転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4137話

「これは……シミュレータか?」

 

 俺がルセットに連れて来られたのは、とある部屋。

 普通、シミュレータとかは専門の部屋にあるか、あるいは格納庫にあったりする事が多い。

 だが、俺が今いる部屋は、研究室といった感じの部屋だ。

 恐らくだが、試作3号機の開発……というか、設計とかをこの部屋でやっているのだろう。

 

「ええ、そうよ。……アクセル中尉は一応知ってると思うけど、念の為に説明させて貰うわね。連邦軍は1年戦争においてジオン軍と戦った。MSとの戦闘が圧倒的に多かったけど、幾つかMAとの戦闘も経験している」

「一番有名なのは、ソロモンでのビグ・ザムだろうな」

 

 俺がドズルを倒したというのもあるが、あの戦闘は印象深い。

 それにビグ・ザムが倒されるまではそんなに時間は経っていないものの、その短時間で連邦軍が受けた被害はかなりのものだ。

 

「そうね。連邦軍が受けた被害が大きかったのは間違いないわ。また、それ以外の場所でもMAとの戦闘が行われているわ。オーストラリアとかでも未確認のMAとの戦闘があったらしいし」

「……そうだな」

 

 ルセットの言葉に、俺はそう返すしかない。

 何故なら、オーストラリアでジオン軍が使ったMAというのはライノサラスで、それと一緒に荒野の迅雷の異名を持つヴィッシュやその仲間達をハワイに連れていったのは俺だ。

 今ではハワイでルナ・ジオン軍として行動している。

 

「そんな訳で、連邦軍としてはMAを倒すにはMAと考えた訳ね」

「それについては、色々と言いたい事があるんだが」

 

 1年戦争において、MAを倒したのはMAではなくMSの方が多いとか、それに現時点においてMAを多用しているのは、宇宙ではケリィの乗るヴァル・ヴァロを始めとして、ビグロやビグロマイヤーのMA部隊があったり、地上ではハワイにアプサラスがあったりと、MAは寧ろルナ・ジオン軍の専売特許になりつつあるとか。

 また、水天の涙の時は俺もゼロ・ジ・アールというMAに乗っていたし。

 そう考えれば、試作3号機というのは、実は連邦軍再編計画の1つであると同時に、対ルナ・ジオンを見据えてのものなおかもしれないな。

 

「そう? アクセル中尉の言いたい事は後で聞くから、今は私の話を聞いてね。そんな訳で、試作3号機はMA的な性格を持つけど、1年戦争中のMAとの戦いでは接近すると、MAはMSを相手にろくな対抗手段がなかったの」

 

 どうやら俺の言いたい事の1つについては、しっかりと把握していたらしい。

 

「だからこそ、近接された時の対処もあって、MAにMSを合体させるというのが、試作3号機のコンセプトよ」

「……で?」

「アクセル中尉には、MAの完成ユニット……試作3号機のコア部分である、ステイメンのシミュレータをやって欲しいの」

 

 ステイメン? と一瞬疑問に思ったが、試作1号機のゼフィランサスと同じような名称だろう。

 

「つまり、試作3号機……ステイメンそのものはMAじゃなくて、普通のMSな訳だ」「ええ、そうよ。性能も……こう言ってはなんだけど、ニナのゼフィランサスと同等以上だという自負はあるわ」

 

 ゼフィランサスと同等以上か。

 ゼフィランサスそのものはまだ完成していないものの、俺がテストパイロットに協力してるというのもあって、開発の進捗状況は悪くないらしい。

 当然ながら、その性能もかなりのものだとか。

 少なくても、現在連邦軍で運用されているMS……そしてジオン軍は勿論、ルナ・ジオン軍のMSと比べても、性能は上だとか。

 それが本当かどうかは俺にも分からない。

 ニナの性格を考えると、自分の開発しているガンダムがトップでないのは許せないと、そのくらいは普通に思ってそうだし。

 ……そういう意味では、ルセットが言うステイメンがゼフィランサスと同等の性能を持っているというのは、どうなんだろうな。

 シミュレータを前にしてそう断言出来る以上、相応にステイメンの性能に対して自信があるのは間違いないだろうが。

 とはいえ……それならコアMSはステイメンじゃなくて、ゼフィランサスでもいいのでは? と思わないでもなかったが。

 ステイメンはMAをコントロールするユニット……つまり、シャドウミラーではファブニールに近い存在だろう。

 それならゼフィランサスでも問題ないと思うんだが。

 あるいは、システム的な面の影響か。

 MAをコントロールする以上、当然ながら普通のMSと一緒という訳にはいかない筈だ。

 専用のシステムが必要だし、それがゼフィランサスにはないからとか?

