転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4153話

「最初からポーラに聞いておけばよかったな」

 

 その店の前で、隣にいるニナに向かってそう言う。

 ニナはそんな俺の言葉に微妙な表情を浮かべていた。

 喫茶店での一件を思い出し、俺の言葉に素直に頷けないらしい。

 とはいえ、あの騒動があったからこそポーラからこの店の情報を入手出来たと思えば、悪くはないのだろう。

 俺はそう思うのだが、ニナはそうではないらしい。

 

「……まぁ、ポーラから教えて貰わないと、このお店には気が付かなかったというのは否定しないわ」

 

 微妙な表情のまま、そうニナが返す。

 この店は、フィフス・ルナにある商店街……正確には裏通りに近い場所にある。

 普通に表通りだけを歩いている限りでは、気が付くのが難しい店だ。

 一応……本当に一応だが、表通りにはこの店に続く道に看板が出てはいるが、それも大きかったり派手だったりはしない。

 気が付く者が気が付けばそれでいい。

 そう思っているかのような、そんな看板だった。

 

「何で表通りじゃなくて、こういう見つかりにくい場所にあるんだろうな?」

「このお店は、あくまでも贈り物を買う為の店だからでしょうね」

「どういう意味だ?」

「つまり、私やアクセルのように結婚祝いとして贈るような人もいれば、上司に対する賄賂として贈る人もいるということよ。その為、表通りには店を構えられないんでしょう」

「……ああ、なるほど」

 

 ニナの説明に納得する。

 納得すると同時に、そういう店でオルガの結婚祝いを買ってもいいのか? と思わないでもない。

 とはいえ、ポーラが知ってる店はここくらいだったし。

 後は、それこそ月に行った時にクレイドルでその手の店を探すか、もしくはいっそホワイトスターの交流区画で探すか。

 ともあれ、目の前に店があるのだから寄ってみるのは悪い考えではないだろう。

 実際に、この店で買うかどうかは別の話として。

 

「じゃあ、入ってみるか」

 

 俺の言葉にニナが頷き、2人で店に入る。

 

「へぇ」

 

 店の中を見て、思わずそんな声を出す。

 裏通りにある店……それも上司に対する賄賂とかそういうのでも使われる店という事で、それこそ怪しげな雰囲気を持つ店なのではないかと思っていた。

 だが……予想外なことに、店の中は清潔感があり、床にはゴミが落ちたりもしていない綺麗なものだった。

 

「あら」

 

 どうやらニナも俺と同じような感想を抱いたらしく、驚きの声を発している。

 そんな俺達を見て、店員の女……20代から30代程の女が近付いてくる。

 

「いらっしゃいませ、初めてのご利用でしょうか?」

 

 そう聞いてきたのは、俺とニナが店の中を見て驚いていた為だろう。

 これが初めての来店でなければ、わざわざ驚きの声を発したりといったことはしない筈だった。

 

「ええ、そうよ。このお店では色々な贈り物を購入出来ると聞いたのだけど」

「はい、間違っておりません」

「結婚の記念品とかも購入出来るのかしら?」

「それは……俗に言う、引き出物の類でしょうか? それでしたら、うちでも取り扱っておりますが、品揃えという意味ではもっと別の……」

「違うわ」

 

 店員の言葉を途中で遮るニナ。

 ポーラと同じような事を言われたものの、ポーラの場合はあからさまにニナをからかおうとしての言葉だったが、この店員は普通に勘違いしての言葉だ。

 だからこそニナも店員の言葉に不満を抱きつつも、怒るような事はなかったのだろう。

 

「私と彼は知り合いがそれぞれ結婚するから、それぞれ、別個に、別々に結婚祝いを買いに来たの。一緒に来たのは特に意味はないわ」

 

 いや、そこまで別だというのを強調するのはどうかと思うんだが。

 ニナにしてみれば、ポーラの一件からからかわれたり、勘違いされるのはもうごめんだとでも思ったのだろう。

 

「は、はぁ。……分かりました、結婚祝いですね」

 

 ニナと俺を見比べた店員だったが、それでもさすが本職……このような店の店員をしている為か、問題となる場所はスルーして話を進める。

 

「ああ、そうだ。どういうのを買えばいいのか分からなくてな。何かお勧めがあったら教えて欲しい」

 

 俺の言葉に店員は少し考えると店の奥に向かい、やがて戻って来るとその手にはコーヒーのカップとソーサーがあった。

 

「こちらはどうでしょう? ブランド物なので少し高価ですが、実用品としても十分に使えます」

 

