転生とらぶる2   作:青竹(移住)

1503 / 2196
4159話

 ハワイとオーストラリアの時差が約20時間であると考えると、日付が変わるかどうかという時間で連絡が来たということは、向こうでは大体午後8時くらいといったところか。

 

『それで、アクセルはいつトリントンに来られるの?』

「そう言われてもな。ニナも知っての通り、連邦とルナ・ジオンは別の国だ。……しかも連邦軍の強硬派はルナ・ジオンを何とかして倒したいと思っている。そうである以上、何の通達もなく俺達がトリントン基地に向かうような事があった場合、ルナ・ジオンと連邦の間で戦争になってもおかしくはない」

『でも、サイサリスが奪われたのよ!? それも、アトミックバズーカの弾倉が入った状態で!』

「それは、また……」

 

 ニナの言葉に顔を覆う。

 核兵器運用を前提として開発されたサイサリスが、その万全の状態となっている状況で機体を奪われてしまったという事になる。

 ガンダムというMSは奪われる事の多いMSではあるが、よりによってアトミックバズーカの弾倉が入った状態で盗まれるというのは、最悪の結果しか思い浮かばない。

 しかも、それを奪ったのがジオン軍残党ともなれば、一体どこに核兵器を使うのかといった疑問すらある。

 連邦軍としては、最悪ジャブローが狙われるかもしれないと考えてもおかしくはない。

 ジャブローの岩盤は厚く、核兵器とかも防げるらしいが……それでも万が一というのはある。

 それに既に中に入る方法はジオン軍も知ってる以上、最悪……本当に最悪の場合、ジャブローの内部にサイサリスが侵入して、アトミックバズーカを使う可能性も否定は出来なかった。

 何しろサイサリスは重装甲ではあるが、同時に高い機動力も持っているのだから。

 ジオン軍残党が活発に動いていたのは、多分この為だったんだろうな。

 いや、でもジオン軍が活発に動いていたのは宇宙での話だ。

 地上ではそこまで活発に動いてはいなかった筈。

 そう考えると、やはり今回の一件については色々と疑問が残る。

 ……そもそもの話、ジオン軍残党という名称通り、あくまでも残党でしかないのだ。

 そんな者達が、どうやってサイサリスがトリントン基地に運び込まれるという情報を入手した?

 トリントン基地が連邦軍にとって辺境の基地、それこそ左遷先に等しい場所であっても、ガンダム開発計画で開発されたゼフィランサスやサイサリスがアルビオンに乗って来る以上、相応の警備体制ではあった筈だ。

 そうなると、ジオン軍残党はそんなトリントン基地からサイサリスを奪ったという事になる。

 

「とにかく、明日だ。明日にはトリントン基地に到着する」

 

 元々連邦軍に、明日にはトリントン基地に向かうという連絡はしてあった。

 そういう意味では、明日にはトリントン基地に到着するのだ。

 ……それはつまり、明日にならなければトリントン基地に行けないという事でもあるが。

 せめてもの救いは、ハワイからオーストラリアまではそこまで離れていないという事だろう。

 いやまぁ、一般的に考えるともの凄く離れているのは事実なのだが。

 

『……お願いね』

 

 ニナにしては珍しく、心細い表情。

 自分の開発したサイサリスが奪われたのが、それだけショックだったのだろう。

 もっとも、ゼフィランサスと違って、サイサリスは第2研究事業部がメインとなって……いや、待てよ?

 第2研究事業部というのは、ジオンの兵器メーカーからアナハイムが引き抜いた技術者が多数存在している。

 そんな中で、ジオン軍残党が何故かトリントン基地にサリサリスがあるのを知っていて、それを奪った。……これは偶然で片付けてもいいのか?

 勿論、現在の連邦軍と明確に敵対してるのはジオン軍残党だけだ。

 そう考えれば、そこまでおかしな事ではないのだが。

 

「ああ、任せろ。とはいえ、ゼフィランサスが盗まれなかったのは幸いだったな」

『……』

 

 あれ? 何だ?

 さっきまでの心細い表情と違って、今のニナは不満を全身で表しているような、そんな表情をしている。

 

「ニナ?」

『そうね。ゼフィランサスが盗まれなかったことは幸いだったわ。……でもね、新米パイロットが勝手に乗っていいようなものじゃないのよ!』

 

 ああ、その言葉だけで何となく事情が理解出来た。

 多分、サイサリスを奪われたのを見た連邦軍のパイロットが、ゼフィランサスも奪われないようにと、自分で乗り込んだのだろう。

 そうなると……ゼフィランサスに乗り込んだという事は、ガンダム開発計画の原作の主人公はそのパイロットだったりするのか?

