「……は? えっと、冗談か何かか?」
ホワイトスターにある、家。
呪いの解呪がされ、ゲートを使えるようになった今、当然ながら俺はホワイトスターにある家で寝泊まりしている。
オルフェンズ世界の方ではまだ今は忙しいので、かなり頻繁にオルフェンズ世界に行ってるが。
他にもUC世界の連邦軍で行われているガンダム開発計画のテストパイロットの件もあるので、UC世界に行ったりもしてるが。
また、こちらも当然ながらマーベルとシーラの2人も、この家で暮らしている。
クーデリアは、オルフェンズ世界のシャドウミラーの支部になら来るが、アドモス商会の仕事もあるので、あまり頻繁にホワイトスターには来ないが。
アドモス商会の仕事が一段落し、テイワズの一件が片付き、ギャラルホルンの内乱が終わったら、クーデリアもある程度忙しくなくなるだろうが。
うん、つまりオルフェンズ世界の原作が終わったらだな。
具体的には、いつそれが終わるのかはまだ全然不明だが。
それにクーデリアがこの家で暮らすようになれば、当然ながらフミタンも一緒に来るだろう。
あくまでも付き人やメイドとしてだろうが。
一応この家には量産型Wやコバッタがメイドというか、執事というか……ともあれ、掃除とかそういうのをしてくれるから、フミタンが来てもやるべき事はあまりない。
それに……こう言っては何だが、毎晩のように夜の営みが行われている中で、フミタンだけが1人でいるというのは……どうかと思う。
ともあれ、その件はともかく。
軽く現実逃避しがちだった頭を振り、現実に向き合う。
俺の目の前にいるのは、ルリとラピス。
ナデシコ世界で引き取った時はまだまだ子供だったが、今となっては2人共十分に成長している。
栄養のある食事をし、適度に身体を動かし、しっかりと睡眠も取っている成果だろう。
もっとも、身体を動かすのはシャドウミラー基準だとまだまだだが、ある程度の自衛が出来る程度の力はあるし、2人共魔法をそれなりに使えるのだが。
ルリは10代後半、ラピスは10代半ばといったくらいか。
この2人はいわゆるデザインチャイルド……いや。俺達にもっと分かりやすく言えば、コーディネイターか?
もっとも、ナデシコ世界のデザインチャイルドとSEED世界のコーディネイターでは、似ているところも多いが、違うところも多かったりする。
そういう意味では、コーディネイターというのは相応しくないのだろう。
分かりやすい説明するには、それでもいいかもしれないが。
そんな2人の頼みが、俺が現実逃避をした理由だった。
「父、MAを見たい」
「アクセルさん、ラピスもこう言ってますし、私も興味があります」
ラピスとルリがそれぞれに言ってくる。
そう、これこそが俺が現実逃避をした理由でもある。
いやまぁ、オモイカネとかそういうAIと今でも日常的に接しているので、同じような存在……無人機にこの2人が興味を持つのは分からないでもない。
だがしかし、それでも素直にはい分かりましたと言う訳にはいかないのだ。
オルフェンズ世界のMAは、オモイカネとは違って人類に反旗を翻した存在だ。
それこそ厄祭戦において、冗談でも何でもなく人類が滅びる瀬戸際までいったのだから。
そんなMAとルリやラピスを接触させるのは、どう考えても危険だろう。
「そう言ってもな。お前達ならもう情報を知ってると思うが、MAってのはかなり危険な存在なんだぞ?」
「問題ない。安全には配慮する」
そう言うラピスの言葉に、ルリも頷く。
実際、この2人は無人機のエステバリスを外部から操縦するという防衛手段がある。
その戦力は、それこそエース級の集団とでも同等の戦力を持つのだ。
とはいえ、それはあくまでもエステバリスを使っての戦闘だ。
MSとかはそもそもそういうのに対応していないので、もし本当に何かあった時の為に対処するのなら、エステバリスを持っていく必要がある。
そしてエステバリスを持っていくとなると、電力供給用の装置が必要になるのだ。
エステバリスがMSとかに較べて小型なのは、動力源を外部に委ねているからというのもあるのだから。
……それならKMFはどうなんだと聞かれそうだが、それはそれ、これはこれとなる。
「アクセル、お願い出来ない? ラピスがこうして我が儘を言うのは珍しいし」
マリューのその言葉に、千鶴も頷く。
俺の恋人の中で特に母性の強い2人だ。
それこそ本当にルリやラピスを自分の娘のように可愛がっている。
もっとも、俺の恋人は全員時の指輪の効果によって年齢は20代だ。
ラピスはともかくルリは10代後半である以上、どう頑張っても親子には見えない。
精々が姉妹だろう。
もっとも、姉妹という割には全員似ているところはない……いや、顔立ちが整っているという意味では似ているが、それだけだ。
姉妹と見るのは難しいし、そうなると少し年齢の離れた友人といったところか?
