転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4053話

「へぇ……これがホワイトスターか。……見た感じ、クリュセと変わらないな」

 

 転移区画から出た俺達は、バスでホワイトスターを見て回っていた。

 交流区画を見たユージンのその言葉は、他の者達にとっても同様だったのだろう。

 興味深そうにしながらも、少しだけ期待外れといった様子の者もいる。

 日中なら他の世界から来た者達も多いので、この辺りもかなり賑わっているのだが。

 人がいなくなると、無人のシャッター街というのは少し大袈裟かもしれないが、そんな感じの様子になるのは間違いない。

 

「まぁ、クリュセは何気にそれなりに発展してるしな。……表向きは」

 

 クリュセの表通り……具体的には、ギャラルホルンの火星支部の者達であったり、ノブリスを始めとした金持ち、もしくは地球からやってきたアーブラウのお偉いさんが主に行動する場所は、非常に綺麗に整っている。

 ただし、それはあくまで表通りだけだ。

 他の場所……特に裏道とかに行けば、かなり酷い状況だった。

 スラム街なんかは、その最たるものだろう。

 

「こうして人のいない街中を見ていてもつまらないし……そうだな、まずは公園に行くか」

「え? 公園? 何で?」

 

 ビスケットが不思議そうに言ってくる。

 そう言えば慎重派のビスケットだったが、ホワイトスターに転移するのは反対しなかったな。

 それだけ俺もビスケットから信頼されているのだと思っておこう。

 

「三日月は野菜に興味があるんだろう? 公園にはエルフ達がいて、特殊な野菜とかを育てたりしてる」

「え? エルフ……ですか?」

 

 そう口にしたのは、メリビット。

 どうやら他の面々はエルフについて知らないらしい。

 鉄華団の中では物知りな雪之丞とかも知らないのは……いや、雪之丞が詳しいのはMWやMSか。

 それと比べると、一般常識を持つメリビットはエルフについて知っていたらしい。

 

「ああ、エルフだ。俺達が接触した世界には、いわゆるファンタジー世界もある。その中にはエルフのいる世界もあった。……まぁ、色々とあってその世界との繋がりはなくなって、もうその世界には行けなくなったんだけどな。その騒動の時にホワイトスターに来たエルフ達がいるんだよ」

 

 メリビットに説明するが、門世界の件については色々と複雑な思いもある。

 具体的には、最初門世界との間をつなぐ門が交流区画に作られ、それによってホワイトスターは敵の奇襲を受けた形になる。

 しかもホワイトスターは自分達が占領したとか戯言を口にするし。

 もっとも、最後は結局帝国は滅亡し、残った皇族達も少数の例外を除いて処刑された。

 そういう意味では、しっかりと借りは返した訳だが……だからといって、それで全ての問題がなくなったかと言われれば、それは否だ。

 

「そのエルフって人達が特殊な野菜を育ててるの?」

 

 興味津々といった様子で尋ねる三日月。

 三日月にしてみれば、農作業というのはそれだけ楽しいのだろう。

 ……いっそ、三日月をUC世界の月にある農場に行かせてみても面白いかもしれないな。

 その農場は基本的に罪人達が働いている農場だが、無農薬であるというのが売りになっている。

 雑草を抜くのとか、虫の駆除とか、そういうのを全て農薬とかに頼らずにやっている。

 そのお陰で、その農場の野菜は月でも高値で売れているらしい。

 実際、無農薬の新鮮な野菜を食べるというのは、UC世界の者達にとってはかなり贅沢だしな。

 地球に残っているアースノイドなら、畑を用意することは出来るだろうが……無農薬でやるとなると、かなりの手間が掛かる。

 いや、かなりという表現では足りないな。とんでもなくといった表現の方が正しいだろう。

 

「ああ、異世界の野菜だ。興味がないか?」

「……オルガ」

 

 俺の言葉に即座に答えずオルガに聞くのは、三日月らしい。

 そしてオルガは三日月の言葉に頷き、バスはエルフ達の公園に向かうのだった。

 

 

 

 

 

「うわっ……ちょっ、ちょっ、アクセル!? エルフってあれか? 本当にあれなのか!?」

 

