転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4078話

「さて、サンドバル……ギャラルホルンから人が来るまで、お前はここで待機だ」

「てめえ……いいか、今は良い気分かもしれねえが、お前達の事をうざったく思っているのは俺達だけじゃねえ。すぐにその事を思い知るぞ!」

 

 ユーゴーのコックピットのある頭部から強引に連れ出されたサンドバルが、俺に向かって叫ぶ。

 サンドバルの両手は大人のMSのパイロット達によって掴まれており、立ち上がることも出来ない状態だ。

 何と言うか……斬首の時の体勢的な?

 サンドバルがそれを理解してるのか、いないのか。

 とにかく俺を睨み付け、叫ぶ。

 

「そうなったらそうなったで、こっちにとっては決して悪い事じゃないけどな。お前達のように、持っているMSとかが入手出来るし」

 

 そう言うと、サンドバルの顔は怒りで赤く染まる。

 

「取りあえずこいつは何をするのか分からないから、警戒しておけ。石動が来たら引き渡す」

 

 俺の言葉にサンドバルを押さえ込んでいた2人の男と、周囲で何が起きてもいいように警戒していた他の者達がそれぞれ頷く。

 

「さて、後はMSや軍艦の回収も頼む」

 

 そう指示を出すと、俺はブリッジに向かう。

 途中で忙しそうにしている面々と何とかすれ違うが、俺を見ると驚き、頭を下げてくる。

 あの連中にしてみれば、夜明けの地平線団を本気で叩き潰したのが信じられないといったところか。

 夜明けの地平線団はテイワズですら、迂闊に手を出せない存在だったらしいしな。

 勿論、テイワズが本気になれば夜明けの地平線団を殲滅する事も可能だっただろう。

 だがその場合、当然ながらテイワズ側にも相応の被害が出る。

 夜明けの地平線団を放っておいて受ける被害と、殲滅する時に受ける被害。

 その辺りを計算し、放っておくという事にしたのだろう。

 夜明けの地平線団にしても、相手がテイワズであれば迂闊に刺激するような事はしないので、襲撃されるようなことは多くなかっただろうし。

 後は……そうだな。テイワズには腕の立つパイロットがそこまで多くはないというのも影響しているのかもしれないな。

 勿論、タービンズのアミダのように、この世界でもトップクラスの実力の持ち主はいる。

 また、アミダには及ばないまでも、ラフタやアジーも十分にエース級と呼べるだけの実力は持っているだろう。

 だが……逆に言えば、それで終わりだ。

 いやまぁ、俺が分からないだけで他にもテイワズの中に腕利きのパイロットがいる可能性はあるが、とにかくテイワズの規模を考えるとどうしても人数が足りない。

 シャドウミラーにおける、俺やマーベル、クランク。鉄華団では、三日月や昭弘。

 エースの数そのものはテイワズ……実際にはテイワズの系列組織も含めてだが、俺達とそこまで差はないが、組織の規模を考えると圧倒的に俺達の方が充実しているだろう。

 勿論、それはあくまでもエース級での話で、一般的なレベルでのMSパイロットとして考えれば、テイワズは圧倒的だ。

 そもそもテイワズを率いるマクマードがシャドウミラーを自分達と同等の組織と見なしたのは、量はともかく質では俺達が圧倒していると判断してのものなのだから。

 その質の最たる存在が、俺なんだが。

 マクマードは俺がどのような存在なのかを知っている。

 勿論詳細……異世界の存在だとかそういうのは知らないが、最初に会った時に放った殺気の一件はそれだけマクマードに与えた衝撃は大きかったのだろう。

 その後……タービンズと共に地球に向かった時も、俺の魔法についてとか聞いてるだろうし。

 そんな諸々を考えれば、マクマードが俺を別格の存在であると認識するのはおかしな話ではなかった。

 そうして考えながら歩いていると、やがてブリッジに到着する。

 このスキップジャック級は、オルフェンズ世界においても最大級の大きさを持つ戦艦だ。

 どうしても移動に時間が掛かる。

 もっとも、どうしても急がなければならない時は影のゲートを使ったりも出来るのだが。

 

「アクセル、お疲れ様」

 

 ブリッジに入った俺にそう声を掛けてきたのは、マーベル。

 どうやら戦いが終わった後、すぐにブリッジにやって来ていたらしい。

 

「ああ、そっちもな。……アリアンロッド艦隊の相手もあったし、大変だったんじゃないか?」

「それが……そうでもないのよ」

「ん?」

 

