転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4145話

 結局月とサイド3の間にあるデブリ帯では特に何も見つけることは出来なかった。

 ただ、だからといってあの探索……捜索か? とにかくそれが無意味だったかと言えば、それは否だ。

 具体的には、俺達がデブリ帯を探索したという事で安全が確認されたというのが大きい。

 俺が遭遇したジャンク屋を始めとして、今までもあのデブリ帯で仕事をしている者は多かった。

 何しろ、ルナ・ジオンのジャンク屋は普通と違う。

 具体的には、普通のジャンク屋なら1年戦争の結果としてデブリ帯に流れ着いたMSや戦闘機、軍艦……それらの残骸を集め、そこに使われている希少なパーツや、場合によってはレアアースやレアメタルといった物を解体して入手し、売る事で生計を立てている。

 だが、ルナ・ジオンのジャンク屋は違う。

 普通のジャンク屋と同じように高く売れる諸々を入手するというのは変わりないが、そうして金になる物取り外した後の……本来なら捨てるなりなんなりする物であっても、ルナ・ジオン……より正確にはシャドウミラーが買い取ってくれる。

 寧ろルナ・ジオンのジャンク屋の中には、そういうのを考えず、岩塊等をシャドウミラーに売る為に持ち込んだりする者が多い。

 そんな訳で、普通のデブリ帯なら金にならない物はそのまま宇宙空間に捨て置かれるのだが、ルナ・ジオンのジャンク屋はシャドウミラーが買い取ってくれるのならと、どんな物でも回収していく。

 それこそ俺が遭遇したジャンク屋は、デブリ帯の外側から機械部品は勿論、岩塊ですら収集していたくらいだ。

 ジャンク屋にしてみれば、月から近いとはいえ、それなりに離れている場所までシャトルを借りて向かう訳で、金にはなるがデブリ帯である以上はジオン軍残党や海賊が潜んでいる可能性も否定出来なかった。

 それでも俺が遭遇したジャンク屋のように、デブリ帯まで来る者はいたのだが。

 だが、何が……誰がいるのか分からない以上、ハイリスク・ハイリターンであるのは間違いなかったのだが、俺達が捜索をし、ジオン軍残党も海賊もいないと証明したので、それならばと現在あのデブリ帯には多くのジャンク屋が集まっているらしい。

 それは問題ではない。

 問題ではないのだが……いや、ある意味では問題なのか。

 

「全く、アクセルのせいでエルヴィンまでバイトだってジャンク屋をやってるのよ!? それもどこから手を回したのか、オッゴを持ち出して!」

 

 ルナ・ジオンの首都、クレイドル。

 そこにある喫茶店で、俺の恋人の1人であるモニクは不満そうに言う。

 まぁ……うん、分からないでもないが。

 モニクにしてみれば、大事な弟がジャンク屋紛いの事をしてるのだから。

 

「落ち着けって。別に規則に違反してる訳じゃないだろ? 仕事をサボってジャンク屋をやってるって訳じゃないだろうし」

 

 エルヴィンはモニクの弟で、1年戦争時代は学徒兵だった。

 だが、今となってはルナ・ジオンの士官学校を卒業し、ルナ・ジオン軍に正式に所属している。

 モニクから少し聞いた話によると、MSパイロットとして相応に腕利きらしい。

 ……それでもMSの操縦という意味では、モニクに敵わないだろうが。

 モニクはまさに才色兼備と呼ぶに相応しく、MSの操縦技術も一流だ。

 あくまでも一流止まりで、それを超えた超一流……いわゆる、アムロやシャアのようなスーパーエースとでも呼ぶべき者達には及ばないが、それでもMSパイロット全体で見れば上澄みなのは間違いない。

 そのような存在だけに、弟のエルヴィンは到底姉には及ばない訳だ。

 ……もっとも、エルヴィンにしてみれば、それがコンプレックスになってるようだったが。

 ともあれ、そのエルヴィンがどうやら仲間と一緒に休暇を使ったジャンク屋をやってるらしく、モニクはそれが納得出来ないらしい。

 というか、オッゴはボールと違って手とかはなかった筈なんだが……どうやってデブリを集めてるんだ?

 もしくは手を増設するとか、改修したのか?

