転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4057話

 UC世界に行った翌日、俺はオルフェンズ世界でオルガと話していた。

 

「それで、兄貴。異世界の件については、やっぱり名瀬の兄貴には……」

「今はまだ言わない。少し心苦しいと思わなくもないけどな」

 

 ジャスレイの一件を考えると、テイワズに異世界の事について話す訳にはいかないのも事実。

 あるいは、ギャラルホルンの内乱をこっちが意図的に起こすという意味では、ジャスレイに情報を流して、それによってギャラルホルン……より正確にはラスタルの派閥を暴発させるといった手段がない訳でもないが。

 ただし、もしそれをやるとすれば、しっかりとこっちの準備が整ってからになる。

 それは今ではない。

 名瀬がテイワズに……より正確にはマクマードに話をしないのなら、異世界の存在について話してもいいとは思うんだが。

 だが、名瀬の義理堅さを考えると、異世界の存在を知ればマクマードに知らせない訳にはいかないだろう。

 これが例えばちょっとした事……そう、例えばどこかのスペースデブリからエイハブ・リアクターを数個纏めて見つけたとか、そういう事であれば、わざわざ名瀬もマクマードに知らせようとは思わない筈だ。

 だが、異世界という存在になれば、名瀬としてもマクマードに知らせない訳にもいかないだろう。

 あるいは、名瀬とマクマードだけならそれはそれで構わない。

 だが、そこまで知られると、どうしても情報が漏れる可能性が出てくるのも事実。

 絶対に情報が漏れると断言出来る訳ではないが、同時に絶対に情報が漏れないと断言出来る訳でもないのだから。

 

「そうですか。……けど、近いうちに名瀬の兄貴は火星に顔を出すって言ってましたよね? ゲートでしたか。あれはどうするんです? それに量産型Wやコバッタでしたか。そっちの問題もありますし」

 

 そう言いつつ、オルガは窓の外を見る。

 そこでは量産型Wがシャドウミラーのパイロット達を相手に模擬戦を行っていた。

 勿論、模擬戦とはいえ、量産型Wはガンドを使ったり、魔力や気の身体強化をしたりはしていない。

 そのような能力を使わず、普通に生身で相手をしているだけだが……昌弘が顎に1発貰い、その場に崩れ落ちる。

 量産型Wは確かに何も特殊な能力は使っていない。

 それは間違いないが、最新型……というか、少し前の量産型Wの身体を培養する時は、俺がFate世界で手に入れたギルガメッシュの腕の細胞を使って培養している。

 ギルガメッシュ本人は、俺にとっては道化以外の何者でもない。

 いやまぁ、色々な宝具をくれたし、腕の件もあるので道化というよりはボーナスキャラか?

 そんなギルガメッシュだったが、本人の性格はともかく能力……いや、この場合は潜在能力か? それは高い。

 それも並のサーヴァントでは対抗出来ないくらいに。

 それだけに、余計にそれを使いこなせないのが呆れるが。

 いやまぁ、市長としての能力は高いのだろうが。

 とにかく潜在能力は高く、その身体の一部があるのだから、それをベースに量産型Wの身体は培養されるようになったのだ。

 そして当然ながら、培養された身体の持ち主である量産型Wにギルガメッシュの名残はない。

 つまり、ギルガメッシュの持つ身体能力を十分に活かしている訳だ。

 勿論、あくまでも培養された身体である以上、ギルガメッシュの持つ力の全てを活用出来る訳ではない。

 個体によって能力差はあるが、レモンに聞いたところ、最高でも3割くらいしか使えていないらしい。

 まぁ、それでも十分に強力なのは、オルフェンズ支部の者達を相手に模擬戦で一方的に勝利してるのを見れば明らかだったが。

 

「名瀬の兄貴があれを見たら、一体どういう事かと驚きますけど……どうするんです?」

「シャドウミラーの機密であるとでも言っておくか」

 

 実際、それは間違いないではない。

 量産型Wはシャドウミラーの機密の1つであるのは間違いないのだから。

 ……ただし、シャドウミラーはシャドウミラーでも、それはあくまでも本家のシャドウミラー、ホワイトスターを本拠地としているシャドウミラーの機密なのだが。

 ただシャドウミラーと言っても、名瀬にしてみればオルフェンズ支部の事を思うだろう。

 そのように思うだろうが、俺がわざわざそれを訂正してやる必要はない。

 とはいえ、それでも全てを黙っているという訳にもいかないだろうし……阿頼耶識の手術で失敗した者を治せるようになったとでも言うか?