 てっきりこっちでもアリアンロッド艦隊との激しい戦いがあったのかと思ったのだが、この様子を見るとどうやら違うらしい。

 

「アリアンロッド艦隊が戦いに乱入してきたのは事実です。そして中には私達や鉄華団に向かって攻撃をしてきた者もいます」

 

 マーベルの代わりにという訳でもないだろうが、シーラがそう答える。

 

「は? そうなのか? ……こっちは普通に攻撃をしてきたが」

 

 それも、護衛を引き連れた相応の立場がありそうな奴が。

 とはいえ、改めて考えてみれば俺を銃で狙った奴はともかく、女のエースの方は俺がサンドバルを捕らえるのを邪魔しようとはしたが、致命的な攻撃をしてくる事はなかった。

 ……もしかして、やってしまったか?

 あの女のエースと俺を狙った奴の行動から、ラスタルは俺を明確な敵であるという認識なのだろうと思った。

 だが、実は違っていたら?

 いやまぁ、それでも俺を明確に狙ったのは事実な訳で、それを考えれば俺の行動は特におかしくはないと思うんだが。

 

「そうらしいわね。ここで話を聞いて、驚いたわ」

 

 マーベルのその言葉にシーラもまた頷く。

 

「その辺については、サンドバルを引き渡す時に石動に話してみる。今回の件は、マクギリスにとっても大きな意味を持つだろうし」

 

 マクギリスとラスタルの間は現在冷戦状態だ。

 しかし、そのような中でアリアンロッド艦隊が俺を攻撃してきたのだ。

 そう考えると、この件については石動を通してマクギリスに話をしておいた方がいいだろう。

 マクギリスがこの件を聞いて、どう反応するのか。

 また、ラスタルがどのように思い、行動するのか。

 その辺は俺にとっても気になるところだ。

 

「そうね。出来るだけ早くした方がいいでしょう。今回の一件は、場合によっては一気にギャラルホルン内部での状況が変化する可能性がありますし」

 

 シーラの言葉に俺は頷くのだった。

 

 

 

 

 

「アクセル代表、今回の件は大変でしたね」

 

 スキップジャック級にやってきた石動が、俺を見るとそう声を掛けてくる。

 

「敵が夜明けの地平線団だけであれば、こっちもそこまで苦労はしなかったんだけどな」

 

 これは大袈裟でも何でもなく、事実だ。

 もしアリアンロッド艦隊の介入がなければ、当初の作戦通り戦場を迂回してサンドバルの乗っていた旗艦を奇襲出来た筈だ。

 サンドバルのMSの操縦技術はそれなりに高かったものの、それでも言ってみればそれなりでしかない。

 サンドバル以外に2機のパーソナルカラーを持ったユーゴーがいたので、あの3機が協力して攻撃してくれば大変だったかもしれないが……アリアンロッド艦隊の襲撃がなければ、恐らくサンドバルがMSに乗るよりも前に旗艦を撃破するなり、鹵獲するなり出来ていただろう。

 実際にどうなっていたのかは、それこそもしもの話で、ここでどうこう言っても意味はないだろうが。

 

「そうですね。正直なところ、ここでアリアンロッド艦隊が出てくるとは思いませんでした」

「……そのアリアンロッド艦隊だったが、明確に俺を狙って攻撃してきた。これはラスタルが俺を明確に敵としてみなしたと思ってもいいのか?」

 

 そう口にした瞬間、一瞬……本当に一瞬だったが、石動の目が鋭く光る。

 

「どうでしょうか。ただ、アクセル代表に攻撃をしてきたのであれば、そのように判断した可能性はありますね。この件はマクギリス様に伝えてもよろしいでしょうか?」

「別に構わない。これでマクギリスがどう反応するのか、そしてラスタルがどう反応するのか……それによって、俺もどのように行動するのかを決めさせて貰う」

「それは……つまり、私達に協力をしてくれると考えてもよろしいのでしょうか?」

「ラスタルが俺達を敵とした以上、こっちも相応の対処をする必要があるしな」

「……分かりました。この件についてはすぐにでもお伝えします」

 

 石動の様子を見る限りだと、ここで俺達を相手に何か妙な事をするとは思えない。

 例えば、意図的にマクギリスに知らせる情報を限定させるとか。

 そうなったらそうなったで、正直どうとでもなるという思いがあるのも事実だが。

 ホワイトスターとまだ行き来が出来なかった状態であれば、あるいはもう少し慎重になったかもしれない。

 だが、こっちはいざとなればホワイトスターから戦力を延々と持ってくる事が出来る。

 それにシャドウミラーの主力については、メギロートとかはサークルレーザーとかでビームでも実弾でもない以上、ある程度オルフェンズ世界のMSのナノラミネートアーマーにも有効だろうし。

