転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4095話

 結局、ガランの身柄はマクギリスに引き渡す事になった。

 その見返りとして貰ったのは、エイハブ・リアクターを80基。

 これについては、鉄華団とシャドウミラーで分ける予定となっている。

 個人的にはエイハブ・リアクターの製造技術が是非とも欲しかったのだが。

 とはいえ、エイハブ・リアクターは技術としてはかなり魅力的だが、魅力的だからといってシャドウミラーで使えるかと言われれば、使えないんだよな。

 出力が高いし、頑丈だしと良いところはある。

 だが同時に、エイハブ・リアクターから発せられるエイハブ・ウェーブは精密機器が使えなくなるという致命的な欠点がある。

 これでNジャマーⅡのように、スイッチのオン、オフが出来るのならいい。

 だが、エイハブ・リアクターは使っている限り必ずエイハブ・ウェーブを出す。

 そうなると、街中で戦った時の被害が大きすぎる。

 この辺がネックになって、シャドウミラーで使うのは無理だろう。

 あるいは技術班なら、エイハブ・リアクターを起動してもエイハブ・ウェーブを出さないようにとか出来るかもしれないが。

 ともあれ、エイハブ・リアクターを報酬として貰えるのは大きい。

 それ以外にも、火星のクリュセにおいて今よりも独自の権限を大きくするよう働き掛けるというものだったり、ギャラルホルンの火星支部から派遣される捕虜の監督とかそういうのをより大規模にするとか、他にも貸しという事にしたり。

 そんな感じで、ガランの受け渡しは決まった訳だ。

 ただし、ゲイレールはこっちで確保したままだが。

 ぶっちゃけ、ゲイレールの中にあるデータがあれば、ガランの重要度はそこまで高くはないし。

 勿論、いればいた方がいいのは間違いないのだが。

 

「では、終戦が成立しました。以後の行動にはくれぐれも気を付けて下さい」

 

 簡単な調印式だったが、それでもアーブラウとSAUの代表、そして式を進めていたマクギリスがそれぞれに自分のやるべき事をやり、式典が終わる。

 SAU側の政治家は、こちらを強く睨んでいる。

 まぁ、分からないでもない。

 SAUにしてみれば、今回の戦争は明らかな負けだ。

 そもそも戦争の始まりからして、SAU側が難癖を付けてきたようなものだったし。

 その辺も加味し、しかも最終的には戦線はSAU側に大きく押し込まれていたという影響もあって、終戦の条件はアーブラウ側に有利なものとなった。

 せめてもの救いは、SAUの領土が奪われるといった事はなかったくらいか。

 SAUが育てた軍人も多数死に、領土はそのままだが結構な額の賠償金も支払われる事になったし。

 とはいえ、シャドウミラーや鉄華団を敵に回した時の恐怖は覚えているらしく、睨むだけで実際に何か口にしたりはしない。

 SAU側もかなりの部分まで攻め上げられたしな。

 アーブラウの政治家……ラスカー・アレジは、そんなSAU側とは違って、笑みを浮かべていたかと言われれば、決してそうではない。

 何しろ今回の戦争において、蒔苗がテロにあってしまった結果、蒔苗の派閥は後手に回ってしまった。

 その際、2年前の一件で失脚したアンリの仲間……という訳ではないらしいが、とにかく反蒔苗の者達が動いたらしい。

 この式典が始まる前にラスカーから聞いたのだが、何でも反蒔苗の手は地球の側にある共同宇宙港にも伸びてており、もし普通に俺達が宇宙船で地球まで来た場合、宇宙港の使用であったり、アーブラウに降下したり出来なかったらしい。

 実際には、システムXNを使って火星から地球に直接転移したので、大きな影響はなかったが。

 ただし、それはあくまでも偶然そうなったという事だ。

 もしシステムXNがなければ、かなり面倒な事になっていただろう。

 ラスカーはその辺を探ってみると言っていたが、実際にそれがどのようなことになるかは、微妙なところだと思うが。

 蒔苗の派閥はその名の通り蒔苗がいるからこそのものだ。

 その蒔苗のカリスマ性によって、アーブラウにおいて大きな勢力を持っている。

 そう考えると、ガランが真っ先に蒔苗を狙ったのは、最善の手段だったんだろうな。

 そんな風に思いながら、俺は式典が早く終わってくれないかと待つのだった。

 

 

 

 

 

「何? 本当か、それは?」

「ええ、本当です。つい先程入った連絡によると、蒔苗先生の意識が戻ったとか」

 