 そう言い、店員が口にしたブランドは俺でも知っている名前だった。

 この店にあるという事は、恐らくこういうカップとかも上司に帯する賄賂に使われているんだろうな。

 

「コーヒーじゃなくて、紅茶のカップはないか?」

「紅茶ですか? 少々お待ち下さい」

 

 俺の言葉に、店員は嫌そうな顔もせず、また店の奥に向かう。

 

「アクセルの方はすぐに決まりそうね」

「ニナはまだ迷っているのか?」

「ええ。……まぁ、あの子も紅茶は飲むから、アクセルと同じ物でもいいんでしょうけど」

 

 オルガがコーヒーと紅茶のどちらを好むのかは、正直なところ分からない。

 とはいえ、メリビットは紅茶派だった筈なので、紅茶のカップは喜んで貰えると思う。

 ……オルガとメリビットでは、メリビットの方が権力は強そうだし。

 勿論、それはあくまでも家の中での話だ。

 鉄華団という組織の中では……中では……うーん、どうなんだろうな。

 オルガが鉄華団のトップなのは間違いないが、実権という事であれば、事務員のトップであるメリビットが大きな力を持つのも事実。

 ビスケットやサヴァランの兄弟のように、事務員は他にもいるが……どちらもメリビットに対抗出来るかと言えば、それは微妙なところだろう。

 

「アクセル? どうしたの?」

「ん? ああ、いや。結婚祝いを渡すにしても、俺の弟分よりも結婚する相手が喜ぶ物の方がいいかもしれないと思ってな」

「……そうなの?」

「まぁ、姐さん女房だけあって、家の中の関係では俺の弟分の方が力は弱そうだし」

「ふーん。……年上の奥さんを貰うんだ」

「そうだな。というか、さっき言っただろ?」

「そうだったかしら。……ちなみに、本当にちなみにの話だけど、アクセルも結婚するなら年上の方がいいの?」

「……は?」

 

 いきなりのニナの質問に、俺は数秒の沈黙の後でそう一言発する。

 

「いえ、その……話の流れから、ちょっとそうじゃないかと思っただけよ」

「ふーん」

「で、どうなの?」

「別にそういう拘りはないな」

 

 というか、俺の場合年齢が色々と妙な状態になってるし。

 混沌精霊として不老になったり、他の世界に転移した結果、時差によってホワイトスターで半年なのに俺は4年経ったりとか。

 それだけではなく、外見も10歳くらい、今の10代半ば、20代といったように外見も自由に変えられる。

 そんな俺の年上となると……うん。

 あ、いや。でもレモン辺りは最初に会った時から年上っぽかったし、そういう意味では姐さん女房的な感じがしないでもないのか?

 正確にはまだ結婚はしていないのだが。

 後は……そうだな。恋人や妻という訳ではなく仲間という意味でなら、エヴァは年上だ。

 そうして話していると、先程の店員が戻ってくる。

 その手にはコーヒーカップと違い、紅茶のカップとソーサーがあった。

 

「こちらのような物はどうでしょう?」

「へぇ……悪くないな」

「そうね。いい色合いだわ」

 

 俺には芸術品とかそういうのについて、そこまで分からない。

 分からないが、そんな俺が見ても、良い品だと思えるくらいには素晴らしい出来であるのも事実。

 

「喜んで貰えて何よりです。先程のコーヒーカップとは違いますが、こちらもブランド物の商品として人気が高いんですよ」

 

 そう言い、店員が口にした名前は俺も聞いた覚えのあるものだ。

 とはいえ、この世界ではなく別の世界でだったと思うが。

 ……まぁ、UC世界も途中までは他の世界と同じような歴史を辿っている以上、他の世界のブランドが今もまだ残っていてもおかしくはないのだが。

 連邦政府を作る時の大きな戦争とか、1年戦争とか……そういうがあってもそのブランドがまだ残っているのは、素直に凄いと思う。

 いっそ、エヴァが鬼滅世界でやってるみたいに、保護した方がいいのか?

