転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4144話

「アクセルと一緒に出撃するとは思わなかったよ」

 

 ナスカ級のブリッジで、シーマがそう言って笑みを浮かべる。

 

「寧ろ俺としては、今回のような仕事にシーマを出すというのが予想外だったけどな」

 

 俺達が向かっているのは、数日前にセイラと話した、月とサイド3の間にあるデブリ帯。

 最近活発になっているという、ジオン軍残党。

 その拠点となる場所が、もしかしたらそこにあるかもしれないと判断した為だ。

 実際にはこのデブリ帯に拠点がある可能性はそう高くない……いや、かなり低いとすら思ってはいる。

 何しろ月からそう離れていない場所にあるデブリ帯なのだから。

 だが……そうして近くにある場所だけに、しっかりと調べておく必要があるのも事実。

 それに、今のところ調べられるのはこのデブリ帯しかないというのもあるし。

 このデブリ帯は月の側にあるので、何かあった時の為に調べてもおかしくはない。

 しかし、他の場所……月から離れた場所にあるデブリ帯を調べるとなると、連邦軍、特に強硬派に疑心暗鬼を抱かせるような事にもなりかねなかった。

 だからこそ、そのような心配がない……いや、それでも強硬派を反応させるかもしれないが、とにかくこのデブリ帯を調べる事になったのだ。

 ただ、俺の場合は暇だから何となく志願したというのもあるが、まさかそこにルナ・ジオンでセイラと並ぶ顔である、シーマが入ってくるとは思わなかった。

 

「一応、足下は固めておきたいしね。月の側にジオン軍残党の拠点があったなんて事になったら、面目丸潰れだしねぇ」

「話は分かったが、だからってわざわざシーマが出て来なくても……」

「……全くこれだからアクセルは女心を分かってないんだよ。私だって女なんだ。恋人と一緒にいられる機会を逃す訳がないだろう?」

 

 なるほど、そういう理由か。

 本来なら私情でとか言われるのだろうが、今回は問題ない。

 いや、寧ろこうして海兵隊の戦力を借りられるのだから、問題がある筈もなかった。

 シーマ率いる海兵隊は、ルナ・ジオン軍に所属はしているが、独自に動く許可もある。

 言ってみれば、もう1つのルナ・ジオン軍といった感じなのだ。

 それが許されているのは、セイラがそれだけシーマを信頼しているというのもあるのだろう。

 シーマはジオン軍時代に上から捨て駒扱いをされたり、汚い仕事をさせられてきた。

 ……実際、ホワイトスターに泊まりに来た時も、夜の情事が終わって眠っている時、悪夢に魘されている時もあるのだから。

 だからこそ、シーマがホワイトスターに来た時には夢も見れないようにぐっすりと眠らせる為、体力を消耗させているというのもあるのだが。

 

「俺もシーマと一緒にいられるのは嬉しいと思ってるよ」

「あの……シーマ様、そのくらいにしておいて貰えると……色々と若い連中には目の毒なんで」

 

 ナスカ級の舵を握っているデトローフが、困ったように声を掛けてきた。

 デトローフはシーマの副官的な存在だ。

 それだけに、俺との逢瀬を楽しんでいるシーマに声を掛けたのだろう。

 そんなデトローフの言葉に周囲の様子を見ると、デトローフが言うように、まだ若いブリッジ隊員達が俺と目が合い、咄嗟に逸らす。

 シーマは以前ザンジバル級に乗っていたのだが、今はナスカ級に乗っている。

 これは純粋にナスカ級の方が性能が高いというのもあってだ。

 それもあってか、ナスカ級のブリッジクルーは育成の意味も込めて若い者達がそれなりにいる。

 シーマはルナ・ジオンの顔の1人であるし、その事情は広く知られており、同時にシーマの美貌に惹かれて海兵隊に入隊を希望する者はかなりの人数だ。

 もっとも、その多くは試験で落とされるのだが。

 海兵隊らしく、試験はかなり厳しいらしいし。

 このブリッジにいるという事は、その厳しい試験を潜り抜けてきた者達なんだろうが……今のやり取りは少し目に毒だったか?

