「まだMAは見つからないのか」
俺がフィフス・ルナから戻ってきた翌日、オルフェンズ世界では、現在どうにかして地中に埋まってる可能性が高いMAを見つけようとしていた。
プルーマとガンダム・フレームが地中から見つかってから、それなりに時間が経つ。
だが、今のところまだMAは見つかっていなかった。
……勿論、プルーマが見つかったからといって、必ずしもMAが見つかるとは限らない。
いや、MAの数を考えれば、地中にMAが埋まっていない可能性の方が高いだろう。
普通なら、そう判断してもおかしくはない。
だが、この世界には原作が存在する。
そして原作が存在する以上、MAが埋まっているという事件くらいはあってもおかしくはない。
いや、あるのは間違いないだろうと、俺は半ば確信している。
だがそのMAはまだ見つかっていない。
「それは仕方がないでしょう。ハーフメタルの鉱脈の側に埋まっていた場合、それを見つけるのは難しいのだから」
俺の呟きに、部屋の中で何らかの書類を確認していたクーデリアがそう言ってくる。
俺がいるのは、オルフェンズ世界のクリュセにあるアドモス商会の事務所だ。
現在は特に俺が何かをやる必要がないので、こうしてクーデリアに会いに来ているのだが。
「そうなんだよな。それが一番痛い。いっそ、シャドウミラーの力を使って徹底的に地面を掘るとかしてみてもいいのかもしれないな」
「……MAを見つけるのならそれで構わないと思うけど、ハーフメタルの採掘を考えると、出来れば止めて欲しいとは思うけど」
クーデリアにしてみれば、その言葉は当然のものだろう。
何しろ、もしMAを見つける事が出来なければ、火星の大地を荒らすだけになるのだから。
「それより、MAも重要だけどテイワズの方はどうなってるの?」
「ああ、そっちは現在準備を進めているところだ」
ラディーチェを送り込んだのはジャスレイだけに、その2人に繋がりがあるのは間違いない。
だが同時に、2人の繋がりを示す証拠が残っているとは思わなかった。
しかし、ラディーチェはその証拠を持っていた。
ジャスレイにしてみれば、ラディーチェの臆病さ、慎重さを甘く見ていたのだろう。
あるいはラディーチェが捕まると思っていなかったのか。
ともあれ、ラディーチェとジャスレイの繋がりがあり、そこに違法性があるとなると、こちらとしても手を出さない訳にはいかない。
マクマードにも話を通したし、現在ジャスレイを切り離す方向で話が進んでいる筈だ。
「ただ、テイワズを巻き込んだ為に、テイワズも異世界間貿易に関わる事になってしまったけどな」
「それは仕方がないわ。それに……アクセルのお陰で異世界間貿易を一手に引き受けるのはあくまでもアドモス商会で、テイワズであっても私達を経由しての取引になるんでしょう?」
「そうなるな。……とはいえ、アドモス商会の規模でそういうのをやるのは、少し難しいだろうけど」
基本的に、異世界間貿易というのは国が直接行う事が多い。
違うのは……すぐに思いつくとなると、ネギま世界とペルソナ世界か。
だが、ネギま世界は雪広財閥や那波重工が基本的に取引を行っており、ペルソナ世界は桐条グループがその役目を負っている。
そういう財閥やグループといった大きな影響力を持つ者達だからこそ、本来なら国がやるような取引であっても、十分にやっていけるのだ。
しかし、このアドモス商会は違う。
それなりに大きな会社であるのは間違いないし、かなり手広くやっているのも事実だ。
農園や孤児院、ハーフメタルの採掘……それ以外にも多くの仕事をやっているのは間違いないのだ。
それでも、異世界間貿易をやっていけるかとなると……下手に手広く商売をしているだけに、そっちに人員を使ってしまい、異世界間貿易の方に使える人員が少ない。
そうなると、必要なのはやはり人員の拡充だろう。
「とにかく人員を少しでも多く集める必要があるな。この場合、1から教育をして……というのが出来ないのが痛いと思うけど」
1から教育をするとなると、当然だが相応の時間が必要になる。
だが、今そのような時間はない。
今必要なのは、あくまでも即戦力の人員なのだ。
「そうね。……凛からしっかりと釘を刺されてるもの。私がアクセルの恋人だからといって、異世界間貿易においては手加減をするような事はしないと」
