転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4106話

 イオクが乗っていると思しきレギンレイズが立ち去ったのを確認すると、俺はニーズヘッグから降りる。

 こうしている今も、恐らくはジャスレイ率いる部隊との戦いは行われているだろう。

 そうである以上、俺もすぐそちらに援軍として向かう必要があるのだろうが、それでも今はまず、ハシュマルの件をきちんとしておかないといけない。

 ハシュマルが宇宙でも活動出来ればいいんだが……クジャン家のMS隊との戦いを見る限り、恐らく地上用のMAだろうし。

 そんな訳でハシュマルを連れていけない以上、俺が宇宙に行く時はハシュマルを地上に置いていく必要がある。

 だからこそ、その辺についてはしっかりとしておく必要がある訳だ。

 ニーズヘッグから降りると、ハシュマルの側まで移動する。

 だが、ハシュマルが俺を見ても何か動く様子はない。

 

「ハシュマル、尻尾を伸ばしてくれ」

 

 指示を出すと、ハシュマルが尻尾を……クジャン家のMS隊の多くを破壊した尻尾が俺の側に伸ばされる。

 だが、その尻尾がMSを破壊した時のように、俺を攻撃する事はなかった。

 うん、ルリやラピスが言うようにきちんと俺の指示を聞いてるな。

 ハシュマルを手に入れた以上、ラスタルは間違いなく俺を敵として認識するだろう。

 もしラスタルがそれを避けようとしても、クジャン家のMS隊が半ば壊滅状態になっている以上、イオクが俺と敵対しないというのはまず有り得ないだろうし。

 それにラスタルは現状維持派だ。

 つまり、ギャラルホルンの歴史を考えると、ラスタルがMAを手に入れた俺を許すとは思えない。

 ……もっとも、それを言うのならマクギリスもどうなるかだな。

 マクギリス本人は問題ないと言うかもしれないが、他の者達がどう思うのかは話が別だし。

 また、改革派とはいえ、MAを受け入れるかどうかは……ギャラルホルンが出来た経緯を考えれば難しいとは思う。

 もっとも、その辺についてはマクギリスの口の上手さに任せるしかない。

 

「後で洗ってやらないとな」

 

 ハシュマルの尻尾の先端は、MSのオイルや人の血によって汚れている。

 俺の指示に従って行動して汚れた以上、後で洗ってやる必要があるのは間違いない。

 

「よし、少しここで待機だ」

 

 そう指示を出しつつ、そう言えばプルーマだったか? あれは結局出さなかったなと気が付く。

 単純に、ハシュマルだけでクジャン家のMS隊を倒すのに十分だったからかもしれないが。

 ジャスレイの一件が終わってある程度落ち着いたら、プルーマについても少し検証してみる必要があるだろうな。

 そう思いつつ、俺は綾子とルリ、ラピスのいる場所まで移動する。

 

「ルリ、ラピス、ハシュマルのハッキング助かった。綾子も2人の護衛、ご苦労さん」

「いえ、あの子も色々とあったようですし」

「父、褒める」

「私は特に何もやってないしね」

 

 3人がそれぞれ、そう言葉を返してくる。

 俺はラピスの頭を撫でながら、ルリに尋ねる。

 

「色々というのは? その為にハッキングに時間が掛かったのか?」

 

 ニーズヘッグのウルドの糸を使ってのハッキングだ。

 ルリやラピスの実力があれば、恐らくはもっと早くハッキングが完了していた筈……というのは、俺の考えすぎか?

 その色々というのがあった為に、ハッキングの完了が遅れたのかもしれない以上、一応その辺については聞いておく必要があった。

 

「そう、ですね。あの子と話をしましたが、オモイカネよりもかなり……そう、捻くれている様子でした」

「捻くれている……ねぇ」

 

 AIが捻くれているというのがちょっと分からない。

 ただ、それでもルリとラピスがハッキングして成功させたのは間違いなく……

 

「これからハシュマルを使う上で、その捻くれているというのは問題になったりしないのか?」

 

 それが一番重要だった。

 捻くれているので、俺の指示を曲解するとか、そういう事になったら洒落にならないし。

 

「その心配はありません。アクセルさんの指示には従うように説得しましたから」

「父なら大丈夫」

 

 ルリとラピスの言葉から考えて、取りあえず心配がいらないというのは理解出来た。

 それにしても説得……ルリにとってハッキングというのは、説得なのか。

 その辺りの考えは人それぞれだし、そう考えれば決して間違いという訳ではないのだろうが。

 