 もしくは月に本社を移すように働き掛けるとか。

 とはいえ、それはそれでまた難しい。

 こういうカップを作るには、土であったり水であったり、あるいは薪であったり、他にも色々と決まった物を使う必要がある。

 だが、当然ながら月にくればそれらは当然だが使えない。

 一応、地球から輸入するといった方法で用意する事は出来るだろうが、それだとコスト的な面でどうしようもなくなってしまうだろうし。

 

「お客様? どうされました?」

 

 俺がカップを見て黙っているのに気が付いた店員が、そう尋ねてくる。

 

「いや、何でもない。じゃあ、俺はこのカップでいい。2組で、結婚祝いだからラッピングの方もよろしく頼む」

「畏まりました。それで……」

「そうね。私もこれでいいわ。同じく2組で、ラッピングもお願い」

 

 ニナもどうやらこれでいいと判断したらしい。

 何だかんだと街中に出てから結構歩いたし、他の結婚祝いに贈る品を考えるのが面倒になっただけかもしれないが。

 ともあれ、俺とニナの言葉に店員は満面の笑みを浮かべて一礼すると、早速ラッピングを始めた。

 多分だが、このカップは結構な値段なんだろう。

 ブランド物……それも0083年まで残っている店のブランドなのだと考えれば、値段が高騰してもおかしくはない。

 とはいえ、俺にしてみればガンダム開発計画のテストパイロットをしているという事で、毎月のように結構な額の給料が入っている。

 その上で、特に使うような事もないので、少しくらい高くても支払いに問題はない。

 ニナはニナで、クラブ・ワークスというアナハイムの顔とでも呼ぶべき部署にいて、その中でもシステムエンジニアとして高い能力を持っている。

 ゼフィランサスとサイサリス、双方のシステムエンジニアとして、そしてゼフィランサスでは開発にも大きく関与しているのを思えば、基本給の他に成果給とかそういうのもプラスされて、それこそちょっとした企業の重役とか、そのくらいの給料を貰っていてもおかしくはない。

 ……もっとも、特に買い物らしい買い物をしない俺と違い、MSオタクのニナの場合は色々と買っていたりするようだが。

 また、他にも服やアクセサリ、香水……その他諸々を購入したりもしているらしい。

 時々香水を変えているらしいから、それについては何となく分かる。

 とはいえ、それでも結婚祝いとしたブランド物の紅茶のカップ一式を購入するくらいの余裕はあるのだろう。

 

「ニナはどうせなら他の結婚祝いでもよかったんじゃないか?」

「え? そう? ……言っておくけど、別にアクセルの真似をしたとか、そういう訳じゃないわよ。見て、本当に良い物だと思ったからそれに決めただけで。変な勘違いはしないでよね」

「変な勘違い? 具体的には?」

「……っ!? な、何でもないわよ。気にしないでったら」

 

 いや、何でそんなに怒る?

 ニナの沸点がどこにあるのか、よく分からない。

 そう思っていると、ラッピングを終えた店員が商品を持ってやって来るのだが、微妙に呆れの視線を俺に向けてくる。

 何だ? 今のは俺が悪かったのか?

 そう疑問に思うも、ここでそれを聞くのは止めておいた方がいいだろうと判断し、黙っておく。

 

「とにかく、これで結婚の贈り物に悩む必要はないか。後は、結婚式まで待つだけだな」

「……そうね」

 

 俺の言葉が面白くなかったのか、それとも何かもっと別の理由があるのか。

 その辺は俺にも分からなかったが、とにかくニナは俺の言葉に同意してきたので、これでOKということにしておく。

 そうして支払いを終えて店を出ると、ニナは大きく息を吐き、気分を切り替えるようにしてからこっちを見てくる。

 

「さて、アクセル。これからどうするの?」

「どうするって言われても……もう戻った方がよくないか? 折角結婚祝いを買ったのに、これを持ったままでどこかに出歩いたりすると、最悪割ったりとかしかねないし」

 

 俺の場合は空間倉庫に収納しておけばいいのだが、俺が魔法を使えるというのは、今は黙っておいた方がいいしな。

 もっとも、ニナの趣味を考えれば魔法とかそういうのはあまり気にしないか?

 ……あ、でも魔力を使って機体を動かすとか、そういうのがあれば気になるかもしれないな。

 もしくは、そういうファンタジー系の人型機動兵器には興味がないか?

 オーラバトラーとか。

 

「そう言われるとそうね。折角こうして街に出て来たんだから、もう少し見て回りたかったんだけど」

「ポーラに会う前に色々な店を見て回っただろう? それでもまだ足りなかったのか?」

「あの時は、あくまでも結婚祝いのプレゼント買う為に回っていたでしょう? それと自由に好きな物を見て回るのは違うのよ」

 

 そう断言するニナの言葉に、俺はどう反応すればいいのか呆れる。

 いやまぁ、女のショッピングというのがそういう物だと言われれば、俺も納得するしかなかったのだが。

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