転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4083話

 俺がヤザンと話をしていると、食堂に見覚えのある女が姿を現す。

 その女は美人と称しても間違いないだろうくらいには顔立ちが整っていた。

 ……ただし、ニナではない。

 クラブ・ワークスの中でもニナと仲の良い、ポーラだった。

 

「アクセル中尉、少しいいかしら?」

 

 俺とヤザンの座っているテーブルの前に立つと、そう言ってくる。

 その目には強い光があり、俺を見ている。

 強面のヤザンを前にしても、全く退く様子がないのは、ポーラの気の強さを示していた。

 

「ニナの件か? それなら俺は悪くないと言っておくぞ」

「……」

 

 ポーラの機先を制するようにそう言うと、ポーラは無言でこちらを見てくる。

 絶対に退かないというポーラの様子を見れば、俺がここで何を言っても無駄か。

 

「分かったよ。……じゃあ、ヤザン。俺はこの辺で行くよ」

「おう、じゃあな。精々頑張れ」

 

 人の悪い笑みを浮かべ、ヤザンがそう言ってくる。

 ヤザンにしてみれば、俺の状況が見ていて楽しいのだろう。

 後で何か仕返しでもしないとな。

 そんな風に思いながら、俺はポーラと共に食堂を出る。

 俺の前を歩くポーラは、全く口を開く様子もなく、無言のままだ。

 

「どこに行くんだ?」

「クラブ・ワークスの借りている場所よ」

「一応言っておくが、俺は別に悪い事をしたとは思ってないぞ」

「……アクセル中尉の言い分も分かるけど、だからといってニナのことを少し乱暴に扱いすぎじゃない?」

 

 別に俺にそんなつもりはないんだが。

 というか、乱暴に扱うというのは……どうなんだ?

 それは表現的にちょっとおかしくないか?

 

「別に乱暴に扱うとか、そういう事をしてるつもりはないんだがな」

「あのね、アクセル中尉は分からないかもしれないけど、ニナって結構打たれ弱いのよ」

「……そうなのか?」

 

 ポーラの口から出たのは、俺にとっても予想外の言葉だった。

 俺が知ってるニナというのは、MSオタクではあるが、かなり気の強い性格をしている。

 そんな俺の様子に、ポーラは溜息を吐くと、再び歩き始め、俺もそれを追う。

 ……MSオタクか。

 いっそ、異世界のMSを見せたら即座に元気になりそうな気がするな。

 幸いなことに、ガンダム系の世界というのはかなりの繋がりがあるし、それ以前に俺が確保してホワイトスターに保管されているMSも多い。

 とはいえ、MSオタクだからこそニナにそのMSを見せるのは危険だという一面もある。

 名称は同じMSであっても、世界が違えば当然ながら使われている技術も違う訳で。

 中にはこのUC世界では予想もされていないような、そんな技術もある。

 ……ゼロシステムとか、阿頼耶識とか。

 サテライトシステムは……どうだろうな。

 もし知られても、UC世界で使えるかどうかは微妙なところだろう。

 連邦は地球の大部分を支配しているが、サテライトシステムで必要なのは、エネルギーを送る拠点だ。

 X世界でもそうだったように、月が最善なのは間違いないが、UC世界における月はルナ・ジオンの本拠地だ。

 そうなると、ルナツーやフィフス・ルナのような場所に施設を作るのか?

 まぁ、それもありと言えばありか。

 ただし、そういう施設を作れば当然のように狙われてもおかしくはない。

 そしてルナツーやフィフス・ルナにある戦力でそれを防ぐのは……難しいだろう。

 

「ここよ」

 

 暫くの間、無言で進んでいたポーラがようやく口を開く。

 案内された部屋の中に入ると……

 

「何だ、この部屋は」

「私達がゆっくりする為の部屋ね」

 

 そう言うポーラの言葉に、なるほどと納得する。

 クラブ・ワークスはニナやポーラを始めとして、美人が多い。

 そして軍隊というのは、女もいるが、やはりその大半は男だ。

 そうなると、当然のように休憩をする場所でも男が多くなる。

 それでも相手は相手、自分達は自分達というようにお互いに関わらないのなら、それでもいい。

 だが、美人揃いのクラブ・ワークスだ。

 そうなると、お近づきになりたいと考える者もいて、口説こうとする者も出て来るだろう。

 そういうのが嫌でも、他に休憩する場所がなければそこを使うしかない。

 そういうトラブル防止の為に、クラブ・ワークスの者達が使える部屋を用意するというのは、そうおかしな話ではないだろう。

 