 

「落ち着け。ゼフィランサスを奪われるよりはマシだろう?」

『それは……まぁ、そうだけど……』

 

 俺の言葉に、それでも納得出来ないといった表情を浮かべるニナ。

 ゼフィランサスを新米パイロットに使われたのが、それだけ嫌だったらしい。

 とはいえ、その新米パイロットが主人公であったりするかどうかはともかくとして、その新米パイロットのお陰でゼフィランサスが無事だったという可能性も否定出来ない以上、感謝してもいいのだろう。

 ただ、心配なのは……

 

「そのゼフィランサスを操縦したパイロットだが、無事なのか?」

『ええ。サイサリスを奪ったのは、私は知らなかったけど、知る人ぞ知るといった凄腕のパイロットだったらしくて、相手にもされてなかったわ。向こうもサイサリスを奪って脱出するのを優先したからか、ゼフィランサスの相手をしている暇はなかったようよ』

「それはまた……いや、納得出来る事ではあるが」

 

 先程少し疑問に思った件にも繋がるが、サイサリスは第2研究事業部……元ジオン共和国の兵器メーカーから引き抜かれた者達がメインとなって開発したガンダムだ。

 そうなれば、当然だがコックピット内部もジオン系に近いレイアウトとかになっており、ジオン軍残党にしてみれば操縦しやすい訳だ。

 勿論、MSというのは連邦系もジオン系も似たようなレイアウトになっているので、ジオン軍残党が連邦系MSを操縦したり、連邦軍のMSパイロットがジオン系のMSを操縦したりも普通に出来る。

 実際、連邦軍の一部ではジオン軍のMSを接収して、それを戦力として使っているらしいし。

 ……それでも連邦系とジオン系では細かいところが違い、それに慣れていないと、最初のうちはどうしてもストレスになるらしい。

 

「それで、サイサリスを奪ったのは、知る人ぞ知るといった凄腕だったらしいが……誰だ?」

 

 そう、ここが重要だ。

 ジオン軍の中では、士気を高める目的や、連邦軍を畏縮させる目的で、異名を多用した。

 赤い彗星、青い巨星、黒い三連星、荒野の迅雷、真紅の稲妻、白狼……他にも多数。

 宇宙の蜉蝣やソロモンの悪夢は……違うか。

 そういう異名でシーマやガトーが呼ばれているのは間違いないが、その異名についてはジオン軍時代のものではなく、ルナ・ジオンに所属してから呼ばれるようになった異名だ。

 ちなみにルナ・ジオン軍でも異名システムとでも呼ぶべきものはそれなりに使われているものの、そこまで熱心という訳ではない。

 実際、異名持ちに相応しい実力の持ち主がいるにも関わらず、異名がついていないとか、普通にあるし。

 分かりやすいところでは、ガトーやヴィッシュと並んでハワイの最高戦力と呼ぶべきノリスであったり、ケンやゲラート、アンリなんかもルナ・ジオン軍の中では間違いなく腕利きだし。

 ともあれ、そこまで積極的に異名を付けたりとかはしていないのだが、ジオン軍残党は違う。

 それなりに有名なパイロットであれば、ジオン軍残党の中でも異名持ちとして知られていてもおかしくはない。

 そう思って聞いたのだが……

 

『ジオンの騎士、ニムバス・シュターゼンという名前らしいけど、知ってる?』

「それは、また……」

 

 予想外も予想外。全く想像もしていなかった名前が出て来たな。

 知ってるかどうかと言われれば、当然ながら知っている。

 何しろブルーデスティニー関連で、1年戦争の時に俺も直接戦った事のある相手だし。

 イフリート改は撃破したものの、パイロットのニムバスには逃げられた覚えがある。

 にしても、ジオンの騎士か。ニムバスらしい……のか?

 その辺は少し分からないが、とにかくニムバスが一流の……いや、それを越えた超一流の、異名持ちに相応しい技量を持つパイロットなのは間違いない。

 

『その様子を見ると、知ってるようね』

「ああ。異名の方は知らなかったが、1年戦争の時に戦った事がある」

『それはまた……いえ、アクセルの操縦技術を思えば、それも当然なのかしら。そうなると、アクセルがトリントン基地にいたら、ゼフィランサスもあったし、サイサリスが奪われるような事はなかったんでしょうね』

「だろうな」

 

 ニナの言葉については否定しない。

 地上用の設定にしたゼフィランサスには乗り慣れていないとか、そういう不安要素はあるが。

 ただ、それを言うのならサイサリスだって似たようなものだというのもあるが。

 あるいは、オルガの結婚式がなければ、俺もアルビオンと一緒にトリントン基地に下りていた可能性は……いや、これは違うか?