 ラスカーは興奮気味に言ってくる。

 式典が終わって、その後に行われるパーティが始まるまでの短い時間。

 俺もまた、慣れないタキシードに身を包み、マーベルやオルガと話していたところに、ラスカーがやって来て、蒔苗の意識が戻ったと言ってきたのだ。

 それは良かった。間違いなく良かったのだが……何だか、この騒動が終わったのを見計らったように意識が戻ったな。

 もしかしてだが、実はもっと前から意識が戻っていて、それで自分が面倒に関わりたくないから……もしくは自分の後輩達、この場合はラスカー達だが、そいつらを鍛える為にわざと自分の意識が戻ったのを公にしなかったという可能性も否定は出来ない。

 普通なら馬鹿らしい考えだと思うかもしれないが、何しろ蒔苗の事だ。

 良い意味でも、悪い意味でも政治家として一流なのは間違いない。

 そんな蒔苗だけに、そういう事をしてもおかしくはなかった。

 

「その……チャドはどうなってます?」

 

 こちらも慣れないスーツ姿のオルガが、ラスカーに尋ねる。

 しかし、ラスカーはそんなオルガの言葉に首を横に振った。

 無理もないか。

 聞いた話によると、テロが起きた時にチャドは咄嗟に蒔苗を庇ったらしい。

 つまりそれは、蒔苗よりもチャドの方が重傷だという事を意味している。

 もっとも、老人の……180歳を超える蒔苗と、まだ若いチャドだ。

 当然ながら、治癒能力という意味ではチャドの方が上だろう。

 一見すると細身に見えるチャドだが、それでもCGSの時からいた古株だ。

 しかも元ヒューマンデブリという事もあり、CGS時代には他の孤児達よりも理不尽な扱いを受けていた。

 結果として、それによって身体が鍛えられ、治癒能力も高くなったのは皮肉なことだが。

 

「蒔苗がこうして意識が戻った以上、チャドもそう遠くないうちに意識が戻ると思ってもいいと思うぞ。それにいざとなったら、俺の力でどうにかするから安心しろ」

「出来れば、蒔苗先生にもアクセル代表の力を貸して欲しかったものですな」

 

 ラスカーは俺が魔法を使えるのを知ってるので、そう言ったらしい。

 とはいえ、実際には今のは俺の魔法ではなく、ホワイトスターに連れていって治療するという意味なのだが。

 今はまだゲートとかそういうのは可能な限り秘密にしてるので、ラスカーの言葉に乗らせて貰おう。

 

「蒔苗は年齢も年齢だし、下手に魔法を使ったりすると危険なことになったりしかねないんだよ」

「なるほど、そういうものですか」

 

 ラスカーは俺が魔法を使えるというのは知っているものの、魔法についての知識がある訳でもない。

 そうである以上、俺がそうだと言えばそういうものかと納得するしかない。

 もっとも、これは完全に嘘という訳ではない。

 蒔苗はこのオルフェンズ世界特有の延命技術によって長生きをしている。

 そうなると、何が影響するのか分からない。

 いやまぁ、2年前にはそんな蒔苗も普通に魔法で作った影のゲートを潜ったりしていたけどな。

 それで平気だったことを考えると、恐らく大丈夫だとは思う。

 だからといって、絶対に安全だと断言したりとかは出来ないけど。

 

「とにかく、蒔苗の意識が戻ったのはめでたいな。SAUとの戦争も実質的な勝利だったし、色々と問題はあったが、それでも結果的には悪くないんじゃないか?」

「そう……ですね。ええ、そうだといいんですが。これ以上は余計な騒動が起きないように願っています」

 

