転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4160話

 ゼフィランサスとサイサリスを乗せたアルビオンが地上に下りたところで、一気に事態が動いたな。

 それもかなり大きく。

 これ……多分だが、ガンダム開発計画における原作が始まったという事なんじゃないか?

 ファット・アンクルの客席に座りながら、俺はそんな風に思う。

 現在ファット・アンクルはハワイを出発し、オーストラリアのトリントン基地に向かっている。

 

「アクセル代表、やはりこれ以上速度を上げるのは無理という事です」

 

 ノリスがコックピットから戻ってくると、俺にそう言ってくる。

 

「そうか、やっぱり無理か」

「一応、全速力で飛んでいるので、トリントン基地まではそう時間は掛からないでしょう」

 

 俺の隣の席に座り、ノリスがそう言う。

 ノリスの言葉に頷くと、窓の外に視線を向ける。

 ノリスが何故俺と一緒にファット・アンクルに乗ってトリントン基地に向かっているのかは、幾つか理由があった。

 まず1つ目としては、トリントン基地を襲撃したジオン軍残党が使っていたザメルの件だ。

 現在連邦軍は勿論、ジオン共和国軍でもザメルは使われていない。

 ザメルが使われているのは、ルナ・ジオンだけだ。

 そうである以上、昨夜のトリントン基地襲撃でザメルが使われたという事で、ルナ・ジオンが疑われてもおかしくはないので、それに対する弁明として、ハワイを任されているギニアスの特使としてノリスが選ばれた形だ。

 ギニアスにしてみれば……いや、サハリン家にしてみれば、ノリスは忠臣と呼ぶに相応しい存在だ。

 それだけに、こういう役目を任せるにも十分だったのだろう。

 2つ目として、俺の護衛。

 ニナから聞いた限り、トリントン基地で起きた出来事はかなりの大事件だ。

 俺は原作が始まったのだろうと予想しているが、その辺りの情報について何も知らない者達にしてみれば、そのような大事件のあった場所に俺を派遣する以上、護衛は必須と考えたのだろう。

 ……実際にはギニアスは俺の正体を知ってるので、それこそ何があっても俺がいれば対処出来ると思ってはいるのだが、それでも何かあった時の手足はいた方がいいと思ったのだろうし、これは連邦じゃなくてルナ・ジオンにいる者達に向けての対応でもあるが。護衛を付けない訳にもいかなかったのだろう。

 とはいえ、今の俺はルナ・ジオン軍の中尉という立場だ。

 そうである以上、ルナ・ジオン軍の中でも異名持ちとして有名なガトーやヴィッシュを護衛として付ける訳にはいかない。

 そういう意味では、ガトーやヴィッシュと同等の実力を持ちながら、異名持ちとしては知られていないノリスというのは、これ以上ない存在なのだろう。

 サハリン家の忠臣という立場で表に出てこなかっただけに、こういう時に便利なんだよな。

 

「そう言えば、ノリスはまだグフ・カスタムを使ってるらしいが、他の機体に乗り換える予定はないのか?」

 

 窓の外を見るのを止め、ノリスにそう尋ねる。

 俺の護衛も兼ねてという事である以上……ましてや、サイサリスを奪われた件もある以上、ノリスもMSを持ってきている。

 そもそもの話、もしMSを持ってこなくてもいいのならファット・アンクルじゃなくて普通の飛行機とかに乗って移動していたし。

 ……というか、ファット・アンクルもそろそろなぁ。

 ファット・アンクルは1年戦争の時にジオン軍が開発したMS輸送機だ。

 他に丁度いいのがないので、これを使っている。

 ナスカ級が本格的に配備されれば、ミノフスキークラフトが装備されているナスカ級も地球で移動出来るので、そちらを使うんだろうが……生憎と、まだ試験運用中だしな。

 あ、でもそろそろ本格的に量産を始めるんだったか?

