転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4067話

 俺がUC世界でフィフス・ルナに行ってから数日……今日、俺はクリュセにあるアドモス商会の社長室にいた。

 ソファに座る俺の向かいにいるのは、クーデリア。

 その側には秘書のフミタンとククビータがいる。

 このククビータという女は、アドモス商会の事務のトップだ。

 オルフェンズ支部で言うところの、シーラの立ち位置だな。

 もっとも、書類仕事についてはフミタンもやっているし、ククビータが社長秘書をやったりする。

 ククビータは肝っ玉母さんといった外見の女で、実際頼り甲斐があるとクーデリアからも聞いてる。

 

「それで……その人物、アリウム・ギョウジャンだったか? そいつが動くと?」

「はい、残念ながら間違いないでしょう」

「まぁ、アリウムにしてみれば、クーデリアだけがこんなに活躍してるのはおかしいという思いもあるんだろうな」

 

 アリウム・ギョウジャンという男については、俺も知っている。

 クーデリアが表舞台に大々的に出た、ノアキスの7月会議。

 俺はそこでクーデリアの護衛をしていたが、そもそもクーデリアをノアキスの7月会議に出したのが、アリウムだった。

 その会議場でアリウムの顔も見ているし、少しだが会話もしたので、そういう意味では俺にとっても友人は勿論知人でもないが、顔見知り程度の相手ではある訳だ。

 そんなアリウムだが、クーデリアを表舞台に出したのは自分だという思いがある。

 だからこそ、クーデリアだけがここまで大きく……そして重要人物として扱われているのが不満だったのだろう。

 ましてや、クーデリアは蒔苗との交渉であったり、俺との関係であったり、テイワズから投資を呼び込んだり……といったように、大きな活動が目立つ。

 ハーフメタルの新しい採掘場も稼働し始めており、それもまたアドモス商会が大きく関係している。

 それと比べて……

 

「アリウムの率いている組織の方はどんな感じなんだ?」

「活動が縮小していますし、人数も減っているようです。だからこそ、私に協力して欲しいと言ってきたのでしょうが……裏で色々と後ろ暗いところがあるらしいと前々から聞いていたので、断りました」

 

 後ろ暗いところという意味では、当時の火星の状況を思えば仕方がないだろうとは思う。

 実際、火星がどのような場所なのかという事を考えれば、後ろ盾が必要なのは間違いなかったのだから。

 ただ、クーデリアの行動でクリュセ……正確にはクリュセ独立自治区やその周辺においては、その辺りはかなり改善されてきている。

 というか、シャドウミラーと鉄華団というPMCが存在するのが大きい。

 ギャラルホルンを相手に連戦連勝を重ねた戦力を持つそんな2つのPMCがある以上、他のPMCはあまり仕事がない。

 いやまぁ、勿論クリュセ周辺の武力を使う仕事の全てを俺達や鉄華団で出来る訳ではない以上、俺達が出来ない仕事をやっているPMCとかも存在しているのだが。

 ともあれ、以前と比べてPMCが減った、もしくは規模が縮小したのは間違いない。

 

「後ろ暗いところか。……どういう組織と繋がっているかだな」

「はい、アクセルには悪いですが、恐らく近いうちに何か大きな動きがあるでしょう。シャドウミラーの協力をお願い出来ますか?」

「ああ、こっちは構わない。鉄華団はどうする?」

「そちらにもアクセルから声を掛けて下さい。どのような事が起きるのか分からない以上、戦力は多い方がいいでしょう」

「分かった。……とはいえ、俺もずっとクーデリアと一緒にいるという訳にもいかないしな。ああ、そうだ。量産型Wを1人派遣するか? 出来れば複数派遣するのがいいんだろうが、同じ外見なのが何人もいるのは問題になるかもしれないし」

 

 量産型Wは、生身での戦いでも魔力や気による身体強化であったり、魔法や魔術を使える。

 それこそ生身での戦いなら10人や20人どころか、特殊部隊が100人単位でいても問題はなかったりする。

 MSを出してこられると対処は難しかもしれないが、MW程度ならどうにかなりそうだし。

 

「それは……助かるけど、フミタン?」

「お嬢様から聞いた話が真実であれば、アドモス商会の力にもなるかと」

 

 アドモス商会という名前を口にしようとしたフミタンが、少しだけ照れ臭そうにする。

 既にアドモス商会が出来てからそれなりの時間が経っているのだが、それでもフミタンにしてみれば自分の名前……正確には名字だが、それが会社の名前となっているのに思うところがあるのだろう。

