ハーフメタルの採掘場で見つかったMSとMA。
……正確には、MSはともかくMAはまだそうだと決まった訳ではないのだが。
ただ、それでもガンダムと一緒に眠っていた以上、MAの可能性が高いのも事実。
そんな訳で、MAっぽいのは後で調べてみればいいだろう。
それを調べるのは……やっぱり、ホワイトスターで調べた方がいいだろうな。
ただし、ガンダムの方については恐らくテイワズでの修復や改修となる。
何しろMAっぽい奴の調査については特に問題はないが、ガンダムについてはオルフェンズ世界のガンダムのデータを多数持っているテイワズの方が間違いなく慣れている。
ガンダムの技術や情報については、既に技術班の方でもそれなりに集めているのだが、やはりまずはしっかりと新しいガンダムの修復や補修をして貰った方がいい。
ちなみに発掘されたガンダムの所有権については、今のところまだ決まってはいない。
何しろ見つかったのは、採掘場での事だ。
これが例えば、シャドウミラーの基地の近くに埋まっていたとか、鉄華団の基地の近くに埋まっていたのなら、それぞれに所有権を主張出来たりもするのだが……それが出来ない状況である以上、すぐに決める事は出来ない。
とはいえ、個人的には折角のガンダムだ。
シャドウミラーの技術班で各種データを採取するという意味でも。
発掘したガンダムの修復とかそういうのをテイワズに任せるのは、結局のところシャドウミラーにその技術や実績がないからな。
……個人的には、そういうのがなくてもシャドウミラーの技術班なら普通に修復をしたり出来ると思うんだが。
ただ、実績が何もない――あくまでもオルフェンズ世界ではという意味でだが――シャドウミラーと、バルバトスやグシオンを修復し、改修した実績を持つテイワズ。
そのどちらに任せたいかと言えば……シャドウミラーの技術力を知らない者とかなら、やはりテイワズだろう。
とはいえ、テイワズだから絶対に安心出来るかと言われれば、そういう訳でもない。
具体的には、テイワズにはジャスレイがいるという大きな不安材料がある。
それこそジャスレイにしてみれば、未知のガンダムのデータというのは、出来れば入手したい……いや、それどころか、出来ればデータだけではなく本物を奪いたいと思ってもおかしくはない。
しかもその未知のガンダムを発掘したのが俺達となれば、ジャスレイにとってそれを奪えば俺達にダメージを与えるという事になり、だからこそ奪おうと考えてもおかしくはない。
そんな訳で、量産型Wを1人派遣する事になった訳だ。
量産型Wが1人いれば、それこそジャスレイがちょっかいを出してきても対処は可能だ。
本来ならもう数人出してもいいんだが、そうなると皆同じヘルメットを被っており、性格も同じという事になり、怪しまれる。
あるいは名瀬とマクマード辺りにはそろそろシャドウミラーの真実を教えた方がいいのかもしれないが……難しいところだな。
もしシャドウミラーの真実を教えるのなら、やはり政治班から何人か連れていった方がいいけど……その辺は後回しだな。
それにマクマードがシャドウミラーに……というか、俺の率いる組織にちょっかいを出してくるとは思わない。
マクマードは俺の強さを……あるいはいざという時の凶悪さを知っている。
とはいえ、この場合でも問題なのはジャスレイだ。
いっそ、マクマードに早いところジャスレイを切れと言うか?