 そうなると、先に1隻だけでもナスカ級を送って貰いたいとは思うが。

 ハワイはルナ・ジオンにとって、唯一の地球の領土だ。

 ぶっちゃけ、なければなくてもいいのだが、あればそれで大きな利益になるのも事実。

 だからこそ、俺としても戦力を整えておきたいと思う。

 

「愛着があるものでして」

 

 ノリスの操縦するグフ・カスタムは、1年戦争中のMSとは思えないような動きを普通にする。

 それをずっと使い続けていたのだから、愛着があるのも当然だろう。

 

「まぁ……だろうな。ただ、それでも1年戦争の時のMSである以上、どうしても性能に問題は出て来るだろう?」

「おや、知りませんでしたかな。私の機体はギニアス様によって色々と手を加えられているのですよ」

「……そうなのか?」

 

 ノリスが意外そうな様子で言ってくるが、それは俺にとっても初耳だった。

 というか、ギニアスが手を加えてるとなると……

 

「もしかして、メガ粒子砲とか使えたりしないよな?」

 

 ギニアスといえば、メガ粒子砲。

 そう思うのは俺の気のせいではないだろう。

 1年戦争の技術ではかなり難しかった、マルチロックオン機能をアプサラスに搭載し、そのメガ粒子砲は文字通りの意味で地形を変えるだけの威力を持つ。

 そんなギニアスだけに、グフ・カスタムを改修したのならメガ粒子砲を使えるようになっていてもおかしくないと思ったんだが……

 

「いえ、そういうのはありません。基礎スペックを強化した形です」

 

 どうやらメガ粒子砲を搭載したグフ・カスタムではなく、堅実な性能向上を果たしたグフ・カスタムらしい。

 

「メガ粒子砲ではなくても、ビームライフルとかは装備してもいいんじゃないか?」

 

 グフ・カスタムの動力炉はそこまで出力が高くないが、ギニアスは動力炉のスペシャリストでもある。

 ジオン軍で開発された、ゾックというMS……MSと呼んでもいいのかどうか正直なところ微妙だが、このゾックというMSの動力炉は非常に高い出力を持っていた。

 水陸両用MSなので水冷を使えたというのもあっての高出力だったが。

 だが、ギニアスはそのゾックの動力炉を改修し、水冷ではなかったり、ある程度小型になったりした分、本物よりも多少出力は落ちたが、それでもかなりの高出力なのは間違いない。

 それこそMAを抜かせば……純粋なMSの動力炉として考えれば、1年戦争時代のMSの中でも最高峰だ。

 そんな動力炉を使っている以上、グフ・カスタムであってもビームライフルくらいは使えるだろう。

 そう思ったのだが、ノリスは俺の言葉に対し、首を横に振る。

 

「どうも、私はビーム系の兵器があまり好ましいとは思えず。……ガトーのように若ければ、まだ柔軟に行動も出来たのでしょうが」

 

 ビーム兵器が苦手か。

 UC世界においては、MSに対しても拒否反応を起こした者達が多いとも聞く。

 そう考えれば、ビーム兵器が苦手というノリスの言葉も分からないではない。

 とはいえ、これからの事を考えれば、その苦手意識は克服する必要があるのも事実。

 とはいえ、これからもMSに乗る……サハリン家の守り役として活動するのなら、ビーム兵器にも慣れる必要があるだろうが。

 ノリスもギニアス、アイナ、ガトーと同じく受信機を受け取り、不老の身となっているのだから。

 それはつまり、ノリスもまた不老の身となっている事を意味していた。

 

「その辺は好みだろうが、これからもギニアスやアイナに……もしくはそれぞれの子供に仕えるのなら、ビーム系の兵器にも慣れておいた方がいいぞ」

「……そうですな。ギニアス様やアイナ様、それぞれの御子様の事を考えると、そうしないといけないでしょう」

 

 俺の言葉に、しみじみと呟くノリス。

 ……まぁ、ギニアスはノリスの事を信頼しているし、そう考えるとギニアスの技術力でビーム兵器を使わなくても十分に強力な新型MSを開発するとしてもおかしくはないんだよな。

 

「話は変わるが、ノリスは今回の主犯……いや、実行犯か。その実行犯のニムバスについて知っているのか?」

「直接会った事はありませんな。ですが、アクセル代表……いえ、アクセル中尉は1年戦争の時に直接戦ったのでしょう?」

「そうだな。ただ、戦っただけで話したりした訳じゃないから、性格とかそういうのまでは分からないな」

 

 操縦技術は一流……いや、それを越えた超一流、異名持ちに相応しいだけの実力があったのは間違いないが。

 もっとも1年戦争の時はジオンの騎士という異名は……どうだったか。

 自分では言っていたような気もするが、言ってみればそれだけだったとも思う。

 だが、ニナはともかく、トリントン基地にいた者達がジオンの騎士というのを知っていたと考えると、俺達との戦いが終わった後でジオンの騎士という異名を知らしめるだけの戦いをしたのか。

 あるいは、それこそジオン軍残党として活動してる時にその異名が知られたのか。

 ……とはいえ、ジオンの騎士だろう?

