また、それ以外にも縦書きEPUB方式というのもあるようです。
運営の方で対処して貰えたようですね。
運営の方々、ありがとうございます。
火星の扱いが決まったところで、俺は以前からシャドウミラー内で話に上がっていた内容を口にする。
「火星の件のついでだが……オルガ、鉄華団でシャドウミラー……オルフェンズ世界支部だけだが、引き受けて貰えないか?」
「……は?」
オルガにとっては、余程意外な言葉だったのだろう。
まさに間の抜けた声という表現が相応しいような、そんな声を漏らす。
……いや、オルガだけではない。
シャドウミラーの身内以外の全員が、俺が何を言ってるのか理解出来ない、あるいは本気か? もしくは正気か? といった視線を向けてくる。
「えっと、その……兄貴。冗談はそのくらいにしておいて欲しいんですけど」
戸惑ったような……いや、寧ろ冗談であって欲しいといった様子で聞いてくるオルガ。
だが、俺はそんなオルガの言葉に首を横に振る。
「いや、冗談でも何でもない。正直なところ、これからの事を考えるとシャドウミラーのオルフェンズ世界支部は色々と不味いんだよな。勿論、鉄華団が近くにあれば話は別だが、鉄華団がある以上、それも信頼出来る人物がいる以上、鉄華団に吸収して欲しい」
そう言い、理由を説明していく。
まずは、俺が名前をつけたとはいえ、シャドウミラーという組織が2つあると混乱しやすいという事。
オルフェンズ世界支部と名称を付けても、やはりシャドウミラーはシャドウミラーとして間違えやすい。
次に、あくまでもオルフェンズ世界支部はオルフェンズ世界支部の人員であり、本物のシャドウミラーとして迎えるつもりはないという事。
具体的には、時の指輪の受信機を使って不老にするとか、そういう恩恵は考えていない。
同じシャドウミラーなのに、自分達が不老になれないと知ったら、不満を抱く者もいるだろう。
それにマーベルとシーラという、オルフェンズ世界支部で非常に重要な位置を占めていた2人も、こっちでの騒動が……原作が終わった以上、ホワイトスターに来る事になっている。
そうなると、オルフェンズ世界支部で屋台骨と呼ぶべき存在だった2人がいなくなるのだから、オルフェンズ世界支部がまともにやっていけるかどうか分からない。
だが、鉄華団からは別に人員を引き抜く訳でもないのだから、鉄華団は普通に運営出来る。
その上で、オルフェンズ世界支部が必死になって集め、教育した事務員がいるので、総合的に見ればオルガの仕事の忙しさは減るだろう。
また、単純にオルフェンズ世界支部が鉄華団に合流すると、オルフェンズ世界支部で使っていたMS隊もそのまま鉄華団に合流する以上、鉄華団の戦力もかなり強化される。
そしてオルフェンズ世界支部を吸収するという事は、量産型Wやコバッタもそのまま使えるという事になり、事務仕事や雑用については今までより格段に楽になるだろう。
難点は、仕事の内容であったり、鉄華団の部外秘の何かがあった場合、それを量産型Wやコバッタが知ると、間接的に俺達が知るようになるという事か。
吸収される以上、現在シャドウミラーが受けている仕事も鉄華団に引き継がれる事になるだろうが、その辺は利益か不利益かは微妙なところだな。
それらの理由を説明すると、部屋の中にいた者達は頷いたり、首を傾げたり、納得出来なさそうだったりと、それぞれに表情を浮かべる。
「で、そんな訳だけど……どうだ?」
「すぐには返事が出来ませんよ。それに……この世界のシャドウミラーがなくなったら、色々と不味い一面もあるんじゃないですか?」
「そうだな。例えばシャドウミラーの友好組織という形で、何かあった時は鉄華団に武力の担当をして貰うというのはどうだ? 勿論、ただ働きをさせるつもりはない。その場合は相応の報酬を支払う事になる筈だ」
「それは……うーん、どうでしょうね。こちらとしてはありがたいですが」
そう言いながらも、オルガは微妙な表情だ。
無理もないか。
オルガは今でこそ鉄華団という武力を使う仕事をしているが、本来なら命懸けの仕事というのはやりたくないのだ。
以前、ちょっとそういう風に言っていた事を覚えている。