 

「その辺については問題ない」

 

 書類仕事とかについて有能なのは、それこそオルフェンズ支部で働いているのを見れば明らかだ。

 ホワイトスターの方や、UC世界の月でもしっかりと働いているし。

 

「そうですか。では、お願いしてもいいのではないでしょうか? ……それにしても……異世界、ですか」

 

 フミタンは微妙な表情で俺を見てくる。

 ククビータもそんなフミタンと同じだ。

 ……いや、寧ろ俺とそこまで親しくない事もあってか、フミタンよりも強い疑惑の視線を向けてきていた。

 まぁ、それも無理はない。

 普通に考えて、異世界などというのは到底信じられないものだし。

 それでもこの2人が否定しないのは、実際にクーデリアがその異世界……ホワイトスターに行ってるからだろう。

 もっとも、何かで騙されているのではないかといったように思っていそうでもあったが。

 

「今は忙しいから難しいかもしれないが、アリウムの件が一段落したら、一度ホワイトスターに連れていくよ。その時、クーデリアが言った、そして行った異世界というのが本当かどうかを確認すればいい」

 

 俺が幾ら異世界だとか口にしても、それを聞いただけでは素直に信じられる筈もない。

 ……いや、でもフミタンはクーデリアの告白の時に離れた場所で控えていたから、俺とクーデリアの会話を聞いていた筈だ。

 その時に異世界云々の話はしたのだから、知っている筈なんだが。

 あるいは、俺の説明については納得していたものの、それが本当だとは思っていなかったとか。

 

「そうですね。1度実際に行ってみれば、はっきりとするでしょう」

 

 そう言うフミタンの言葉にククビータも頷くのだった。

 

 

 

 

 

「分かりました、兄貴。うちもその件については協力させて貰います」

 

 オルガの言葉に俺も頷きを返す。

 

「今度行われる、ハーフメタルの採掘工場の視察。恐らく何か仕掛けて来るとすればそこだろう」

 

 クーデリアから聞いた話だと、アリウムはその視察について知っていたらしい。

 この視察は、クーデリアにとっても大事なものだ。

 具体的には、クリュセ独立自治区だけではなく、他の国の植民地となっている場所からも人を呼んで見学を行う。

 当然ながら、その件については機密度が高い。

 何しろ、結構なお偉いさんも来るらしいしな。

 だからこそ、クーデリアも可能な限り情報を漏らさないようにしていたのだが、アリウムはその件について知っていたらしい。

 アリウムの率いる組織はかなり弱体化しているらしいが……それでも相応の実力はあるという事なのだろう。

 そしてその視察については自分も協力する……つまり、クーデリアと一緒に参加するといった風に言っていたんだとか。

 ククビータによると、組織が危ないので起死回生を狙ってクーデリアの名前を使おうとしているという事だった。

 そしてフミタンは、あわよくばハーフメタル利権に自分達も食い込もうと……それどころか、アドモス商会の持っている利権を全て自分達が奪おうと考えていてもおかしくはないという事らしい。

 もっとも、その気持ちは分からないでもないんだが。

 アリウムにしてみれば、クーデリアは自分の教え子……もっと言えば、自分の駒のような存在な訳で。

 だからこそ、クーデリアの所有物は自分にも所有権があるといった風に思っているのだろう。

 だが、クーデリアははっきりとそれを断った。

 フミタンやククビータから聞いた話によると、その時のアリウムの顔は引き攣っていたらしい。

 自分の駒と思っていたクーデリアに、ここまではっきりと断られたのだ。

 そんなアリウムが動くとすれば、やはりその原因となったハーフメタルの採掘の視察の時だろう。

 自分の物にならないのなら壊れてしまえと思ったのか、あるいは無理矢理クーデリアを襲撃して自分に権利を譲るという契約書にサインでもさせる気なのか。

 ともあれ、視察の時に動く可能性が高いのは間違いない。

 ……あるいは、本当にあるいはの話だが、もし視察の時に動くという予想が外れても、それはそれで構わない。

 クーデリアの後ろには俺達がいるというのをはっきりと示せるし、その時に見せつけるMSの数で、こっちの戦力は十分に分かるだろう。

 その辺りの説明をすると、オルガは大きく息を吐く。

 

