 

 俺の言葉に、シーラは真剣な表情で頷く。

 シーラにとっても、ホワイトスターに行くというのは大きな意味を持っているのだろう。

 今のまま……ホワイトスターに行けるかどうかも分からない今のままでは、色々と思うところがあってもおかしくはない。

 その為、シーラも何とかして今のこの状況をどうにかしたいと思うのはおかしな話ではない。

 

「とにかく、火星に戻ったら少しゆっくりと考えてみます。アクセルも何か分かったらすぐ私に教えて下さい」

「分かった」

 

 そうして、シーラとの話は終わるのだった。

 

 

 

 

 

「予想外に無事に戻ってこられたな」

 

 火星のシャドウミラーの拠点に戻ると、俺は思わずといった様子でそう呟く。

 既にシーラは歳星にいた間に溜まっていた仕事を片付けるべく、部屋に戻っている。

 他の面々もそれは同様だ。

 ……何しろ、何だかんだと俺達は結構な時間、火星を留守にしていたのだから。

 ハーフビーク級やスキップジャック級……特にスキップジャック級は、ギャラルホルンにおいても旗艦として使われている巨大戦艦だ。

 当然ながら、調べるにも時間が掛かる。

 大雑把に……適当に調べるのなら、予想していたよりも早く終わってもおかしくはない。

 だが、マクギリスから送られてきたスキップジャック級だけに、そんな事が出来る筈もない。

 勿論、ラスタルから送られてきたハーフビーク級も、もしかしたら何かが仕掛けられている可能性は否定出来ないので、そういう意味ではそっちもしっかりと調べる必要がある。

 そうなると相応の時間が掛かるのも当然であり、自然と歳星にいる時間が長くなってしまった訳だ。

 勿論、その状態でも全く仕事をしないという訳ではない。

 アリアドネを使った通信で電子化した書類を送って貰い、それを処理する事である程度仕事はしていたのだが……まぁ、それでも出来ない仕事とかはある訳で。

 そういうのが事務室には溜まっている訳だ。

 当然ながら、その手の書類は重要な書類が多く、それはつまり俺も見ないといけない書類という事になるんだが。

 ともあれ、その辺は今はシーラに任せておくとしよう。

 そんな風に思っていると、見覚えのある顔が姿を現す。

 

「アクセル!」

 

 そう言い、走ってくるクーデリア。

 その後ろにはフミタンの姿もある。

 うーん……数ヶ月ぶりにみたが、以前と比べると大人っぽくなってるように思える。

 そんな風に思いながら、飛び込んできたクーデリアを抱き留める。

 身体に感じる柔らかな感触。

 以前はドレスっぽいのを着ていたクーデリアだったが、アドモス商会を作ってそこで働くようになってからは、スーツ姿の事が多い。

 もっとも、ドレス姿のクーデリアは革命の乙女として知られている姿でもある。

 以前、初めて地球に向かった時、ドルトコロニーの一件で演説をした時も、ドレス姿だったし。

 いわゆる、クーデリアにとっての勝負服的な存在なのだろう。

 

「悪いな、少し遅くなった」

「もう、もう、もう、もう!」

 

 俺に抱きつき、頭を俺の胸に擦りつけてくる。

 俺と会えない時間がそれだけ寂しかったらしい。

 クーデリアを落ち着かせるように髪を撫でていると、離れた場所に控えているフミタンと視線が合う。

 そのフミタンは、俺と視線が合うと小さく頭を下げてきた。

 ……ただ、それなりにフミタンと付き合いが長くなった俺には分かる。

 フミタンの表情は殆ど変わっていないものの、その視線は微妙に俺を責めていると。

 まぁ、それも分からないではない。

 フミタンにしてみれば、俺はかなり長期間恋人のクーデリアを放っておいたのだから。

 

「ほら、落ち着け。革命の乙女がそういう姿を見せるのは不味いだろう?」

 

 そう言い、俺は周囲を見る。

 これが身内だけ……元ブルワーズ組や、いても鉄華団の面々であったのなら、今のクーデリアを見られてもそこまで問題はない。

 だが、現在のシャドウミラーは結構な人数を新たに雇っている。

 特に俺が歳星に行ってる間に雇われた者もそれなりの人数となり、初めて見る顔もいた。

 そのような者達は、クーデリアが俺に抱きついて不満を爆発させている様子に、目を大きく見開いて驚いている様子でもあった。

 ……まぁ、何も知らない者にしてみれば、革命の乙女として名高いクーデリアが、こういう態度を取っているというのは信じられないだろうが。

 