そういう意味では、現在シャドウミラーが請け負っている仕事をそのまま引き継ぐというのは、オルガにとっても、そして鉄華団にとっても決して悪い話じゃないだろう。
シャドウミラーは俺が出るような仕事は殆どなかったが、MS隊、あるいはMW隊や生身での仕事というのはそれなりにあったのだ。
だからこそ、そのような仕事は鉄華団にとってもそれなりに美味しい筈だった。
「けど……シャドウミラーについてうちに吸収するって話は分かりましたけど、そうなるとハーフメタルの件はどうするんです? そっちも完全に譲るんですか?」
「いや、悪いがそれについてはシャドウミラー……オルフェンズ世界支部じゃなくて、ホワイトスターのシャドウミラーに引き継がせて貰う」
このオルフェンズ世界で入手した独自の技術や独自の素材は色々とあるが、ハーフメタルはその中でもかなり価値が高い。
それだけに、ハーフメタルについてはさすがに鉄華団を相手にしても譲るという訳にはいかなかった。
「そう、ですか。それについては分かりました」
オルガは俺の言葉を半ば予想していたのか、特に不満を見せない。
「……ちなみにだが、もしシャドウミラーが鉄華団に吸収されたとして、何かあった場合にもう1つのシャドウミラー、本物のシャドウミラーに協力をして貰うという事は出来るのかな?」
マクギリスの問いには、真剣な色がある。
無理もないか。
自分で言うのもなんだが、今回の戦いにおいて、マクギリスが勝利したのはシャドウミラーの力が大きい。
勿論、シャドウミラーがいなくても勝利はしたかもしれないが……いや、うーん。けど、どうだろうな。
維持軍には、ダインスレイヴがあった。
それも1つや2つではなく、大々的に配備されていたのだ。
それを思えば、最初からそのつもりだったのは間違いなく、だからこそシャドウミラーがいない場合、一方的にダインスレイヴの的になっていた可能性がある。
今回は、俺達が参戦していたのでフレイヤとS-11ミサイルによって戦局を逆転出来たが。
もしそれがなかったら、受けていた被害は大きいだろう。
だからこそ、マクギリスはまた何かあった時……敵がダインスレイヴ、あるいはそれに類する何らかの強力な兵器を有していた時、こちらに援軍を要請したいのだろう。
個人的にはMAをどうにかして発掘し、こっちに嗾けてくるとか、そういう事をしてくれると嬉しいんだが。
MAであれば、ニーズヘッグの尾とルリとラピスがいれば、ハシュマルと同様にハッキングでこっちに引き込めるし。
「そうだな。もしマクギリス達で手に負えないような事があったら、こっちで戦力を出してもいい。ただし、その時は相応の報酬が必要になるけどな。……地上での戦いなら、ハシュマルを出すだけで大抵は終わりそうだけど」
「あ、そうだ。兄貴、そのMA……ハシュマルについてですが、もしうちがシャドウミラーを吸収するような事になったら、ハシュマルはどうするんです? 今は兄貴がいるから何とでもなりそうですが、兄貴がいなくなったらちょっと……」
ああ、と。
オルガの言葉を聞いて、他の者達も納得するような表情を浮かべる。
この世界の外から来た俺達と違い、オルフェンズ世界の者達にしてみれば、MAというのは非常に厄介な存在でしかないのだろう。
だからこそ、このまま俺達が入手したハシュマルを残していっては困ると、そう思ったのだろう。
もしハシュマルをこの世界に置いたままにしておけば、それこそいつそれを理由に攻撃されるか分からないのだから。
「分かった。ハシュマルは持っていく。……ホワイトスターの牧場にでも置いておくか」
「アクセル。それはちょっと……」
マリューの困った様子を見る限りだと、駄目らしい。
とはいえ、そうなるとどこに置くのかといった問題も出てくるんだよな。
巨体だけに、置き場所には困る。
空間倉庫に収納出来ればそれがベストなんだが、ルリやラピスからそれは止められているしな。
とはいえ……ゲートを使って転移するのは可能だが、ホワイトスターに行った後でどうやって牧場まで運ぶかだよな。
普通に移動するのは無理だし。そうなると影のゲートを使ってか?