「凛の性格なら、そう言うだろうな」
凛はある意味、レオンやエザリアよりも攻めの交渉を得意としている。
だからこそ、クーデリアにこうしてきちんと忠告したのだろう。
それは、凛にとっての優しさでもある。
「ええ、私もそう思うわ。そんな訳で、現在クリュセで人員を大規模に募集しているのだけど……それでもまだ人員は少ないのよね」
「だろうな。優秀な人員なら、普通に自分の仕事はあるだろうし。そっちの仕事で十分稼げていれば、わざわざ現在の環境を捨ててまでアドモス商会に来るとは思えない」
そこで言葉を止めると、クーデリアも俺の言葉に同意するように頷く。
とはいえ、現在の状況を覆す一手がないかと言えば、それは否だ。
クーデリアのもう1つの顔……革命の乙女としての一面を出して、社員になるように勧誘すれば話は別だ。
革命の乙女としてのクーデリアは、かなり名前と顔が知られている。
それこそクリュセの中では……いや、火星全体で考えても、クーデリアを知らない者の方が少ないだろうだうし。
もっとも俺に抱かれたクーデリアは、既に乙女ではない以上、革命の女という表現の方が正しいのかもしれないが。
ただ、それでも革命の女と革命の乙女では、革命の乙女の方が聞こえがいいのも事実。
その為、今もクーデリアは革命の乙女として知られている訳だ。
ともあれ、そんなクーデリアだが、今のところ革命の乙女としての自分を全面的に出してアドモス商会の社員を増やそうとは考えていないらしい。
俺にしてみれば、使える手段は全て使っても構わないと思うんだが。
「いざとなったら、量産型Wとコバッタを貸すという手段もあるけど、どうする?」
「……考えておきます」
クーデリアにしてみれば、出来ればやはりこの世界の事である以上、この世界の人間でどうにかしたいのだろう。
しかし、どうしようもなくなった場合は、やはりそちらに頼る必要もあるので、今のような返事をしたらしい。
そんなクーデリアを見つつ、俺は休暇……休暇? とにかくゆっくりとするのだった。
『それで、アクセル。用事というのは何かな? 知っての通り今は色々と忙しいので、手短に頼むよ』
映像モニタに表示されるマクギリスの顔には、若干だが疲れの色がある。
忙しいというのは嘘でも何でもなく、本当なのだろう。
ガエリオやカルタ、それに石動とかがいるんだし、そっちに仕事を投げてもいいと思うんだが。
あるいは仕事を投げてもこの状態なのか。
もしくは。火星支部を経由して運ばせた、ガランのゲイレールのコックピットの中にあったデータの件が影響してるのか。
あのデータは、かなり危ない……ギャラルホルンにとっての危ないという意味だが、とにかくガランとラスタルの繋がりを示すデータがあった。
その辺の件で根回しとか、そういうのをしてるのかもしれないな。
「その忙しさを少し軽減する事が出来るか、もしくはもっと忙しくなるのか。……それは分からないが、マクギリスにとって悪くない報告があると思うぞ」
俺の言葉に、マクギリスは表情を変える。
ただ何となく通信を送ってきた、もしくはそこまで重要な内容ではないのに通信を送ってきた訳ではないと、理解したのだろう。
『何があったのかな?』
「イオク・クジャンが動く可能性がある」
『あの戯けか』
マクギリスに戯けとか言われている辺り、イオクについてどのように思っているのか分かりやすいな。
とはいえ、マクギリスの気持ちも分からないではないが。
イオクはラスタルの派閥に所属している……というか、ラスタル個人に心酔している。
だというのに、そのラスタルが仲間に引き入れようとしていた俺に向かって、普通に攻撃をしてきたのだから。
正直なところ、イオクが何を考えてあのような事をしたのかは、俺にも分からない。
分からないが、それによってラスタルの計画が修正を必要とするようになったのは間違いのない事実だった。
そんなイオクだけに、戯けと言われるのは納得出来た。
「戯けか。分かりやすい表現だな。これからは俺もそう呼ぶとしよう」
これは一応、通信が盗聴された時の事を考えてのものでもある。
アリアドネを使った通信である以上、多分大丈夫だとは思うが……それでも万が一があるのも事実。
