転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4150話

「ありがとうございます!」

 

 そう言い、俺に頭を下げてくるのはまだ10代前半の子供。

 その一人だけではなく、他にも何人も同じような者達が揃って俺に頭を下げていた。

 UC世界でアルビオンの見学をしてから数日……今日、俺はオルフェンズ世界にいた。

 そんな子供達の横には、オルガの姿もある。

 

「兄貴のお陰で、こいつらも安心して働く事が出来ます。……ありがとうございます、兄貴」

「仮にも火星最高の戦力を持つ組織のトップが、そう簡単に頭を下げるってのはどうなんだ?」

 

 呆れたように言うが、それを聞いたオルガは下げていた頭を上げると、即座に首を横に振る。

 

「兄貴になら問題ありません。それに……兄貴は、シャドウミラーはそれだけの事をしてくれたのは間違いないですから」

「それなら、俺じゃなくてレモンに感謝の言葉を言った方がいいと思うんだがな」

 

 そう言いつつ、俺は空中に浮かぶ入れ物をゲートのある場所に運ぶように指示をしているレモンに視線を向ける。

 あのケースは、言ってみれば担架のような物だ。

 ただし、当然ながらレモンが使っている以上はただの担架ではない。

 中にいる者にとって最適な状態となるという機能がある。

 また、金属のケースは空中に浮かんでおり、地面が荒れ地だろうがなんだろうが問題なく運べるという利点も持つ。

 そんな担架を動かしていたレモンは、紫の髪を掻き上げるようにして、気怠げに言う。

 

「別に私に感謝する必要はないわよ。私はアクセルに言われたから少し気になってやってみただけだし。でも……そうね。それでも感謝したいのなら、その分、鉄華団だったかしら? そこで一生懸命に働きなさい」

 

 それだけを言い、話は終わりといった様子で再び仕事に戻る。

 そんなレモンに対し、それでも感謝の視線を向ける子供達。

 無理もないか。

 あの金属のケースに入っているのは、ここにいる子供達の親しい相手だ。

 血の繋がった兄弟であったり、もしくは世話になった兄貴分、一緒に火星のスラム街を生きてきた同胞。そんな者達。

 そして……そんな者達に共通しているのが、阿頼耶識の手術に失敗した者達。

 手足が動かなくなる、半身不随になる、目が見えなくなる……それ以外にも様々な障害が出た者達だ。

 産業廃棄物……いわゆる、産廃と呼ばれる者達。

 普通の状態でも生き抜くのが難しいスラム街において、そのようなハンデがあるというのは非常に大きなマイナスだ。

 実際、産廃と呼ばれた者達はこうして確保出来たものの、自分の未来に絶望して自殺をした者、自暴自棄になって死んだ者、仲間に見捨てられた者……そのようにして死んだ者は数多いらしいし。

 そんな中でも、まだ生き残っていた者達が現在ホワイトスターに運ばれているところだった。

 以前、それとなく口にした、阿頼耶識の手術が失敗した者達の治療。

 それが確立されたので、早速行うということになった。

 とはいえ、理論的には問題ない筈なもの、実際にはどうなるのかは分からない。

 それこそ実際にやってみたら失敗するという可能性も否定は出来ない訳で……それでも今の自分の状況が変わるのならと、治療を希望したのが金属ケースの中に入っている面々だ。

 ちなみにこの治療技術だが、ナデシコ世界のナノマシン技術がベースになっているらしい。

 純粋にナノマシン技術というだけだと、ナデシコ世界はオルフェンズ世界よりも遙か先を行っている。

 オルフェンズ世界では産廃の例を見れば分かるように、失敗すると致命的だ。

 また、阿頼耶識の手術そのものにも激痛がある。

 それと比べると、ナデシコ世界のナノマシン技術……例えばエステバリスを動かすのに必要だったIFSは、それこそピアスの穴を空けるような感覚で出来る。

 勿論、IFSを使えるようになったからといって、エステバリスを自由に操縦出来るようになる訳ではないのだが。

 この辺りはやはり本人の才能やセンス、後は訓練が必要になる。

 とはいえ……ナノマシン技術が絶対という訳ではないのは、火星を見れば分かりやすい。

 ナデシコ世界でも火星はテラフォーミングされていたが、オルフェンズ世界とナデシコ世界の火星は随分と違う。

 ナノマシンでテラフォーミングされたナデシコ世界の火星は、土の影響で野菜が不味い。

 それと比べると、オルフェンズ世界の野菜は普通に美味い。

 もっとも、以前の桜農園の例を見れば分かるように、美味い野菜を作れても植民地だからということでバイオ原料用の作物を作り、しかもそれも安く買い叩かれるという状況ではあったが。