「そんな部屋に俺が入ってもいいのか?」

「構わないわ。他の人達には事情を話してあるし。だから、部屋の中には誰もいないでしょう?」

「……それはそれで不用心だと思うんだが」

 

 俺にそんなつもりはないとはいえ、客観的に考えれば密室で男と女……それも女は美人なポーラが一緒にいるのは、色々な意味で危険だろう。

 

「安心してちょうだい。ほら」

 

 ポーラが示したのは、天井についた防犯カメラ。

 ……UC世界の技術であれば、それこそ普通は見つけるのがまず無理だろうというような防犯カメラを作る事も出来る。

 なのに、ああしてこれ見よがしに防犯カメラがあるのは……防犯カメラがあるというのを、部屋を利用する者達に知らせる為だろう。

 

「なるほど。……で、話ってのはやっぱりニナの事だよな? 乱暴に扱うなとか何とか」

 

 部屋の中は一般的な応接室だ。

 勿論、ポーラ達クラブ・ワークスの面々が快適なように、色々と工夫されてはいるが。

 そんな部屋の中にあるソファに座るようにポーラに促され、そのソファに座りながら尋ねる。

 

「そうね。さっきも言ったけど、ニナはああ見えて打たれ弱い一面があるわ。だから、もう少しその辺を考えて接して欲しいの」

「そう言ってもな。俺がやったのは、テストパイロットとして望まれた事だぞ?」

 

 パワード・ジムを操縦し、ニナが設定したコースを飛ぶ。

 言ってみれば、俺がやったのはそれだけだ。

 ただし、ニナが想定していた以上の短時間でクリアしたのだが。

 ニナにとっては、それが許容出来なかったのだろう。

 けど……だからといって、ならわざわざ手を抜いて操縦をするか?

 いやまぁ、今回の操縦についても別に本気の全開という訳ではない。

 そうなれば、当然のようにパワード・ジムは俺の反応速度についてこられないのだから。

 だからこそ、上手い具合に調整して操縦している訳だ。

 もう少し手加減をするべきだった……んだろう、多分。

 

「そうは言わないわ。けど、アクセル中尉が凄腕なのは分かったけど、あの数値を出すのはちょっと予想外だったのも事実。実際、MSの方もそれなりに疲労していたみたいだしね」

「そうなのか?」

「ええ。パワード・ジムは、アクセル中尉も知っての通り、試作1号機のパーツの実験用のMSよ。……まぁ、何人か趣味で改修しているから、ジム系の中でもかなり性能が高くなってるのは否定出来ないけど」

 

 趣味で改修か。

 ニナのようにMSを好む者はそれだけ多いという事なのだろう。

 類は友を呼ぶって奴か。

 そう思いながらポーラを見ていると、その視線の意味を理解したのか、ポーラは慌てて口を開く。

 

「ちょっと、言っておくけど私は無関係だからね」

 

 そう言うポーラの焦った顔は、図星を突かれたからか、それとも本当に自分が関係ないのに話に巻き込まれようとしているからなのか。

 その辺は俺にも少し分からなかったが、それでも今の状況を考えると……うん、多分本当に違うような気がする。

 

「別にポーラがそうだとは言ってないだろう? それに、もしそうだったとしても、それはそれで構わないと思うし」

 

 実際に俺はそうであったら、それはそれで構わないと思っているし。

 ただ、パワード・ジムがゼフィランサスのパーツのテスト用のMSであるという事は、パワード・ジムの性能についてしっかりと認識しておかないと新パーツの性能の把握は難しいのではないのか? と思うが。

 

「……まぁ、アクセル中尉がそのように思っているのなら、別にいいですけど」

 

 俺の言葉に完全に納得した訳ではないのだろうが、それ以上はこの件については突っ込んで来ない。

 

「で、その件はそれでいいとして、ニナの件か。それでポーラとしては、ニナにどういう風に接して欲しいんだ? 操縦をする際に手加減をするとか?」

「テストパイロットとしては、それは止めて欲しいわね。アクセル中尉がパワード・ジムの操縦をして、それによって新しいパーツの性能を確認出来て、それによって試作1号機の性能にも影響してくるんだから。……それに、試作2号機と3号機のパーツにも、使えるところはゼフィランサスのパーツを使うという事だから、大袈裟でも何でもなくアクセル中尉の操縦によって、ガンダム開発計画のMSに影響してくるのよ」

「そうなのか? ……それは知らなかった」

 