 

「そこまでの行為をしてる訳じゃないだろうに。……まぁ、いいか。じゃあ、格納庫に行くかね。他の連中にも準備させな」

 

 月から出撃してそんなに時間は経っていないのだが、それでも出撃の準備を指示するシーマ。

 とはいえ、無理もないか。

 俺達が向かうのは月とサイド3の中間にあるデブリ帯だ。

 高速巡洋艦とも称されるナスカ級なら、月からデブリ帯のある場所まで移動するのに、そう時間は掛からない。

 そんな訳で、シーマの指示はこの場合決して間違っている訳ではなく、俺はシーマと共に格納庫に向かうのだった。

 

 

 

 

 

「あら、遅かったわね、アクセル」

 

 格納庫についた俺……そしてシーマを待っていたのは、クリス。

 本来ならクリスは海兵隊ではないので、海兵隊所属のこのナスカ級に乗ってるのはおかしい。

 おかしいのだが、それでもシーマはそんなクリスに向かって不満を言う様子はない。

 いやまぁ、俺の恋人同士だからというのが、文句が出ない理由なのだろうが。

 

「クリス、そっちの準備は出来たのか?」

「ええ、当然でしょう? 私はシーマと違って、アクセルとイチャついてないもの」

「おや、羨ましかったら、最初からそう言えばいいだろう?」

「別にそういう事は言ってません」

 

 そうして言い合いを続ける2人だったが、やがてそれも一度止める。

 自分達を見ている周囲のパイロット達の視線が気になったというのもあるのだろうが。

 ちなみに今回はあくまでも探索だ。

 それも、恐らくいないだろうジオン軍残党、あるいはそれとは全く関係のない海賊とか。

 なので、当然ながら人手は多ければ多い程いい訳で。

 俺とシーマ、クリス以外にも、海兵隊のMSパイロット達がナスカ級には乗っていた。

 ルナ・ジオン軍で使われているナスカ級は、9機のMSを搭載出来る。

 MS3機で1小隊なので、3小隊をナスカ級1隻で運用出来る訳だ。

 そして俺、シーマ、クリスがそれぞれ小隊長をして、それぞれに新人が2人ずつ付く。

 新人とはいえ、それは本当の意味での新人ではない。

 ルナ・ジオン軍で相応の訓練を行った者達だ。

 ……何しろ捜索するのはデブリ帯だ。

 本当の意味での新人を連れ出そうものなら、パイロットの操縦ミスで死んでもおかしくはない。

 そんな訳で、俺達はそれぞれの下に付くMSパイロット達とそれぞれ軽いミーティングを行い、それぞれのMSに乗り込むのだった。

 

 

 

 

 

『アクセル隊長、こっちには何もありません。あるのは岩塊とかのデブリだけです』

 

 ガルバルディβに乗った海兵隊のMSパイロットが、そう通信を送ってくる。

 現在俺がいるのは、デブリ帯の中。

 シーマやクリスとは別行動中だ。

 だが……やはりと言うべきか、予想通りと言うべきか、俺達が担当している場所はジオン軍残党が使っているような隠れ家や拠点といった物はない。

 俺の操縦するギャン・クリーガーの映像モニタにも、それらしい物は発見出来ない。

 ちなみにルナ・ジオン軍においてギャン・クリーガーの武器として使用されているシェキナーだが、さすがにデブリ帯の中で活動するとなると邪魔なので持ってきてはいない。

 ビームランスはビームを出さないと場所を取らないので、何かがあった時……具体的には、ジオン軍残党がいたり、海賊の拠点があったりした時の為に、持ってきてはいるが。

 もっとも、ここにはまずいないと思われるし、こうして探索をしているのはあくまでも念の為なので、正直なところそこまで心配する必要はないのだが。

 そう思っていると、不意にギャン・クリーガーの映像モニタにスラスターの光と思しきものが見えた。

 まさか……

 

「全機、8時の方向に注意しろ。何か……スラスターの光だと思われるが、見えた」

 

 その言葉に、通信が繋がっている2人が緊張したのが分かった。

 無理もないか。

 このデブリ帯を調べるとは言ったが、恐らく何か見つかる事はないだろうと、そう言っていたのだから。

 なのに、そんな中でこうして何かを見つけてしまったのだから、もしかして……と緊張するのは十分に理解出来た。

 

「シーマ、クリス、聞こえるか?」

『何だい?』

『どうかしたの?』

 

 シーマとクリスから即座に返事が返ってくる。

 ミノフスキー粒子が戦闘濃度になっていれば、この距離で通信をするのは難しいかもしれないが、今はそんな事はない。

 あくまでも今は探索中なので、何かあった時に連絡出来るようにミノフスキー粒子は散布されていない。

 その為、こうして普通に通信が出来るのだ。

 

「スラスターの光が見えた。それもシーマやクリスの小隊のいない方向からだ」

 

 そう言うと、映像モニタに表示された2人の顔が微かに緊張する。

 この2人にとっても、このデブリ帯の捜索はあくまでも念の為であって、まさか本当に何か……ジオン軍残党や海賊の拠点が見つけるとは、思っていなかったのだろう。

 