 

「それはそうだけど……でも、何でわざわざジャンク屋をやる必要があるのよ?」

「その辺は金欲しさだろう? エルヴィンもまだ若いんだ。遊ぶのに金が幾らあっても足りないだろうし」

 

 特にルナ・ジオン……いや、クレイドルにおいては、異世界の品が普通に売られている。

 1年戦争の時に17歳だった筈だから、今のエルヴィンは20歳くらいの筈だ。

 まさに、ちょうど遊び盛りといった感じだろう。

 20歳になって酒も自由に飲めるように……あれ? でもUC世界の飲酒が可能な年齢ってどのくらいなんだろうな。

 ともあれ、今のエルヴィンならしっかりと酒を飲めるようになったのは間違いなく、高い酒を飲んだり、高級車を買ったり、もしくは女遊びやギャンブルなんかにも手を出しているのかもしれない。

 そう考えれば、エルヴィンが金を稼ぎたくて休日にジャンク屋の真似事をするというのは、分からないでもない。

 ……何故プチモビじゃなくてオッゴをわざわざ引っ張り出してきたのかは分からないが。

 というか、どういう伝手を使ったのやら。

 まぁ、エルヴィン達にとってオッゴが懐かしい機体であるのは間違いないだろうが。

 ただ、ジャンク屋をやるのならオッゴよりもプチモビの方がやりやすいと思うんだが。

 

「それは……でも、ルナ・ジオン軍の給料は決して安くないのよ?」

 

 モニクのその言葉は、決して嘘ではない。

 エルヴィンはまだ新兵に近い……つまり階級も決して高くはないのだが、それでも給料はかなり高い。

 俺の認識だと、大企業の部長……いや、課長くらいはあるか?

 物価とかも色々と違うので、正確な事は言えないが。

 ただ、軍人という命の危険のある仕事で、その中でもMSのパイロットという役職、そして何より、ルナ・ジオンという特殊な立ち位置を考えれば、そのくらいの給料を貰うというのは決しておかしな事ではないのも事実。

 

「エルヴィンが遊ぶのに、給料だけでは足りなかったりするんだろうな」

「……あの子、何か妙な遊びを覚えてないでしょうね?」

 

 俺の言葉に、モニクは不満そうな様子でそう言う。

 おかしな遊び……それはつまり、違法な薬物とかそういうのだろう。

 とはいえ、クレイドルもそうだが、フォン・ブラウンはグラナダを始めとして、月に幾つもある都市には、量産型Wやコバッタが派遣され、治安を守っている。

 違法行為をしようとすれば、それこそ即座に止められ、捕まってもおかしくはなかった。

 

「月にいる以上は大丈夫だろ。……それより、折角のデートなんだ。もう少し楽しい話題にしないか?」

「楽しい話題……ね。例えば、アクセルと一緒にどこかに旅行に行くとか?」

「旅行……旅行か。もし旅行に行くとしても、俺の方は問題ないだろうが、モニクの方は大丈夫なのか?」

 

 俺の言葉に、モニクはそっと視線を逸らす。

 何しろモニクは政府の中でもセイラに近い存在で、しかも有能な人物として知られている。

 それこそ幾らでも仕事はあるだろう。

 もっともX世界での事を思えば、上がその気になればそれなりに休みは作れそうだったが。

 ただ、X世界の一件は個人的な事ではなく、あくまでも世界的な意味での出来事だ。

 そういう意味では、モニクが個人的に旅行をしたいからといって、休みを取ろうとしても、それはそれで難しいだろう。

 

「難しいわね。特に今はジオン軍残党の動きが活発になっているし」

「ああ、セイラからその辺の話については聞いている。それが理由で、念の為に月とサイド3にあるデブリ帯を調べに行ったんだしな」

 

 そう言うと、モニクの表情が微妙になる。

 俺達がデブリ帯を調べて安全が確認されたからこそ、ジャンク屋が集まっており、モニクの弟のエルヴィンもそれに乗っかっているのだから、俺の言葉に素直に頷く事も出来ないのだろう。

 

「なら、その一件が片付いてから、どこかに旅行に行くのもいいかもしれないな。……それがいつになるのかは分からないけど」

 

 ガンダム開発計画という、明らかに重要な計画。

 そしてジオン軍残党の動きが活発になっている。

 そう考えると、もしかして……いや、多分これも原作の1つなのだろうと、そう思う。

 1年戦争が1作目なら、水天の涙が2作目、ガンダム開発計画が3作目といったところか。

 いや、でも1年戦争は1年戦争で、色々な場所で原作っぽいのがあったしな。

 その辺りがどうなってるのか、ちょっと分からないな。

 あるいは……本当にあるいはの話だが、この世界の原作はアニメや漫画、小説といったものではなく、ゲームという可能性もある。

 そうなれば1年戦争中に起きた色々な出来事も、いわゆるサブイベントと考えれば、納得は出来るだろうし。

 