 ないならないで、システムを追加すればいいだけのようにも思えるが。

 まぁ、その辺については俺が考えるような事でもないか。

 

「ステイメンの性能は分かった。それで、シミュレータでステイメンの性能を経験しろと?」

「ええ、そうよ。けど……これはあくまでもデータ上での事だけど。まだ実機は組み上がってないから」

「分かった。……もっとも、ニナはシミュレータがあまり気に入ってはいないみたいだったが。俺が最初にシミュレータに乗った時も、シミュレータだとGとかがないから、本当にMSに乗った時には役に立たないとか言ってたし」

 

 ニナにとって、あれは負け惜しみでしかなかったのだろう。

 俺の外見から、ゼフィランサスのテストパイロットとして相応しくないとか、技量不足だとか……後は、もしかしたらだが、本当に少しだけ俺がゼフィランサスに乗った時にGで悪影響が出るのではないかと、そんな風に思っての行動だった可能性もあるか。

 もっとも、その後でフィフス・ルナに駐留するMS隊との模擬戦によって、俺の実力はしっかりと示す事が出来たし、それはニナも納得するしかなかったのだが。

 

「そうね。お陰で私はアクセル中尉の腕を疑わなくていいわ。不満を抱いたニナに実力を納得させるという難易度の高い仕事をしてるんですもの」

 

 それはどうなんだ?

 そう思わないでもなかったが、すぐにその考えを否定する。

 ニナの性格を考えれば、そのようなことを言われてもおかしくはないのだから。

 何だかんだと、俺も既にニナとは1年近い付き合いだ。

 そうである以上、ニナの性格については十分に理解している。

 ニナは、一言で言えば重度のMSオタクだ。

 それだけに、MSについて深い理解を持ってはいるものの、一度そうだと決めたらすぐにその考えを翻すようなことはない。

 同じクラブ・ワークスに所属するルセットだからこそ、ニナの性格についても十分に理解しているのだろう。

 そのニナが俺の腕を最初は疑い、そしてやがて納得した。

 これはルセットに俺の実力を証明させるという意味では、これ以上ない事だったのだろう。

 

「納得させられているようでよかったよ」

 

 ルセットにそう返し、俺は改めてシミュレータを見る。

 

「それで、このシミュレータでステイメンを動かすという事だったが、何でまた急にそんな事を考えたんだ?」

「あら、別に急に考えた訳じゃないわよ? アクセル中尉が来ると聞いた時から、そのつもりだったし」

 

 それはそれでどうなんだ?

 そう突っ込みたくなったが、ルセットの様子を見る限りでは俺がここで何を言っても無意味だろうというのは容易に想像が出来た。

 俺が実際に――シミュレータ上でだが――ステイメンを動かさない限り、納得はしないだろうと。

 それに……俺もまた、ゼフィランサスと同等、あるいはそれ以上の性能を持つというステイメンに興味があったのも事実。

 試してみるのもそう悪くない選択肢だろう。

 

「分かった。俺もステイメンに興味がないと言ったら嘘になるしな」

 

 俺の言葉にルセットは満面の笑みを浮かべる。

 その辺の男なら、一目見ただけで虜になってもおかしくはないような、そんな満面の笑みを。

 この美貌は、やっぱりクラブ・ワークスに所属するに相応しいものがあるよな。

 

「ステイメンのデータは、シミュレータの方で大体確認出来るようになっているから、早速乗ってみてくれる?」

 

 そうして俺はシミュレータに乗り込み、ステイメンのデータを確認していく。

 その中で少し……いや、大分驚いたのは、ガンダムであるにも関わらず頭部バルカンがなかった事だろう。

 

「おい、ルセット。このステイメンは頭部バルカンがないのか?」

『ああ、その件ね。……設計する時に色々と頑張ってみたんだけど、オーキスと合体した時の火器管制システムを考えると、普通よりもセンサーシステムを重視しないといけなかったのよ。結果として、頭部バルカンを搭載する余裕がなくなったの』

「それは……」

 

