転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4072話

「見つけた」

 

 敵の姿を捉えると、俺はミロンガ改のスラスターを全開にする。

 今、ミロンガ改の周囲には他のMSの姿はない。

 ……当然だろう。

 地上を歩いて、もしくは走って移動するMSと、空を飛ぶミロンガ改。

 そのどちらが速いのかは、考えるまでもなく明らかだ。

 それは例えば、MSの中でも突出した機動性と運動性を持つグリムゲルデであっても、空を飛ぶミロンガ改に追いつく事は出来ない。

 そんな訳で、俺は1機だけで先行して夜明けの地平線団の部隊を追っていた。

 ミロンガ改の速度なら容易に追いつけると思っていたが、それが見事に当たった形だ。

 ただ……MSもそうだが、MWがかなり多いな。

 俺が予想していたよりも倍……とまではいかないが、5割増しくらいの数だ。

 勿論、MWも戦力としては相応の強さを持つ。

 それこそ生身の人間を相手にした場合、圧倒的な強さを発揮するだろう。

 また、エイハブ・リアクターではないので街中で使えるという利点や、エイハブウェーブによって存在を察知されるという事もない。

 そういう意味では、決して悪くない兵器なのは間違いない。

 間違いないが……だからこそ、MSを相手にした時はどうしようもない。

 それこそ大人と子供、もしくは象と蟻。そんな感じか。

 そんなMWが大量にあるのは、それだけ夜明けの地平線団も今回の襲撃が本気だったという事なのだろう。

 

「まぁ、ヒューマンデブリとして売るにしろ、もしくはギャラルホルンに引き渡すにしろ、数が多いのは悪い話じゃない」

 

 呟きつつ、ミロンガ改を素早く夜明けの地平線団の前に移動させる。

 シャドウミラーのMSの移動が地上で遅いということは、当然ながら夜明けの地平線団のMS部隊も地上を移動するので遅い。

 まぁ、大きくジャンプして擬似的に空を飛ぶ……いや、この場合は跳ぶか? そういう事もやろうと思えば出来るのだろうが。

 

『何だ、てめえ……退け! 死にてえのか!』

 

 先頭にいたMS……ユーゴーか? それが外部スピーカーで叫ぶ。

 こうして真っ先に叫んだいう事を考えると、もしかしたらこのユーゴーのパイロットが火星に降下した部隊の隊長的な存在なのかもしれないな。

 

「死ぬ? 俺がか? 笑えない冗談だな。それより、大人しく降伏しろ。そうすれば死なないですむぞ」

 

 こちらもまた、外部スピーカーでそう返す。

 すると、数秒の沈黙の後、再びユーゴーのパイロットが口を開く。

 

『その声……そうか。てめえがさっき追撃するとか言っていた、シャドウミラーの……』

 

 どうやら、意図的に聞かせるつもりで口にしたオープンチャンネルでの俺の言葉が聞こえていたらしい。

 

「正解だ。それで、どうする? 大人しく捕まるか、それとも俺と戦うか。本隊が宇宙にいる以上、ここにいる戦力だけでどうにか出来るとは思っていないだろう?」

 

 その言葉に相手は沈黙する。

 あるいは戦力が万全の状態……シャドウミラーや鉄華団と戦う前の状態であれば、相手がミロンガ改だけという事で攻撃をしてきた可能性もあるが。

 既にその戦闘によって戦力は大きく減らされ、MSの数は既に3機まで減っている。

 MWの数はまだかなりの数がいるものの、MWでMSに――ミロンガ改は正確にはMSではないのだが――対抗するのは非常に難しい。

 

「で、どうする? お前達が俺を相手に勝利するのは不可能だと思うが」

『……ふざけるな。俺達が、夜明けの地平線団が、お前達のような連中に……』

 

 それは、夜明けの地平線団という、非常に大きな海賊だからこその自尊心か。

 自尊心というのは、現実を見つめるのは難しいと思えるらしい。

 

「じゃあ、徹底抗戦という事でいいな? ……今この状況で俺が降伏を勧告するのは、せめてもの温情なんだぞ? それを十分に理解した上で返答をしろ。これが最後通告だ」

 

 そう言い、相手の返答を待つ。

 ここで一気に攻撃をしてもいいのだが、そうなるとMWを逃がすようなことになるかもしれない。

 MSは確実に撃破出来るが、MWはどうしても小さいので、四方八方に逃げ出せば、その全てを撃破するのは難しい。

 ましてや、商品として売るには完全に撃破したりは出来ないし。

 

『最後通告? 面白ぇ、ならこれが俺の最後通告だ!』

 

