転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4139話

「信じられないわね」

 

 シミュレータから出た俺を見て、ルセットはそんな風に言ってくる。

 顔立ちが整っており、理知的な美人と評しても間違いではないルセットだったが、今のルセットからはそんな理知的な様子は見えない。

 それだけ、ルセットは驚いていたのだ。

 

「ステイメンの性能があってこそだけどな」

 

 そう言うと、少しだけ驚いた表情を浮かべるルセットだったが、すぐにその表情は嬉しそうな笑みとなる。

 自分の開発したステイメンを評価されて嬉しかったのだろう。

 もっとも、俺が操縦したのはあくまでもシミュレータだ。

 ゼフィランサス同様、実機はまだ組み上がっていない。

 それだけに、もしステイメンの実機が組み上がっても、俺がシミュレータで操縦したように動かせるかどうかは、分からない。

 設計上では問題がなくても、思いも寄らない何らかの理由によって、当初の予定通り動かないというのは、そう珍しい話ではないのだから。

 

「ありがとう。そう言って貰えると嬉しいわ」

 

 素直に感謝の言葉を口にするルセット。

 この辺り、ニナと違うよな。

 ニナの場合、素直に礼を言うのは……出来ない訳ではないのかもしれないが、難しいと思う。

 そんな風に思っていると、ルセットは何かを考えるようにしながら口を開く。

 

「けど……シミュレータとはいえ、初めて乗ったステイメンをあれだけ使いこなすなんて」

「初めてとはいえ、MSに違いはないだろ」

 

 UC世界のMSは基本的に操縦方法は共通してる。

 勿論、全てが完全に共通しているといった訳ではない。

 中には微妙に違うところもある。

 だが、それでも大きく見た場合、それは変わらないのだ。

 だからこそ、俺にとってステイメンを操縦するのはそう難しい話ではない。

 それこそシミュレータだからというのもあるし、最初の方でMSを軽く動かしてみたりもしたし。

 

「……それが出来ないから、機種転換訓練とかあるんだけど」

「その辺は慣れだな」

「出来ればアクセル中尉には、ステイメンの専属テストパイロットになって欲しいくらいよ」

「無茶を言うな、無茶を。……とはいえ、俺はガンダム開発計画のテストパイロットとして派遣されてるしな。そういう意味では、ステイメンのテストパイロットをやっても問題はないと思うが」

「じゃあ!」

 

 俺の言葉に嬉しそうな様子のルセットだったが、俺はそれに対して首を横に振る。

 

「お前が言いたい事は分かる。分かるが、だからといってラビアンローズで開発しているステイメン……いや、オーキスと合わせてデンドロビウムだったか? そのテストパイロットをするのは難しいのも事実だ」

「えー……」

「デンドロビウムの開発が、このラビアンローズじゃなくてフィフス・ルナでやっていれば話は別だったんだけどな。……というか、何でラビアンローズで開発してるんだ?」

 

 純粋に疑問を抱く。

 同じガンダム開発計画の機体である以上、わざわざ別の場所で開発をしなくても、同じ場所で開発すればいい。

 そうなれば、共通する部品を融通するといったことも出来るし、データのやり取りについても直接出来る。

 そんな中で、何故わざわざラビアンローズで開発をしているのか、俺には分からなかった。

 

「連邦軍とアナハイムにも色々とあるのよ。それに……フィフス・ルナはそれなりに大きい小惑星基地だけど、それでも限界はあるでしょう? デンドロビウムの大きさを考えると、別の場所の方が丁度いいというのも事実だし」

 

 そういうものか?

 そう思ったが、色々とあるというルセットの言葉に、これ以上突っ込むのは止めておく。

 下手に首を突っ込んだ結果、面倒に巻き込まれるのは絶対にごめんだった。

 

「そうか。……それならそういう訳で、俺がデンドロビウムやステイメンのテストパイロットをやるのが難しいのは間違いない」

「……残念ね」

 

 本当に、心の底から残念そうな様子で呟くルセット。

 ルセットにしてみれば、本気で俺にテストパイロットをやって欲しかったのだろう。

 ステイメンのテストパイロットなら、フィフス・ルナで出来そうな気もするが。

 オーキスはそのMAとしての大きさから、どうにかするのは無理なのだろうが。

 ……いや、色々と事情があるって話だったしな。

 ステイメンもその事情については関わっていると考えた方がいいか。

 

