転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4138話

 シミュレータで動かすステイメン。

 なるほど、確かに運動性という意味ではゼフィランサスを上回っている。

 まずは特に何か敵と戦ったりするのではなく、宇宙空間を自由に動き回っているのだが、これは悪くない。

 普通にこのステイメンを汎用型として使っても……いや、宇宙用MSだから、駄目か。

 もしステイメンを汎用機として使うのなら、地上でも使えるようにするのが最適だし。

 もしくは、宇宙用の汎用MSとしてはありか?

 実際、連邦軍が現在敵として認識しているジオン軍残党は、1年戦争中に多くの者が宇宙に脱出した事から、宇宙にいる者達の方が多い。

 勿論、地上に残ったジオン軍残党もいるだろう。

 水天の涙の時は、ジオン軍の残党とかなりの激戦だったし。

 それにアフリカは元々反連邦の者達が多く、それもあって1年戦争中はジオン軍が半ば制圧していた。

 そんな諸々の情報を考慮すると、アフリカにはジオン軍の残党が多数いるだろう。

 

『アクセル中尉、ステイメンはどう?』

 

 ルセットの声で俺は改めてステイメンの操縦に専念する。

 

「悪くない。……いや、かなり高性能だな」

 

 これはお世辞でも何でもない。

 ルナ・ジオン軍でエース機や隊長機として使われているギャン・クリーガーも、かなり高性能なのは間違いない。

 だが、このステイメンとギャン・クリーガーを比べると、間違いなくステイメンの方が高性能だ。

 ギャン・クリーガーが勝っているところは……ビームランスとシェキナーによる攻撃力だけか?

 ギャン・クリーガーの象徴とも言えるビームランスは、近接戦闘では圧倒的な攻撃力を持つ。

 連邦軍のペイルライダー計画の機体で使われていたシェキナーは、ジャイアントガトリング砲、メガビームランチャー、マイクロミサイルランチャー3つの複合兵装だ。

 ビームランスとシェキナーはどちらも大型の兵装であるのは間違いなく、そういう意味では使いこなすのは難しい。

 だからこそ、ギャン・クリーガーはエースや隊長が使うMSという事になっているのだから。

 そんな武器なら、命中すればステイメンも撃破する事が出来るだろう。

 それに対して、ステイメンの持つ武器は標準的なビームライフルとビームサーベルだ。

 あ、いや。一応バズーカがあるな。盾も。

 それにビームライフルとかも最新鋭MSだけあって1年戦争で使っていた時と比べると間違いなく上だ。

 Eパック方式なのも、この場合は大きいだろう。

 それでも……ぶっちゃければ、武器だけの違いならステイメンがビームランスやシェキナーを持てば、それで解決する。

 それに純粋な武器の威力というだけなら、ステイメンのある意味で本体とも言うべきオーキスには、ギャン・クリーガーよりも高性能な武器が揃っている訳だし。

 

『ふふん、そうでしょう』

 

 俺の言葉に自慢げな様子の声が聞こえてくる。

 ルセットにしてみれば、それだけ自分の開発したステイメンに自信を持っているのだろう。

 ニナに対するライバル心もあるのかもしれないが。

 まぁ、コスト度外視で開発したのだから、高性能になるのは当然かもしれないが。

 あ、いや。別にコスト度外視という訳ではないのか。

 ガンダム開発計画を任されているとはいえ、そこには当然ながら相応の予算があるんだろうし。

 

「反応速度も……まぁ、悪くはないと思う」

 

 これについては、そう言うしか出来ない。

 混沌精霊である俺の反応速度は、それこそ文字通りの意味で人外のものだ。

 純粋に俺の反応速度に対応出来るのは、T-LINKシステムだけだろう。

 とはいえ、それはステイメンを開発したルセットが悪い訳ではない。

 そういうものだと、加減をして操縦する必要があるのだ。

 ……それこそ、もし何らかの理由で俺の反応速度についてこられる操縦システムがあったとして、それを採用したMSは普通のパイロットは勿論、それこそエース級のパイロットであっても難しい。

 エースの中のエース、それこそアムロやシャアといった者達が、何とか操縦出来るといった感じになってもおかしくはなかった。

 そういう意味では、最新鋭機のステイメンでも反応速度がこの程度というのは、そう悪い話ではない。

 

『ちょっと、何だかあまり良い反応じゃないけど……もしかして、反応速度に問題があるの?』

 