 その叫び、ユーゴーは持っていたライフルをこちらに向けようとするが……

 がん、と。

 次の瞬間、反撃しようとしたユーゴーの後ろにいた別のユーゴーが、持っていたメイスを振るう。

 その狙いは、俺……ではなく、こちらにライフルを向けようとしたユーゴーだ。

 

『がっ……』

 

 声を上げたユーゴーのパイロットにしてみれば、完全に予想外の一撃だったのだろう。

 それだけに悲鳴が外部スピーカーから聞こえると、そのまま沈黙する。

 どうやら今の衝撃で気絶したらしい。

 大体の話の流れは分かるものの、それでも一応という事で尋ねる。

 

「何のつもりだ?」

『降伏する』

 

 端的に言ってくるその言葉に、俺はミロンガ改の顔を動かして周囲の様子を確認する。

 すると残っていたもう1機のユーゴーも持っていた武器を下ろし、MWも動きを止めていた。

 そして……遠くには、グリムゲルデと、それから大分遅れてMS隊の姿が見える。

 なるほど、恐らくこれを察知して、もう逃げるのは不可能だと判断したんだろうな。

 あるいはMWであればさっきも考えたように、一気に全てのMWが四方八方に逃げ出せば逃げ切れるかもしれないが……それでも結構な数が死ぬのは間違いない。

 そして誰が死ぬのかは、完全に運任せだ。

 ……また、この連中は知らないだろうが、ミロンガ改にはエナジーウィングの掃射という攻撃方法もある。

 射程そのものはそこまで長くはないが、その代わり広範囲に攻撃出来る能力を持つ。

 そうなれば、それこそMW隊は全滅する可能性は十分にあった。

 MWの被害が大きすぎるので、個人的にはあまりやりたくはなかったが。

 そういう意味では、こうして大人しく降伏してくれたのは助かった訳だ。

 

「分かった。降伏を受け入れる」

 

 降伏してくれれば、MSやMWも無傷なままで入手出来るし、パイロット達もヒューマンデブリとして売るなり、ギャラルホルンに突き出すなり出来る。

 死んでれば……死体は当然ながら売れないので、ギャラルホルンに引き渡すだけか?

 向こうがそれを受け取ってくれるかどうかは、また別の話だが。

 

『アクセル、どうしたの?』

 

 近付いて来たグリムゲルデからの通信。

 

「降伏するらしい」

『あら。……まぁ、普通に考えれば仕方がないでしょうけど』

 

 そう言いながらも、マーベルの顔には呆れの色がある。

 海賊として行動しており、それで自分達が負けたら呆気なく降伏してくるのだから、マーベルにしてみれば呆れる他ないという事だろう。

 

「まぁ、そう言うな。お陰でMSやMWが無傷で……」

 

 そこで言葉を止めた俺は、先程背後から殴られたユーゴーに視線を向ける。

 仲間に背後からメイスで殴られたそのユーゴーは、背中の部分に相応のダメージがある。

 

「殆どが無傷で入手出来たし、悪くない結果だろう?」

『そうね。それで、これからどうするの?』

「まずはシーラやクーデリア、オルガと相談だな」

 

 この連中が俺達だけを狙って来たのなら、その対応は俺達で勝手に決めてもいい。

 だが、ハーフメタルの採掘施設を襲ってきたという事は、シャドウミラー、鉄華団、アドモス商会に関係してくる。

 そうである以上、ここで俺が勝手にこの連中をどうするのかというのを決める訳にもいかない。

 

『じゃあ……まずは、MSやMWから下ろして、全員を連れて行く必要があるわね。トラックを回して貰う?』

「そうしてくれ」

 

 これだけの人数となると、移動させるのも一苦労だ。

 MSやMWは空間倉庫に入れればいいから、特に問題はないのだが。

 俺の言葉を聞くと、マーベルがMSやMWから下りるように指示を出す。

 ……この世界は男尊女卑の風潮もそれなりにあるのだが、さすがにこの状況でマーベルに逆らうような奴はいない。

 後からやって来たMS隊も影響してるのかもしれないが。

 あるいは、グリムゲルデの戦いを間近で見たから、それどころではないと判断したのかもしれないが。

 そんな風に思いつつ、俺は一応という事で周囲を警戒するのだった。

 

 

 

 

 

「うーん、ヒューマンデブリか、ギャラルホルンに引き渡すか……難しいところですね」

 

