Eパックか。
まぁ、確かにクレナの言ってるように、UC世界のビームライフルとして考えれば、悪くはない。
いや、ビームライフルを撃ちきった後も、そのEパックを交換すれば、また普通にビームライフルとして再利用出来るのは大きい。
ただ、このEパック……確か、アレックスでも採用されていたような気がするんだが。
うーん……考えられる可能性としては、ディアナとアナハイムは別の企業だからか? けど、連邦軍にはアナハイムのデータは残っている筈で、ガンダム開発計画にはその辺りのデータも参照されていてもおかしくはないような。
とにかくアナハイムがEパックの技術を入手したのなら、それはそれで問題ないと思うが。
とはいえ、個人的にはEパックも悪くはないが、機体の方からエネルギーを使うというのはどうなんだろうな。
例えばSEED世界のMSはMSのバッテリーからエネルギーを使ってビームライフルを撃っている。
核融合炉を使っているUC世界のMSであれば、その方式の方がいいと思うんだが。
「このEパックだけど、試作1号機と試作4号機の物……つまりロングレンジライフルとビームマシンガンでは、Eパックの形式が違うのよ」
「……わざわざ違う形にする必要があるか? 流用出来るというのを考えれば、同じ形式のEパックにした方がいいと思うけど」
MSの部品もそうだが、流用出来るというのは非常に大きな意味を持つ。
1年戦争の時にジオン軍で行われた、総合整備計画も同じようなものだ。
「Eパックの形式によって、武器の性能にも影響が出るのよ。それにこのEパックというのは、まだ新しい技術だから試行錯誤しているというのが正直なところよ」
なるほど、クレナの言うようにまだ未熟な技術だからこそ色々と試している訳か。
「話は分かったけど、それでもロングレンジライフルにビームマシンガンの性能をプラスして欲しい」
「……アクセル中尉の意見は分かったわ。出来るかどうかはまだ分からないけど、検討してみましょう」
「頼む」
「ただ、ロングレンジライフルはその名前の通り、銃はかなりの大きさよ。そこに更にビームマシンガンの効果をプラスするとなると、余計に大きくなるかもしれないわ。そうなると、戦いの時に取り回しの件で問題が出て来ると思うけど……」
「その辺は腕でカバーするよ。とはいえ、何らかの対処が出来るのならそうして欲しいとは思うけど」
砲身の長い武器というのは、近接戦闘をやる時にはかなり不利になる。
それは今までの経験から明らかだ。
ただ……そもそもMSでの戦闘というのは、その大部分が射撃で片付くのも事実。
勿論、戦いの中ではビームサーベルを使った近接戦闘になる事も多い。
とはいえ、全体的にというだけではなく、俺の戦闘スタイルとしても射撃を重視してるのは間違いない。
ただ……強襲用のMSであるとすれば、近接戦闘になる可能性は普通よりも大きい。
そうである以上、やはりその辺の対処も必要ではあるんだよな。
「そうね。これも試作1号機のビームライフルの流用になるだろうけど、小さなビームサーベル……いえ、ビームナイフとでも呼べるような物をビームライフルで使えるようにしたりとかするのはいいかもしれないわね。もっとも、そうなるとまたビームライフルの多機能化になるけど」
「多機能化というのは、悪くないと思うけどな」
元々俺はその手の武器を好む。
このUC世界においても、ルナ・ジオン軍のエース級が使うギャン・クリーガー。
その武器の1つに、シェキナーというのがある。
これは元々1年戦争中に連邦軍の行われたペイルライダー計画で開発されたMSが使っていた多機能武装……いや、複合兵装だ。
ジャイアント・ガトリング、メガ・ビーム・ランチャー、マイクロミサイルランチャーを1つの武装に纏めた武器で、威力としては非常に強力だ。
もっとも、そんな複合兵装である以上、当然のように大きさはかなりのものになってしまう。
だからこそ、エース級でなければ使いこなすのは難しいのだ。
もし新兵とかがシェキナーを使ったら、取り回しの悪さから敵にその隙を突かれ、あっさりと撃破されてもおかしくはない。
つまり、パイロットの技量が高ければシェキナーは非常に強力な武装になるが、技量が低い……未熟であれば、シェキナーは足を引っ張る訳だ。
……ああ、いっそ試作4号機をベースにして作るMSには、シェキナーを装備させてもいいかもしれないな。