「なら……俺が命令出来ない時はどうなる?」

「基本的には、アクセルさんの指示した行動をするので、待機していろと指示しておけば、待機します」

「それはつまり、待機しないように……例えば何かをしろとだけ命令して、俺がその場からいなくなった時とかはどうなるんだ?」

「それなりの判断能力はあるので、問題ありません」

「……ちなみに、このオルフェンズ世界においては300年前にMAが暴走して人類は滅びるかどうかの戦い、厄祭戦が起こったんだが……その二の舞にはならないか?」

 

 恐らく……いや、間違いなくラスタルの派閥はその辺りを突いてくるだろう。

 それはハシュマルがどう動くのかは関係なく、ギャラルホルンとしてMAという存在を認める訳にはいかないと。

 ……ぶっちゃけた話、ラスタルのその考えは分からないものではない。

 そもそもギャラルホルンは、MAに対抗する為に作られた組織なのだから。

 そして300年もの間続いた組織でもある。

 そうなると、当然ながら組織の考えを今更変えるのは難しい。

 つまり、マクギリスはその点においては間違いなく不利になる。

 勿論、マクギリスは問題ないと言うだろう。

 ガエリオやカルタもシャドウミラーの力を知っているし、何よりマクギリスがそう言うのであれば……と、そんな風に考えてもおかしくはない。

 そしてラスタルと、ラスタルに心酔して俺に強い恨みを持つイオクはその点を徹底的に突いて来る筈だ。

 セブンスターズはその名の通り7つの家。

 そうなると、残り2つの家はギャラルホルンの伝統に則り、ラスタルに付く可能性が高い。

 結果として、ラスタルの派閥がセブンスターズの4つ、マクギリスが3つ。

 これはちょっとやらかしたか?

 そう思わないでもなかったが、同時に悪くないのでは? とも思う。

 俺が集めた情報であったり、マクギリスや石動から聞いた話によると、まだ旗頭を明確にしていない2つの家は風見鶏というか、事なかれ主義というか、状況に流されるというか……とにかくそんな感じの家らしい。

 だとすれば、マクギリスが作る新たなセブンスターズ……いや、スリースターズになるのか、もしくはもっと別の名前になるのかは分からないが、とにかくその家にそのような存在はいらないだろう。

 事なかれ主義は邪魔なだけだ。

 ……まぁ、今の当主はそういう事なかれ主義であっても、次期当主……もしくはそれよりも更に後の当主となれば、また話は違ってくるかもしれないが。

 ただ、そこまで考える必要はないだろう。

 うん、ハシュマルについてはマクギリスにそう話を持っていくか。

 

「ハシュマルは俺の命令を聞くと言っていたが、ルリやラピスの命令はどうだ?」

「聞きます。説得した時の影響で、私とラピスはアクセルさんの次に優先的に命令を聞くようになってます」

 

 なるほど。そうなると、俺が宇宙に行っても取りあえずは安全なのか。

 今は緊急の状態なので、そこまで詳しく説明をしたり改善の要望を口にしたりといった事は出来ないが、それは今ではなく、後々にやればいい事でもある。

 

「分かった。ハシュマルのやるべき事で色々と変えて欲しい事もあるが、それについては今は無理でも後でどうにか出来るのか?」

「出来ます。ただ……あまり無理な内容だと、説得するのは難しいかと」

「具体的には?」

「そうですね。人を守れというようには出来ると思いますが、人を絶対に殺すなというのは無理かと」

「……なるほど。完全ではないにしろ、何となく分かった」

 

 つまり、人を守れという命令ならMAの本能とも呼ぶべきものに逆らうような内容ではないが、人を殺すなという内容だった場合、MAの本能に逆らう命令だから、そういう風には出来ない……あるいは出来てもかなり無理をするということなのだろう。

 もっとも、これはあくまでも俺の解釈だ。

 俺も一応はある程度……本当にある程度だがその手の知識はあるものの、本職と呼んでもいい、それどころか息をしたり手足を動かす感覚でハッキングしたり、プログラムを組んだり、電子の世界に入ったりといった事が出来るルリやラピスとは比べるまでもない。

 そんな訳で、ルリやラピスがそう言うのならそういうものなのだろうと納得するだけだ。

 