「アクセルと旅行……楽しみね」

 

 どうやらモニクもその気になったらしい。

 俺もモニクと一緒に旅行に行くのは楽しみだが。

 あるいは、ペルソナ世界の天城屋旅館に旅行に行っても面白そうだな。

 そういう風に思いつつ、俺はモニクとのデートを楽しむのだった。

 ……ただ、翌朝のモニクはかなり疲れた状態で仕事に向かう事になってしまったので、それは申し訳ないと思ったが。

 

 

 

 

 

「いや、それを俺に言われてどうしろと?」

 

 モニクとのデートから数日、俺の姿はフィフス・ルナにあった。

 そして俺の前にはニナの姿。

 

「でも、パワード・ジムの操縦という意味では、アクセルが一番慣れてるでしょう?」

「それはそうだが、MSの操縦というのは人それぞれで違う。俺にとっての正解が、他のパイロットにとっても正解だとは限らない」

 

 特に俺の場合は、既にただの人間から混沌精霊になって長い。

 混沌精霊としての身体能力ありきで操縦をしてるので、俺の操縦感覚を人に教えるというのは難しい。

 魔力や気によって身体強化でも出来れば、話は別だが。

 

「そうかもしれないけど、何らかの参考にはなるでしょう? 地上でデータ取りが上手くいかないと、ゼフィランサスが中途半端な仕上がりになってしまうのよ」

 

 ニナが必死になっているのは、結局そういう理由からだった。

 とはいえ、分からないではない。

 俺が文字通りの意味で人間離れした身体能力を使った操縦技術で、次々と新型パーツのデータ取りに成功していた。

 それに対して、地上……地球のオーストラリアに送ったパワード・ジムでは、満足出来るデータが取れていないらしい。

 

「データの取り方が悪いとか、そういうのはないのか?」

 

 フィフス・ルナで試験をしたパワード・ジムは、ガンダム開発計画のメンバーであるニナを始めとして、クラブ・ワークスの面々がいたので、データ取りを失敗するという事はなかった。

 だが、地上にあるトリントン基地には、当然ながらクラブ・ワークスの面々はいない。

 勿論何もしていないという事はなく、データ取りをする際のコツとか、そういうのは教えているだろう。

 しかし、それでも今のところトリントン基地からのデータにニナは満足していないらしい。

 つまり、データ収集の際に何かミスをしているとか、そういう可能性も否定は出来ないんじゃないかと思ったのだが……

 

「問題ないと思うわ。データ収集そのものは、そこまで難しい訳ではないもの、やろうと思えば、少し詳しい人なら誰でも出来る程度よ。……やっぱり、純粋にパイロットの操縦技術の問題でしょうね」

「そう言われても、パワード・ジムのパイロットを任されてる以上、相応の操縦技術はあるんじゃないのか?」

 

 ガンダム開発計画は、連邦軍にとっても非常に大きな意味を持つ。

 また、レビルの派閥を引き継いだコーウェンの影響力は大きく、それだけにガンダム開発計画に関係するパワード・ジムのMSパイロットはしっかりと腕の立つ者を用意していた筈だ。

 これで実は、パイロットの操縦技術が未熟だという事でもあれば、それはそれで納得出来る話ではあったのだが。

 

「そうだけど……でもアクセルには及ばないのよ」

「それは仕方がない。自分で言うのもなんだが、俺は色々な意味で特別だしな。俺と同程度のMSパイロットとなると、それこそ赤い彗星くらいは連れてくる必要がある」

 

 そう言えば、そのシャアは今どうしてるんだろうな。

 1年戦争が終わってから、シャアの情報は全くないが。

 まぁ、それでもシャアが何か行動を始めれば、当然ながら人の目を集めるだろうから、それまで待てばいいのかもしれないが。

 

「いっそ、アクセルに地球まで行って貰う事は出来ない?」

「さすがにそれは無理があるだろう」

 

 いやまぁ、やってやれない訳ではないだろうが。

 ただ、連邦軍としてもそういう事をされれば、自分達がまともにMSのデータも取れないという風に認識されるということを意味している訳で。

 そうなると、恐らく……いや、確実に不満を抱き、アナハイムやルナ・ジオンに対し、反感を持つようになる。

 俺としては、そういうのは出来るだけ避けたい。

 

「ゼフィランサスとサイサリスが完成したら、トリントン基地で地上試験を行うんだろう? そう考えると、トリントン基地でアナハイムに反感を抱くような事はしない方がいいんじゃないか?」

 

 そう言う俺の言葉に、ニナは渋々といった様子で頷くのだった。

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