俺がシーマと話している間にもバスは移動を続け、やがて懐かしの我が家の前に到着する。
俺にとっては大体4年ぶりくらいか?
こうして見ると、帰ってきたといった感じがするな。
何だかんだと、この家が俺にとって帰るべき場所となっているんだろうな。
バスから下りると、緊張した様子のマーベル達と、既に慣れた様子のシーマとモニクと共に、扉を開く。
すると……
「お帰りなさい、アクセル」
丁度扉の向こう側には、マリューの姿があった。
嬉しそうな笑みを浮かべ、俺を見ている。
「ああ、ただいま。……心配させたな」
「そうね。でも、アクセルの事だから何とかなると思っていたし、ネギま世界経由ですぐに情報が伝わってきたから、安心はしたけどね」
その言葉に、召喚魔法で狛治を召喚しておいて本当によかったと安堵する。
「それで、どのくらい集まっている?」
「ペルソナ世界からはまだだけど、美鶴もゆかりもすぐに来るそうよ」
「……そうか」
美鶴にしろゆかりにしろ、俺の事が心配だったのは間違いない。
俺がオルフェンズ世界に転移した……いや、ジャコバ・アオンに助けられてオルフェンズ世界に転移したので、ペルソナ世界出身の美鶴やゆかりにとっては、色々と思うところがあるのだろう。
「UC世界の方は……シーマとモニクは来たみたいだけど、クスコとクリスもそう遠くないうちにくると思うわ」
「シェリルもいるのか?」
ここでシェリルの名前を出したのは、シェリルはシャドウミラーの中でも特殊な立ち位置だからだ。
色々な世界において、歌手として活動している。
それだけに、その世界にいた場合、シェリルもすぐに戻って来られないのではないかと思ったのだ。
「問題ないわ。今日のシェリルはホワイトスターで歌のレッスンをしていたから」
マリューの説明に、そうかと納得する。
俺にとってもシェリルがいてくれるのは嬉しい。
……勿論、シェリルだけではなく、他の恋人達もいてくれて嬉しいのは間違いないが。
「じゃあ、中に入ってちょうだい。……自己紹介については、私だけじゃなくて他の人達にも一緒にした方がいいでしょう?」
マリューが口にした最後の言葉は、マーベル、シーラ、クーデリアの3人に向けたものだろう。
「そうね。……レモンには話したけど、それ以外の人達とは……」
マーベルがそこで言葉を止め、モニクに視線を向ける。
マーベル、シーラ、クーデリア。
この3人に共通してるのは、真面目な性格をしているという事だ。
そしてモニクも真面目……いや、モニクの場合は生真面目か?
とにかく真面目な性格をしている以上、気が合うのは間違いない。
似た者同士だし。
ただ、場合によっては似た性格だからこそ反発するといった事もある。
磁石のS極とS極が、N極とN極がそれぞれ反発するように。
とはいえ、見た感じではそういうのはないらしい。
同じような性格だからこそ、上手く歯車が噛み合ったのだろう。
そういう意味では、バスの中でマーベル達の相手をモニクにして貰ったのは当たりだったな。
もしシーマが相手をしていたら……うん。険悪にはならないかもしれないが、マーベル達が振り回されている光景が嫌でも目に浮かぶ。
「どうかしたのかい? 妙な視線をこちらに向けているけど」
シーマの言葉に俺は即座に何でもないと首を横に振る。
シーマに限らず、女の勘というのは非常に鋭い。
だからこそ、ここで迂闊な言葉を口にすれば面倒になるだろうと思い、シーマに向かって首を横に振る。
「何でもない。ただ、シーマとシーラは名前が似てると思ってな」
勿論、名字は全く違うのだが、名前……いわゆるファーストネームはシーマとシーラで1文字違いだ。
何度か間違ったりしそうだなと思ったのも仕方がないだろう。
「恋人の名前を間違えるなんて事があったら……どうなるか分かってるね?」
「そうですね。彼女の言う通りかと。私の恋人である以上、その辺についてはしっかりとして貰わないと困ります」
シーマとシーラ、それぞれからそう言われ、俺としても頷く事しか出来ない。
「分かっている。くれぐれも間違わないようにする」
とはいえ、こうして改めて間違わないように言われると、それはそれで間違ってしまいそうなんだよな。
それこそ何も言われていなければ、間違えるようなことがなかったりするのだが。
ともあれ、誤魔化すことは出来たので家の中に入る。
