転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4102話

 ギャラルホルンで採用される、MS滑空用グライダー。

 これの厄介なところは、例えばHLVとかそういうのに乗らなくても、MS単体で大気圏降下が出来るという事だ。

 勿論それだけではなく、グライダーそのものが非常に頑強で、それこそ生半可な盾よりも高い防御力を持つ。

 つまり、地上にいる者達が大気圏から降下してきた者達を発見し、MSで攻撃したとしても、その盾によってあっさりと防がれてしまうということになる。

 ……とはいえ……

 

「それは、あくまでもオルフェンズ世界のMSであればの話だがな」

 

 また1機、滑空用グライダーが下から貫かれ、その滑空用グライダーに乗っていたMSが撃破されたのを見てそう言う。

 それを行ったのは、この場に護衛として待機していたMS……トールギスⅢ。

 本来ならメガキャノンが最強の武器のトールギスⅢだが、オルフェンズ世界においてはナノラミネートアーマーによってビーム兵器は意味をなさない。

 その為、G・インパクトキャノン……正確にはそれをベースにして開発した重力波砲だが、とにかくトールギスⅢはビーム攻撃を行うメガキャノンではなく、G・インパクトキャノンという重力波砲を装備している。

 その重力波砲は、滑空用グライダーを容易に貫き、それに乗っているMSすらも容易に破壊出来るだけの威力を持っていた。

 

「とはいえ、このままだとちょっとやばいな」

 

 護衛として用意していたのは、あくまでも綾子のトールギスⅢのみ。

 そしてG・インパクトキャノンもまた、威力は高いがそこまで連射出来る武器ではない。

 そしてMSの数はかなり多い。

 これはいっそ、俺もニーズヘッグに……いや、まだ見せるのは早いか?

 滑空用グライダーを使っているという事は、恐らくこの敵はギャラルホルンだ。

 敵味方の識別とか、そういうのを聞くまでもなく綾子は撃破しているが。

 何しろ向こうからこうして火星に向かって降下してきている以上、こちらとしても悠長に相手がどこの勢力かと通信で聞いたりは出来ない。

 そもそも、直接この辺りに向かって落ちてきているしな。

 ちなみに当然ながら、既に集まっていた者達の大半は避難している。

 オルガも鉄華団の拠点に戻って、MS隊を率いて戻ってくると言っていた。

 この場にいるのは、既に俺とトールギスⅢに乗っている綾子、そしてそれぞれメギロートに乗っているルリとラピスだけだ。

 普通に考えればルリとラピスも避難させるべきだろう。

 だが、滑空用グライダーを使って降下してくるMS部隊が俺達の情報をどこまで知ってるのかは分からないが、もしルリとラピスが俺の娘……養子であるという事を知っていると、不味い。

 その可能性は低いとは思う。

 思うが、それも絶対ではないのだ。

 だからこそ、俺の側にいさせていた。

 今のこの状況では、俺の側が一番安全なのは間違いないのだから。

 それに、他にもルリとラピスをここから離せない理由があった。

 

「ルリ、ラピス。MAの方はどうなっている?」

「……まだ、もう少し掛かりそうです。今はMAもまだ起動していないので、このまま……」

「父、もう少し」

 

 ルリとラピスがそれぞれ言ってくるのを聞きながら、やっぱり俺もMSを出す必要があるのか?

 そう思った時、不意に通信機が鳴る。

 それもただの……このオルフェンズ世界で普通に使われている通信機ではなく、シャドウミラーのゲートを使った通信機だ。

 MSの動力源であるエイハブ・リアクターは、通信機とかを使えなくする。

 だが、ゲートを使った通信機であるこれは、どうやらエイハブ・リアクターが近くにあっても問題なく使えるらしい。

 ……いやまぁ、降下してくるMSはその多くを撃破しているので、まだエイハブ・リアクターの範囲内に入っていないだけとか、そういう可能性もあるのだが。

 

『アクセル、マクギリスからの連絡があったわ』

 

 空中に浮かぶ映像スクリーンに映し出されたのは、マーベル。

 なるほど、マーベルならシャドウミラー製の通信機を持っているし、こっちに連絡しようと思えば出来るか。

 

「それで、マクギリスからは何と?」

『MSを決してMAに近づけるなとの事よ』

「……MSをMAに? それは一体……」

「アクセルさん!」

「父!」

 