「テストパイロットは無理でも、フィフス・ルナに来れば何かアドバイスしたりとかは出来ると思う。……まぁ、俺のアドバイスがいるかどうかは微妙なところだが」

 

 俺はMSの操縦には自信があるものの、MSの開発についてはそこまで詳しい訳ではない。

 大雑把な内容とかそういうのは分かるが、それはMSパイロットなら多くがそうだろう。

 だからこそ、俺のアドバイスをルセットが欲しがるかどうかは微妙なところだった。

 

「ありがとう。何かあったらアドバイスを貰いに行くわね。実際にMSを操縦する人じゃないと分からない事もあるでしょうし」

 

 そういうのは、それこそ本来のテストパイロットに聞くべきでは?

 そうも思ったが、わざわざこうして俺に聞きたいと言ってきたのだから、それについてわざわざ突っ込む必要もないだろう。

 

「分かった。その時に俺がいたら、話に乗るよ」

「……そう言えば、ニナやポーラが言ってたわね。アクセル中尉はフィフス・ルナにずっといる訳ではないって」

「ああ、月でやる事があったしな」

 

 実際にはオルフェンズ世界での騒動であったり、もしくはペルソナ世界に顔を出したりとか、そういう理由でなのだが。

 ただ、それは言える筈もない。

 なので、今はこう返しておく。

 

「ただ、忙しかったのも一段落したから、これからは今までよりも頻繁にフィフス・ルナには行けると思う。ラビアンローズにはちょっと難しいが」

 

 オルフェンズ世界での騒動が一段落したので、暫くはガンダム開発計画に集中出来るだろう。

 だからといって、ずっとフィフス・ルナにいる訳ではないが。

 何かあったら、そっちに顔を出す必要があるし。

 

「そう。……そういう意味では、丁度よかったのかもしれないわね。どの機体も、そろそろ組み上げの時期に入ってるし」

「オーキスは真っ先に組み上げに入ってるんじゃないか?」

 

 MA部分――正確には違うが――である以上、その大きさはMSよりも上だ。

 そうである以上、ステイメンを組み上げるよりも前に、オーキスの製造が進んでいてもおかしくはない。

 

「そうね。とはいえ、武器の選定がまだの場所もあるけど」

 

 どうやらそういうものらしい。

 まぁ、MAというのは極論すると移動砲台的な感じな訳だし、そういう意味で搭載する武器を決めるというのはおかしくはないと思う。

 そうして俺は暫くルセットと話をしていたのだが、不意に部屋の扉がノックされる。

 

「あら、誰かしら。余程の用件がない限り、この部屋に来ないように連絡はしておいたんだけど」

 

 ルセットがそう言うが、そうだったのか?

 ……というか、もし俺がそういうのに慣れていない場合、勘違いして暴走していたのではないだろうか。

 そう思ってしまうのは、きっと俺だけではないだろう。

 

「あら、所長? ……どうぞ」

 

 扉が開くと、そこにいたのはルセットが言うように所長のクレナだった。

 

「ごめんなさい、ルセット。少しアクセル中尉に用事があるのだけど」

「アクセル中尉に? 分かりました、どうぞ」

「いえ、この件はルセットも知らない方がいいでしょう。……アクセル中尉、よろしければ2人だけで話せませんか?」

「俺とか? まぁ、別にいいけど」

 

 このタイミングでクレナが顔を出したという事は、恐らく……いや、ほぼ間違いなく俺が持ってきたディスク、ニナの用意したディスクが理由だろう。

 とはいえ、あのディスクにはそこまで重要な情報が入っていた訳ではない。

 ビームサーベルをビーム砲として使うというのは、それなりに変わり種のアイディアではあるだろう。

 だが、それは元々ゼフィランサスで採用されていた内容だ。

 であれば、わざわざそれを見てクレナがそこまで驚くといった事は考えられない。

 なら、何が理由なのか。

 考えられるとすれば……装備する場所か?

 試作4号機をベースとしたMSは、腕の外側に機関砲を装備するといった事をニナが言っていた。

 だからこそ俺は腕の内側の部分にビームサーベル兼ビーム砲を装備するというアイディアを出した。

 ……とはいえ、それでクレナがここまで派手に反応する理由は分からない。

 一体何があった?