そうなればそうなったで、テイワズを真っ二つに割る騒動になりかねないのが痛いが。
人望という意味では、マクマードと名瀬の方が圧倒的に有利だろう。
だが、資金面という意味では、ジャスレイに軍配が上がるのも事実。
何しろテイワズを今のように大きくするのに必要だった資金の多くは、ジャスレイが稼いだものらしいし。
殺してそれですむのなら、それこそとっとと暗殺でも何でもすればいいんだが。
「アクセル、ちょっといい?」
「どうした? あのMAっぽい奴の解析で何か分かったのか?」
現在俺がいるのは、ホワイトスターにある魔法球の中。
勿論、ゆっくりする為の魔法球ではなく、技術班が使っている方の魔法球だ。
そこで俺は技術班にMAっぽい奴……面倒だな。取りあえずMAって事にしておくか。それの解析を頼んでいたのだが、マリューがそう俺に声を掛けてきたのだ。
「まだ大雑把にしか解析してないから、何とも言えないわね。ただ……1つ分かったのは、コックピットの類はないというのは間違いないわ」
「やっぱりMAか」
これがMWであれば、当然ながらパイロットが乗る為のコックピットが必要になる。
……あるいは、厄祭戦の時は遠隔操縦でMWを使っていたという可能性もない訳ではないが。
実際、ルリやラピスはエステバリスとかを遠隔操作可能な能力を持つ。
であれば、厄祭戦の時にMWを無人で動かす事が出来ていたとしても、俺は驚かない。
W世界のMDとかもあるしな。
それに無人機であれば、色々と使い道は多い。
MAがどのような攻撃手段を持っているのか、捨て駒として使うといったように。
……とはいえ、それでもギャラルホルンにその手の技術の残滓が何も残っていないのを考えると、やはりMAの可能性が高いとは思う。思うのだが……
「とはいえ、あの程度のMAが人類を絶滅寸前まで追い詰めたのか?」
「それを私に言われても困るわ。そもそも私はこれを、MAとは断定していないのだし」
マリューはオルフェンズ世界についての情報にまだ疎いので、その辺については仕方がないとは思う。
ただ……うーん、悩みどころだな。
いっそ、名瀬に聞いてみるか?
名瀬なら、俺が知らないような厄祭戦についての情報も知ってるだろうし。
……いや、ここは寧ろマクギリスに聞くべきか。
そもそもの話、ギャラルホルンというのはMAと戦う為に作られた組織だ。
であれば、ギャラルホルンにはMAの情報が……あるいはMAそのものの情報ではなくても、厄祭戦の時に遠隔操作でMWを操縦していたのかとか、そういうのの情報が残っていてもおかしくはない筈だ。
「分かった。なら、それを知ってるらしい奴に聞く。……悪いが、写真とか映像データとか、そういうのを用意してくれないか?」
「構わないけど。……ちょっと悔しいわね」
マリューがその長い栗色の髪を弄りながら、悔しそうに言う。
シャドウミラーの技術班としては、あの機体が一体どういうものなのかを自分達で把握したかったのだろう。
とはいえ、俺が言ったようにまだホワイトスターとオルフェンズ世界は繋がってからそう時間が経っていない。
色々と情報収集はしているものの、それでも全ての情報を把握するというのは難しいのだ。
こればかりは、しっかりと時間を掛ける必要があるのだから。
「それはこれから取り戻せばいい。……もしあれが本当にMAだったら、その解析とかは技術班の得意分野だろう?」
MAというのが、具体的にどのような力を持っているのかは、生憎と俺にも分からない。
何しろデータが残っていないのだから。
……あるいは、それこそギャラルホルンになら、その辺のデータが残っている可能性もあるが。
そうだな、このMAっぽい奴について聞いてみて、その後でMAについてどんな情報が残っているのか、聞いてみてもいいかもしれないな。
そんな風に思いつつ、俺はマリューからデータを貰うのだった。
『申し訳ありません。現在マクギリス様は忙しくて……』
オルフェンズ世界に戻ってマクギリスに連絡を取ろうとすると、その通信に石動が出て、そう言ってくる。
忙しい、か。
まぁ、それは分かる。
夜明けの地平線団の一件もあるし、ラスタル達とのやり取りとかもあるのだろうから。
ただ、それを考えた上でも、マクギリスに連絡を取りたいというのが、俺の正直な気持ちだ。
「こっちも急ぎの用事なんだが」
『アクセル代表からの連絡ですから、分かっています。ですがそちらもアーブラウの件で今は忙しいのでは?』
「……は?」
石動の口から出たのは、俺にとっても予想外の言葉だった。
そんな俺の様子に、石動は少しだけ驚いた様子を見せる。
『おや、まだ情報が……』
「アクセル、ちょっといい。地球から至急の連絡が来たんだけど……」