いつものリビング。
そこにはレモン、コーネリア、あやか、千鶴、円、美砂、スレイ、シェリル、凛、綾子、ミナト、エリナという俺の恋人達がいて……
「アクセル」
「お帰りなさい、アクセルさん。随分と遅かったですね」
ラピスとルリという、俺の子供……養子の2人もそこにはいた。
「……ただいま」
俺を待っていた面々に、そう声を掛ける。
俺が無事だというのは、狛治のお陰で伝わっていた筈だ。
しかし、それでもあくまで狛治を経由した情報であった以上、実際に自分の目でしっかりと俺を見ないと安心出来ないと思っていた者も多いだろう。
ましてや、俺は赤の他人ではなく、恋人……そして父親なのだから。
「さて」
俺の言葉に少しだけしんみりとしたところで、不意にレモンが口を開く。
「こうしてアクセルも帰ってきたし、それは私達にとっても嬉しい出来事よ。そして嬉しい出来事は他にもあるわ。また、私達には家族が増えたのだから。……挨拶をお願い」
レモンの言葉に、リビングにいた面々の視線がマーベル達に向けられる。
ちなみに一緒に家の中に入ってきたシーマとモニクも、いつの間にか部屋の中でゆっくりとしていた。
シーマとモニクは既にマーベル達の事を知ってるので、特に何か問題がある訳ではない。
ないのだが、それでも今は大人しくしている事を選んだのだろう。
そうして多くの者達の視線が集まる中、最初に前に出て口を開いたのはマーベルだ。
「私はマーベル・フローズン。アクセルがダンバイン世界と呼んでいる世界で出会ったわ。色々とあったけど、私はアクセルの恋人としてここにいるわ」
「シーラ・ラパーナといいます。私もマーベルと同じく、ダンバイン世界と称される世界でアクセルと出会い、そして結ばれました。……前もってアクセルから聞いてはいましたが、これだけの女がアクセルと付き合っているのを見て、驚いています。ですが、上手くやっていけると思っています」
「クーデリア・藍那・バーンスタインです。私はこの2人と違い、アクセルがオルフェンズ世界と呼ぶ世界でアクセルと出会い、そして惹かれました。まだ未熟ではありますが、これからよろしくお願いします」
そうしてマーベル達が自己紹介をした後は、レモンを始めとした他の恋人達も自己紹介をしていく。
……何人かは、やはり俺と同じような事を思ったのか、シーマとシーラを見比べたりしていたが。
そんな対応に、シーマとシーラはそれぞれ微妙な表情を浮かべる。
別にお互いに相手が嫌いという訳ではないのだろうが。
あ、でも自由奔放なシーマと、規律正しいシーラでは相性が悪かったりするか?
学園もので表現するのなら、不良と学級委員といった感じで。
……いや、シーマとシーラがそういう役に収まるとは思えないな。
学園ものであっても、裏組織を纏め上げる女王と、女警視総監とか? ……学園もの要素はどこだ?
「さて、取りあえず色々と……本当に色々と話す必要があるのは間違いないが、時間がない。特にクーデリアは、アドモス商会という会社を経営している以上、今日はこっちに泊まるといった事も難しい。そんな訳で、魔法球に行くぞ。反対する者は?」
「アクセル、私も魔法球に行くのは賛成だけど、今ここに向かってる人達もいるんでしょう? その人達はどうするの?」
エリナのその問いに、少し考えてから口を開く。
「それもそうか。……どのくらいで到着すると思う?」
「それを私に言われても困るわ。UC世界からはそれなりにすぐに来られるでしょうけど、ペルソナ世界だと難しいんじゃない?」
エリナの言葉は俺を納得させるのに十分な説得力を持っていた。
何故なら、UC世界……正確にはそこに残っているクスコとクリスの場合は、ルナ・ジオンの所属だ。そしてルナ・ジオンはシャドウミラーの下部組織という扱いになっているので、そのシャドウミラーを率いる俺が戻ってきたという話を聞けば、恋人のクスコとクリスが俺に会いに行くのを止めるのは、余程の事がないと難しい。
クスコの場合は、ニュータイプ研究機関のアルテミスで手を離せない実験を行っているとか、クリスの場合は兵器開発メーカーのディアナでテストパイロットとして新型機の試験をしているとか。
もしくは、可能性はそこまで大きくはないものの、宇宙海賊の討伐に出ているとか。
何しろ、この宇宙海賊というのは基本的にはジオン軍の残党だ。
