転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4081話

 夜明けの地平線団との戦いが終わった翌日……俺の姿はUC世界のフィフス・ルナにあった。

 当然ながら、ゲートから直接このフィフス・ルナに来た訳ではない。

 月にあるゲートから出て、ニーズヘッグでペズンに用意して貰った部屋に転移。

 その後、ペズンからフィフス・ルナまでナスカ級に乗って移動した訳だ。

 ちなみに当然の事ながら、オルフェンズ世界での20代の姿ではなく、10代半ばの姿となっている。

 

「久しぶり……って程久しぶりな訳じゃないか」

「アクセルにとってはそうだったかもしれないけど、こっちは随分と久しぶりなような気がするわね。……ゼフィランサスの件で忙しかったというのもあるんだろうけど」

 

 俺の言葉に、ニナは不満そうな様子でそう言ってくる。

 うーん、この様子を見るとゼフィランサスの完成にはまだそれなりに時間が掛かりそうだな。

 そう考えるも、そこまで残念に思ったりはしない。

 以前の一件で、ゼフィランサスの完成についてはまだ相応の時間が掛かるというのは分かっていた。

 それでもこうして来たのは、オルフェンズ世界で特にやるべき事がなかったからだ。

 ……勿論、夜明けの地平線団を倒したばかりである以上、仕事は探せばあるのだが。

 けど、だからといって無理に仕事を探す必要もないだろう。

 俺の代わりに仕事を出来る者を揃えたのは間違いないし、その為に高い給料を払っているのも事実なのだから。

 実際、シャドウミラーの給料は火星にあるクリュセ全体で見てもかなり高い方だ。

 勿論クリュセのトップクラスとまではいかないが、上の下くらいの位置にはいる。

 そういう意味で、シャドウミラーはもっと人気の就職先になってもいいと思うんだが……それでも俺が思った程に就職を希望する者が来ないのは、やはりPMCだからというのが大きいのかもしれない。

 

「アクセル、どうしたの? 私の話を聞いてる?」

「ん? ああ、悪い。ゼフィランサスの完成が待ち遠しくてな」

 

 そう言うと、ニナの表情がこちらを咎める目から嬉しそうな目に変わる。

 ニナの場合、ゼフィランサスにかなりの思い入れがあるので、何かあってもゼフィランサスに話を繋げれば、ある程度はどうにかなってしまうんだよな。

 

「そう。それなら仕方がないわね。私のゼフィランサスはMSの中でも傑作機になるのは間違いないもの」

「……まぁ、それは否定しない」

 

 アムロが乗っていた、RX-78-2の正統な後継機がゼフィランサスだ。

 そんなガンダムが、傑作機にならない筈もない。

 もっとも、後継機であっても性能が低いとかだと意味はないが。

 ニナの様子を見る限りでは、その辺の心配はする必要がないのだろうとは思える。

 

「でしょう? 特に今日アクセルにテストして貰うパワード・ジムに搭載された部品については、私にとってかなりの自信作なのよ。多分、アクセルも驚くと思うわ」

「だと、いいんだけどな。そうである事を願ってるよ」

 

 ニナの様子からすると、恐らくかなりの自信があるのだろう。

 それは間違いなかったが、だからといって俺が実際にその新しいパーツの性能を本当に実感出来るかどうかというのは、また別の話だ。

 

「……あら、あまりやる気がないのかしら?」

「いや、そこまではいかない。ただ、本当にそこまではっきりと違いが分かるのかと思ってな」

「ふーん。そこまで自信があるんだ。……ううん、この場合自信というのとはちょっと違うかしら?」

「実際に乗ってみないと何とも言えないしな。それで、今回のパワード・ジムはどういう風に以前と違うんだ?」

「パイロットがMSを操縦する際の反応速度が以前よりも早くなってるわ」

 

 あー……なるほど。そういう方針で来たか。

 いやまぁ、その考えは決して悪くないとは思う。

 思うのだが、それはあくまでも普通ならの話だ。

 MSの反応速度が俺に本気の操縦についてくるのはかなり難しい。

 それこそクリスが敏感すぎると言っていたアレックスの反応速度でも、俺にとっては手加減をする必要があるくらいなのだから。

 混沌精霊となった俺にとっては、アレックス程の反応速度であっても遅いのだ。

 俺が満足出来る反応速度となると、やはりT-LINKシステムを使っているニーズヘッグしかないんだよな。

 だからこそ、俺にとってパワード・ジムの反応速度が少し上がったところで、そこまで実感はない。

 ……とはいえ、それはあくまでも俺の話だ。

 ゼフィランサスのテストパイロットをやるのは俺だが、ゼフィランサスの正式なパイロットは別に用意されるだろう。

 だからこそパワード・ジムの反応速度が早くなり、ゼフィランサスにもそれが影響すれば、そのパイロットがゼフィランサスを操縦する時に操縦しやすくなる可能性は十分にある。