「マリューや千鶴の気持ちは分かる。だが、MAとなると、一体何があるのか分からないんだぞ? それこそ、場合によっては命懸けの行動になってもおかしくはない」
ルリやラピスのよう、AIと直接接する事が出来るような能力の持ち主が、厄祭戦の時にいたのかどうかは分からない。
その辺の情報はギャラルホルンもかなり少ないらしいし。
とはいえ、世界が違う以上、恐らくそういう能力を持った者はいないと思われる。
阿頼耶識なら、あるいは……そう思わないでもなかったが、そういうのを聞いた事はないしな。
「そんなに心配なら、実働班から私が出よう。それならいいだろう?」
そう口を出してきたのは、綾子。
トールギスⅢを操縦する綾子だが……どうだろうな。
これは別に、綾子の技量が劣っていると言っている訳ではない。
実際、綾子の操縦技術は実働班の中でもトップではないにしろ、中間くらいはある。
シャドウミラーの実働班は、それこそ一番下でも他の世界では普通にトップエースを張れるだけの実力を持つのだから、そう考えれば綾子の実力は分かりやすいだろう。
綾子本人も普通の人間ではなく、半サーヴァントとして人間とは比べものにならないだけの身体能力を持っている。
それこそ素の状態で、俺がやっているようなGを無視して機体を反転させるとか、そういう事が出来るくらいだ。
勿論シャドウミラーの実働班なら全員が同じような事は出来るが、それはあくまでも魔力や気で身体強化をしてだ。
素の状態で出来るのは、俺と綾子……後はレモンとエキドナくらいか?
操縦技術という意味では、問題ない。
だが……問題なのは、トールギスⅢだ。
トールギスⅢの武器は、メガキャノン、ビームサーベル、ヒートロッド、バルカン。
そのうち、MAはオルフェンズ世界の機体であると考えれば、恐らくビーム系の攻撃は通用しない。つまり、メガキャノンとビームサーベルは無効化される訳だ。
そうなるとヒートロッドとバルカンだが、バルカンは論外として……ヒートロッドがどうなるかだな。
MAがMSと同じくナノラミネートアーマーを装備しているのであれば、物理攻撃についても強い耐久性を持つ訳で、そうなるとヒートロッドがどこまで効果があるかだな。
もっとも、トールギスⅢの武器はそれで固定されている訳ではない。
ヒートロッドはシールドに内蔵されているのでともかく、シャドウミラーで使われている重力関係を使う武器を装備すれば対処は可能かもしれないが。
うーん、そう考えるとトールギスⅢでも大丈夫なのか?