 てっきり反応速度の件でも俺は問題ないと言うと思っていたのか、ルセットは俺の反応に不満そうな様子を見せる。

 

「あー……その件については、ニナから話を聞いてないか? 自分で言うのも何だが、俺の反応速度は非常に速い。それこそ一般的なパイロットと比べると決定的なまでにな」

 

 新型パーツを組み込んだパワード・ジムのテストで、人間離れした数値を出して、その結果ニナを怒らせてしまった事があった。

 いや、あれは怒らせたというのとは少し違うかもしれないが。

 ともあれ、そのような状況だけにステイメンの反応速度は、端的に言えば物足りない。

 ただ、だからといって限界まで俺の反応速度に対応出来るように調整すると、このステイメンを連邦軍に引き渡した時、まともに操縦出来なくなってしまう。

 ……それでいながら、俺の反応速度にも対応出来ないのだから、良い事は何もない。

 

『ああ、そう言えば……なら、反応速度は今のままでいいのかしら?』

 

 ニナから……もしくはポーラからかもしれないが、俺の反応速度について聞いたのを思いだしたらしく、ルセットは落ち着いたらしい。

 

「普通のパイロットが操縦をするのなら、それで構わないと思うぞ」

『なら、アクセル中尉が操縦する場合は?』

「……まぁ、操縦出来ないことはないから、安心して欲しい」

 

 元々、俺にとってMSの操縦は……いや、ニーズヘッグ以外の操縦は、程度の差こそあれ、そういう感じなのだ。

 であれば、ステイメンも別に普通に操縦する上で問題はない。

 

『むぅ……』

 

 ルセットらしからぬ声が出る。

 ルセットも今の俺とのやり取りから、俺がステイメンを操縦するのに手加減をしていると理解はしたのだろう。

 

「それで、これからどうする? 大体機体の性能については分かったけど」

 

 実際に操縦してみて分かったのは、腰の左右にあるバインダーが当初予想したよりもいいという事だ。

 それこそ機体を不規則に動かすにも、AMBAC肢として非常に大きな効果を発揮している。

 だからこそ、俺としてはゼフィランサスにもこのバインダーを装備して欲しいと思ったのだが。

 ……ニナの性格を考えると、それが難しいのは明らかだったが。

 純粋にゼフィランサスを自分のガンダムと認識してるからというのもあるだろうが、ニナはMSを開発する技術はクラブ・ワークスの中でも突出している。

 そんなニナが、ステイメンのバインダーについては知らない訳がない。

 なのに、実際にはそれを採用しないのは、何らかの理由があるのは間違いないだろう。

 俺はMSの操縦とかについてはともかく、具体的な知識となるとそこまで詳しい訳ではない。

 何か俺には思い浮かばないような理由によって、ニナがバインダーを採用しないという可能性は十分にあった。

 それでも俺が思い浮かぶとなれば……ステイメンが宇宙用MSなのに対して、ゼフィランサスは宇宙と地上の双方に対応している。

 宇宙でならともかく、地上ではバインダーはあまり使い物にならないと思われたとか?

 スラスターで空を飛ぶ……いや、跳ぶか。その時は、空中でバインダーをAMBAC肢として使えない訳でもないんだろうが、下手に跳躍すると、それこそ敵にとっては標的にしかならないしな。

 もっとも、これはあくまでも俺が思いついた内容でしかないので、もっと何か別のバインダーを採用しない理由があるのかもしれないが。

 ……ニナの事だから、ルセットのアイディアだから使いたくないとかも普通にありそうなのが怖いが。

 ただ、MSに情熱を掛けている以上、そういう理由ではないと信じたい。

 

『そうね。なら、デブリの中を抜けるというのはどう? パワード・ジムでは、それでかなりの数字を出したんでしょう?』

「分かった」

 

 ルセットにしてみれば、ゼフィランサスよりも運動性の高いステイメンだけに、運動性が大きな意味を持つデブリ帯の突破を持ち掛けてきたのだろう。

 ……もっとも、このデブリ帯の突破、MSは運動性が重要だが、パイロットの場合はそれ以上に反射神経や瞬時の思考が大きな意味を持つのだが。

 勿論、MSでデブリ帯を突破する時も、速度を出さなければそこまで難しくはない。

 だが、全速力でとなると、そんな事が出来るのはMSパイロットの中でも本当に一握りの者達だけだろう。

 まぁ、実機でやるのではなく、シミュレータでやるのだから、そういう心配はしなくてもいいのだろうが。

 