 ただ、バッタは戦力として考えるのはちょっと難しいんだよな。

 ナノラミネートアーマーはPS装甲程ではないにしろ、物理攻撃にも強い耐性を持つ。

 そしてバッタの装備している武器は、実弾兵器だけだ。

 勿論、ナノラミネートアーマーも無敵ではない。

 ナノラミネートアーマーというのは、あくまでも装甲に塗る塗料であり、その塗料は攻撃を受けると剥がれたりもする。

 そしてバッタの数はメギロート以上。

 つまり、文字通りの意味で多勢に無勢な訳だ。

 MS1機に対して、バッタ1機ではどうしようもないだろう。

 3機でも、5機でも、10機でも対処は難しいかもしれない。

 だが、50機、100機といった数なら?

 それだけの数のバッタがミサイルを何発も発射すれば、ナノラミネートアーマーの塗料が剥げて、そこに別のバッタが発射したミサイルとかが命中してもおかしくはない。

 そうなれば、オルフェンズ世界のMSであっても損傷は与えられるし、場合によっては撃破も可能だろう。

 普通に考えればバッタの損耗度がとんでもない事になるような攻撃方法なのだが……それでもシャドウミラーは特に問題はない。

 勿論、そんな戦いを100回も200回もやれば相応に影響は出て来るだろうが。

 

「それで、サンドバルの件だが……」

「はい、引き渡して貰えるという事でしたが?」

「そうだな。ラスタルと決定的な敵対をする事になるかもしれないし、マクギリスの派閥にはそれなりに力を持って欲しい。とはいえ……仮にも夜明けの地平線団の頭目だ。お前達が戦いに参加したのならともかく、戦いには参加していない。そうである以上、サンドバルを引き渡すにしても、無料でという訳にはいかない」

「……何をお望みで?」

 

 もし、石動もこの戦いに参加していれば、サンドバルの身柄を要望も出来たのだろう。

 けど、残念ながら石動は戦いに参加していない。

 そうなると、余程の事でもない限り石動としては俺の要望を飲まないといけない訳で……

 

「レギンレイズを……そうだな、完品で20機……いや、10機にしておくか。どうだ? そっちにしてみればお買い得な商品だと思うぞ?」

「……10機、ですか。レギンレイズはギャラルホルンにとっても、最新鋭機です。それを承知の上でそのような事を?」

「サンドバルの身柄には、それだけの価値があると思うが? 何しろ、この辺り……いや、この世界においては最大規模の海賊の頭目だ。マクギリスの手柄としてはこれ以上ないと思わないか?」

「それは……ですが、聞いた話だとアクセル代表は戦闘の中でアリアンロッド艦隊のレギンレイズを倒したと聞いていますが? イオク・クジャンの側近を皆殺しにしたのです。マクギリス様がこれからする苦労についても、考えて貰いたいのですが」

「イオク……クジャン? え? マジか?」

 

 そう俺が口にしたところで、こちらに近付いてくる人影に気が付く。

 ふくよかな……という表現が正しいそれは、ビスケットだ。

 石動との話し合いにビスケットを派遣するという話だったが、鉄華団の方でちょっとトラブルがあったとかで遅れていたんだが……どうやら今到着したらしい。

 

「すいません、遅れてしまって」

 

 俺の側までやってくると、ビスケットは頭を下げる。

 別にいつまでと明確に約束をしていた訳ではないんだから、そこまで気にする必要はないと思うんだが。

 

「気にするな。……けど、丁度いいな。いつまでも格納庫で話をするのもなんだし、部屋に行くか。その間に、サンドバルの護送は終わらせておきたいし……今の話は、こういう場所で出来るようなものでもないだろう?」

 

 そう言う俺の言葉に、石動も頷く。

 何しろ、事が事だ。

 場合によっては、セブンスターズの1つを明確に敵に回すようなことにもなりかねなかった訳で……そう考えると、やはりもっときちんとした場所で話をする方がいい。

 それにビスケットにも今の話はしっかりとしておく必要があるだろうし。

 そうして、来たばかりで何が起きているのか分からないビスケットと石動を引き連れ、俺はスキップジャック級の中に用意された応接室に向かうのだった。

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