 もし先程から感じている俺の予想、第2研究事業部にジオン軍残党と繋がっている者がいるのなら、それこそ俺がアルビオンと別行動を取るからこそ、トリントン基地からサイサリスを奪ったのかもしれないな。

 その辺については、トリントン基地に合流してからニナに……いや、アルビオンの艦長か、トリントン基地の司令官に話をした方がいいか?

 まぁ、連邦軍の軍人がルナ・ジオンの軍人――という事になっている――俺の話を、どこまで素直に聞くものかは微妙なところだが。

 

「トリントン基地の司令官にアナハイムとして話したり出来るか?」

『無理ね』

 

 俺の問いに、ニナは即座にそう言ってくる。

 

「もしかしてトリントンの司令官は強硬派だったりするのか?」

『いえ、違うわ。ジオン軍残党の襲撃によって、遠距離から司令官達のいた司令部が直撃を受けたのよ。ザメルって知ってる?』

「……マジか……ああ、知ってる」

 

 ザメルというのは、ジオン軍で開発されたMSだ。

 ぶっちゃけ、その外見からしてMSじゃなくてMAじゃないかと思えるのだが。

 まぁ、SEED世界でも四つ足のバクゥがMS扱いされているのを思えば、ザメルをMSと表現するのは間違ってないのかもしれないが。

 というか、ザメル……ザメルか。ザメルはちょっと不味い。

 ザメルというのは、言ってみればホバー移動出来る移動砲台的なMSだ。

 ジオン軍ではそこまで重視されなかった……いや、完成したのが1年戦争終盤近かったというのもあって、十分に活用されなかったMSなのだが、ハワイを領土としているルナ・ジオンにとっては違う。

 ホバー移動というのは、水上でも移動出来る訳で。

 小さな島が複数集まったハワイにおいて、ホバー移動出来るMSというのは戦力的に非常に大きな意味を持つ。

 勿論、水中用MSとか水陸両用MSとか、そういうのも普通に使われているが。

 ホバー移動出来るドム系とかも。

 とにかく、そんな訳でジオン軍ではあまり使われなかったザメルだが、ホバー移動が可能で水上を自由に移動出来るという事で、ハワイでは相応の量産されている。

 さて、問題です。

 サイサリス強奪の、恐らくは……いや、ほぼ確実に陽動として行われた、ジオン軍残党によるトリントン基地襲撃。

 その中でルナ・ジオン軍が相応に運用しているザメルが使われ、司令部を直撃して司令官やら基地の上層部を纏めて殺しました。

 そのような状況で、ルナ・ジオン軍は連邦軍にどう思われるでしょうか?

 答え。強硬派は間違いなくサイサリス奪取の裏にルナ・ジオンがいると主張し、今までは強硬派ではなかった者達もそれを聞いて強硬派に所属する者が現れる。

 あるいはそこまでいかなくても、ルナ・ジオンに対して不信感を抱く。

 1年戦争の時と違い、今のコーウェンはルナ・ジオンと友好関係を築こうとしている。

 だが、そこで今回のトリントン基地襲撃があり、それを行ったのがザメルを使った勢力となると、コーウェンが迂闊に俺達を庇うような動きをすれば、強硬派にとっていい標的だろう。

 つまり、コーウェンとしても今の時点でルナ・ジオンを庇う事は出来ない。

 ……あれ? これってもしかして、明日俺がトリントン基地に行くのは止めた方がいいのか?

 そうも思ったが、ガンダム開発計画のテストパイロットとして……それもガーベラ・テトラという報酬を貰う身としては、ここでトリントン基地に行かないという選択肢がないのも事実。

 

「ザメルはルナ・ジオンの拠点であるハワイでそれなりの数が運用されている。そうなると、ちょっと不味いかもしれないな」

『一応、トリントン基地から追撃の部隊が出てるから、何とかなったりしないかしら?』

「追撃の部隊って……それは危ないんじゃないか?」

 

 俺の知っているニムバスは、MSの操縦技術は非常に高いが、それよりも非常に攻撃的な性格をしている。

 追撃部隊が全滅してもおかしくないと、俺には思えたのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。