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4135話
オルフェンズ世界での諸々については、最終的に数ヶ月掛かった。
何度か鉄華団が出撃するような事があったものの、シャドウミラーを吸収した今の鉄華団は火星最強だ。
……テイワズやギャラルホルンの全てを相手にするとなると厳しいが、短期決戦という事ならテイワズやギャラルホルンとも十分に渡り合えるだろう。
いざとなれば、シャドウミラーが出撃したりもするしな。
そんな訳で、火星については問題ない。
ただ、火星が独立する時のトップをどうするのかといった問題もあるが。
ともあれ、この数ヶ月でアドモス商会もかなり大きくなった。
ついこの前は、社員の数が多くなり、もっと大きな建物に引っ越しすらしたくらいだし。
本来ならこういう時は、いわゆる自社ビルを建てるとかするんだろうが……そんな余裕はない。
今は忙しさが一段落してある程度落ち着いてきた――それでも忙しいのは忙しいらしいが――ので、もう少ししたら自社ビルを建てるかもしれないとは言っていたが。
他にもまだ細々とした問題はあるが……その辺は鉄華団を率いるオルガに任せればいい。
そんな訳で、現在の俺はUC世界のガンダム開発計画に集中していた。
このUC世界でも既に0083となり、ゼフィランサスも……そして他のガンダムも開発が進んでいる。
そんな中で俺が少し興味を持ったのは……
「本気なの? いえ、まぁ、所長に要望を出すのなら構わないけど。アクセルも知っての通り、威力はそこまで高くないのよ?」
ニナが理解出来ないといった様子で俺に向かってそう言ってくる。
「その辺はあくまでも今はの話だろう? この先、技術が発展すれば十分に使える武器になる可能性は否定出来ない。違うか?」
「それは……まぁ、そうだけど」
俺の言葉に、ニナは不承不承といった様子でそう返事をする。
技術力が自慢のアナハイムの人間としては、今は技術力不足であっても、それが将来的にしっかりとした技術として確立されて、しっかりと使えるようになるというのは、否定出来ないのだろう。
「でも……何でいきなりこれに興味を持ったの?」
「単純に使いやすいと思ったからだ」
そう言い、俺は映像モニタに表示されているゼフィランサス……正確には、そのコアファイターに装備されているビーム砲に視線を向ける。
まず前提として、ゼフィランサスはガンダム……アムロが乗っていたRX-78-2の正統後継機であるというのがある。
ただ、勿論全てがRX-78-2と同じという訳ではなく、後継機である以上は違う場所もある。
例えば、アムロのガンダムはコアファイターが垂直になって合体する、バーティカル・イン・ザ・ボディ方式というものだったのに対し、ゼフィランサスのコアファイターⅡは水平になって合体するホリゾンタル・イン・ザ・ボディ方式になっている。
これによって何が変わったのかというと、アムロのガンダムの方ではコアファイターはあくまでも脱出機としての機能しか持っていなかったのに対し、コアファイターⅡの方は水平に合体するということで、つまり機体のスラスターをMSのスラスターとしても使用出来る。
背中の部分……いわゆる、ランドセルと呼ばれるような場所に、ちょうどコアファイターⅡのスラスターが露出している形なのだ。
他にもRX-78-2とゼフィランサスの違う場所は多くあるが、今の場合問題になっているのはコアファイターⅡ……正確には、コアファイターⅡの武器であるビームガンだった。
このビームガン、ゼフィランサスになった時はビームサーベルとして使われる。
つまり、ビームサーベルとビームガンの両方として使える事になる。
これは、俺にとって非常に興味深い装備だった。
とはいえ、それだけ便利なら難点もある。
それがニナの言っていた威力。
現在の技術力不足によって、コアファイターⅡがビームガンとして使う場合、どうしても威力が足りない。
殆ど目眩まし程度にしかならないという状況だった。
何となく、1年戦争中のドムを思い出すな。
ドムの胸部にも拡散ビーム砲が配備されていたのだが、技術力不足、そして動力炉の出力不足で目眩ましにしか使えなくなっていたらしい。
リック・ドムになった時は、拡散ビーム砲を廃止したくらいだ。
もっとも、リック・ドムⅡになった時は技術力の向上によって、普通に拡散ビーム砲が使えるようになったが。
ゼフィランサスもそれと同じような道を歩む……いや、どうだろうな。
リック・ドムとリック・ドムⅡの場合は後継機……正確には統合整備計画として作られたのだが、ゼフィランサスは別に後継機とかを作る予定は今のところないし。
とはいえ、ガンダム開発計画において開発されているガンダムの中で、量産をするのに一番相応しいのはゼフィランサスなのは間違いないんだよな。
なにしろ試作2号機は核兵器の運用を前提にしてるし、試作3号機はMA的な機体だし、試作4号機は開発中止になったし。……いやまぁ、試作4号機は改修してテストパイロットの報酬として貰う事になったので、文句は言わないが。
そんな訳で、今のところ試作1号機であるゼフィランサスが一番量産に向いている訳だ。
勿論、ゼフィランサスをそのまま量産する訳ではなく、ガンダムに対するジムのような感じになると思うんだが。
もしくは、ジーラインとかそっち系か?