 いや、それはそれで不味いか。

 もしそういう風に言えば、それこそどこからともなくその話を聞いた者が阿頼耶識の手術に失敗した者達を連れてきて、治して欲しいと頼んでも不思議ではないのだから。

 阿頼耶識の手術に失敗した者は産廃と呼ばれ、文字通りゴミの如き扱いになる。

 そして阿頼耶識の手術は決して成功率が高い訳ではない。

 そういう意味では、3回も阿頼耶識の手術をして、その全てに成功した三日月は素直に凄いよな。

 さすがこの世界の原作の主人公だけの事はある。

 ともあれ阿頼耶識の手術がそういう感じである以上、失敗して産廃と言われる状態になった者は多い。

 そのような者達は大抵がスラム街の出身であったり、あるいはヒューマンデブリだ。

 中にはそういうのに憧れるといったような例外も存在するかもしれないが、例外だけにそういうのは本当に少数なのだ。

 だからこそ、それを治せる技術があると知れば……あ、いや。でも待てよ?

 オルフェンズ支部では無理でも、技術班……特にレモンとかなら、そういうのも治そうと思えば治せるか?

 とはいえ、阿頼耶識というのはナノマシンだ。

 そしてシャドウミラーでは、ナノマシン系の技術の研究はあまりされていない。

 どういう理由だったか。……あれ? いや、でもうーん……ちょっと思い出せないな。

 となると、多分俺の原作知識に何か関係があったりするのか?

 実際、理由は分からないものの、俺の中にナノマシンに対する嫌悪感は間違いなくある。

 ただ、俺がそう思っているからといってナノマシンの研究をさせないというのもどうかと思うんだよな。

 幾つかの世界では、ナノマシンが普通に使われているし。

 だとすれば、技術班にはナノマシンの研究をさせてもいいかもしれないな。

 産廃の治療というのも、オルフェンズ世界においては歓迎される……うーん、どうだろうな。

 勿論、産廃になった者達にしてみれば歓迎するだろう。

 だが、オルフェンズ世界において、義手や義足、阿頼耶識といった諸々は嫌悪感を持たれている。

 実際、阿頼耶識の手術を受けた者達は宇宙ネズミと言われて嫌悪されているし。

 そう考えると、阿頼耶識の手術を失敗した者達を治すという事をしても、多くの者達には喜ばれないだろう。

 治療をされた者達……産廃と呼ばれている者達にしてみれば、自分達を治療してくれたという事で、それを行ってくれた……自由に動けるように治療してくれたという意味で、強い忠誠心を抱く兵士を手に入れられるという利点もある。

 

「兄貴?」

「オルガ、産廃って知ってるよな?」

「……ええ」

 

 俺の言葉に頷くオルガだったが、その顔には強い嫌悪感がある。

 多分……というか、間違いなくオルガの知り合いにも産廃になった者達がいるのだろう。

 

「もしそうなった連中の治療が出来るとしたら、どう思う?」

「……は?」

 

 オルガは俺が一体何を言ってるのか分からないといった様子で、そんな声を上げる。

 

「ホワイトスターで研究をすれば、阿頼耶識の手術で失敗して動けなくなった連中の治療も可能かもしれない」

「本当ですか?」

「あくまでも可能性があるというだけだ。それに……こう言ってはなんだが、もし治療をしたとして、その治療費をどうするのかという問題もある。今のところはシャドウミラーで働いて治療費を返すといった感じで考えてるけど」

「もしそれが本当に出来るのなら、俺も協力は惜しみません。ただ……問題なのは、阿頼耶識の手術に失敗した連中がどれだけ生き残ってるかです」

 

 そう言うオルガの表情には、苦々しさがある。

 言われてみればそうか。

 阿頼耶識の手術に失敗した者の多くは、身体の一部、あるいは全てが動かなくなったりする。

 そして阿頼耶識の手術を好んで受けるような者は、スラム街の出身やヒューマンデブリ達だけだ。

 いや、ヒューマンデブリの方は好んでというか、買った奴が強制的に受けさせるんだろうが。

 とにかく、阿頼耶識の手術に失敗した者が生き残る可能性は低い。

 最悪の場合、手術が失敗した時点で処分されてもおかしくはないのだから。

 スラム街なら、もしかしたら戻されるかもしれないが、スラム街で身体が動かないというのは致命傷だ。

 スラム街では、それこそ1人で生き残るのですら難しいのだ。

 そんな場所で身体がろくに動けないとなれば、殺されるか……もしくは自殺をする者がいてもおかしくはない。

 そんな状況を考えると、阿頼耶識の手術を失敗した者が全員生きている、あるいは全員死んでいるという可能性は低いだろうが、それでも生き残りの数はそう多くはないのは間違いない。