「……失礼しました」

 

 クーデリアも周囲の視線に気が付いたのだろう。

 不承不承……それでいて、少し慌てたように俺から離れるとそう言ってくる。

 

「それにしても、久しぶりだな」

「そうですね。どうせなら連絡くらいは入れて欲しかったところですが」

 

 アリアドネを使った通信……メールのようなものを送って欲しかったという事だろう。

 とはいえ、俺もその手のメールを全く送っていなかった訳ではないのだが。

 それなりにメールは送っていたと思うが、どうやらクーデリアにしてみれば俺が送った限りでは頻度が少なかったらしい。

 次に同じような事があったら、しっかりとメールを送るようにしておこう。

 

「次からは気を付けるよ。……それで、火星の方の様子はどんな感じだ?」

 

 俺達がいない間も、火星では色々と動きがあった筈だ。

 勿論、その辺の大雑把な内容については歳星に送られた通信で知っている。

 ただ、こういうのは実際に見た者の報が重要なのは間違いなかった。

 

「そうですね。テイワズからの投資で経済活動も活発になってきています。ハーフメタルの採掘も、以前よりはかなりスムーズに行われるようになりました。また、幾つか新たなハーフメタルの鉱脈が見つかり、そちらも現在採掘の準備をしています」

 

 即座にその辺りの言葉が出てくるのは、アドモス商会の代表としてクーデリアが決してお飾りではないという事の証明だろう。

 そう言えば、フミタン以外にも何人か秘書を雇っていた筈だが……いや、今日ここに来たのは私用だという事なのだろう。

 

「ハーフメタルの採掘は順調か。このまま上手くいけばいいんだが」

「何か不安な事でもあるのですか?」

「ギャラルホルンがな」

 

 俺の言葉に、クーデリアは複雑そうな表情を浮かべる。

 結局のところ、このオルフェンズ世界において一大勢力であるギャラルホルンの行動は、非常に大きな意味を持つ。

 スキップジャック級やハーフビーク級を俺に譲渡したのも、双方共に近い未来……それが具体的にいつになるのかは分からないが、ラスタルの派閥とマクギリスの派閥がぶつかる時の事を見据えてだろう。

 マクギリス達は何とかして俺達を戦力として味方にしたい。

 ラスタル達は、それを防ぎたい。

 特にラスタル達は、出来れば自分達の陣営に俺達を引き込みたいだろうが、それが無理でも、何とか俺達をマクギリスの派閥に協力させないようにしている。

 勿論、そのようなことをされているのは俺達だけではない。

 それこそテイワズ系の組織であったり、中には宇宙海賊や、傭兵……もしくは独立して行動している組織にも自分達に味方するようにと行動しているのは間違いないだろう。

 ……それでも、スキップジャック級やハーフビーク級を譲渡するというのは、俺達だからこそだろう。

 以前地球に行った時に何度も行われた、ギャラルホルンとの戦い。

 俺達はその全てに勝利してきたのだから。

 だからこそ、どんな手を使ってでも戦力として手にしたいと思うのはおかしくはない。

 そして……俺達が味方にならないと判断すれば、ラスタル達は先手を打ってくる可能性が高い。

 まぁ、俺達は余程の事にならない限り、マクギリス達の味方をするだろうしな。

 何しろ、ラスタルの派閥は現状維持だ。

 そうなると、火星にとっては決して良い状況ではない。

 ……ゲートが設置出来ても、ラスタル達の派閥なら地球に設置しろと言ってきかねないし。

 

「そう、ですね。……出来れば、戦いにはならないでくれるといいのですが」

 

 そう言うクーデリアだったが、自分でもそれが叶うとは思っていないのは間違いない。

 こうなると、やはりいつ本格的にぶつかるのかが大きな意味を持つな。

 勿論、最初から本格的にぶつかるという事はないだろう。

 最初は少数の勢力同士の争い。

 それから、戦闘が拡大するといった感じになるのは間違いないと思う。

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