「使いやすいって……でも試作4号機は別にコアファイターじゃないでしょ?」
「そうだな。ただ、別にビームサーベルは絶対にランドセル……もしくは背中に装備しないといけない訳でもないだろう?」
「……あ」
ニナにとっては、俺のその言葉は予想外だったのだろう。
とはいえ、仕方がないのかもしれないが。
連邦系にしろ、ジオン系にしろ、ビームサーベルを持つMSはその多くは背中にビームサーベルを装備していたのだから。
また、コアファイターのビームガンとしても使うと考えれば、やはりバックパックに装備するという認識がそこにはあったのだろう。
この辺、まだMSという兵器が出来てからそこまで時間が経っていないからこそだよな。
アナハイムの中でも才色兼備の者達が集まったクラブ・ワークスであっても、先入観からは逃れられないらしい。
「なるほど、アクセルの言う通りね。……ちなみにその場合、アクセルはどこにビームガンを装備させようと思っているの?」
「無難なところでは、手首か。どこかに固定装備するにしても、手首とかなら腕を動かせば射角はかなり自由だし、ビームサーベルとしても使うと考えると、手の側がいいだろうし」
腕を動かす事である程度自由に射角を変えられるというのは、かなり大きいメリットだろう。
例えば強力なメガ粒子砲を装備していても、それがガンキャノンのように背中に背負っていて、肩から砲身が伸びているという武器の場合、威力が強力であっても、射角を変えるには機体の向きそのものを変える必要がある。
勿論、そういう機体を渡された場合は使いこなそうとは思う。
だが、前もってそれを変えられるのなら、より利便性の高い方がいいのも事実。
「手の側、ね。なるほど。それなら……あ」
「ニナ?」
何故か不意にそんな声を上げたニナに、どうしたのかと視線を向ける。
ニナの性格を考えると、何かがあったかのように思えてしまう。
そしてその何かは、かなり問題があるような、そんな何かである可能性が高い。
「その、以前ちょっと所長から聞いたんだけど、アクセルに渡すMSについてなんだけど、腕部に実弾の機関砲を装備するって」
そう言われ、思い浮かべたのはアレックスのガトリング砲だ。
開発者曰く、卑怯な武器。
いわゆる隠し武器に入るのか?
実際、かなり効果的な武器なのは間違いないだろう。
ガンダム開発計画という、連邦軍でも非常に力を入れている計画だ。
MSを開発する上で、連邦軍が過去に作ったガンダムのデータを参考にするというのは、そうおかしな話じゃない。
実際、試作3号機は俺が乗った重装フルアーマーガンダム7号機の影響を受けているって話らしいし。
そういう意味では、アレックスの腕部ガトリング砲を参考にしたというのも分からないではない。
勿論そのまま採用したという訳ではなく、より改修して使いやすかったり、威力が高くなったりしてるのだろうが。
とはいえ、そうなると……いや、待てよ?
「腕部に機関砲をつけるという事だったが、それは外側だよな?」
「え? それは……まぁ、そうでしょうね。使いやすさや整備、弾倉の補給という諸々を考えても、腕の外側になると思うわ」
MSを設計する際の常識的に、それは恐らく間違いないとニナは言う。
なら、いけるか?