空間倉庫を使えない以上、俺に出来るのはそれくらいしか手段はないし。
「私としては、牧場よりも技術班に任せて欲しいのだけれど。プルーマを製造出来るというシステムは興味があるし」
レモンの言葉に、フラグか? と思う。
もしハシュマルのプルーマを製造するシステムが解明され、技術班が入手したとして。
そしてニーズヘッグは俺の愛機にしてシャドウミラーのフラッグシップ機であると同時に、シャドウミラーの技術試験機としての役割を持っている。
エナジーウィングや尻尾、バリオン創出ヘイロウなんかは、その最たるものだろう。
つまり……場合によっては、ニーズヘッグがプルーマを、あるいはそれに近い何かを作るような、そんなことになる可能性もあったりするのか?
面白そうではあるが……それをニーズヘッグに搭載するのは難しそうな気がする。
ハシュマルはかなりの大きさだから、その辺りも問題はないかもしれない。
だが、ニーズヘッグはPTとして……いや、オルフェンズ世界でだとMSとしても小型の部類に入る。
その外見や雰囲気から、ラスボスや裏ボス的なように見えるが、かなり小型なのだ。
もっとも、小型だからといって弱いかと言われれば、それは否だが。
寧ろ小型でそれだけの……自分で言うのも何だが禍々しい外見だからこそ、余計に相手に恐怖を与えるといったところか。
「ルリやラピスが許可をするなら、別に構わないぞ」
現在、ハシュマルが最優先にするのは俺だが、そういう風にしたのはルリとラピスだ。
そうである以上、技術の解析を行うとかする場合、ルリとラピスに許可を取った方がいいだろう。
場合によっては、ルリやラピスが協力してくれる可能性もあるし。
「分かったわ。話は通しておくわね」
そんな訳で、オルガが扱いに困ったハシュマルについてもどうするのかが決まり……
「まぁ、話は大体こんなところか? 今回決めたのはあくまでも大雑把にだが、詳細については後で専門の人材を派遣するから、そっちで話し合うって事でいいか?」
ここで詳細まで決めるのは、少し無理がある。
戦いが終わったばかりで、それこそ後始末とかでも忙しいし。
倒した相手の処分とか、そういうのもあるし。
「私は構わない」
マクギリスがそう言うと、他の面々もそれで問題ないと言う。
やっぱり、今ここで全てを決めるというのは難しいのだろう。
例えばシャドウミラーオルフェンズ世界支部が鉄華団に吸収される件についても、決まったのはまだ大雑把な内容でしかない。
その詳細については政治班の面々が出て来て相談……いや、交渉をするだろう。
「じゃあ、そんな訳で……ああ、そう言えば。ダインスレイヴだが、幾つかこっちで確保しても構わないよな?」
マクギリスにそう言うが、それは問い……ではなく、既に決定した内容を告げるというものだった。
現状の力関係で逆らえる筈もなく、マクギリスは頷く。
「ああ、構わないよ。……とはいえ、フレイヤとS-11ミサイルだったか。そんな武器を持つシャドウミラーが、ダインスレイヴに興味を持つのは不思議だが」
ああ、なるほど。
マクギリスは間近でフレイヤとS-11ミサイルを見ただけに、その威力がダインスレイヴよりも上だというのを理解している。
正確には、ダインスレイヴとフレイヤ、S-11ミサイルでは同じ兵器でも方向性が違うのだから。
フレイヤとS-11ミサイルはあくまでも広範囲に圧倒的な破壊をもたらす兵器。
それと比べると、ダインスレイヴは一点集中型だ。
対MA用に開発された兵器だという話だし、恐らくだがMAの持つナノラミネートアーマーを貫通し、内部にダメージを与える為に開発された兵器なのだろう。
物理攻撃にも強いナノラミネートアーマーを貫くだけの威力を持たせた事により、結局普通の戦いにおいても大きな意味を持つという事になったのだろう。
……もし厄祭戦が行われていた時、俺がいて、精神コマンドの直撃について知られていたら、一体どうなったんだろうな。
ふとそんな風に思うが、今更の話だ。
「レールガンそのものはこっちでも技術は普通にあるが、ダインスレイヴの奴はちょっと違うかもしれないしな。それに……一番重要なのは弾頭だし。それをシャドウミラーでも使えないかと思ってな」
基本的にシャドウミラーの兵器はビームか重力波砲がメインだ。
だが、実弾兵器が使えない訳ではない。
PTで使うM950マシンガンなんかは、実弾だしな。
そんな訳で、実弾の兵器にも使えるのなら、高硬度レアアロイを弾丸に使える可能性もあり、そういう意味では期待感は高い。
そんな俺の言葉に、マクギリスは頷くのだった。