 マーベルの言葉にそう聞き返したタイミングで、ルリとラピスがそれぞれ叫ぶ。

 その言葉に2人の視線を追うと……ちょうどそこでは、G・インパクトキャノンの攻撃の盾となるように、何機もの滑空用グライダーが1機のMSの前に出るといった行動に移っていた。

 それは防御を固めて誰かを守ろうという意味では決して悪くない選択だろう。

 だが同時に、綾子にとっては狙いを付けやすくなるという意味でもあった。

 そんな2つの意思がぶつかった結果……G・インパクトキャノンの重力波砲を潜り抜けるようにして、滑空用グライダーが数機地面にぶつかる。

 勿論、当然の事だがMSは滑空用グライダーが地面にぶつかるよりも前に跳躍し、スラスターを使う事によって落下速度を殺して地面に着地していたが。

 それは、綾子の狙いを降下してきたMS部隊が打ち破った事を証明していた。

 そして……次の瞬間、ルリとラピスの悲鳴がそれぞれ聞こえてくる。

 

『駄目!』

 

 その悲鳴が何を意味していたのかは、すぐに明らかになった。

 先程まで地面に埋まっていたMAが起動したのだ。

 地中に300年……最低でも300年埋まっていたのだから、MAであっても作動不良を起こしたりしてもおかしくはないと思うんだが。

 そんな俺の願いとは裏腹に、MAは土を振り払うようにしてその姿を現し……自分はここに蘇ったとそう示すかのように、巨大なビームを放つ。

 

「鳥……か? って、うおっ!」

 

 MAのビームは、蘇ったという遠吠えのような行為の他に、火星に向かって降りてきていた滑空用グライダーに対する攻撃でもあったらしい。

 だが、そのビームは滑空用グライダーに命中した瞬間には弾かれ、そして多数の細いビームとなって周辺に散らばる。

 そんな中で一条のビームが俺……より正確には俺の側にいるルリやラピスの乗っているメギロートに向かって降ってきたのだ。

 混沌精霊としての力を使い、白炎でビームそのものを燃やす。

 ビームを燃やすというのは、普通に考えて意味不明だろう。

 だが、俺にしてみれば……混沌精霊にしてみれば、やろうと思えば難しい事ではない。

 

「やっぱり鳥か」

 

 ビームを反射……反射? まぁ、取りあえず反射に近い状況ではあるが、そういうのを俺達がやっている間にも、MAはまだ地中に埋まっていた場所を半ば無理矢理掘り出すというか、墓の下から出てくるゾンビの如く、その姿を土の中から現していた。

 その外見は、先程俺が口にしたように、どこか鳥を思わせる。

 勿論、それはあくまでもそういう印象を受けるというだけで、実際に鳥の形をしているのかと言われれば、それはまた別の話だろう。

 だが、それでも恐らくモチーフとしては、鳥で間違いないと思う。

 実際に今のこの状況において本当にそれが正しいのかどうかは分からない。

 あくまでも俺がそのように思ったというだけなのだから。

 

『アクセル、聞いている? 今そっちに援軍の準備をしてるけど……新たに問題が発生よ』

 

 MAを見ていると、まだ繋がっていた通信装置……空中に浮かんでいた映像スクリーンに映し出されたマーベルが、真剣な表情でそう言ってくる。

 

「何だ? 何かあったのか?」

 

 MAは何故かトールギスⅢには見向きもせず、地上に着地したMSや、降下してくる滑空用グライダーに向かって攻撃をしていた。

 何故トールギスⅢに攻撃をしない?

 考えられる可能性としては、トールギスⅢはW世界のMS――シャドウミラーで強化されているが――であるのに対し、狙われているのはオルフェンズ世界のMSだからか?

 そうなると違いは……高硬度レアアロイか、エイハブ・リアクター。

 いや、ハーフメタルの鉱床に埋まっていて今までMAが見つからなかったというのを含めて考えると、エイハブ・リアクターが理由か?

 ともあれ、MAがトールギスⅢを狙わないというのは、こっちにとっても幸運だ。

 綾子も自分に向かって攻撃をしてこない以上は、自分から攻撃はしない方がいいと判断したのか、大きく動いたりはしていない。

 

『アクセルにとっては……いえ、私達にとって悪い知らせよ。ジャスレイが動いたわ』

「このタイミングでか!? ……いや、このタイミングだからか。となると、今ここに降下してきているMSはクジャン家の物か」

 

 前々から、俺と敵対しているという事でジャスレイとイオクが手を組むのは予想されていた。

 そうなると、このタイミングでジャスレイが行動を起こしたとなると、今俺の視線の先で降下してきているのがクジャン家の戦力であるのは間違いないだろう。

 敵の敵は味方とは、よく言ったものだ。

 