「だとすれば、ビームガンについては別に腕の外側に付けなくてもいい。腕の内側……MSのこの部分に内蔵するというのはどうだ?」
そう言い、俺は手首の内側を見せる。
例えが少し物騒だが、よく自殺する時に刃物で手首の内側の血管を切ったりするが、その部分だ。
「手首の内側……ビームサーベルを装備する位置としては悪くないとは思うわ。けど、ビームガンとして使う場合、こう……」
ニナは掌を開き、手首の内側を妨げないようにする。
「こんな感じにしないと、ビームガンを撃つ時に手が邪魔になるわ。それに所長がどういう機関砲を装備しようしているのかは分からないけど、こうして手首の邪魔にならないようにすると、今度は機関砲の邪魔になるんじゃない?」
「その辺は、試作4号機を改修する時にどうにかならないか? 手がダメージを受けないような感じで」
機関砲とビームガンの両方を使うには、そうする必要がある。
もし出来なければ、どちらかの武器しか使えないという事になるだろう。
それは出来れば遠慮したかった。
「そう言われても、試作4号機の件は所長が任されているんだもの。寧ろ私から言うより、そのMSを貰う予定のアクセルが自分の要望だからという風に言った方がいいと思うわよ。所長の性格的に、その方が間違いないと思う」
ニナの言葉に、それもそうかと判断する。
「じゃあ、クレナに連絡を取って貰えるか? 俺から提案をしてみる」
「分かったわ。じゃあ、ちょっと待っててね。……まったく、ゼフィランサスの完成までまだ大変なのに」
そうして若干不満そうにしながらも、ニナはクレナに連絡を取ろうとするのだが……
「アクセル、残念なお知らせよ」
どこかと通信をしていたニナは、そう言ってくる。
その言葉と表情から、何かよくない事が起きているのは間違いない。
それが具体的に何なのかというのは、生憎分からなかったが。
「どうした?」
「所長は現在ラビアンローズに行ってるらしいわ」
ラビアンローズ? と疑問に思ったが、すぐにその言葉の意味を理解する。
そう言えば、クレナはそういう名称のドック艦を任されてもいるんだったと。
……というか、クレナの現在の本職はあくまでもそのラビアンローズの艦長なのだ。
それでもフィフス・ルナに頻繁に顔を出しているのは、それこそ俺がテストパイロットをやる際の報酬として、試作4号機をベースに作るMSの一件があるからだろう。
クレナとしては、その件は隠して……あ、いや。でもどうなんだろうな。
このフィフス・ルナにはヤザンがいて、俺はそれなりにヤザンと話している。
そしてヤザンはコーウェンの派閥に入っており、そのコーウェンはレビルの派閥の後継者だ。
俺とレビルの派閥は友好関係にあった訳で……
とはいえ、1年戦争の時のコーウェンは俺に対して敵対的な感じだったが。
ただ、今はコーウェンも派閥を率いる身だ。
俺と敵対してもメリットがない。
実際、俺に対する態度は以前とは違って和らいでいるし。
もっとも、それはあくまでも表向きの事だ。
腹の中では何を考えているのか分からないので、完全に心を許す事は出来ないが。
それは別におかしな事ではない。
強硬派の件はともかくとして、連邦軍や連邦政府にしてみれば、異世界からやって来て、いきなり月で建国し、月を自分達の領土としたルナ・ジオンや、その後ろ盾となっているシャドウミラーは決して好ましい存在ではないのだから。
1年戦争以前において、月というのは巨大経済圏だった。
月からの税収は、連邦政府に大きな利益をもたらしていたのだ。
しかし、ルナ・ジオンとして月が独立してしまった以上、もう税収は期待出来ない。
1年戦争の途中では戦争に金は幾らでも必要で、戦後は復興に金が幾らでも必要。
そんな中で連邦政府の中でもトップクラスの税収を納めていた月が独立したのだから、連邦政府や連邦軍がどう思っているのかは容易に想像出来る。
それでも友好的に接するコーウェンは、こうして考えてみるとそれなりの人物なのは間違いないのかもしれないな。
もっとも、それなら1年戦争の時から俺達と友好的に接してきたゴップの方がより有能な人物という事になるのだろうが。
そんな風に思いつつ、俺はニナとの会話を続けるのだった。