マクギリスの過去の暴露。
それは、マクギリスの演説によってギャラルホルン内での権力闘争が一気にマクギリスに行くかと思われたのを、一気に引っ繰り返した。
……いや、正確には引っ繰り返したとまではいかないな。
これで、もしマクギリスの演説が異世界に関して全く触れず、ギャラルホルンの改革を訴えただけであれば、あるいは勢力は一気に引っ繰り返った可能性もある。
だが、マクギリスは異世界の存在について露わにした。
もっとも、ラスタル陣営はその異世界についても妄想だと言ってるようだが。
それでも、マクギリスにとって過去の暴露というのは大きなダメージだったのは間違いないだろう。
恐らく……
「本来なら、この前の演説で一気に自分達の戦力を増やそうとしていたんだろう? だが、それが駄目になってしまった訳だ」
『そうだね。悔しいけど、してやられたといったところか。……まさか、義父上のところにまで行くとは思っていなかった』
映像モニタに表示されたマクギリスが、苦笑しながらそう言う。
……思ったよりダメージは受けていないようだな。
てっきりもっと絶望の表情を浮かべているかと思ったんだが。
「そこまでショックを受けていないようだな」
『そうだね。勿論私の過去が暴露されたことによる被害は大きい。中には私に協力すると約束をしていたにも関わらず、ラスタルの派閥に寝返った者もいる。だが……それでも、予想していたよりも脱落者が少ないのは事実なんだ。これも異世界の存在があるからこそかもしれないな』
「異世界の存在があるからといって、それで問題ないような事とは思えないけどな。それに、異世界があると証明はしたが、その証拠は見せていないだろう? そうなると、それこそ異世界の存在がラスタルの派閥の言うように妄想だと思われてもおかしくはない」
『そうだね。だから……その辺はどうにかならないかな? 勿論、ワイバーンを連れてきてくれとか、そういう事は言わない。映像でいい』
「……それはそれで、CGだとか何とか言われないか?」
映像を撮ってくるだけなら、そんなに難しくない。
それこそ影のゲートを使える俺にしてみれば、1時間……いや、20分かそこらでどうとでもなる。
だが、そうして映像を撮ってきても、それがCGだなんだと言われれば……いや、それならいっそ本物のモンスターを見せてやればいいのか?
「マクギリス、話は変わる……いや、変わらないか。とにかく映像とかじゃなくて、異世界の存在を実際に見せる事が出来る方法がある。報酬次第ではそれを使ってもいい」
『……具体的に何が出来るのかな?』
報酬次第というところで少し考えた様子のマクギリスだったが、それでも俺の言葉に興味を覚えたのだろう。そう聞いてくる。
「俺が魔法使いだというのは既に知ってると思うが、俺の使える魔法には召喚魔法がある。その召喚魔法を使えば、3匹というか……1匹と2人? それとも2人と1匹か? とにかく異世界の存在を召喚出来る」
グリフィンドラゴンのグリは完全にモンスターだから数え方は匹で問題ない。
狛治は元人、もしくは元鬼ではあるが、今は……何だろうな。竜人? 鬼人? とにかく亜人といった感じなので、数え方も匹ではなく人だ。
だが……俺の影に潜む、刈り取る者は、一体どう数えればいいのか。
匹なのか、人なのか。
それは俺にも分からない。
まぁ、その辺については今は気にしなくてもいいか。
『召喚魔法……そのような事も?』
「ああ。まぁ、魔法があるというのを見せるだけなら、炎獣とかでもいいんだけど。それでもやはり、モンスターを直接見た方がいい」
『……その、召喚魔法で呼び出せるという存在は、ワイバーンよりも凄いのかい?』
「凄いな」
マクギリスの言葉に、即座に断言する。
実際、グリにしろ、狛治にしろ、刈り取る者にしろ、ワイバーンと戦ったら余裕で勝利出来るのは間違いない。
俺の召喚獣となった者達には、それだけの実力がある。
『アクセルが断言するのなら、信じてもいいのだろう。だが……報酬と言われてもね』
報酬というところで、マクギリスは難しい表情を浮かべる。
実際、報酬として支払うとなると、色々と難しいのは事実。
それこそMSとかを渡すと言われても……既にその辺はもう十分だしな。
スキップジャック級も、そんなに多くを貰っても使い道がないし。