 俺が知ってるのは、あくまでもパワード・ジムはゼフィランサスのパーツをテストするというものだった。

 とはいえ、考えてみれば、試作2号機と試作3号機……後は俺に報酬として引き渡される試作4号機――正確にはそれをベースとした改修機――も、全てはガンダムだ。

 それぞれのコンセプトが違う以上、勿論使うパーツも全て同じという訳でもない筈だ。

 だが、それでもMSである以上は共通の部品があるというのはそんなにおかしなことではなかった。

 

「そうなのよ。そういう意味で、私としては……それに他のクラブ・ワークスの皆も、アクセル中尉の仕事には期待してるわ」

「それは嬉しいな」

 

 ポーラの言葉が真実なのかどうかは分からない。

 とはいえ、今この状況で嘘を言うとも思えない。

 ……あるいは、ニナの為ならという事で嘘を口にする可能性は否定出来なかったが。

 

「そんな訳で、アクセル中尉の仕事については不満はないわ。……もっとも、出来ればフィフス・ルナにずっといて欲しいとは思うけど」

「それは分かるけどな」

 

 ゼフィランサスを開発しているクラブ・ワークスの面々にしてみれば、それこそ新型のパーツが出来たらすぐにでもパワード・ジムに搭載し、それを俺に操縦して貰ってデータを取りたいと思ってもおかしくはない。

 その気持ちは分からないでもないが、実際に出来るかと言われると無理なんだよな。

 オルフェンズ世界の方では、夜明けの地平線団との一件が終わったばかりで、暫くは何らかの動きはないだろう。

 そう考えると、暫くはガンダム開発計画の方に集中出来るが……ただ、オルフェンズ世界の方でも本当に安心かと言われると微妙なところだしな。

 それこそ、いつラスタルから連絡が来てもおかしくはないし。

 ラスタルにしてみれば、イオクや女エースの件で俺と敵対したままだ。

 少なくても、俺達に被害を出してきたという事で俺はラスタルの派閥を敵と認識した。

 それだけに、ラスタルが今の状況で何も動かないというのは疑問でもある。

 俺が知っている……それこそマクギリスとかから聞いたラスタルの性格を思えば、ここで動かないという選択肢はない。

 問題なのは、どう動くかだが。

 いっそ、アリアンロッド艦隊が火星に攻撃を仕掛けて来るとか、そういう分かりやすい行動をしてくれれば、俺にとっても悪くはないのだろうが。

 とはいえ、それこそ情報通りならそんな短絡的に動くとは到底思えなかったが。

 もし仕掛けて来るとすれば……搦め手とかだろう。

 俺達に直接手を出すようなことが出来ないとなると、そうだな。例えば俺達じゃなくてテイワズやタントテンポのような友好的な組織にちょっかいを掛けてくるという可能性も否定は出来ないだろう。

 組織の面子もあり、テイワズにしろタントテンポにしろ、容易に俺達に助けてくれとは言えない。

 言えないが、シャドウミラーや鉄華団のせいで自分達が被害を受けるのが面白い訳がないだろう。

 ましてや、テイワズにはジャスレイが、タントテンポにも以前跡目争いがあった件から見ても、到底一枚岩という訳ではないのだ。

 こうして考えてみると、テイワズやタントテンポにちょっかいを出すというのは、決して悪くないのかもしれないな。

 

「アクセル中尉? どうしたの?」

「ん? ああ、悪い。ちょっと考えに夢中になっていた」

 

 ポーラの言葉で我に返る。

 そうそう、今はオルフェンズ世界の事じゃなくて、UC世界……それもガンダム開発計画であったり、ニナの事だったな。

 

「つまり、ポーラとしては俺にどうして欲しいんだ?」

「……そうね。もう少しニナと接する時には優しくしてあげて欲しいのよ」

「優しく……か。いきなり態度を変えると、それこそニナは驚くし、場合によっては嫌がるんじゃないか?」

 

 今までの態度から露骨に変えると、ニナは寧ろこっちを怪しんでくるような気さえする。

 ニナにしてみれば、それは決して嬉しい事じゃないと思う。

 

「いえ、別に私もそこまで露骨に態度を変えろとまでは言ってないわ。ただ、それとなく……普段はぶっきらぼうに言ってるような事を、優しく言ってあげて欲しいのよ。それにこれはアクセル中尉にも利益はあるわよ?」

「俺に利益?」

「そう。ニナは良くも悪くも気分が仕事に影響するわ。勿論落ち込んでる時でも最低限の仕事はきっちりとやるけど、気分の良い時の仕事は凄いわよ。ニナが試作1号機と2号機の専属のエンジニアになったのも、それが理由だし」

「つまり、ニナが気分良く仕事をすれば、MSの完成度も上がるという事か」

 

 そう聞く俺に、ポーラは笑みを浮かべて頷くのだった。

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