『じゃあ、いい? 設定を変えるわよ?』

 

 その言葉と共に、映像モニタに表示されるのが何もない宇宙空間からデブリ帯に変わる。

 

「さて、じゃあ……行くぞ」

 

 その言葉と共に、ステイメンのスラスターを踏み込む。

 ステイメンが前に進み、映像モニタに表示されたデブリ……岩塊が近付いてくるのを、AMBACを使って回避する。

 大きな岩塊である以上、わざわざスラスターを使うまでもないと判断したのだ。

 それにこのステイメンの特徴は、やはり腰の左右にあるバインダーだ。

 AMBAC肢としても使えるこのバインダーは、こういう時にこそ役に立つ。

 AMBACというのは、スラスターを使わない……つまり、推進剤を必要としない。

 MSというのは、宇宙では特に推進剤を多く必要とする。

 それをどれだけ節約出来るのかは、宇宙でMSを操縦する上で非常に大きな意味を持つ。

 何しろ推進剤がなくなれば基本的にMSは動けなくなる。

 敵の前でそのような状況になれば、的にしかならない。

 もしくは敵がいない場所でもこのようなデブリの中で動けなくなれば、最悪岩塊にぶつかって死にかねない。

 そんな訳で、推進剤を使わずにAMBACで動くというのは非常に大きな意味を持つのだ。

 

「っと」

 

 急速に近付いて来た、MSの頭部程の大きさの岩塊をAMBACを使って回避。

 次に跳んできたのは、MSより少し小さいくらいの岩塊で、これはAMBACだけでは回避出来ないので、スラスターを使って回避する。

 上、上、下、下、左、右、左、右……そんな風に次々とこちらに向かって飛んでくる岩塊を回避していく。

 

『嘘でしょ』

 

 信じられないといったルセットの声が聞こえてくる。

 ルセットにしてみれば、まさかここまで次々とデブリを回避していくとは思ってもいなかったのだろう。

 一応ニナから俺の事については聞いていた筈だが……まさに百聞は一見にしかずって奴か。

 そんな風に思いながら、スラスターとAMBACを使い、こちらに向かってくるデブリを回避していく。

 

『なら……これはどうにか出来るかしら?』

 

 そんなルセットの言葉と共に、急にこちらに現れたのは岩塊。

 だが、当然ながらこのような状況でやってくる岩塊なのだから、普通の岩塊の筈もなかった。

 それは、大きな……それこそサラミスくらいの大きさはあるだろうと思しき岩塊。

 いや、既に小惑星と言ってもいいのではないかと思えるような、そんな大きさだった。

 ……サラミス級と同じ大きさで小惑星というのは、少し大袈裟か?

 ともあれ1つだけ分かるのは、いきなり目の前……よりは少し遠いが、そんな場所に現れた岩塊がこちらに向かって来ているという事だけだった。

 これがいきなり現れたのではなく、もっと遠くにある時に見つけることが出来ていれば、スラスターを使って大きく回避するといったことも出来ただろう。

 だが、いきなり目の前に現れては、そんな事が出来る筈もない。

 

「けど!」

 

 咄嗟に機体の前部分にある幾つものスラスターを全開にし、移動速度を下げる。

 下げる……が、それでもステイメンが高い機動力を持っているのが、この場合は悪い方向に発揮されてしまう。

 それでもステイメンはUC世界のMSにおいては最高峰の性能を持っているのは間違いなく、手足を岩塊に触れさせる直前にAMBACの要領でバインダーを動かし、岩塊にぶつかる衝撃をほぼ殺す事に成功する。

 そのままステイメンの運動性を活かし、岩塊の表面を転がるように……いや、滑るようにか。そうして衝突した衝撃を殺していく。

 MSの四肢を使っての、岩塊の表面の移動。

 少しでも操作をミスれば、岩塊の質量と速度によってステイメンは致命的な損傷を受ける。

 だが、俺はそれを完璧にこなし、ステイメンの四肢やバインダーの受けるダメージを最小限にし……そして岩塊の端まで到着したところで、岩塊の端をステイメンで蹴ると、一気にその岩塊から距離を取る。

 

『嘘でしょ……まさか、こんな事が出来るなんて……』

 

 ステイメンの挙動を確認していたルセットの唖然とした声が聞こえてくる。

 俺はそれに笑みを浮かべつつ、シミュレータを終えるのだった。

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