となると……
「個人的には、エイハブ・リアクターの製造技術とかがいいな」
『それは……いや、だが……』
俺の提案に、マクギリスは悩む。
もっとも、これでも俺はかなり譲歩しているつもりだ。
エイハブ・リアクターが、ギャラルホルンの独占技術だというのは知っている。
知っているが、シャドウミラーにしてみればちょっと珍しい動力炉でしかないのも事実。
オルフェンズ世界ではエイハブ・リアクターが最高の動力炉……というか、MSの動力炉はこれしかないから使っているものの、エイハブ・リアクターにも欠点がある。
その中でも最悪なのは、やはりエイハブウェーブによって、精密機器の類がまともに動かなくなるという事だろう。
街中でMSが……より正確には、エイハブ・リアクターを動力源としている機体は使えない。
これは大きな欠点だ。
シャドウミラーの機体の場合、普通に街中での戦闘とかもあるし。
勿論、それ以上のメリットがあれば、エイハブ・リアクターを使うなりなんなりしてもおかしくはないが、シャドウミラーの場合はブラックホールエンジンが普通に使われている。
そうである以上、シャドウミラーでエイハブ・リアクターが使われる事はまずない。
なら、何故エイハブ・リアクターを欲したのか。
単純に、技術班の研究の為だ。
好奇心旺盛な技術班の面々だけに、エイハブ・リアクターを……しかもその製造技術を渡しておけば、かなり喜んで研究するだろう。
将来的にはエイハブウェーブを出さないエイハブ・リアクターとか、あるいはエイハブウェーブを出しても精密機器に影響を与えないエイハブ・リアクターとか、そういうのを作ってくれるかもしれないし。
また、エイハブ・リアクターの技術には重力制御技術もあるので、それはシャドウミラーの持つ重力関係の技術にプラスになる可能性は十分にあった。
他にも単純にエイハブ・リアクターの技術だけではなく、他の技術……シャドウミラーが今まで入手した技術を組み合わせる事によって新しい技術を生み出せる可能性は十分にあった。
「そっちにとっても悪くない話だとは思うが?」
『……アクセル、その件について聞く前に1つ聞かせて欲しい事がある』
「何だ?」
『アクセルもラスタルの派閥が公表した、私の生まれや過去についての話は聞いているだろう?』
「ああ、勿論だ」
『それを聞いてどう思った?』
「どう……とは?」
『私は今はファリド家の当主だが、血筋は違う。そんな私が今こうして革命派を率いている事をどう思う?』
「どう思うと言われても……そういうものかと思うだけだが」
『そういうもの……?』
「ああ。元々マクギリスの目指していたギャラルホルンの改革の中には、血筋とかじゃなくて、能力を重視するというのもあっただろう? そういう意味では、マクギリスの立場はその理想を示しているんじゃないか?」
実際にはマクギリスの場合はイズナリオによって拾われて、その流れで今の立場になったのだから、能力によって地位を決めるという改革派の理想とは若干違うのだろう。
だが、それでも常に能力を発揮し、今の立場となったのは間違いのない事実でもある。
「それに……マクギリスの考えとは少し違うかもしれないが、シャドウミラーを率いる俺も、別に高貴な血筋という訳じゃない」
俺を産んだ両親も、裕福ではあったが別に貴族だとか、そういうのではなかった。
違うのは、俺が転生したという事だろうが。
当初は原作知識とかもあったので、それによって今のような立場……シャドウミラーという国を率いる事になったのも間違いはない。
だが、その大きな理由は……やはり、成り行きに近い。
そもそも俺は親友だったヴィンデルを殺して組織を乗っ取ったのだ。
そこには簡単に説明出来ない理由が幾つもあったが、それでも親友を殺したのは事実。
「俺が今の地位にいるのは、半ば成り行きだ」
『成り行き……』
「ああ、別に俺はマクギリスのように、改革がどうとか、そういうのは考えてなかったしな。そういう意味では、マクギリスの行動は決して悪くはないと思う。それに、マクギリスの過去を聞いて離れた奴もいるらしいが、そんな者達はどうせ何かあったら離れていくような者達だろう? なら、今のうちに……ラスタルの派閥と戦っている重要な場面で裏切られるようなことがなかったという意味では、悪くない結果だと思うが」