 そう疑問を抱くも、まずはクレナと話をしてみる必要があった。

 そんな訳で、俺はルセットの部屋からクレナに案内され、別の部屋に向かう。

 クレナに案内された部屋は、ルセットの部屋かえらそれなりに離れた場所にあった。

 クレナがラビアンローズに来て仕事をする執務室らしい。

 

「座ってちょうだい」

 

 来客用のソファに座るように促され、俺はソファに座る。

 

「それで? 何でわざわざここまで連れてきたんだ? あのディスクには別にそこまで重要な何かが入っていた訳でもないだろう?」

「そうね。発想の転換としては悪くなかったけど、少し考えれば思いつくような内容だったわ」

 

 いわゆる、コロンブスの卵といったところか。

 俺にしてみれば、そこまで言う程か? と思わないでもなかったが。

 

「なら、何で?」

「アイディアはいいけど、装備する場所がちょっとね」

 

 ああ、それなら納得出来る。

 俺の話を聞いた時、ニナも問題にしていたしな。

 

「腕の外側に機関砲を装備するんだったか?」

「ええ。そしてアクセル中尉が持ってきたディスクによると、ビームサーベルは両手の内側にという事だったわね」

「問題となっているのは、やっぱり両方の武器を同時に使うのは難しいという事か?」

 

 腕の外側の機関銃と、内側のビーム砲。

 どちらも使うには、手の形とかが問題になってくる。

 下手に同時に使おうものなら、それこそ機関砲かビーム砲でMSの手が破壊されてもおかしくはなかった。

 そうならないようにするにはどうするか。

 クレナが俺を連れて来たのは、そんな理由からといったところか?

 

「そうなるわね。分かってるなら話は早いわ」

「俺としては、設計の方でどうにかして欲しいと思ったんだが」

 

 ニナとの話では、それが一番可能性が高いという事になった筈だった。

 ……いや、正確にはそれしか考えられないという事だったか?

 

「設計の方と言われても、MSはバランスが大きいのよ。最適な設計……私はそう思って開発している中で、腕の一部とはいえ変更してとなると、最悪MS全体の重量バランスも設計しなおさなきゃならなかったりするの」

「それは……」

 

 クレナの言葉はかなり意外だった。

 そもそもの話、MSの中にはゲルググのようにバックパックを別の物に変える事により、MSとしての性格も変わってしまうといった物もある。

 あるいは足に使い捨てのミサイルポッドを装備させたザク……J型があったりといったように。

 クレナの話が事実なら、そういうMSであってもも同じようにバランスが崩れるという事になるのではないか。

 

「ゲルググとかは違うのか?」

「そういうのは、最初からそれを想定した作りになっているわ。それにバランスというのはあくまでも開発者目線での話でもあるから、実際に運用する際には機体の重量バランスが崩れていても、設定で調整出来たりするし、パイロットがそれを補ったりも出来るわ」

「なら……」

 

 なら、問題はないだろう。

 そう言おうとしたのだが、クレナは俺が何を言おうとしているのかは理解した上で、言葉を続ける。

 

「それでも、そのMSを開発した人が考えた最良のバランスや重量配置が崩れるのは事実なの。……それを聞いた上で、改めて答えてちょうだい。設計の変更をしてまで、ビームサーベルを手の内側に装備する必要はあるの? それも、兼用のビームガンは威力的にかなり問題があって、せいぜいが目眩まし……いえ、それよりはマシだけど、とにかく命中させても相手に致命的なダメージは与えられない。そんな武器でも」

「そうだな。俺としてはやって欲しいと思う。今は威力も低いかもしれないが、この先それは改修されるかもしれないし」

 

 ビーム砲の威力が低いのであれば、実戦ではそこまで使うという事はないかもしれない。

 ドムの拡散ビーム砲についても、目眩まし程度にしか使えなかったらしいが、ニナの説明によるとビーム砲もそんな風に威力不足ではある。

 ……ただ、ビーム砲はただのビーム砲であり、拡散ビーム砲のように的確に目眩ましが出来るとは思えない。

 そして同時に、クレナに言ったように技術が上がればビーム砲の威力も高くなるだろう。

 もしくは、動力炉をアナハイムの用意したものではなく、ルナ・ジオンで使っている動力炉に換装するとか。

 MSの動力炉である核融合炉の技術は、現時点においてルナ・ジオンが最も高い。

 この辺はギニアスの研究成果だな。

 

「じゃあ、アクセル中尉はどうしてもビーム砲を腕の内側に装備したいと、そう言いたいのね?」

 

 その言葉に、俺は頷きを返すのだった。

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