転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4143話

「え? それは本当か?」

 

 俺の問いに、セイラは頷く。

 ガンダム開発計画の関係もあって、最近はUC世界にいる事の多い俺だが、だからといってフィフス・ルナだけにいる訳ではない。

 ……というか、今のところは俺にやるべき仕事がないと言うべきか。

 ガンダム開発計画で開発されるゼフィランサス、サイサリス、デンドロビウムに使う新型パーツの運用やデータ取りに使われていたパワード・ジムは、地上での性能調査の為、オーストラリアにあるトリントン基地にある。

 そしてフィフス・ルナにあるゼフィランサスやサイサリスは、現在製造中。

 そうなると、俺に出来るのは精々がゼフィランサスやサイサリスのシミュレータくらいだ。

 しかもそのシミュレータも、サイサリスの方はまだ殆ど出来ておらず、ゼフィランサスの奴しか出来ない。

 またシミュレータは所詮シミュレータでしかない。

 シミュレータでのゼフィランサスの運用方法が実機でも使えるかとなると、それは微妙なところでもあったりする。

 きちんとシミュレータで訓練をするとなると、それこそゼフィランサスが完成して、それを実際に動かして見せて、そのデータをシミュレータに入力したら……という事になる。

 そんな訳で、シミュレータは使えるものの、今はあくまでも参考程度な訳だ。

 だからこそ特にやるべき事のない俺は、クレイドルに戻ってきてセイラとお茶会を楽しんでいた。

 ……このUC世界において、現在のセイラは最重要人物の1人だ。

 そんなセイラと気軽にお茶を飲めるのは、ある意味で俺の特権なのかもしれいな。

 もっとも、その話の内容は和やかなものではなかったが。

 

「ええ。最近、連邦軍に対するテロ行為が増えているわ。これが地球上なら、まだ拠点となる場所が幾らでもあるので納得出来るのだけど、宇宙となると……」

 

 はぁ、と。

 セイラは憂鬱そうに溜息を吐く。

 その気持ちは分からないでもない。

 地球と宇宙では、環境が違いすぎる。

 水天の涙の時の一件のように、地球でなら拠点となる場所は幾らでもあるので、ジオン軍残党によるテロ行為はかなり大規模に行われたりする。

 だが、宇宙となると途端に拠点となる場所は少なくなる。

 ジオン軍の残党で一番大きい拠点は火星だが、わざわざ火星から海賊行為をする為に地球まで戻って来るかと言われると……微妙なところだろう。

 出稼ぎとして考えても、かなり難しいと思う。

 それに例え出稼ぎ的な意味であっても、海賊行為をするとなると当然ながら補給が必要になる訳で、やっぱりどこかに拠点は必要な訳だ。

 勿論、宇宙でも今まではそれなりにジオン軍残党のテロ行為はあったので、どこかに拠点があるのは間違いないのだろうが。

 だが、それでもジオン軍の残党も今まではそんなに大きく動いてはいなかった。

 あるいは、俺が知らないだけで、ルナ・ジオン軍以外……それこそ連邦軍だったり、ジオン共和国だったりを襲ったりしていたのか?

 まぁ、ルナ・ジオン軍を襲った場合は報復が激しいのは、ジオン軍残党でも分かってるだろうし。

 実際、以前はジオン軍残党がルナ・ジオンに所属している貨物船とか襲った事があったが、その報復としてルナ・ジオン軍が出撃して襲った海賊達を殲滅している。

 そういうのが何度か繰り返された結果、ジオン軍残党もルナ・ジオン軍に所属している者達を襲撃するのは自殺行為だと理解し、襲われなくなったが。

 とはいえ、そうなればそうなったでまた面倒な事を考える者も出て来る訳で。

 連邦やジオン共和国の者達がルナ・ジオン所属と偽って商売をする者もいた。

 ルナ・ジオン所属であればジオン軍残党に襲われないのだから、そうしたくなるのは分かる。

 分かるのだが、それを放っておく訳にもいかない以上、ルナ・ジオンは大々的にその会社名や社長、会長、専務といったお偉いさんを公表した。

 そうなればどうなるか。

 ルナ・ジオンからは特に何もしないが、ジオン軍残党にしてみれば、いい獲物でしかない訳で……うん。まぁ、倒産した企業も多いとだけ。

 ただ、それでも見つからなければいいやと、ルナ・ジオン所属であると誤魔化す者はいるらしいのだが。

 その辺については、ルナ・ジオンが何とかするだろう。

 ともあれ、そんな訳でルナ・ジオンに所属する者達に対しての襲撃はないものの、それ以外の者達に対しての襲撃は増えているらしい。

 