「ちなみに、ルナ・ジオン軍で使われているシェキナーという複合兵装があるんだが、知ってるか?」
「知ってるわ」
あっさりと答えるクレナ。
もっとも、それも当然か。
既にギャン・クリーガーはルナ・ジオン軍で普通に使われているし、シェキナーもそのギャン・クリーガーが普通に使っている。
今のところ、宇宙海賊とかと戦う時くらいしか、ギャン・クリーガーが……いや、ルナ・ジオン軍が出る事はないから、シェキナーを使う姿を見た事がある者はそう多くはないんだが。
けど、連邦軍の中の強硬派も時折ルナ・ジオンにちょっかいを出してきたりするしな。
幸いなことに、このフィフス・ルナは基本的にコーウェン派の者達が大多数なので、強硬派はいない。
いやまぁ、表に出していないだけで隠れ強硬派だったり、もしくは強硬派と繋がってる奴とか、そういうのはいる可能性が十分にあるが。
「そうか。知ってるのなら話は早い。俺が開発して欲しいと言ってるビームライフルも、シェキナーのような多機能化された複合兵装にして貰えると嬉しいんだけどな。ただし、出来ればシェキナーよりも小さくて小回りが利くような武器にしてくれると嬉しい」
「……あまり無茶を言わないで欲しいんだけど」
若干の呆れと共にクレナがそう言ってくる。
クレナにしてみれば、シェキナーのような複合兵装でありながら、取り回しもしやすい武器にして欲しいと言ってるのだから、それは無茶だと言いたくなるのも分かる。
分かるのだが、だからといってこっちもそれで退く訳にはいかない。
「今なら、ある程度の事まではガンダム開発計画の資金を流用して開発出来るんじゃないか? そしてアナハイムにとっても、技術力を高めるという意味で、新しい武器に挑戦するのは悪くないと思うが……どうだ?」
「……」
俺の言葉に、クレナは悩みながらテーブルの上のコーヒーを飲む。
どうやらクレナは紅茶派ではなくコーヒー派らしい。
そうしてコーヒーを少しずつ飲みながら考えを纏め……
「オサリバン常務に掛け合ってみるわ」
そう結論を口にする。
どうやらクレナの中では俺の説明した複合兵装について十分に勝算があると判断したらしい。
実際、アナハイムにしてみればガンダム開発計画の資金でその辺りの研究や開発が出来て、自分達には複合兵装のノウハウが残るのだから決して悪い話ではない。
MSを作る会社として、それなりに大きなメリットなのは間違いないだろう。
何しろ複合兵装というのは、その名の通り複合……つまり、複数の武器や防具、あるいはそれ以外の何らかの機能が一つに纏まっている兵装の事だ。
当然ながら普通の武器を作るよりも高い技術力が必要になるし、その武器を作れるというのはアナハイムにとって大きなアピールポイントになるだろう。
例えば、SEED世界で俺が使ったブリッツ。もしくはX世界でガンダムXが使っていたシールドバスターライフル。ダンバイン世界ではレプラカーンが使っていた……そして俺も使った複合兵装のシールドとか。
そのような武器を作れるというのは高い技術力を持っているという証になる。
……もっとも、複合兵装を作れるからといって、実際にその注文が入るかとなると、また別の話だが。
複合兵装は幾つもの武器や防具が一体化している以上、それを使いこなすには相応の技量が必要となる。
例えばこのフィフス・ルナに駐留する連邦軍の中でもトップエースの1人であるヤザンなら、複合兵装を渡せば使いこなすだろう。……本人がそれを好むか好まないかはまた別の話として。
しかし、例えばMSのパイロットになったばかりの新人、そこまでいかなくても一般のパイロットの場合、複合兵装のような扱いの難しい物を完全に使いこなせるかと言われれば、微妙なところだろう。
それどころか、複合兵装の扱いに戸惑って敵に撃墜されるという可能性も否定は出来ない。
だからこそ、アナハイムが複合兵装を作れても、連邦軍から大量の注文はまずないだろう。
もっとも、それはつまりエース級が使いこなせば十分な威力を発揮するということを意味しているので、それを使いこなせるパイロットの為に注文が入る可能性は十分にあったが。
「複合兵装は、ルナ・ジオン軍としても注目してる分野だ。これでアナハイムが上手くやれば、もしかしたらルナ・ジオン軍からの注文があるかもしれないな」
クレナをやる気にする為に、そう口にする。