「そんな訳で、少し確認してくる。もし最悪の展開だった場合は連絡をするから、そのつもりでいてくれ」

『分かったよ。アクセルなら大丈夫だとは思うけど、気を付けるんだよ』

『こちらでも何かあったらすぐに動けるようにしておくわ』

「頼む。……じゃあ、行くぞ。俺に続け」

 

 2人の恋人に感謝の言葉を口にしてから、ガルバルディβに乗っている2人の部下を率いてスラスターの光が見えた方に向かう。

 本来なら、小隊長が先頭を進むというのは間違っているのだろう。

 だが、俺にしてみれば国を率いる立場で真っ先に戦闘に参加するのが普通なのだから、この程度の事は何も問題はない。

 部下2人も、俺に何かを言ってくる様子はない。

 もっとも、デブリ帯の中を移動している以上、周囲に漂っているデブリにぶつかったりしないように注意する必要があるのも、黙っているのに関係しているのかもしれないが。

 そんな風に考えながらデブリ帯の中を進んでいるのだが……2度、3度と何度もスラスターの光を映像モニタが捉える。

 あれ? これ、ちょっと妙だな。

 もしジオン軍残党や海賊であった場合、スラスターの光を何度も見せるという事は普通はしないだろう。

 あるいは、単純に腕の未熟な者達なのか。

 ……それも十分考えられる。

 何しろジオン軍は1年戦争の中で優秀なパイロットが次々に戦死し、しかもルナ・ジオンにも引き抜かれ、最終的には学徒兵とかも大量にいたらしいし。

 つまり、1年戦争を経験したパイロットと言えば分かりやすいかもしれないが、言い方を変えればそれは学徒兵が運よく生き残っただけ……という事になってもおかしくはない。

 勿論、1年戦争の時は学徒兵ではあっても、既に1年戦争が終わってから3年近く経っている。

 その間、ジオン軍残党として海賊行為をしてきたのなら、MSの操縦に慣れてもおかしくはない。おかしくはないが……それでも、月の側でそういう相手が活動するのか?

 そんな疑問があるのも事実。

 そう思いながらスラスターの光が見えた場所に向かうと……

 

「何だ」

 

 そこには作業用のMSでプチモビルスーツ、通称プチモビと呼ばれる存在が複数いた。

 少し離れた場所には宇宙船……ただし、かなりボロい……もとい、使用感のある物が浮かんでいた。

 どうやら月のジャンク屋らしい。

 

『アクセル隊長』

 

 部下が困った様子で通信を送ってくる。

 プチモビで作業をしていた者達も、いきなり俺が姿を現した事で驚いて動きが止まっていた。

 ……当然か。

 デブリ帯でお宝を探していたら、いきなりギャン・クリーガーとガルバルディβが姿を現したのだから。

 一体何があったのかと、驚いてもおかしくはない。

 それでもパニックにならないのは、褒めてもいい。

 近付いて来たのが、ルナ・ジオン軍で使われているMSだからというのも大きかったのだろうが。

 

「聞こえているか? こちらは、ルナ・ジオン軍の海兵隊だ」

『は、はい。ルナ・ジオン軍の……それも海兵隊の方がどのような御用でしょうか?』

 

 映像モニタに表示されたのは、20代程の気の弱そうな男。

 あれ? ジャンク屋をやってるんだし、てっきり気の強そうな奴が出てくるかと思ったんだが。

 まぁ、事情を聞けるのなら誰でもいいか。

 

「このデブリ帯に不審者……海賊の類がいるのではないかという事で、現在調べているところだ」

『海賊……ですか? 私達はこの辺りでそれなりに活動してますが、海賊を見た事はありませんが』

「だろうな。あくまでも念の為だよ」

 

 ジオン軍残党や海賊がいるとしても、月に近いこのデブリ帯を拠点には選ばないだろう。

 あるいは灯台もと暗しというのもあるかもしれないが……可能性は低い。

 そんな訳で、ジャンク屋を怯えさせないように、そう言っておく。

 実際、見つけた! と思っても、それは海賊ではなくプチモビのスラスター光だった訳だし。

 それを残念に思えばいいのか、面倒な事がなかったと考えればいいのか、その辺は俺にも正確には分からないが。

 

「まずないと思うが、もしこのデブリ帯で何か怪しい存在を見つけたら、ルナ・ジオン軍なり、政府なりに連絡を入れてくれ」

 

 そう言い、俺は部下達と共にその場を去る。

 その後、デブリ帯を調べ続けたが、結局ジオン軍残党や海賊の拠点を見つける事はなかったのだった。

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