「ルナ・ジオンとしてはどう考えているんだ?」

「ジオン軍の残党の動きが活発になってきたと考えると、近いうちにまた何らかの騒動があると考えてもいいでしょう」

「……水天の涙の時のように、か?」

 

 その言葉にセイラが頷く。

 1年戦争が終わった後で、初めての大規模なジオン軍残党による作戦、水天の涙。

 地上で激しく活動して注目を集め、最終的にはフィフス・ルナに設置されているマスドライバーを使って地球を攻撃するというものだった。

 結果的にそれは阻止出来たが、あの規模の騒動がまた起きると予想すると、面倒なとも思う。

 これでルナ・ジオンの拠点が宇宙だけにあるのなら、地球に対する作戦なら好きにしろとも言える。

 だが、ルナ・ジオンは地球にもハワイという領土があるのだ。

 これで、ハワイがそこまで重要な場所ではないのなら、ハワイを放棄するという手段もあるだろう。

 だが、地球における唯一のルナ・ジオンの領土であったり、地政学的に重要な場所にあったり、月に向かいたい者達が集まる場所だったり、地上用MSやMAを運用する場所であったりと、ハワイはルナ・ジオンにとって非常に重要な場所なのは間違いなかった。

 もし地球が文字通りの意味で壊滅するのなら、ハワイを放棄するだろう。

 だがそれはつまり、そこまでの事がない限り、ハワイを放棄するという考えがない事を意味していた。

 だからこそ、水天の涙のように地球に大規模な被害を与えるようなテロ行為は困る。

 ……もし水天の涙が成功していれば、場合によってはフィフス・ルナにあるマスドライバーによる攻撃は、ハワイに向けられていた可能性もあるのだから。

 

「その可能性も否定は出来ないでしょう」

 

 憂鬱そうに言いながら、セイラは紅茶を口に運ぶ。

 セイラとしても、今の状況には色々と思うところがあるらしい。

 だが、ルナ・ジオンとして動くのが難しいのも事実。

 これでジオン軍残党……海賊による被害が出ていたりすれば、それを理由にルナ・ジオンを動かす事も出来るのだろうが、その被害も出ていないしな。

 

「そうだな。否定は出来ない。……これでジオン軍残党の動きが俺達に被害を及ばさないとかならいいんだが、水天の涙の件を考えると、それも期待出来ないしな」

「では……連邦軍かジオン軍に協力を要請されたという事ならどうです?」

「それなら動けるだろうけど、出来るのか?」

 

 連邦軍は強硬派が纏まった事で、ただでさえ声の大きな者達が集まり、結果として大きな影響力を持ち始めている。

 ゴップ辺りなら無理をすればルナ・ジオン軍に依頼をするといった事も出来るかもしれないが、そこまでする価値があるとゴップが判断するかどうかは微妙なところだろう。

 ゴップはこちらと友好的な存在なのは間違いないものの、それでも連邦軍が第一なのはまちがいないのだから。

 そうなると、頼れるのはジオン共和国か。

 現在ジオン共和国を率いているのは、ガルマだ。

 元々がジオン公国で熱狂的な人気を誇っていた事もあり、支持率はかなり高いらしい。

 能力も天才とは呼べないが、秀才と呼ぶに相応しいだけのものを持ってる。

 また、その人気……カリスマ性から、有能な人物が集まっているらしいし。

 特に白狼の異名を持つシン・マツナガがいるのは、ガルマにとって大きいだろう。

 ジオン公国時代にも赤い彗星や青い巨星、黒い三連星といったメジャーどころに並ぶ有名な異名、白狼。

 ドズルの親友だっただけに、そのドズルが将来を期待していたガルマに忠誠を誓うのは当然の事なのだろう。

 ……もっとも、そのドズルを殺したという事で、俺は恨まれているのだが。

 それでも個人的な感情から妙な行動をしたりしないというのは、信じられる。

 

「いっそジオン共和国と協同して、ジオン軍の残党が潜んでいる場所を探してみるというのはどうだ?」

「……恐らく断ってくる可能性の方が高いでしょう。ジオン共和国にしてみれば、ジオン軍残党を探して何をするのか……そう連邦軍に痛くもない腹を探られるのはごめんでしょうし」

「それもそうか」

 