もっとも、今はまだマクギリスの陣営にいるが、ラスタルと繋がっていて、戦いになった時に裏切る……そんな可能性もあるので、決して油断は出来ないのだが。
『なるほど、それならば、逃げ出す者は引き留める必要がないか』
「俺はそう思う。勿論、重要な役割を任せるのなら、話は別だが。……ちなみにだが、お前の過去の件についてガエリオとカルタはどう言ってるんだ?」
ただの兵士達なら、逃げ出しても特には気にしなくてもいいだろう。
だが、ガエリオとカルタはマクギリスにとって幼馴染みであると同時に、派閥の重要な仲間だ。
もしここでガエリオやカルタが離れていった場合、その被害はかなり大きなものとなるだろう。
『心配してくれて助かるが、今のところはそのような心配はないよ。ただ……カルタはイシュー家の当主だから問題はないが、ガエリオはあくまでも次期当主という立場だ。現在の当主のガエリオの父親は……もしかしたら、私とアルミリアの婚約はなくなるかもしれないな』
あ、それちょっと聞いた事があるな。
ガエリオの妹とマクギリスが婚約してるって話。
ただ、聞いた話だとガエリオの妹……アルミリアか。それはまだ10歳かそこらの年齢だって話なんだよな。
ルリは勿論、ラピスより年下の相手……そう考えると、犯罪臭がする。
とはいえ、別にそれはマクギリスがロリやペドといった訳ではない。
あくまでも結婚するのはアルミリアがその年齢に相応しい年齢になってからだ。
それに……オルフェンズ世界においては、蒔苗のように長寿の技術もある。
そう考えれば、今は年齢差でもの凄いようになっていると思っても、将来的にはそこまでおかしくはない年齢での結婚になるのではないか。
20歳と10歳だとマジか!? となるのに対し、30歳と20歳ならそこまで驚くような事ではないし。
世の中には、もっと大きな年の差婚というのもあるのだし。
「そうか。そうなると、ボードウィン家の協力は難しくなるのか?」
幾らガエリオが次期当主だとはいえ、現在のボードウェン家の当主はガエリオの父親だ。
その父親が、マクギリスと娘の婚約を破棄するというのなら、次期当主のガエリオが何を言っても意味はないだろう。
結局のところ、現在のボードウェン家の当主ではないのだから。
だが、そんな俺の言葉にマクギリスは首を横に振る。
『いや、私の革命については協力してくれるらしい。あくまでも中止になるのはアルミリアとの婚約だけだ』
「それはまた……どういう事だ?」
てっきりマクギリスに協力しないので、婚約を破棄したのかと思ったが、この様子を見る限りではどうやら違うらしい。
『別にそう難しいことじゃないさ。私を……汚れた身である私は娘の婚約者に相応しくない。だが、ギャラルホルンの改革には協力出来る。そう思ったのだろう』
あっけらかんと言うマクギリス。
本来なら憤ってもいいと思うんだが……この様子を見る限り、そういうつもりはないらしい。
まぁ、本人がショックを受けていないのなら、その辺は構わないだろう。
『それに……戦力という意味では、アクセルに、シャドウミラーに頼めるのだろう?』
「そのつもりだが、当然ながらただ働きとはいかないぞ。魔法の実演については、エイハブ・リアクターの製造技術で手を打つつもりだが、戦力を出すとなると、それ以上に報酬が必要になる」
『……考えておこう』
何を報酬にすればいいのか分からない様子のマクギリスだったが、それでもラスタルの派閥と戦うのに、シャドウミラーの戦力が必要となるのは分かっている筈だ。
そうなると、一体何を差し出してくるのか……それが楽しみだ。
MSのフレームの製造技術とか?
ただ、フレームの製造技術はエイハブ・リアクターと違って、既にギャラルホルンの独占技術じゃないしな。
それこそ、テイワズで独自のフレームを作れるくらいだ。
もっとも、テイワズ系のフレームは基本的にギャラルホルンのフレームと違って、まだ性能は低い。
これは技術的な成熟度の問題で、将来的には解決されるかもしれないが……今はまだ、ギャラルホルンの方が上なのは間違いなかった。
そうして、俺は魔法の存在を、異世界の存在を証明する件についての交渉をマクギリスと続けるのだった。