 シノの驚きの声が周囲に響く。

 バスから下りた俺達の前には、エルフの姿がある。

 そんなエルフ達を見て、シノが絶叫したのだ。

 無理もないか。

 元々が女好きのシノだ。

 そんなシノの前に、種族の特徴として美形が揃っているエルフ達がいるのだから、興奮するのは自然な流れだった。

 夜な夜な……って程ではないが、それでもシノは結構な頻度でクリュセの風俗店に行ってるらしい。

 そんな女慣れ――と表現してもいいのかどうか微妙だが――しているシノにとっても、エルフ達は美形揃いでテンションが上がるのだろう。

 シノに見られたエルフ達は、困った様子を見せる。

 あるいはここに俺がいなければ、もっと塩対応をしたかもしれない。

 だが、自分で言うのも何だが、俺はエルフ達にとっては神の如き存在だ。

 そうである以上、そんな俺が連れて来たシノを素っ気なく扱う事は出来ないのだろう。

 もっとも、エルフが美形揃いだというのは、ファンタジーあるあるだ。

 そしてエルフと言えばある意味でファンタジーの代名詞でもある。

 色々な世界からホワイトスターに来た住人達の中でも、初めて来た者達はエルフを見て驚いたり、テンションが上がってシノのようになる者もそれなりにいる。

 それで問題を起こせば、その人物の所属する世界全体にペナルティがあるので、暴走する者は決して多くはないのだが。

 あくまでも多くはないで、中にはエルフという存在に暴走する者もいたりする。

 

「アクセル様、何か御用でしょうか?」

 

 近くにいたエルフの女が、俺にそう声を掛けてくる。

 ちなみにエルフと言えば貧乳……もとい、スレンダーというイメージを持っている者が多いし、実際にそれは全体的に見れば決して間違っている訳でもない。

 それと同様に、ダークエルフは男好きのする身体をしている者が多いが、こちらもまたダークエルフだから全員巨乳という訳でもない。

 エルフでも巨乳な者はいるし、ダークエルフでスレンダーな者はいる。

 その辺を知らず、エルフというだけで何らかの固定概念を持っている者がエルフやダークエルフを見て、想像と違ったといった様子でがっかりしたりするのは、それなりにある。

 ありすぎて、ホワイトスターのエルフやダークエルフは、そういう相手を見るとまたかといった様子で呆れるだけらしいが。

 

「お前達が育てている野菜の種で余っているのがあったら、ちょっと貰えないかと思ってな」

「種を……ですか? それは別に構いませんけど」

 

 そう言いつつ、そのエルフは近くにいた別のエルフに視線を向ける。

 するとその視線の意味を理解したエルフは、すぐにその場を離れた。

 何をしに行ったのかは、考えるまでもなく明らかだ。

 俺が種の事を口にしたので、その種を取りに行ったのだろう。

 何かで聞いたが、植物の種というのは悪くなるという事は基本的にない。

 例えば何らかの植物の種があったとして、それがあるのを忘れていて数年後に発見して、その種を植えても普通に発芽するらしい。

 それどころか、何らかの理由で見つかった数百年前の種ですら、普通に発芽することもあるという。

 そう考えると、種として取っておいても全く問題はない。

 エルフ達が持ってくるのは、恐らくそうした種なのだろう。

 ……あ、でも今の言葉だと俺が種を欲しいと勘違いして、一番良い種……それが具体的にどういう種かは分からないが、とにかくそういう種を持ってきたりしないか?

 

「一応言っておくが、種はこっちの……」

 

 そう言い、俺は少し離れた場所で興味深そうに周囲の様子を見ていた三日月に手招きをする。

 

「何?」

「この三日月が農業に興味があるから、こいつが使う為のものだ。そこまで質の良い物じゃなくてもいいぞ」

 

 こう言っておけば、取りあえず問題はないだろう。

 勿論、質の良い物じゃなくてもいいと言ったからといって、質の悪い物を持ってくるような事はしないだろう。

 そもそも、質の悪い種をわざわざ残しておくとは思えないし。

 

「分かりました」

 

 エルフが俺の言葉に頷くと、近くにいたエルフに視線を向ける。

 するとそのエルフはすぐに移動する。

 先程移動したエルフに、今の話を伝えにいったのだろう。

 

「ねぇ、アクセル。この人達から種を貰うの?」

「ああ。サクラ農園で育てている中で入れてみたらどうだ? もしかしたら、それがいい金になるかもしれないぞ」

「……そうなの?」

 

 俺の言葉に、少しだけ興味深そうな様子を見せる三日月。

 

「あくまでもそうなるかもしれないといった感じだけどな。植物というのは、育つ環境によって大きく変わる。このホワイトスターで育てられている植物も、オルフェンズ世界では普通とは違う育ち方をする可能性も否定出来ない」