 ジオン共和国にとって、ジオン軍の残党というのは対応の難しい相手だ。

 元ジオン公国という意味では一緒だが、ジオン軍の残党は1年戦争の敗北を認めていない。

 ……俺にしてみれば、戦争中、それも最終決戦中に家族同士で内紛をやっているとか、馬鹿か? としか思えないのだが。

 それで負けたのなら、それは当然だろうと思う。

 あるいは、だからこそ……ザビ家が馬鹿をやった結果、ジオン軍が負けたからこそ、そんな理由で負けたのは許せないと思っているのかもしれないな。

 

「なら、連邦軍も調査に引き入れるとか」

「何故ジオン軍残党から被害を受けていない私達がそういう事をするのかと、そう怪しまれてもおかしくはないでしょうね」

「強硬派以外でもか?」

「強硬派程ではないけど、それでも怪しんでたりしておかしくはないと思うわ」

「ジオン軍残党の動きが活発になってるから、警戒してるだけなんだがな。……なら、いっそルナ・ジオン軍だけで動くのはどうだ?」

「それが一番いいでしょうけど、それでも連邦軍の強硬派が騒ぐのは間違いないと思うわ。……とはいえ、動いた方がいいのでしょうけど」

「問題なのは、どこを探すかだよな。……襲ってきた相手がいたら、生け捕りにすればセイラの能力でどこにいるのか分かるんだろうけど」

 

 セイラは、このUC世界において最高のニュータイプ能力者だ。

 ……ニュータイプという事なら、X世界にもいたが。

 ただ、X世界のニュータイプというのは、UC世界のニュータイプと同じようでいて違っていたりするんだよな。

 一番大きな違いは、UC世界のニュータイプ能力は特定の状況下ではあるが、まるで病気のように感染するという事だろう。

 それによって、ニュータイプも増える。

 実際、1年戦争の時にニュータイプ部隊と言われたホワイトベースも、その名に相応しくニュータイプと思しき者達は多かった。

 その理由として考えられるのが、アムロのニュータイプ能力による感染なのだから。

 そんなUC世界のニュータイプと比べて、X世界のニュータイプは特に感染したりとかはしない。

 ……感染はしないが、遺伝子レベルでコンピュータに組み込まれるとか、そういうとんでもない技術もあったりするが。

 

「拠点となる場所となると、やはりコロニーが一番怪しいですが、それは向こうも理解している以上、まずないでしょう」

「だろうな。基本的にコロニーには連邦軍が駐留している、1回や2回程度ならともかく、本格的に拠点として使っていれば、間違いなく見つかるだろうし。……まぁ、連邦軍の中にジオン軍残党に協力しているような奴でもいれば、話は別だが」

 

 強硬派がそのような事をするとは思えない。

 だがそれはつまり、強硬派でなければ、何らかの理由でジオン軍残党に協力するという可能性もある。

 声が大きい者達が集まっているので、強硬派はまるで連邦軍の大多数であるかのようにも思えるが、実際にはそこまで多くはない。

 連邦軍全体で見て、強硬派とそうではない者達で比べた場合、強硬派の方が少数派なのは間違いのない事実。

 ただ、それを実感している者達がどれだけいるのかというのは、別の話だが。

 

「コロニーが駄目となると、小惑星を基地化してるとかかしら?」

「小惑星って……ソロモンとかア・バオア・クーとかみたいにか? もしくはルナツーやフィフス・ルナか。そこまで大規模にやっていれば、連邦軍に見つからない事はないと思うんだが」

「そうね。でも……小惑星と一口に言っても、別にそこまで大きな物だけじゃないでしょう? 幾つかの部隊が隠れられる程度の小惑星基地くらいなら、作れるのではなくて? もしくは、以前から……1年戦争の時に作っていた可能性もあるでしょう」

 

 アクシズのようにか。

 そう思う。

 とはいえ、1年戦争中はジオン軍も色々と動いていた以上、そうである可能性は決して否定出来ない。

 

「可能性はあるかもしれないな。……そうなると、見つけるのはかなり困難だろうが」

「そうね。他にも可能性があるとすれば、デブリ帯かしら。地球圏には1年戦争や、それ以前からのコロニーの製造によって、多くのデブリ帯が生まれているわ。月とサイド3の間にもあるようにね」

「あー……あれか。あれもいずれ処分しないとな。サイド3まで行く時に遠回りしてるし」

 

 幸い、月にはジャンク屋が多い。

 そうなると、そのうちデブリ帯を片付けられるかもしれないな。

 ……高密度デブリ帯、か。

 まさか、ガンダム・フレームが眠っていたりしないだろうな?

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