「それで、テイワズの方はどうなっている? タービンズとかも」

『ジャスレイが足止めの捨て駒を使って追撃をさせていないそうよ』

「……ジャスレイも一か八かといったところか」

 

 こうして明確に火星を攻める……それも、クジャン家と手を組んでとなると、ジャスレイにとっても一世一代の賭けなのは間違いない。

 もしこれで失敗すれば、ジャスレイにとっても致命的な事になるだろう。

 もっとも、明確に俺と敵対した以上は生きて帰る事はまず不可能なのだろうが。

 

「戦力はこっちに向かわせるよりも、宇宙の方に多く回してくれ。こっちはこっちで何とかする。幸い、MAは現在綾子のトールギスⅢに攻撃はしないで、クジャン家のMSだけに攻撃しているし」

『そうなの? ……何でそうなってるのかは分からないけど、こっちにとってはラッキーだったわね』

「不幸中の幸いって奴だな」

 

 本当にラッキーなら、そもそもこのような状況になってはいないだろうし。

 

「そんな訳で、鉄華団の方にも連絡して、戦力は宇宙に集中させてくれ。MAの件が片付いたら、俺もすぐに宇宙に向かうから」

『……本当に、いいの? そっちの戦力は綾子のトールギスⅢだけなんでしょう?』

「そうだが、MAとの戦いでクジャン家の戦力はかなりダメージを受けてるしな」

 

 そう言い、戦闘になっている方を見る。

 クジャン家……より正確にはイオクとしては、MAを調査している俺の隙を突いたつもりだったのだろう。

 実際、その判断は決して間違ってはいない。

 どうやったのか、こっちに知られないようにしてMSを火星に直接降下……それも俺のいる場所にピンポイントで狙ってきたのだから。

 その上で、宇宙ではジャスレイが……JPTトラストが動いている。

 多分、ジャスレイもこっちの動きを知っていたのだろう。

 性格的には最悪のジャスレイだが、その能力は決して低くはない。

 でなければ、テイワズのNo.2になる事は不可能だっただろうし。

 だからこそ、テイワズが……マクマードが自分を排除しようとしているのを知り、俺を狙ってきた訳だ。

 ジャスレイの性格を考えると、それこそ俺ではなくマクマードを狙いそうなものだが。

 マクマードはテイワズのトップである以上、そう簡単に狙う事は出来なかったのか。

 マクマードもジャスレイの事をよく知っていて、だからこそジャスレイが自分を狙いそうなところに戦力を配置してもおかしくはない。

 また、何よりもイオクの協力を得られるのは、やはりマクマードではなく俺を狙う必要があったのだろう。

 イオクが恨んでるのは、あくまでも側近を殺し、面子を潰した俺であって、マクマードではないのだから。

 シャドウミラーがマクマードと……テイワズと手を組んでいるのを知っているだろうし、マクマードに恨みがない訳でもないのだろうが。

 とはいえ、イオクはマクギリスに戯けと呼ばれるような者だ。

 能力的には決して高くない。

 ジャスレイもそれを知ってるからこそ、最初の攻撃はイオクに任せたのだろう。

 先陣は武人の誉れなんて言葉もあるが、ジャスレイにしてみればそんな事は考えてもいないのだろう。

 実際、その判断は正しい。

 ビームは通用しなくても、巨体のMAはそれだけでMSに対して圧倒的な強さを持つ。

 それだけではなく、MAの尻尾が非常に強力な武器になっており、高硬度レアアロイで出来ているMSのフレームも容易に切断していた。

 あの尻尾、凄いな。

 素早く動くその尻尾は、ある意味でニーズヘッグの尾とも似ている。

 ただ、ニーズヘッグの尾はエピオンのヒートロッドをベースにして作られており、かなりの多機能だ。

 具体的にはヒートロッドの名称通り、熱を使った攻撃。

 また純粋に普通の鞭としても使えるし、電撃を流して相手の機体にダメージを与える事も出来るし、ギアス世界で開発された輻射波動を、尾を巻き付けた場所に使う事も可能。

 また、尾の先端は菱形になっており、そこに念動フィールドによって刃を作る事も可能だし、先端の菱形が花のように展開するとその部位を敵機に接触させてハッキング……待てよ?

 そこまで考えて、俺は今も必死に無線でMAにハッキングをしているルリとラピスに視線を向けるのだった。

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