 ラスカーにとって、それは冗談でもなんでなく、本当に心からの言葉だろう。

 とはいえ、残念だがその望みは叶いそうにない。

 SAUとの問題は片づいたが、まだ火星のハーフメタル採掘場で発掘されたMAっぽい奴の件がある。

 ……あ、ちなみに既にラディーチェはハーフメタルの採掘場に突っ込んである。

 夜明けの地平線団の捕虜達と一緒だから、なよっちいラディーチェがどういう目に遭うのかは予想出来るが、その辺は自己責任で頑張って欲しい。

 生き残るという選択をしたのは、ラディーチェ本人なのだから。

 後は、それこそ今回の戦争が前哨戦でしかなかった、ジャスレイの始末。

 ……それとこっちはまだ確定事項ではないが、イオク・クジャンが俺を狙ってるらしいので、敵の敵は味方ということで手を組む可能性がある。

 そして、更にその後での戦いの本番、マクギリス率いる改革派と、ラスタル率いる現状維持派のギャラルホルンにおける内乱。

 ちなみに他にも、火星におけるホワイトスターと繋がったゲートの公表、つまり異世界の存在の暴露とか、まだまだイベントは大量にある。

 今更の話だけど、多分今のこの流れって原作にすると続編とかそういう感じなんだろうな。

 1がクーデリアを地球まで送って、そして地球での騒乱。

 2が夜明けの地平線団の一件から始まった今か。

 実はこれで1つの流れという可能性も否定は出来ないが……そうなると、地球での騒乱が終わった後で夜明けの地平線団の一件が起きるまで2年近く開いているのが気になる。

 勿論、その間にアーブラウ軍を1から作ったり、歳星に行ってMSの改修や、獅電のテストを行ったりとか、色々とあったから、そのまま原作の流れが続いているという可能性も否定は出来ないが。

 

「頑張れよ」

「……は? ちょっ、一体どういう事ですか!?」

 

 俺が励ますようにラスカーの肩を叩くと、それを受けたラスカーが何か嫌な予感でもしたのか、慌てたように俺を見てくる。

 とはいえ、俺に出来るのはラスカーに胃薬でも送ることくらいだったが。

 

 

 

 

 

 終戦の式典の後のパーティは、決して良い雰囲気ではない。

 それでも参加している者達は政治家らしく、険悪な表情を浮かべたりはせず、笑みを浮かべてやり取りをしていた。

 ……もっとも、笑みを浮かべつつも相手を非難するような言葉を遠回しに、回りくどく伝えたりしていたが。

 この辺については、政治家らしいのは間違いない。

 政治家以外の軍人達は、かなり険悪な雰囲気だったが。

 特にSAU側の軍人は、自分達が負けたということもあってか、余計に強がっていたりした。

 せめてこの場では相手に侮られないようにと、そう考えての事だろう。

 それはいいのだが……

 

「俺の誘いを断るというのか? 俺はこう見えてもSAUの中ではそれなりの階級だ。後で問題になるかもしれないが、それでもいいのだな?」

 

 うん、強がるのは分かるが、だからといってマーベルに無理に言い寄るのはどうかと思う。

 もっとも、その気持ちは分からないでもない。

 白人らしい肉感的な美人が、胸元と背中の大きく開いた赤いパーティドレスを着ているのだ。

 SAUの軍人でなくても、踊りに誘ったり、話をしたり……そしてどうにかして、一夜を楽しみたいと思ってもおかしくはない。

 おかしくはないが、だからといって式典終了後のパーティでこうして強引に言い寄るのはどうかと思うが。

 マーベルがこちらに視線を向けてくる。

 仕方がないか。

 ここでマーベルが行動に出ると、それはそれで面倒な事になりかねない。

 そうである以上、ここは俺が前に出た方がいいだろう。

 

「その辺にしておけ。みっともない真似をして恥を掻くのはお前だぞ」

「何だと……貴様、傭兵風情が……」

「PMCなんだがな。まぁ、大きな目で見れば間違ってはいないか」

 

 ともあれ、どうやら傭兵と俺に向かって言ってきたということは、どうやら俺達の事を最初から知っていたらしい。

 だとすれば、最初からマーベルじゃなくて、俺を目当てにしての事か?

 

「傭兵が軍人である俺にそのような態度を取ってもいいと思っているのか? ああ?」

「思っているぞ。俺達はPMC……傭兵だからこそ、国に縛られる事はない。そしてシャドウミラーや鉄華団が強いのは、お前達が負けた事で明らかだろう?」

「ぐ……貴様……」

 

 悔しげに呻く男。

 そうした騒動が起きていれば、当然のように周囲の注目を浴び……慌てたように、SAUの人間、見た感じは軍人だから、この男の上官なのだろう者がやってきて、慌てたように口を開く。

 

「馬鹿者が、騒動を起こすなと言っておいただろうが! ……すまない、アクセル代表。この者の態度には謝罪する。SAUとしては、決してシャドウミラーや鉄華団と敵対したい訳ではないのだ」

「なら、それを態度で示して欲しいものだな」

 

 俺の言葉に男は頷き、無理矢理男を連れて行く。

 それを見送りながら、俺はマーベルに視線を向ける。

 そんな俺の視線に、マーベルは満足そうに笑みを浮かべて俺の腕を抱く。

 その後は特に騒動が起きる事もなく、無事にパーティは終わる。

 

 

 

 

 

 その夜、扇情的なマーベルのドレス姿で必要以上に燃えるのだった。

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