 ガンダム開発計画は連邦軍にとっても重要な計画である以上、そのパイロットは腕の立つパイロットが選ばれる筈だし。

 ……もしかしたらだが、アムロがゼフィランサスのパイロットになる可能性も十分にあるのか?

 ゼフィランサスがRX-78-2の正統な後継機であれば、そのパイロットはアムロであるという可能性は否定出来ない。

 ただ……問題なのは、俺のところに入っている限りだと、アムロは半ば軟禁……もしくは飼い殺しといった状態になっている。

 連邦軍や連邦政府にしてみれば、1年戦争で大きな活躍をしたアムロは、ニュータイプにして恐るべき存在という風に思えたのだろう。

 そこまでアムロを煙たがっているのなら、いっそ俺達に渡してくれるといいんだけど。

 いや、アムロの存在を警戒している以上に、連邦はルナ・ジオンを警戒している。

 それを示すのが、ガンダム開発計画は月ではなくこのフィフス・ルナで行われている事だろう。

 

「そうか。じゃあ、楽しみにしてるよ」

「ええ。良いデータを取って頂戴。こう言っては何だけど、アクセルの行動次第でゼフィランサスの完成度に影響が出て来るのだから」

 

 そう言うニナの表情は、少し悔しそうにも思える。

 無理もないか。

 ニナがゼフィランサスにどのくらい思い入れがあるのかは、俺も十分に理解している。

 それこそ、もしニナがMSの操縦に適正があった場合、ゼフィランサスの開発は勿論、テストパイロットも自分でもやろうとしたと言われても、俺は驚かない。

 いや、ニナの性格を知っている者にしてみれば、それは寧ろ当然と言ってもいいだろう。

 ただ、残念ながらニナにはMSの操縦適正はない。

 もしくはあるのかもしれないが、その適正はかなり低いのだろう。

 だからこそ、ニナとしてはテストパイロットを他の……MSの操縦技術の高い者に任せるしかなかった訳だ。

 そういう意味では、俺というテストパイロットを得る事が出来たのは、ラッキーなのだろう。

 

「楽しみにしてるよ」

 

 そう言うと、俺はニナから各種注意事項を受けながら、早速パワード・ジムの置いてある格納庫に向かうのだった。

 

 

 

 

 

『どう? 反応速度は上がっているでしょう?』

 

 コックピットにニナの声が聞こえてくる。

 フィフス・ルナの中でも、アナハイムに割り当てられた場所からの通信だ。

 さて、ニナのそんな言葉にどう返事をするべきか。

 少し迷うな。

 いやまぁ、実際パワード・ジムの反応速度が以前よりも上がっているのは間違いない。

 間違いないんだが、それでもやはり俺にしてみれば鈍い訳で。

 もうそういうものだと認識して操縦をしているので、そこにもう不満はないのだが。

 

「そうだな。幾らかは上がっていると思う」

『でしょう? ……あまり嬉しそうじゃないわね。もしかして、反応速度が上がった分、アクセルには操縦しにくくなっているの? こっちのデータを見る限りだと……そこまでおかしくはないと思うけど』

「そうだな。別に操縦しにくいって訳じゃないから、その辺については気にしなくてもいい」

『そう? まぁ、確かにデータを見る限りだと問題はないようだけど。その割には、アクセルにこう……何て言えばいいのかしら。やる気が感じられない? そんな感じに思うけど』

「別にそういう訳じゃないから、気にするな。パワード・ジムの操縦はそんなに悪くないとは思うし」

 

 それにガンダム開発計画のテスパイロットとして、しっかりと仕事をしないと報酬も貰えないしな。

 そう言えば、その報酬……ガンダム試作4号機のガーベラをベースとしたMSについては、どうなってるんだろうな。

 ゼフィランサスがまだ完成していない以上、すぐに完成するという訳にはいかないと思うけど。

 強襲用の機体だったか。

 俺にとってはありがたい報酬なのは間違いない。

 