「なら、その辺については後で相談するとして、俺は宇宙に行く。ルリとラピスと綾子は、シャドウミラー……オルフェンズ世界支部のシャドウミラーの施設にいてくれ。ハシュマルはかなり目立つだろうが、護衛として考えれば悪くない……と思う」

 

 オルフェンズ世界のシャドウミラーの基地に来た奴が、ハシュマルの巨体を見つけたらどのような反応をするのかは、俺も分からない。

 分からないが、それでも今の状況を考えれば、そうするしかないのも事実。

 取りあえず普通に考えれば、ハシュマルがいる場所を攻めようなどと考える者はいないだろう。

 ……もっとも、一連の騒動が終わったら説明とかそういうのを色々とする必要があるだろうが。

 ハシュマルをどうやって手に入れたのか、それについてもマクギリスに説明する必要があり、そうなると当然ながらルリやラピスについての話をする必要もあり、自然と異世界の存在について話す必要も出てくるだろう。

 面倒だなとは思うが、とにかく今はハシュマルの件が片付いた以上、ジャスレイの件だ。

 

「分かりました。では、私達は先に行きますね。……頑張って下さい、アクセルさん」

「父、頑張れ」

「アクセルなら心配はないと思うけど、頑張ってね」

 

 ルリ、ラピス、綾子の順番にそう言うと、ハシュマルと共にこの場を立ち去る。

 それを見送ると、俺はニーズヘッグに乗り込むのだった。

 

 

 

 

 

「どうやら、もう始まっているようだな。ギャラルホルンの方はまだ出てないけど」

 

 映像モニタに表示される戦闘の光を見ながら呟く。

 なお、既に俺の機体はニーズヘッグからいつものミロンガ改に変わっている。

 宇宙空間に転移した後、乗り換えたのだ。

 ニーズヘッグの存在はクジャン家を通してラスタルに流れるだろうが、ラスタルがその情報を大々的に広めるとは思わない。

 俺に対する嫌がらせとしてはありなのかもしれないが、この場合問題なのはアリアンロッド艦隊を含めたラスタルの派閥の士気だ。

 実際に乗っている俺が言うのも何だが、ニーズヘッグはラスボスどころか、裏ボスや隠しボスといった外見をしている。

 そんなニーズヘッグと戦わなければならないと知った時、当然だがアリアンロッド艦隊の士気は下がるだろう。

 ラスタルもそれを考えれば、ニーズヘッグのデータを入手しても、その件について大々的に知らせるような事はないだろう。

 ……もっとも、実際に戦いになれば嫌でもニーズヘッグと戦わないといけない以上、エース級の面々には話すかもしれないが。

 そんな訳で、今はまだニーズヘッグの存在を秘密にしておくのは悪い話ではない。

 だからこそニーズヘッグからミロンガ改に乗り換えたのだ。

 ミロンガ改は今では俺が普通に使っているので、かなり有名になっている。

 ……何故かナノラミネートアーマーでビーム兵器を無効化出来ないとか、そういう意味でも有名になっているが。

 まさか精神コマンドを使っているとは、思わないだろう。

 

「ともあれ、まずは合流するか。……見た感じ、今のところはこっちが押してるか?」

 

 戦闘の光の様子を見ると、ジャスレイの戦力の方が押し込まれているように見える。

 あれ? これってもしかして俺が来るまでもなかったのか?

 一瞬そう思ったが、こちらが押しているとはいえ、圧倒的といった様子ではない。

 勿論このまま行けば勝てるだろうが、俺が参戦する事によって戦闘終了までの時間が短くなるのなら、それはそれで構わない。

 戦いが長引けば、当然ながらこちらにも被害が出るのだから。

 つまり、こちらにも死人が出るという訳だ。

 そうならないようにするには、やはりさっさと戦闘を終わらせた方がいい。

 だとすれば、どう動くか。

 いや、話は簡単だな。

 ジャスレイが現在どのくらいの情報を得ているのかは分からないが、まさかシステムXNで火星の地上から宇宙に転移したとは思わないだろう。

 であれば、俺がここにいるとも予想は出来ていない筈だ。

 そしてジャスレイの性格を考えると、最前線で戦うという事はまずない。

 後方にいるのは間違いないだろう。

 であれば、戦場を迂回して相手の背後を突けば……

 そこでジャスレイを殺すなり捕らえるなりすれば、それでこの戦闘は終わりだ。

 簡単に作戦を考えると、俺は通信機を取り出してスキップジャック級の艦長をしているシーラに連絡を入れるのだった。

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