 そんな異名を持っている者が、ジオン軍残党として……いわば海賊とかそういうのをしていたと考えると、それはそれでどうなんだ? と思わないでもなかったが。

 

「アクセル中尉と戦って生き残っているのなら、それだけで腕利きなのは間違いないでしょう。……それに加えて、核兵器運用の為のガンダムですか」

 

 ノリスは自分の言葉に苦い表情を浮かべる。

 元ジオン軍としては、1年戦争序盤で散々使った核兵器に思うところもあるのだろう。

 しかも、それを運用するのがガンダムなのだから。

 

「そうなるな。個人的には嫌いじゃないんだが」

 

 これは俺の正直な気持ちだ。

 ジオン系の技術者の集まりである第2研究事業部が開発したサイサリスは、ジオン系の意匠によるものか、どこか悪役顔っぽい感じがする。

 しかし……いや、だからこそと言うべきなのか、サイサリスには一種独特な魅力があったのも事実。

 純粋に外見だけの問題ではなく、両肩に装備されているフレキシブル・スラスター・バインダーは、MSの機構としてはかなり興味深い。

 サイサリスは核攻撃を行う特徴から、当然ながら核弾頭を持つ必要があり、本来バックパックのある場所……背中に核弾頭を収納するコンテナがあるので、バックパックの類は使えない。

 その代わりに第2研究事業部の面々が考えたのが、両肩のフレキシブル・スラスター・バインダーだ。

 これは言ってみればバックパックに代わる主推進力となる。

 しかも、1基で普通のMSなら十分に動かせるだけの推進力を持っているロケットモーターなのだが、それが片方に2基ずつ、つまり合計4基のロケットモーターがあり、それはつまり4機のMSを動かすのに十分な推進力をサイサリスは持っている事になる。

 もっとも、サイサリスは核攻撃を行う関係上、重装甲でその重量も増えている。

 ……それでも、フレキシブル・スラスター・バインダーの推進力があれば、サイサリスはホバー走行が可能という……かなり興味深いシステムだったりする。

 個人的にはかなり気に入ってるので、出来ればガーベラ・テトラにも採用して欲しかったのだが、ビームガン兼ビームサーベルや、ビームマシンガン兼ビームライフルのように、少しの設計変更で対処出来るようなシステムではないのも事実。

 もし本格的にガーベラ・テトラに採用するのなら、冗談でも何でもなく、それこそ1から設計をしなおすくらいには手間の掛かる作業となる。

 それが分かっているので、今は取りあえず諦めるしかない訳だ。

 とはいえ、いずれどうにかしたいとは思っているが。

 

「アクセル中尉が乗るのなら、まだ納得も出来ましたが……その核兵器、どこに使ってくるとお思いですか?」

「さて、どうだろうな。一番厄介なのは、やっぱりジャブローだろうが。ただ、ジャブローもあくまで可能性が高いだけで、それが絶対という訳ではないだろうし」

 

 それこそ場合によっては、ハワイを攻撃するという可能性も否定は出来ないのだ。

 勿論その可能性は低いものの、ジオン軍残党にとってハワイ……というか、ルナ・ジオンという存在は決して好ましい存在ではないのだから。

 それを示すように、以前ハワイはジオン軍残党に襲撃された事があるし。

 あれは……水天の涙の時だったか?

 

「ハワイ……それは、絶対に止めなければなりませぬな」

 

 覚悟を決めた表情でノリスが言う。

 無理もないか。

 ハワイにはギニアスとアイナという、ノリスが忠誠を誓っている者達がいるのだから。

 だからこそノリスは今まで以上にやる気になったのだろう。

 

「そうだな。向こうが何を企んでいるんだとしても、こっちとしてはそれを止めるという手段以外はない。……もっとも、ニムバスがサイサリスを奪ってどこに逃げたのかは……追撃隊を出すとニナが言っていたし、それで逃亡先が分かればいいんだが」

 

 最善なのはニムバスを倒すか、もしくはサイサリスの奪還だが……難しいだろうな。

 トリントン基地は連邦軍の中では左遷先のような扱いを受けている場所だ。

 そんな基地に、ニムバスのような異名持ちを倒せうるようなパイロットがいるとは、到底思えない。

 ましてや、サイサリスは核兵器運用を前提としたMSだが、基本的な性能も非常に高い。

 フレキシブル・スラスター・バインダーによって高い機動力を持ち、ビームサーベルは普通とは違って威力の調整が出来る特別性。牽制も頭部バルカンを使うとなると……ゼフィランサスが撃破されないよう、祈る事しか俺には出来なかった。

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