石動の声を遮るように、マーベルが部屋に入ってくる。
何だ? いや、タイミングからして、石動が口にしていた件と関係あるのか。
『どうぞ』
石動のその言葉に、マーベルに視線を向ける。
するとマーベルは俺の意図を察してすぐに口を開く。
「アーブラウに出張していた人達からの連絡よ。アーブラウ防衛軍発足式典においてテロがあり、蒔苗さんが意識不明の重体。そのテロを行ったのがSAUという事らしくて、現在アーブラウとSAUの間で戦争が起こりそうな状況よ」
「……は?」
一瞬、マーベルの言ってる事が分からなかった。
しかし、すぐにマクギリスが忙しいと言っている理由が理解出来た。
地球外縁軌道統制統合艦隊を率いているマクギリスだが、その職務の中には地球の治安を守るというのもある。
そんな中でアーブラウとSAUが戦争になるとなれば、当然のように地球外縁軌道統制統合艦隊を率いるマクギリスとしては、その戦争を何とか起こさせないようにするか、起きても出来るだけ早く終わらせるようにしたいと思うのは当然だろう。
「なるほど、話は分かった。……けど、なんでSAUがアーブラウにテロを?」
「それは私にも分からないわ。ただ、軍備の件とかでアーブラウとSAUは色々と揉めていたのは間違いないらしいわ」
「ああ、それは俺も聞いてる。……それでも、先制攻撃とかならまだしも、テロに走るというのはどうもな」
SAUにしてみれば、自分達と同じ国であるアーブラウが軍を……それも2年前の一件で大きく名を上げたシャドウミラーと鉄華団が全面的に協力をして軍を作っているのだ。
それで警戒しない訳がない。
あるいはこれで、俺達がギャラルホルンを相手に負けていたのなら、いざとなったらギャラルホルンに頼ればいいと判断した可能性もある。
だが、俺達はギャラルホルンを相手に……それもギャラルホルンの最精鋭と言われているアリアンロッド艦隊を相手にしても、全戦全勝だ。
まさに実力という点では俺達の方がギャラルホルンよりも上であると認識してもおかしくはない。
だからこそ、SAUもアーブラウに対抗するように軍を作っていた筈だ。
そういう意味で、強い対抗心や警戒心を抱いてるのは分かるが、それでもテロをするというのは納得が出来ない。
「それ……本当にSAUの仕業なのか?」
あまりに不自然、それでいて自然な流れなように思える。
SAUがテロを行うのは不自然だし、それをSAUの仕業としてアーブラウと戦争になる……なりそうという、自然な流れ。
勿論、それだけ蒔苗が国民に慕われているというのもあるのだろうが。
それでも何かこう……誰かの手の上で好き勝手に踊らされているように感じるのは、決して俺の気のせいじゃないように思える。
「じゃあ、誰が?」
「真っ先に考えられるのは、その2国が戦争をして利益を得る人物……アフリカユニオンか、オセアニア連邦とか?」
『そちらの方では、特に動きはありません。いえ、今回のテロにおいて情報収集をする為に動いていますが、戦争をするような動きではないかと』
俺とマーベルの会話に、石動がそう割り込む。
映像モニタに表示されている石動の表情は、深刻な色だ。
俺の口から出た言葉は、石動にとって予想外だったのだろう。
もっとも、俺が口にしたのは別にそこまで鋭い意見という訳ではない。
……もし違うところがあるとすれば、俺がオルフェンズ世界以外の世界……ホワイトスターから来たから、この世界の常識では自然とスルーしている内容を口にしていたとか、そんな感じか?
「つまり、その2つの国の可能性も低い。となると……誰が怪しい?」
『ラスタル・エリオンかと』
石動の言葉に、そうなるかと納得する。
実際、今回の戦いをどうにかするのは、マクギリスの仕事だ。
それを失敗すれば、ギャラルホルン内部にて……そしてセブンスターズの中でも、マクギリスの影響力は下がるだろう。
現状維持派を率いているラスタルに対し、改革派を率いているのはマクギリスだ。
そのマクギリスの影響力が少なくなるというのは、ラスタルにとって決して悪い事ではないだろう。
いや、寧ろそれを狙って今回の騒動を起こしたと思っても間違いではないかもしれない。
「その可能性が高いと俺も思う」
ふと、テイワズのジャスレイの仕業じゃないかといった考えがあったが、すぐにそれを否定する。
テイワズの影響力が強い圏外圏でなら、ジャスレイの影響力もあるだろう。
だが、地球は違う。
テイワズの影響力もない訳ではないだろうが、それでもそこまで大きくはない筈だった。
「話は分かった。こっちでも情報を集める。それと……こっちからデータを送るから、マクギリスに渡しておいてくれ」
俺の言葉に、石動は頷くのだった。