そこで直接イオクの名前を出すような事をすれば、盗聴している者の注意を引く可能性がある。
……もっとも、イオクの名称を戯けにしたところで、話の前後から事情に詳しい者であれば、それがイオクを表しているというのはすぐに分かるだろうが。
なので、結局のところイオクを戯けと呼ぶのは、半ば……いや、半分以上は嫌味だ。
もしラスタル達が俺とマクギリスの通信を盗聴していて、それをイオクが知ったらどうなるか。
それによってイオクが暴走しても、俺は驚かない。
そして戯けと称されるイオクだ。
その暴走は、ラスタルにとっても予想外の事だろう。
……もっとも、ラスタルも当然ながらイオクの能力や性格については知っている筈だ。
そうなると、イオクが暴走するような事をさせるとは思えないので、もしこの通信を盗聴していても、それをイオクに見せるような事はないと思うが。
『その辺りについては好きにしてくれ。それで? その戯けが動くという事だったが? こちらでは、アリアンロッド艦隊が動く予兆は捕らえていない。……いや、宇宙海賊を相手に戦ったりしてはいるが、それはつまり普段通りの活動でしかない』
「アリアンロッド艦隊じゃなくて、動くとすれば戯け個人での話だ。アリアンロッド艦隊じゃなくて、クジャン家の戦力が動く可能性はあるが」
いや、むしろ戯けにとってアリアンロッド艦隊を動かせないとなると、使える戦力は自分の家……クジャン家の戦力だけだろう。
クジャン家もセブンスターズの1家である以上、相応の戦力を持っているだろうし。
『何故そう思ったのか……聞いてもいいかな?』
「そっちにどれだけの情報があるのかは分からないが、テイワズの中には俺を敵視している奴がいる」
正確には、名瀬とその組織であるタービンズが気に食わなかったジャスレイが、名瀬と近しい関係にある俺にちょっかいを出して、その結果向こうも大きな損害を受け、名瀬ではなく明確に俺だけを敵視するようになったんだよな。
「その男の手の者が鉄華団に派遣されていたんだが、そいつがこの前のアーブラウとSAUの戦争にも大きく関わっている。……ガラン辺りから情報を吐かせてないか?」
ガランはマクギリスに渡したのだから、そのくらいの情報は引き出せてもいいと思うんだが。
『ああ。その辺については知っている。……ちなみに、ガラン・モッサの正体も分かったが、それについては後で話そう』
何だ、それ?
かなり気になる話なんだが。
とはいえ、まずは俺の知ってる情報を話すのが先か。
「テイワズを率いているマクマードは、俺と友好的な関係を築きたいと思っている。だが、身内の中に俺を敵視している奴がいてな。しかもテイワズの中では結構な影響力を持つ奴だから、今までは切り捨てようにも出来なかった」
『それが、今回の戦争の件で可能になったと?』
「そうなるな。そしてジャ……いや、そいつも馬鹿じゃないだろうし、現在の状況は理解しているだろう」
ジャと口にしたところで、マクギリスが微かに反応した。
どうやらジャスレイについても知ってると思った方がいいな。
もっとも、それは不思議な事ではない。
テイワズは主に圏外圏で活動している組織だが、ギャラルホルンに次ぐ規模の組織だ。
そうである以上、ギャラルホルンもテイワズの情報は相応に集めているだろう。
テイワズの情報の中には、テイワズのNo.2であるジャスレイの情報があるのも当然だった。
「そしてテイワズの力を全部使える訳じゃない以上、向こうはどうしても戦力が足りない。傭兵や海賊を雇うだろうが……それでどれだけ集まるのかは微妙なところだしな」
これでジャスレイと敵対する相手がその辺の組織であれば、傭兵や海賊も金に目が眩んで仕事を引き受けるかもしれない。
だが、今回敵対する相手はシャドウミラーと鉄華団だ。
ギャラルホルンや、その最精鋭のアリアンロッド艦隊を相手にしても全戦全勝の。
そんな相手と戦いたいとは、普通は思えないだろう。
夜明けの地平線団のような大規模な海賊団であれば、また話は違うだろうが。
ただ、その夜明けの地平線団も結局は俺達にやられたしな。
『それで、クジャン家か』
「そうなる。戯けも俺に恨みを持ってるだろうし」
そう言う俺の言葉に、マクギリスは頷くのだった。