 シミュレータの内部にある通信機から聞こえてきたルセットの説明は、納得出来るものだったのは間違いない。

 だが同時に、頭部バルカンがないというのは痛い。

 頭部バルカンは決して強力な武器という訳ではない。

 だが、ミサイル等の迎撃であったり、敵に対する牽制、あるいは装甲の薄い車両とかに対しては有効な威力を発揮したりと、使い勝手のいい武器なのも間違いない。

 連邦系のMSの大半に頭部バルカンがあるのは、そのような理由があってのものなのだから。

 また、胴体とかと違って容易に敵の方を向く事が出来るというのも、この場合は大きい。

 それがないとなると……連邦軍の軍人が操縦する時、少し戸惑うかもしれないな。

 とはいえ、ルセットの説明には納得するしかないところも多かったのは事実だが。

 ステイメンは、あくまでもMA……オーキスだったか。それと合体し、MAとして運用するのを前提としている。

 そしてMAの弱点である、近接戦闘の時はステイメンとしてオーキスから離れ、行動するのだろう。

 つまり、あくまでもMAとして活動する方が本命な訳だ。

 それだけに、MSの頭部バルカンとMAとして運用する際のセンサー類のどちらを優先するのかと言われれば、やはりMAとなるのだろう。

 

「仕方がない、分かった。けど……MSとして運用する事を考えると、頭部バルカンは無理にしてもミサイルとか牽制とかに使える武器の類はあった方がいいんだけどな」

『現役のパイロットとしては、そう思うのね。……ただ、ステイメンに設計変更を加えるのはちょっと難しいと思う。今は諦めてちょうだい』

 

 ルセットの声音は、残念そうな、そして悔しそうな色がある。

 俺がそこまで頭部バルカンに拘るとは、思っていなかったのだろう。

 

「分かった。まぁ、ないものは仕方がないか」

 

 とはいえ、MAとして活動する上でセンサー類を充実させなければならなかったと言われれば、俺としてもそれに反対は出来ない。

 なので、それ以上は不満を口にせず、MSの確認をしていく。

 頭部バルカンがないのと同じくらい……いや、ある意味ではそれ以上にステイメンの特徴となっているのは、腰にあるバインダーだ。

 オーキスと合体するのに使う部位らしいが、それだけではなくMSとして運用する上では、手や足と同様にAMBAC肢としても使えるらしい。

 これによって……おいおい、本当か?

 運動性についてはゼフィランサスを上回るらしい。

 少なくても、データとして表記されている数値は、そうなっている。

 このバインダー……オーキスとの合体機能を排除して、普通にMSが使うバインダーとしてゼフィランサスに装備してもいいんじゃないか?

 そう思わせる程に、AMBAC肢としては高性能だ。

 何なら、このバインダーの先端にスラスターを付けるとか、もしくは何らかの武器を内蔵するとか、推進剤を入れるとか。

 そんな感じでも使えそうだし。

 そう思いながら、ステイメンの性能を確認していく。

 とはいえ、頭部バルカンがないのと腰の左右にバインダーがある以外は、一般的なMSだ。

 勿論ガンダムである以上、かなり高性能だが。

 ん? ああ、なるほど。MAとして使う関係上、ステイメンも宇宙用MSで、地上での運用は考えられていないのか。

 これは連邦系のMSとしてはちょっと珍しいな。

 ジオン系なら、リック・ドムや高機動型ザク、あるいはジオングといったように宇宙用MSはそれなりにあるんだが。

 逆に地上用MSなら、陸戦型ガンダムのように連邦系にもそれなりにあるんだが。

 そんな風に考えつつ、ステイメンのデータを確認していく。

 今回のシミュレータは、あくまでもステイメンとしてのものだ。

 オーキスと合体し、MAとして動かすといったことはしない。

 それが少し残念だったが。

 とはいえ、俺の操縦適性は基本的にMAよりもMSなんだよな。

 重装フルアーマーガンダム7号機やゼロ・ジ・アールのように、MAやMA的な機体も操縦しようと思えば出来る。

 出来るが、MAはどうしても運動性に劣ってしまう。

 それが個人的にはあまり好ましくない。

 とはいえ、それでも操縦をするのが絶対に嫌だという訳ではないのだが。

 また、自分でもどうかと思うが、操縦適性はMSだし、運動性で劣るMAはどうかと思うのと同時に、純粋にMA系統を好むという俺の嗜好もあったりする。

 そういう意味では、ステイメンだけなのは残念だと思いつつ、データを確認し終わり、シミュレータを起動するのだった。

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