ニーズヘッグのシステムXNで転移したのは、何もない宙域だった。
勿論これは俺が転移先の設定を間違ったのではなく、当初の予定通りだ。
俺達にしてみれば、シャドウミラーの実働班と精霊の卵、そして無人機の軍勢というのは、見慣れた存在でしかない。
だがそれは、あくまでも俺達だから……シャドウミラーだからこそだ。
……あるいは、シャドウミラーのオルフェンズ世界支部の面々や鉄華団のように俺達と接する機会の多い者であれば、多少はそういうのを見慣れているかもしれないが……それ以外の者達にしてみれば、違う。
それこそマクギリスの派閥の者達であっても、無人機=MAと認識していてもおかしくはない。
もしくは、異世界に自分達以上の戦力があるのを見て、驚き……危険視する可能性もある。
だからこそ、少し離れた場所に転移し、そして移動するのだ。
幸い、開戦予定時刻にはまだ余裕があるし。
とはいえ、それはあくまでも仮定のものだ。
これが戦争……いや、内乱か。内乱である以上、いつ戦いが始まってもおかしくはない。
もっとも、このオルフェンズ世界において支配者層であるギャラルホルンだからこそ、何らかの流儀に則って戦いを開始するという可能性は十分にあるが。
「全機、聞こえているな? これからマクギリスの派閥……俺達が味方をする戦力と合流する。言うまでもないと思うが、俺達はシャドウミラーだ。みっともないところを見せるようなことはするなよ」
そう俺が言うと、軍艦が移動を開始する。
ニブルヘイム、シロガネ、ギャンランド、ワンダーランド。
それがシャドウミラーの実働班が使っている母艦だ。
それ以外に、精霊の卵の使っているミネルバがそれぞれ複数。
後はシャドウやメギロート、バッタが使っている、ヤンマやカトンボが大量に。
まさに、シャドウミラーの全戦力……いやまぁ、量産型Wの操縦するシャドウや、無人機はまだ圧倒的に余裕があるから、本当の意味では全戦力とは言えないのかもしれないが。
ともあれ俺の指示に従って、シャドウミラーは進軍を開始する。
それを確認しながら、俺はニーズヘッグをニブルヘイムの先端部分に移動させる。
『ねぇ。アクセル君。どうせ内乱になるのなら、いっそUC世界からジェネシスとかを持ってきてもよかったんじゃないの?』
ワンダーランドの艦長をしている美砂が、そう通信で言ってくる。
「それも少し考えなかった訳じゃないけど……そうなると、一方的に俺達が……マクギリス達じゃなくて、シャドウミラーの俺達が勝利した事になるだろう? 戦後の事を考えると、それは避けたい」
もしその辺を考えなくてもいいのなら、それこそバルジとかリーブラとか……もしくは、X世界で宇宙革命軍から奪ったコロニーレーザーとか、そういうのを使うといった選択肢もあったのだが。
あ、でも……
「レモン、マリュー。X世界から奪ってきたコロニーレーザーの件はどうなってる?」
『修理や改修をするにも、場所がね。一応修復プランは考えてるけど』
レモンのその言葉に、だよなぁと思う。
コロニーレーザーというのは、その名の通りコロニーを改造して作ったレーザーだ。
名称は違うが、UC世界で1年戦争の時にジオン軍が使ったソーラ・レイとかがそんな感じだな。
もっとも、ソーラ・レイは技術的にまだ未熟だというのもあってか、コロニーを使った兵器だというのに使い捨てという……コスト的にどうなんだ、それ? とも思えるような物なのだが。
とはいえ、それによってジオン軍はレビルを殺す事に成功している辺り、決して使い物にならないという訳ではないのだろうが。
ともあれ、X世界のコロニーレーザーもコロニーを使って作られた戦略兵器だ。
つまり、その大きさはコロニーそのまま……いや、コロニーレーザーにしただけあって、ベースとなったコロニーよりも更に大きいのか?