「……どうかな、アクセル。私がいればいざという時はMSで、もしくは生身でも対処が可能だと思うけど」
綾子が付け足すように言う。
操縦技術という点では実働班の中でも中堅の綾子だが、生身での戦いだと半サーヴァントというのもあって、上位にくる。
あくまでも上位であってトップではないのだが。
ともあれ、MAがどういう行動に出てもルリとラピスを連れてその場から脱出するというのは可能だと思う。
「……分かった。ただし何かあった時の事を考えて、ルリとラピスはメギロートに乗って行動してくれ」
珍しいラピスの我が儘という事もあり……そして何より、MAについて何か分かるかもしれないというのもあって、俺はそう言うのだった。
「あの……兄貴。これって一体何が……」
オルガの戸惑ったような声。
無理もないか。
プルーマとは違うが、外見は虫型のメギロートだ。
それとオルガにしてみれば……いや、オルガ以外の鉄華団の面々であったり、それこそシャドウミラーの面々であったりしても、こうして見るのは初めてなのだから。
バッタやコバッタは見たりした事があるんだろうけど。
「あれはメギロート。俺達が使っている無人機だ」
「……でも、アクセルさん。そのメギロートの上にいるのは……? それにあっちのMSも……」
オルガの隣にいた昭弘が、そう言ってくる。
どうやらメギロートの上にいるルリとラピスの姿に気が付いたらしい。
ちなみに、結局エステバリスは使わない事になった。
動力源を用意するよりも、俺が提案したようにメギロートに乗せた方が手っ取り早いと判断した為だ。
何かあった時、ルリとラピスならメギロートを自由に動かせるというのが、その大きな理由だった。
「メギロートの上にいるのは、2人共俺の娘だ」
「……は? え? アクセルさんの、娘……? いや、だって年齢が……」
昭弘にとって予想外だったのか、強面の顔を大きく歪めてそう言ってくる。
まぁ、普通に考えて俺の娘としては年齢が違いすぎるだろうし。
「実の娘って訳じゃない。……あの2人は、色々と訳ありでな、養子だよ」
その身柄を金でやり取りされたという意味では、ルリやラピスもヒューマンデブリに近い存在なのかもしれないな。
もっとも、昭弘達と違って虐待とかは受けていなかったようだが。
まぁ、ルリやラピスはデザインベイビーとして作られただけに、利益をもたらすのは確定された存在だったし。
「ああ、そういう。……養子、ですか」
昭弘が微妙な表情を浮かべる。
元ヒューマンデブリとして、色々と思うところがあるのだろう。
あるいは地球支部にいるチャドとかなら、その複雑な思いを言葉にする事も出来たかもしれないが。
「ねえ、アクセル。それであのメギロートってのは分かったけど……MSはどういう機体なの?」
鉄華団の悪魔と呼ばれる事もある三日月だけに、トールギスⅢはそれなりに気になるのだろう。
まぁ、オルフェンズ世界のMSでは主流な武器である大質量の近接用の武器を持っておらず、長大な砲を持つ射撃武器を持っているのだから。
あれは、ヒュッケバインMk-Ⅱの使っているG・インパクトキャノンを量産した代物だ。
MAにビーム攻撃が通用するのかしないのか分からない以上、MSと同じくナノラミネートアーマーが使われていると想定しておいた方がいいだろう。
そして重力波砲の攻撃がナノラミネートアーマーに効果があるのは、ドルトコロニーの件でギャラルホルンと戦った時に判明している。
もっとも、それ以降の戦いでも俺はミロンガ改を使ってMSを倒しているが。
ただ、それはあくまでも俺の精神コマンドの直撃があったからこその事だ。
そう考えれば、やはりトールギスⅢにはG・インパクトキャノンを装備させておくのは間違いではないだろう。
「シャドウミラーのMSだ。こことは別の世界で使われていた」
トールギスは、W世界においてはMSの始祖とも呼ぶべき存在で、ガンダムもトールギスの設計者達が開発した機体だ。
そういう意味では、ガンダムはトールギスの直系の子孫と呼んでも間違いではない。
とはいえ、同じガンダムという名称であっても、このオルフェンズ世界のガンダムとW世界のガンダムは大きく違うのだが。
……ちなみに、W世界のトールギスのように、この世界にもガンダムの始祖となるMSとかあったりするんだろうか。
そんな疑問を抱くが、それをここで知る方法はない。
そもそもの話、厄祭戦の時の情報はその多くが既に消失して、残っていないのだから。
もし残っているとすれば、それはギャラルホルンくらいだろう。
そしてギャラルホルンがその情報を公開するとは思えない。
……あ、でもギャラルホルンの情報なら、マクギリスに聞けば何とかなったりしないか?
少しだけそのように思うも、すぐに考えを変える。
今は、ルリとラピスがMAに接触してどうなるのかを考え……ん?
ふと、何か違和感があった。
何がどうなって違和感なのかは分からないが、それでも半ば本能的に上を……空を見る。
するとそこには、何かが地上に降りてきているように思え……
「って、おい、マジか!?」
混沌精霊の視力だからこそ把握出来たそれは、ギャラルホルンで採用されているMS滑空用グライダー。
それが数十機もの数、火星に……いや、俺の見間違いでなければ、このMAの埋まっている地に向かって降下してきているのだった。