 ともあれ、それでもナデシコ世界の方がナノマシン技術が進んでいるのは間違いなく、それをベースにして阿頼耶識の手術に失敗した者達の治療が出来るようになったのだから、結果を見れば問題はないのだろうが。

 

「兄貴、ありがとうございます」

「……オルガにそこまで礼を言われるのはどうかと思うけどな」

 

 とはいえ、その気持ちも分からないでもない。

 今でこそMSやMWには乗らず、社長業に専念しているオルガだが、オルガもまたCGSに入社する時には阿頼耶識の手術を受けているのだから。

 阿頼耶識の手術に関しては、実力とか意思の強さでどうにかなるものではない。

 純粋に、運によるものだ。

 後は……体質とかか?

 そんな訳で、オルガも……そして三日月でさえ、場合によっては阿頼耶識の手術が失敗し、産廃になる可能性はあったのだ。

 もっとも、三日月はこの世界の原作の主人公であり、オルガはそんな三日月の相棒だ。

 そう考えると、阿頼耶識の手術が失敗するという事は基本的になかったのだろうが。

 

「こいつらの件は他人事じゃなかったですから」

「だろうな。まぁ、それでも治療は出来るんだ。治療が終わった後で、しっかりと働けるように環境を作っておけ。それに……オルガはそれ以外にもあるんだろう?」

 

 そう言うと、オルガの顔が困惑に変わる。

 また、照れもあるのか頬が薄らと赤く染まっていた。

 俺が何について言いたいのか、それを十分に理解しているからだろう。

 

「メリビットも、楽しみにしている筈だろう? 結婚式」

 

 そう、オルガとメリビットは、この度ゴールインする事になった。

 とはいえ、結婚式は身内だけでやるようだが。

 ……もしオルガが大々的に結婚式をやりたいというのなら、今のオルガの立場を考えるとかなり盛大なものになるだろう。

 だが、オルガはそれを好まなかった。

 資金的な理由……という訳ではない。

 今の鉄華団は火星でも有数の企業なのだから。

 戦士としてならともかく、企業としてはまだ甘いところがあるのも間違いはないが。

 それにメリビットやサヴァランのような専門家もいるし、コバッタや量産型Wによって敵対的な買収や、こちらを嵌めようしている事業提携については見破れる。

 直接的な手段……というのもあるが、そうなれば、それこそ鉄華団の本領発揮だろうし。

 そんな訳で、半ばシャドウミラーの傘下に近い存在である鉄華団は企業という意味ではかなりのものだ。

 異世界間貿易にも少しだけだが手を出してるしな。

 つまり、金という意味では派手に……それこそやる意味があるのかどうかはともかくとして、火星や木星、地球に生中継をするといった事も可能だったりする。

 ……もし実際にそんな事をすれば、オルガは羞恥心から暴走しそうな気がするが。

 

「兄貴、それ……どこから聞いたんです?」

「クーデリアだ」

「あー……」

 

 俺の言葉に、困った様子を見せるオルガ。

 メリビットにしてみれば、クーデリアはある意味で仲間とでも呼ぶべき存在だ。

 他にも鉄華団が多少なりとも異世界間貿易に手を出している為に、アドモス商会に顔を出すのは珍しくはない。

 オルフェンズ世界で起きた一連の事件……俺がPMCとしてのシャドウミラーを作ってから、マクギリスとラスタルの最終決戦まで、クーデリアとメリビットは何だかんだと接する機会も多かったしな。

 そんな諸々の事情から、2人が友人になるのはおかしくない。

 そして毎晩……とまではいかないが、それなりに頻繁にホワイトスターにある家にクーデリアとフミタンが泊まりにくるので、夕食の時とかに色々と話す機会は多い。

 

「ちなみに結婚式の件を知ってるのは俺だけじゃなくて、俺と一緒に住んでいる連中もだぞ」

 