すると実際、クレナの顔はやる気に満ちてきた。
無理もないか。
試作0号機の件でクレナは半ば失脚したらしいし。
それを覆せるかもしれないと考えれば、こうしてやる気になるのはおかしな話ではない。
それに複合兵装の欠点の1つに、コストがある。
複数の兵装を1つに纏めるという事で、当然ながらコストは普通よりも高くなるのだ。
例えば、AとB、Cという兵装をそれぞれ個別に用意するとなると、1つの兵装のコストが1だとして、1つずつだと合計3のコストが必要となる。
だが、AとBとCを複合兵装として1つの兵装にする場合、コストは3どころか5や6……場合によっては、更に大きくなる。
当然だろう、複数の兵装を1つに纏めるのだから。
そういう意味でも、1年戦争で税収が激減している連邦軍にとって複合兵装は好まない。
一般のパイロットが使いこなすのは難しく、コストも高いのだから当然だろう。
だが、それがルナ・ジオンとなれば話は違ってくる。
元々エース級のパイロットが多く、一般のパイロットもそれなりに質は高い。
それこそ平均で見れば、連邦軍よりも上だろう。
だからこそ、複合兵装を使いこなせる者も多いだろうし、コストについてもシャドウミラーの協力がある以上は心配しなくてもいい。
……あれ? これ、もしかしたら本当にアナハイムが複合兵装を開発したら、ルナ・ジオン軍で採用されるかもしれないな。
まぁ、そうなったらそうなったで、ルナ・ジオン軍としては悪くないだろう。
兵器開発メーカーのディアナにしてみれば、後れを取ったという事でやる気になるかもしれないが。
兵器メーカーの在り方も、複雑だよな。
ジオン公国の時のように、複数の兵器メーカーに競わせるといった形だと、それぞれの兵器メーカーが独自のパーツとかを多く作って共用出来ないし、違う組織だからという事で、社外秘の内容についてはそう簡単に公表は出来ない。
かといってディアナのように1つのメーカーだと、社外秘とかそういうのは気にしなくてもいいし、パーツの共用性もそれなりにやりやすい。
ただ、1つの組織であるという甘えが出てくる。
競合する相手がいない以上、ディアナの独占状態になるのは間違いない。
そう考えると、アナハイムは何気に上手い事やってるのかもしれないな。
アナハイム・エレクトロニクスという1つの会社であるのは間違いないが、クラブ・ワークスを見れば分かるように、組織の中で多数の部署を作っている。
同じ会社なので社外秘とかの問題はないし、それでいて別の部署を作る事で競争関係を築く。
ある意味、ジオン公国とルナ・ジオンの良いとこ取りといった感じか。
まぁ、その辺については、ルナ・ジオンの政府の方で色々と考えているのだろうが。
ルナ・ジオンの上層部は、その多くがジオン公国の出身で、ジオン軍出身の者も多い。
だからこそ、同じ過ちを繰り返すような事はしない筈だ。
「アクセル中尉、悪いけど私は急用が出来たから先に帰らせて貰うわ。……複合兵装の件、しっかりと考えさせて貰うから」
そう言い、クレナは席を立つ。
俺はそんなクレナを見送ると、テーブルの上に残っていた料理を口に運ぶのだった。
「ねぇ、アクセル。何だか妙な噂を聞いたんだけど……」
フィフス・ルナでアナハイムが使っている区域に戻ると、通り掛かったニナがそう声を掛けてくる。
パワード・ジムの部品の件で忙しそうにしていたが、ちょうど通路で俺の側を通ったのだが、足を止めてそう聞いてくる。
「妙な噂?」
「ええ、何でもアクセルと所長がデートをしていたって」
「何だ、その噂は」
ニナが口にする所長というのは、クレナの事だ。
そのクレナと俺がデートをしていたという噂が流れたのは……あ。
「俺とクレナが一緒に喫茶店にいたからか? けど、別にあれはデートとかそういうのじゃなくて、試作4号機……正確にはそれをベースにしたMSについての相談があったからだぞ?」
ニナは俺がフィフス・ルナに来た理由……ガンダム開発計画のテストパイロットをする事によって、報酬として試作4号機をベースにしたMSを貰えるというのを知っている。
その為、すぐに俺の言葉に納得はしたのだが……
「それで、一体どういう話だったの?」
ガンダムオタク、MSオタクであるニナだけに、俺とクレナが話した内容については興味があるらしい。
別に隠す事でもないので、俺は素直にそれを話すのだった。