「そうなると、バルバトスがないのは痛いですね」

「そうだな。もっとも、こっちもグシオンがないが」

「……でも兄貴には、自分の機体があるでしょう?」

 

 オルガが言ってるのは、ミロンガ改かもしくはサラマンダーか。

 いや。サラマンダーは今のところ所属不明という風になっているから、ミロンガ改か。

 ……勿論、マクギリスやラスタルはサラマンダーが俺の機体だというのは、半ば……いや、確信しているだろう。

 何しろ俺が使っているミロンガ改とサラマンダーには共通の技術が使われていたりするのだから。

 ただ……マクギリスにしろラスタルにしろ、それを明らかにしても得る物はない。

 これで俺達がもっと小さな勢力であったり、あるいは戦力的に弱ければ、ミロンガ改やサラマンダーを接収しようとしたり、あるいは勢力そのものを吸収しようとするだろう。

 しかし、シャドウミラーの実力は被害を受けたという意味ではラスタルが一番よく理解出来ているし、俺達と最初に関わったマクギリスも実際にギャラルホルンが負けた光景を何度となく見ている。

 そんな2人が、俺達……いや、この場合は個人だから俺か。俺に無理を言ってくるということは、まず有り得ない。

 ……マクギリスの場合は、何故か俺をアグニカと同一視してるので、戦力云々の前に無理強いをしたりはしないだろうが。

 

「そうだな。でも、やっぱりこの世界でガンダムというのは特別だろう?」

「……まぁ、それはそうですが」

 

 俺のグシオンもそうだが、三日月のバルバトスも鉄華団の象徴として広く知られている。

 それだけ三日月の操縦するバルバトスは強烈な印象を残すのだろう。

 

「三日月には……いっそ、こっちでMSを用意するか?」

 

 幸い、オルフェンズ支部には結構な数のMSがある。

 あるいは……ホワイトスターからMSを持ってきてもいいかもしれない。

 ただしそうなると、三日月は阿頼耶識じゃなくて普通に操縦をする必要があるので、戦力ダウンになってしまうが。

 うん、やっぱ阿頼耶識対応のグレイズ辺りを用意した方がいいか?

 

「いえ、三日月にとってバルバトスは大事なMSです。ああ見えて、バルバトスを気に入ってるんですよ」

「三日月がか?」

 

 三日月なら、それこそMSは使えればそれでいいとか、そういう風に思ってそうなんだが。

 

「はい。ああ見えて、自分の乗っているMSに愛着を抱くんですよ」

「……オルガがそう言うのなら、多分それで間違ってはいないんだろうな」

 

 俺と三日月の付き合いは何だかんだと数年くらいにはなる。

 だが、オルガと三日月の付き合いは、それこそ10年くらいになる筈だ。

 そう考えると、三日月については俺よりオルガの方がよく知っているのは間違いない筈だ。

 

「それに、名瀬の兄貴からの連絡によると、バルバトスもそろそろ改修が終わる筈ですし」

「あ、そうなのか」

「はい、この前通信があった時にそう言ってました。……もっとも、それが火星に届くのと、そのアリウムとかいう奴が行動を起こすののどっちが先なのかはちょっと分かりませんけど」

「いっそ、歳星に行ってみるのもいいんじゃないか? バルバトスを受け取っても、機体の慣れとかは……ああ、阿頼耶識だとその辺はあまり心配しなくてもいいのか」

 

 阿頼耶識の有利な点の1つがそれだ。

 もし普通のパイロットが新しいMS――バルバトスの場合は全面改修だが――に乗ろうとした場合、MSを操縦する際の設定を自分に合わせる必要もある。

 世の中にはそういうのをしなくてもMSを操縦し、その性能を引き出せるような者もいるが、そのような者はやはり少ない。

 だが、阿頼耶識を使った操縦というのは、基本的にMSを自分の手足のように動かせるというものだ。

 それだけに、細かい設定とかはそこまで気にする必要はない。

 勿論、設定がしっかりとされていれば、その方がいいのは間違いないだろうが。

 

「そうですね。……もっとも、新人達に阿頼耶識の手術をするつもりはありませんが」

 

 苦々しげな様子で呟くオルガ。

 オルガにしてみれば、本来阿頼耶識の手術は望んでするものではないという認識なのだろう。

 何しろ、成功率は決して高くないしな。

 そんな風に思いつつ、俺はオルガとの話を続けるのだった。

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