ともあれそんな感じである以上、修理するにも魔法球で出す訳にはいかない。
魔法球はかなりの大きさを持つが、それでもコロニーを出せるような大きさはないのだから。
かといって、ホワイトスターの外は、それはそれで難しい。
何しろホワイトスターがあるのは世界と世界の狭間だ。
とてもではないがコロニーレーザーの修理や改修が出来るような場所ではない。
世界の狭間という場所であるにも関わらず、一体何がどうなってそうなったのか、岩とかが大量に浮かんでいたりするし。
……本当に、あの岩はどこから来たんだろうな。
まぁ、シャドウミラーとしてはキブツに投入出来る原材料が出来たという意味で、不利益ばかりという訳でもないのだが。
ともあれそんな訳で、修理や改修をどこでやるのかという問題がある。
「いっそ、このオルフェンズ世界でやる……のは難しいか」
『でしょうね。ギャラルホルンとしても、そう簡単に許可出来ないでしょうし。……ナノラミネートアーマーがあっても、ビームとレーザーでは違うでしょうし』
ギャラルホルンとしても、この世界で治安を守っている以上は、それを危うくするようなコロニーレーザーの修理や改修を行うのを許可したりはしないだろう。
あ、でも今回味方をしたというのを恩に着せれば、あるいはどうにかなるか?
「UC世界だと、それはそれで問題だしな」
もしそのような事をすれば、連邦軍の強硬派がうるさいだろう。
それこそ、それを理由に攻めてくるといった可能性も否定は出来ない。
……そうなればそうなったで、俺達の勝利が半ば確定しているのだが。
ただ、勝てるからといって不必要に連邦軍にダメージを与えるのも、それはそれで不味いし。
もしそのような事になれば、強硬派以外の連邦軍の敵意もルナ・ジオンに向けられかねないのだから。
『そうなると、いっそ鬼滅世界はどうかしら? あの世界なら、まだ宇宙関係の技術も殆ど発展していないから、地球から離れた場所……それこそ月の裏側とかでコロニーレーザーの修理をすれば、そうそう見つかる事はないんじゃないかしら?』
マリューのその言葉に、なるほどと頷く。
現在の鬼滅世界は、無惨を倒して鬼の問題を解決した事もあり、特に騒動らしい騒動は起きていない。
……いやまぁ、それはあくまでも原作的な意味でだが。
無惨の件が解決した後の続編があったりとか、そういう意味で。
具体的には、日本の鬼ではなく外国の鬼が出てくるとか。
まぁ、鬼滅世界の住人にしてみれば、それは決して悪い事ではないのだろうが。
ともあれ、そういう訳で大きな騒動そのものは起こっていない。
ただし、歴史的な事件とかはそれなりに起こったりしているが。
ともあれ、技術力という意味では間違いなくシャドウミラーが接触してきた世界で一番低い。
あ、でも門世界もあったな。……ただ、門世界は魔法があるファンタジー世界だし。
そんな風に思っていると……
『こちらに接近してくる集団を見つけたそうよ』
コロニーレーザーの修理や改修の話は一旦置いておいて、マリューがそう言ってくる。
「敵か?」
『味方ね。シーラから連絡が入ってきたわ』
マリューのその言葉に、そうかと返す。
もしラスタルの派閥の別働隊であったりしても、それはそれで構わなかったのだが。
「分かった。シーラがいるということは、鉄華団は勿論、テイワズの戦力も一緒だな?」
『ええ、アクセルの弟分だったかしら? その2人も一緒にいるらしいわ』
オルガと名瀬か。
ちなみに名瀬には、俺の正体……実は異世界人であるというのを知った時、恨み言を口にされた。
もっとも、今度ホワイトスターに招待するという事で、何とか落ち着いたが。
その時には、俺も恋人達を紹介する必要があるだろうな。
「なら、問題はないな。向こうにはこのオルフェンズ世界でもトップクラスの実力の持ち主がいるだろうし」
マーベルは俺達と行動を共にしているが、三日月とアミダが向こうにはいる。
また、俺が知らないだけで他にも腕の立つ者がいる可能性は十分にある。
……ただ、シャドウミラーの方は……微妙に戦力不足か。
勿論、グシオンを使っているクランクや、レギンレイズを使っているアインといったように、相応の使い手はいるが。
他にも昌弘とかの元ヒューマンデブリ組もかなりの技量を持つ。
だが、それでもやはり三日月やアミダには及ばない。
マーベルとかにしっかりと訓練をつけられてはいるんだが。