 オルガが悩ましげに言う。

 昭弘達の件もあるので、基本的にオルガはヒューマンデブリに良い感情は持っていない。

 ああ、それは別に昭弘達に良い感情を持っていないという訳ではなく、ヒューマンデブリというシステムそのものに対してだ。

 そういうオルガだったが、それでも今はそれを表に出していないのは、自分が経営者だからというのもあるが……それ以上に、捉えた夜明けの地平線団の面々はその大部分が大人だったからというのがある。

 つまり、今までヒューマンデブリをいいように使ってきた者達だ。

 なら、そういう連中がヒューマンデブリとして売られても、自業自得だろう。

 ちなみに捕らえた者の中には当然のように子供のヒューマンデブリもいたが、こちらについてはシャドウミラーと鉄華団でそれぞれ受け入れる予定となっていた。

 幸か不幸か、ヒューマンデブリ達は無気力というか、上からの命令に唯々諾々と従う者が大半だったので、俺達にとってはやりやすかったのは間違いない。

 で、そうなると問題なのは大人の海賊達の取り扱いになる訳だ。

 

「私は、ギャラルホルンに引き渡した方がいいかと」

 

 クーデリアのその言葉は、俺にも予想は出来ていた。

 クーデリアは何だかんだと優しい。

 それだけに、ヒューマンデブリがどのような扱いを受けるのかを知っている。

 だからこそギャラルホルンに引き渡した方がいいと口にしたのだろうが……

 

「けど、問題なのはギャラルホルンがどのくらい引き受けるかでしょうね」

 

 シーラのその言葉に、クーデリアは何かに気が付いた様子でシーラに視線を向ける。

 

「だろうな。俺もシーラの言う通りだと思う。幹部とかそういうのがいれば、ギャラルホルンでも情報を引き出す為とかで欲しがるかもしれないが、下っ端となるとな」

 

 そう付け加える。

 今言ったように、幹部であればギャラルホルンも情報源として引き受けるだろうが、ただの下っ端はギャラルホルンが引き受けてもどうにもならない。

 囚人としたところで、その世話に人数を取られるし、食費も必要だ。

 ……いっそ、UC世界みたいに囚人達に農業でもやらせるという手もない訳ではないが、ギャラルホルン的にそれはあまり好ましくないだろう。

 そうなると、それこそさっさと処刑にするか……場合によっては、ヒューマンデブリとして売り払うという可能性も否定は出来ない。

 MSやMWを操縦出来るという意味では、それなりの戦力となる訳だし、あるいは鉱山の採掘でもさせるという方法もある。

 その辺については、生憎俺も何がどういう風になるのかは分からないのだが。

 とにかく、捕虜になった海賊達の未来は明るくないのは間違いなかった。

 

「そうなると、やっぱりヒューマンデブリですが……どこに売ります? ちなみにうちはいりませんが」

 

 オルガにしてみれば、海賊をヒューマンデブリとして入手しても、意味はないと考えたのだろう。

 実際、その判断は間違いではないだろうし、俺達もいらない。

 

「普通に考えれば、テイワズかタントテンポか?」

 

 名瀬のタービンズもあるが、タービンズは基本的に名瀬とその妻や女で出来た組織だ。

 そこにヒューマンデブリとはいえ、男を……それも元海賊の男を入れるのは、トラブルの種にしかならない。

 なので、あの海賊達を売り払うとなると、候補はテイワズとタントテンポだけになる訳だ。

 勿論、他にもそういうのを買い取りたいと思う奴はいるだろうが……ただ、大人の海賊をヒューマンデブリとして使うのは、知識がある分、かなり難しいのも事実なんだよな。

 ネギま世界とかで使われている奴隷の首輪のようなものがある訳ではない以上、反逆したり、場合によっては逃亡したりとか普通に有り得る。

 勿論、そうした者達がまともな仕事を出来る訳ではないが、元々が海賊だ。

 それこそ夜明けの地平線団に戻ったり……いや、これはないか。

 俺達と敵対した時点で夜明けの地平線団の壊滅は決まったようなものだし。

 だからこそ、ある程度考える力を持った海賊をヒューマンデブリとして使うとなると、相応の組織力が必要で、すぐに思いつくのはテイワズとタントテンポだけな訳だ。

 ……あ、でもノブリスならそういうルートを持ってるかもしれないな。

 ただ、そうなると当然ながらノブリスにも一枚噛ませる事になり、手数料とか紹介料とか、色々な理由で金を要求してくるだろう。

 あるいは……マブラヴ世界辺りに送り込んでもいいかもしれないな。

 向こうは人手は多ければ多い程にいいんだし。

 そんな風に思いつつ、捕虜の扱いについて言葉を交わすのだった。

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