『とにかく、これもアクセルにとってはきちんとした仕事なんだから、プロ意識を持ってしっかりとやって頂戴』

「分かっている。それでパワード・ジムで移動するコースはどうなっているんだ? 送ってくれないと、そもそも試験を本格的に始められないんだがな」

『すぐに送るから、待っていて』

 

 その言葉は正しく、ニナのその言葉から数秒でパワード・ジムを使って飛ぶコースが送られてくる。

 反応速度の向上を考えると……やっぱりな。

 コースの内容は細かい移動をする場所が結構多い。

 パワード・ジムの運動性を確認すると同時に、反応速度についても調べようという事だろう。

 

『どう? 問題はない?』

「ああ、問題はない。このくらいのコースなら何とでもなりそうだ」

『……そう』

 

 ん? 何だ? 今の俺の言葉を聞いたニナが、微妙に不機嫌になったような気がする。

 今のやり取りのどこにニナが不機嫌になる要素があった?

 一瞬そう思ったが……やがて何となくだが、その意味を理解する。

 多分、このコースを作ったのはニナなのだろう。

 そのコースを、何とでもなると俺が判断したのが、ニナにとっては面白くなかったらしい。

 

「あー……そうだな。やっぱりちょっと難しくて挑み甲斐がありそうだな」

『……いいわよ、見え透いたお世辞なんか。それより、大きな口を叩いたんだから、それだけの成果を残してちょうだい。もしコースアウトするようなら、どうなるか分かってるでしょうね?』

 

 これは、どうなんだ?

 もう怒っていないのか、それとも怒っているのを隠しているのか。

 ともあれ、パワード・ジムの慣らしは終わったので、早速準備を始める。

 

「任せろ。こっちの準備は整ったから、合図を頼む」

『じゃあ……いい? 10、9、8、7、6、5、4、3、2、1……スタート!』

 

 ニナのその言葉に従い、俺はパワード・ジムのスラスターを全開にする。

 普通のジムと比べると、圧倒的に上の速度のまま、ニナの設定したコースを飛ぶ。

 そのコースは細かなカーブが多数あり、俺はそれをスラスターの推力を極力殺さないように、機体の制御……特にAMBACを使うことによって曲がっていく。

 勿論、普通ならこの速度で飛びながらAMBACだけでコースを曲がるというのは出来る事ではない。

 それが出来るのは、俺がこのパワード・ジムというMSの性能をきちんと理解し、その上で機体の反応速度の限界を試すように機体制御を行っている為だ。

 特に宇宙空間では、基本的に一度スラスターを噴射すると、その速度を落とすには逆方向にスラスターを噴射するなり、AMBACを使って速度……慣性の方向性を調整したりといったようなことが必要となる。

 俺がやっているのは、まさにそれだ。

 ……阿頼耶識システムのコックピットとかなら、その辺についてはそこまで深く考えなくてもいいんだろうな。

 そう思わないでもなかったが、今このUC世界において、そんなことを考える必要もないだろう。

 そんな事を考えつつも、俺は操縦をミスるようなことはなく……やがてノーミスでニナの作ったコースをクリアするのだった。

 

 

 

 

 

「嘘でしょ……まさか、こんな数字が出るなんて……」

 

 格納庫でパワード・ジムから下りると、少し離れた場所にいるニナに近付く。

 するとコンピュータのデータを確認していたニナが、信じられないといった様子で呟いていた。

 どうやら俺が近くに来たのにも、気が付いていないらしい。

 それだけ、俺がパワード・ジムを操縦して出した数値がニナにとっては予想外だったのだろう。

 ……あれはまだ最初で、これから何度か同じコースを走れば、コースに慣れたことによってもっと数値を縮めることが出来るというのは、言わない方がいいんだろうな。

 

「ニナ」

「……アクセル……一体どういう操縦をしたら、あんな数字が出るの? 私が前もって予想していた数値と比べても……いえ、比べるのが間違ってるくらいの数値が出てるんだけど」

 

 ニナは俺の方を見て、鋭い視線でそう聞いてくる。

 ニナにしてみれば、自分の想定した数値以上の数値を叩き出した俺が全く理解出来なかったのだろう。

 とはいえ、そうだな……

 

「ニナがMSについて詳しいのは理解出来る。けど、現場に出ないと分からない事があるのも事実だ。それこそ、後方では分からないけど、実際にMSに乗っていれば分かるといったようにな」

 

 そうアドバイスすると、何故かニナは俺を睨み付けてくるのだった。

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