 

「鉄華団ではもう阿頼耶識の手術はしてないんだよな?」

「はい。希望する奴は何人もいましたが」

 

 自分達が直接阿頼耶識の手術を受けてきたオルガにしてみれば、新しく入ってきた者達に自分達と同じ目に遭わせたいとは思わなかっただろう。

 ただ、そういう新人だからこそ自分達も阿頼耶識の手術を受けたいと思う者はいる筈だったが。

 何しろ、阿頼耶識の手術に成功すればMSを自分の手足のように動かせるのだ。

 つまりそれは即戦力になるという事で、そうなれば当然ながら給料も上がる。

 生き残るのに必死なスラム街出身の者達にしてみれば、阿頼耶識の手術を受けたいと思う者が多いというのは納得出来る事だ。

 ちなみにシャドウミラー……オルフェンズ支部の方では、阿頼耶識の手術を受けたいという者はいない。

 元々オルフェンズ支部においては、阿頼耶識を使っているのは昌弘達のような、ブルワーズでヒューマンデブリとして阿頼耶識の手術を受けさせられた者達だけだというのが、大きいだろう。

 後は基本的にスラム街出身の子供達は、自分達と同じくスラム街から成り上がったオルガが率いる鉄華団の方に行くからというのが大きい。

 オルフェンズ支部で雇うのは、基本的に事務職とかそういう大人だけだし。

 ……とはいえ、全員が全員そうだという訳でもない。

 中には何を思ったのか、鉄華団ではなくオルフェンズ支部に就職しようとする者もいる。

 とはいえ、当然ながら阿頼耶識の手術を受けさせるつもりはないが。

 ああ、でもそうだな。そういうのの研究をするのなら、ホワイトスターの技術班に阿頼耶識の手術用の一式を幾つか渡しておいた方がいいかもしれないな。

 他にもナノマシンとなると、ナデシコ世界やマクロス世界……それにW世界もそうだったか?

 他にも調べてみれば、ナノマシンを使っている世界というのはあるかもしれない。

 いざ技術班が研究を始めるとなると、色々な世界からナノマシンの資料とか技術とかそういうのを入手出来そうだな。

 

「よし、やっぱりナノマシンの研究をやろう」

「……兄貴、ありがとうございます」

「言っておくが、手術を失敗した連中を助ける為に決めた訳じゃない。シャドウミラーの利益になると思ったからだ」

 

 自分で言っておいてなんだが、ツンデレっぽい反応だな。

 とはいえ、現在重要なのはナノマシンの研究だ。

 阿頼耶識の手術が失敗した者達を助けるのは、あくまでもその副産物でしかない。

 スラム街の住人である以上、助けられたという事でシャドウミラーに強い忠誠心を持ってくれる者もいるが、感謝も何もなく、あっさりと離れていくような者がいてもおかしくはない。

 そういう事を考えると、阿頼耶識の手術で失敗した者を治療しても、そこまで期待しない方がいいだろう。

 

「それでも……助けてくれるなら感謝しますよ。俺の知り合いにも、そういう奴はいるんで」

「だろうな」

 

 鉄華団の前身だったCGSに、スラム街の子供達のセーフティネットの役割があったのは間違いないだろう。

 だが、そのセーフティネットは阿頼耶識の手術を受け、それが成功するというのが前提になっていた。

 果たしてそれをセーフティネットと呼んでもいいのかどうかは微妙だが。

 ただ、それでもCGSのお陰でオルガや三日月を始めとした面々が生き残れたのも事実。

 ……とはいえ、最初はともかく俺がCGSについて知った時は、既に参番組は使い捨ての捨て駒といった扱いだったが。

 扱い的には、ヒューマンデブリより少しマシといった程度だろう。

 

「まぁ、その件については長い目で見ておいてくれ。……ああ、それとホワイトスターと行き来出来るようになった以上、これからは俺もこのオルフェンズ世界だけにいるという訳にはいかないと思う。もし俺がこの世界にいない時に用件がある場合、これを使ってくれ。これなら俺が他の世界にいても連絡が取れるから」

 

 そう言い、俺はシャドウミラー用の通信機をオルガに渡すのだった。

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