その辺りはやはり才能の差なのだろう。
『予定通り、向こうと合流するわよ?』
「そうしてくれ。ただし、向こうを刺激しないようにな」
鉄華団にしろ、テイワズにしろ、シャドウミラーの戦力をこうして間近で見るのは初めてだ。
そして、オルフェンズ世界で使われている軍艦とは全く違う形状の軍艦が多い。
ニヴルヘイムなんか、空を……宇宙空間を飛ぶ城だしな。
オルフェンズ世界の常識で考えれば、とてもではないが有り得ないことだろう。
……軍艦といえば、オーラバトルシップの方も、そろそろ実働班で運用したいところではある。
シャドウミラーで確保したのは、ヨルムンガンド、ウィル・ウィプス、ゴラオン、グラン・ガランだ。
今更、本当に今更の話だが、どうせならクの国のオーラバトルシップ、ゲア・ガリングも確保したかったな。
ゲア・ガリングは単艦としての戦力はオーラバトルシップの中でも非常に低いが、その変わりオーラバトラーの搭載数はトップクラスだ。
言ってみれば、オーラバトルシップの中でも空母的な性質を持つ。
単艦で運用すると、どうしてもゲア・ガリングは弱いものの、その代わり他のオーラバトルシップと組んで運用すると、かなりの強さを発揮する。
まぁ、ゲア・ガリングがない以上、今更の話だが。
それにダンバイン世界で俺が使っていたヨルムンガンドも、どちらかと言えば空母的な性能を持つので、そういう意味ではゲア・ガリングと同じように使う事が出来たりもする。
『アクセル? どうしたの?』
「ああ、悪い。オーラバトルシップもそろそろ本格的に配備してもいいかと思ってな」
以前、何度か試しに使った事はあるが、まだ本格的には使われていないし。
『オーラバトルシップね。……そうね。ただ、そうなると人がいないわよ? いえ、グラン・ガランはシーラに任せるのがいいんでしょうけど』
「それがいいかもしれないが……グラン・ガランは、能力的にちょっとな」
外交とかに使うならともかく、純粋な戦力として考えた場合、グラン・ガランはどうしても物足りない。
それこそオーラバトルシップとしての性能は低いと評したゲア・ガリングと比べても、グラン・ガランは純粋な戦力として考えた場合、どうしても劣る。
つまり、戦力して使うにはちょっと……といった感じなのだ。
だからといって、ウィル・ウィプスはシーラの気持ち的にあまり好ましくないだろう。
ウィル・ウィプスは最初のオーラバトルシップにして、非常にバランスの取れた艦だ。
そういう意味ではシーラが艦長を務めるのに相応しいのだが。
他に選択肢がなければ。ウィル・ウィプスをシーラに任せるといった事もあるかもしれないが、ゴラオンがある以上はどうせならそっちを任せたいと思う。
もしくは、ヨルムンガンドか?
純粋な戦闘力という意味ではオーラバトルシップの中で最高峰であるゴラオンと比べると、ヨルムンガンドは……どうだろうな。
『アクセルが気にするのは分かるけど、今はまずこのオルフェンズ世界の戦いを終えてからにしましょう』
「そうだな。そうするか。……じゃあ、マリュー、まずはこっちに来ているシーラ達と合流してくれ」
そう指示を出すのだった。
『兄貴、その……シャドウミラーって一体どういう戦力なんだよ?』
映像モニタに表示された名瀬が、呆れた様子でそう言ってくる。
合流してある程度の連絡を終えたところで、名瀬がそう言ってきたのだ。
ちなみにオルガの方は、そんな名瀬にどこか同情した視線を向けている。
俺が言うのも何だが、オルガは何だかんだと俺との付き合いが深い。
鉄華団の拠点が、シャドウミラーオルフェンズ世界支部の拠点からそう離れていない場所にあるというのもあって、オルガはそれなりに頻繁にこっちに来ていた。
そうである以上、俺達に……シャドウミラーに関わる事が多いし、実際にホワイトスターにも行った。
だからこそ、シャドウミラーという存在について何があってもそう驚くようなことはないのだろう。
「シャドウミラー驚異の技術力って奴だな。……いや、これは冗談でも何でもなく、本当に」
技術班には多くの天才がいるので、その天才達によって技術力が上がっている。
……時には暴走したりもするのだが。
とにかく、その技術力は非常に高いのは間違いなく、それらによってニヴルヘイムとかが出来たのも間違いのない事実。
技術班の存在はシャドウミラーにとって大きな意味を持つのを示すのは、その辺の理由も大きいのは間違いなかった。