 

 その方向性が良いか悪いかはまた別としてだが。

 良い方に進めば、味のいい野菜になったり、通常よりも実が多くなったり、大きくなったりするかもしれない。

 悪くなれば、その逆に……最悪、芽すらも出て来ない可能性がある。

 もっとも、オルフェンズ世界の火星の環境は基本的に地球とそう違いはない。

 そういう意味では、世話の仕方さえ間違えなければ普通に育つと思う。

 厄祭戦前のオルフェンズ世界の技術力は、そういう意味では高かったんだよな。

 マクロス世界にも匹敵するようなテラフォーミング技術なのだから。

 テラフォーミング技術という点ではナデシコ世界もかなり高いものがあるが、ナデシコ世界の火星で採れる野菜は、ナノマシンによるテラフォーミングのせいか、不味いらしいし。

 そういう意味では、マクロス世界やオルフェンズ世界のテラフォーミング技術に劣ってしまう。

 まぁ、そういう技術のない世界として考えれば、ナデシコ世界の技術でも十分に意味があるのかもしれないが。

 

「ふーん。……じゃあ、ちょっと聞いてもいい?」

「構わない。頼めるか?」

 

 後半はエルフに向けてのもの。

 するとエルフは一瞬の躊躇もなく、すぐに頷く。

 

「分かりました。アクセル様の頼みとあれば。ただ……植物の育て方について教えるとなると、相応の時間が必要になります。どうしますか?」

 

 エルフの言葉に、それはそうかと納得する。

 植物を育てると一口で言うが、その植物によって世話の仕方は違ってくる。

 例えば多めに水をやる必要がある野菜があるかと思えば、水は最小限にしないといけない野菜もある。

 あるいは雑草を抜く頻度や、使ってもいい農薬といった具合に。

 他にも数え切れない程に注意事項はあるだろう。

 それを今この場ですぐに教えろという方が無理だ。

 

「三日月……そいつは農業については素人に近い。基本的な事を頼む」

 

 サクラ農園で幾つかの野菜とかを育てているらしいが、やっているのはその程度だ。

 サクラ農園で働いている者達からある程度は教えて貰ってるのかもしれないが、それを加味して考えても、素人より少しマシといった程度だろう。

 だからこそ、ある意味でその手の専門家と呼ぶに相応しいエルフ達から教えて貰うのは悪くない経験になるだろう。

 もしそれでしっかりとして知識が身につくのなら、それなりに頻繁に三日月をホワイトスターに来られるようにしてもいい。

 もっとも、異世界間貿易についての提携とか、その辺の状況次第ではどうなるか分からないが。

 それに三日月は何だかんだと、それなりに血の気が多い。

 場合によってはホワイトスターで騒動を起こす可能性もある。

 ……もっとも、そうなってもそこまで大きな影響はないだろうが。

 いやまぁ、ホワイトスターに来ている全員が魔力や気による身体強化が出来る訳ではない。

 そういう者達にしてみれば、もし拳銃で狙われたりしたら致命傷になってしまう。

 ただ……量産型Wやコバッタがいる以上、何か騒動があってもすぐに鎮圧されるだろう。

 

「分かりました。三日月さんですね。では、こちらへどうぞ。簡単にですが説明しますので」

「うん、分かった。……オルガ、じゃあちょっと行ってくるね」

「あー……迷惑は掛けないようにしろよ。すいません、兄貴」

 

 三日月の言葉にそう返すと、オルガは俺に向かって頭を下げてくる。

 

「気にするな。それより、三日月の件が一段落するまで、この公園で休むか? それとも……そうだな。博物館にでも行くか?」

 

 ここでワイバーンのいる牧場と口にしなかったのは、牧場はある意味でこのホワイトスターの目玉だからだ。

 もっとも、博物館には門世界に存在するオーガとかの、いわゆるファンタジーな生物の剥製とかがある。

 それもそういうのが好きな者にしてみれば、かなり興味深いものだろう。

 ……三日月がそういうのに興味があるとは思えなかったが。

 他にも魔力泉のスパがあるが、時間を考えるとそこで遊んでる暇はないんだよな。

 その辺については、また今度時間のある時にゆっくりと楽しんで貰えばいい。

 牧場についても、そっちの方がいいか?

 ワイバーンの騎乗体験とか、希望する者が多いと時間も足りなくなるし。

 そう考える俺の言葉に、オルガはやがて頷くのだった。

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