MSとかもあるので、倒すには相応の戦力が必要となる。
とはいえ、ジオン軍の残党もルナ・ジオンに手を出すとどうなるのかは分かっている。
それこそ1年戦争の時に、ルナ・ジオンの戦力を実際に自分達で味わった者も多いのだから。
何より、ルナ・ジオンはUC世界においては使われていない無人機も普通に使われている。
この辺りが、宇宙海賊をやっているジオン軍残党にしてみれば、厄介極まりない。
何しろ無人機だけに、大量に出してくる。
撃破をしても、その無人機はいなくなるが、ルナ・ジオン軍そのものに被害はない。
いやまぁ、無人機を1機失ったという被害はあるのだが、言ってみればそれだけだ。
シャドウミラーにしてみれば、メギロートやバッタを再生産するのは難しくはない。
それにバッタは結構弱いが、メギロートは純粋な性能ではガンダムにすら勝る。
……もっとも、それはあくまでも性能だけの話で、腕利きのパイロットが乗っていればその性能差を技量差で覆す事も出来るのだが。
そしてジオン軍の残党は、実はそれなりに腕利き……というか、ベテランが多かったりする。
何しろ1年戦争の残党なのだから。
とはいえ、本当の意味での1年戦争……1年戦争の序盤となった1週間戦争やルウム戦役から生き延びたパイロットはそこまで多くはないのだが。
ともあれ、そういう事でもない限りクスコとクリスはなるべく早くホワイトスターに来るだろう。
しかしそんなUC世界と違い、ペルソナ世界でシャドウミラーの事を知ってるのは僅かだ。
そうである以上、UC世界のように無茶はしにくくなる。
「なら、もう少し待つか。先に魔法球に入っても、無駄に時間を使うだけだし」
魔法球は外の1時間が中では48時間だ。
クスコ、クリス、ゆかり、美鶴が具体的にいつ到着するのかは分からない。
そうなると、やはりここで待って全員が来てから魔法球に移動した方がいいだろう。
今この状況で一番気を付ける必要があるのはクーデリアだ。
夜になったら帰る必要がある。
だが、夜まではまだかなりの余裕があるので、その時間を魔法球を使えば結構な時間的な余裕はある筈だ。
どうしても時間がないのならともかく、今はその時間的な余裕がそれなりにある。
であれば、そこまで急ぐ必要もないだろう。
「分かったわ。じゃあ、残りが来るまでは休憩としましょう」
エリナのその言葉に誰も反対意見は口にせず、そういうことになる。
すると当然のように部屋の中にいた多くの者達がマーベル、シーラ、クーデリアに近付いていく。
少しだけ意外だったのは、ルリとラピスもその中にいた事か。
3人の中でも、特にシーラに興味があるらしい。
「どうしたのだ、アクセル?」
「……珍しいな。いつもならお前が真っ先に話を聞きに行ったりするのにな」
「私はそういう風に見られていたのか?」
スレイが少し戸惑った様子でそう言ってくる。
うーん、言われてみればスレイはこいう時は真っ先に動くんじゃなくて、落ち着いてから声を掛けるタイプだったりするのか。
もっとも、一度深い仲になってしまえば、意外と積極的に動いたりするのだが。
「どうだろうな」
「それより、私は少しアクセルと一緒にいたいと思っただけだ。……構わないだろう?」
そう言い、ソファに座っている俺に身体を預けてくるスレイ。
普段の気の強さとは違い、そこにあるのは女らしさだ。
俺にとっては、それこそ4年ぶりくらいに感じる、スレイの身体の柔らかさと甘い体臭。
「……取りあえずその辺にしておいてくれ。今ここでこれ以上になると、色々と暴走してしまいそうな気がする」
「ふむ……まぁ、私なら構わないが……これからのことを考えると、それは止めた方がいいだろうな」
「スレイ……まさか貴方に先を越されるとは思わなかったわ」
俺とスレイがゆっくりしていると、そう声が掛けられる。
それが誰の声かは、当然ながら俺にも理解出来た。
そして声のした方に視線を向けると、やはりそこにいたのは凛。
「凛」
「久しぶりね、アクセル。……なのに、私を放っておいて。スレイとだけイチャつくのはどうなのかしら?」
そう言う凛は笑みを浮かべていたが額には薄らと血管が浮かんでいる。
……そうして、クスコ、クリス、ゆかり、美鶴が到着するまで、俺は凛やスレイとイチャつきながら言い争いの時間を楽しむのだった。