 そんな中で少し驚いたのは、ルリとラピスが結婚式に興味を示した事だろう。

 ……2人共、年齢が年齢だ。

 ましてや、親の贔屓目なしに見ても、2人は揃って美少女と呼ぶに相応しい。

 SEED世界で学校に通っていた時もラブレターを貰ったり、告白されたりというのは珍しくなかったし。

 とはいえ、ルリもラピスも全て断っていたらしいが。

 恋愛にまだ興味がないのか。

 自分で言うのもなんだが、俺の恋愛観は色々な意味で問題がある。

 そんな俺を父親にして、一緒に住んでいるのを思えば、2人の恋愛観が普通とは違っていてもおかしくはないと思う。

 ……一度、しっかりとその辺について話してみた方がいいのかもしれないな。

 そう思うも、義理とはいえ娘に恋愛について話すというのは……マリューや千鶴といった母性の強い面々に頼んでもいいのかもしれない。

 

「それは……えっと……何と言えばいいんでしょう?」

「それを俺に言われてもな。けど、結婚を祝福して貰えるというのは、悪い話じゃないだろう? それに……」

「兄貴?」

「ああ、いや。何でもない。結婚式が楽しみだと思ってな」

 

 オルガは思い込むとそのまま突っ走るような一面がある。

 それこそ無理だと分かっていても。

 だからこそ、そんなオルガを落ち着かせる為に……そう、表現は悪いが、重しとなるような存在が必要なのだ。

 クーデリアから聞いた話によると、メリビットもその辺については自覚しているらしい。

 実際、結婚する理由の何割かはそういうのらしいし。

 オルガに言えるような事ではないから、黙っておくが。

 

「とにかく、結婚式には俺も参加する予定だ」

 

 クーデリアがメリビットから聞いた結婚式は、10月の予定となっている。

 本来なら、オルガのような立場の者が結婚式をやるとなると、それこそもっと大々的に……そして前もって準備が必要なのは間違いないが、身内だけの結婚式だしな。

 それに、ちょうどその頃になればUC世界のガンダム開発計画についても一段落している筈だ。

 あくまでも宇宙ではの話だが。

 地上でのゼフィランサスとサイサリスの運用試験については……正直なところ、どうなるんだろうな。

 多分俺が参加するのだろうとは思うが、もしかしたらトリントン基地にいる軍人がやる可能性もある。

 何しろパワード・ジムも現在はトリントン基地にあるんだし。

 

「兄貴が……その、ありがとうございます」

「弟分の結婚式なんだから、参加するのは当然だろう? 名瀬も参加するんじゃないか?」

「……ええ、そうなると思います」

 

 少し困ったような、嬉しそうな、照れてるような……そんな様子のオルガ。

 オルガにしてみれば、多分まだ結婚するといった実感がないんだろうな。

 そういう意味では、名瀬に話を聞かせて貰った方がいいのかもしれない。

 俺も恋人達と同棲はしているし、あるいは他の世界から泊まりに来たりとかはしているが、それはまだ結婚ではない。

 そんな俺に対して、名瀬は嫁達と……後は子供もだが、ハンマーヘッドで一緒に行動している。

 正式に結婚をしてだ。

 もっとも、実際には女達を守る為に自分の身内とする理由があって結婚したというのが正しいところなのだが。

 偽装結婚と言えるかもしれない。

 ただ、一般的な偽装結婚と違うのは、女達も名瀬を愛し、そして名瀬も女達を愛している事だろう。

 出会い……結婚した理由こそ身内にするための偽装結婚だったかもしれないが、今ではきちんと愛し合っているのは間違いないので、問題はない。

 これも一種のお見合い……さすがにお見合いとは一緒に出来ないか?

 ただ、あまり知らない相手と結婚をしたのは間違いないので、そういう意味はお見合いとそう違わない可能性も十分にあるだろう。

 本人達がどのように思うのかは、また別の話だろうが。

 まぁ……俺や名瀬の場合、色々と普通とは違う以上、同棲と結婚の違いは何かと言われれば、それはそれで微妙なんだが。

 

「話を戻すが……産廃と呼ばれている者達はまだいる筈だ。これからも探して連れてきてくれ。治療費については……まぁ、鉄華団で働いて気長に返すって事になると思うが」「それで問題ありません。それに……今はもう、MSを使った仕事は大分減ってますしね。海賊の討伐とかくらいでしょうか」

「だからこそ、安心して雇えると」

 

 そう尋ねる俺の言葉に、オルガは笑みを浮かべる。

 オルガにとっては、危険のない仕事で多くの者達……特に孤児やヒューマンデブリを雇うというのは、念願だったしな。

 ちなみにヒューマンデブリについても、クーデリアが火星連合の代表になったら違法にするように働き掛けていくと言ってたから、そのうち完全になくなる……とはならないだろうが、大分減るのは間違いなかった。

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