転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4161話

 ファット・アンクルがトリントン基地に到着し、俺はノリスを引き連れて地上に降りる。

 そこにいたのは、大佐の階級章を付けた男……というか、エイパー・シナプス大佐の姿があった。

 一緒にいるのは、以前少し見た事があるブリッジクルーの……イワン・パサロフだったか?

 護衛のつもりなのか?

 まぁ、身体は大きいし、そういう役割をやろうと思えば出来るだろうが。

 ただ……ちょっとした身体の動かし方を見る限りでは、多少は鍛えているようだが、あくまでも多少程度でしかない。

 もし本気で俺と戦うような事になったら一瞬も持たないだろうし、それこそノリスと戦っても負けるだろう。

 ちなみに、ニナとモーラも一緒にいたのは少し驚きだったが。

 ……いや、でも考えようによってはそうでもないのか?

 今の俺はあくまでもアナハイムに協力する立場なのだから、アナハイムから出向している中でもトップであるニナが俺を出迎えにくるのはそうおかしな話ではない。

 そんな風に思っていると、シナプスが敬礼をしてから口を開く。

 

「久しぶりだな、アクセル中尉」

「ああ、久しぶり。来るのが少し遅くなってしまったな」

 

 当然ながら、俺はシナプスとは面識がある。

 ニナに案内されて、初めてアルビオンを見た時は用事があって会えなかったが、その後に何度かアルビオンに行く機会があり、その時に顔合わせをしている。

 俺が中尉という立場ではあるが、こうして気安い口調で言葉を交わしているのは、中尉は中尉でも連邦軍の中尉ではなく、ルナ・ジオン軍の中尉だからだ。

 その為、シナプスにしてみれば階級は下だが別の軍隊なので、こうして気楽な言葉遣いが許されている。

 ……まぁ、それは相手がシナプスだからというのが影響してるだろう。

 相手の性格によっては……それこそ強硬派とかが相手だった場合、所属する軍が違っても、中尉が大佐にそんな口を利くとは何事だと、怒り狂う奴もいる筈だ。

 そういう意味では、シナプスがこういう性格で助かった……いや、コーウェンの考えによるものかもしれないな

 ガンダム開発計画の責任者であるコーウェンは、当然ながら俺の性格について知っている。

 そして俺がガンダム開発計画に協力している以上、アルビオンに乗るのは容易に想像出来るだろう。

 だからこそ、俺と衝突しないようにコーウェンはシナプスを用意したと考えても、おかしくはない。

 ……いや、そこから更に1歩踏み込んで考えてみれば、シナプスはコーウェンが俺について聞いている可能性も否定は出来ないな。

 だからこそ、シナプスは俺の言葉遣いについても特に気にしていないという可能性があるのか。

 

「それで、来るのが遅くなってなんだが……現在のトリントン基地の状況は? 俺が昨日聞いた限りだと、サイサリスを奪還する為に追撃をしたという話だったが」

 

 そう言うと、シナプスの表情が微かに強張る。

 

「……どうやら、その様子を見る限りだと追撃は失敗だったようだな」

「うむ」

 

 短く、だが確実にシナプスが俺の言葉を肯定する。

 ニムバスのような異名持ちを相手に、トリントン基地の戦力でどうにかするのは難しいと思っていたので、その予想が当たった形だ。

 

「ちなみに、サイサリスはニムバスに奪われたとして、ゼフィランサスはどうなったんだ? ニナからはトリントン基地のパイロットが乗っていると聞いてるが」

 

 そう言い、ニナに視線を向ける。

 するとニナは色々な感情を我慢した様子で口を開く。

 

「何とか無事ではあるわ。破損状態も小破以上中破未満といったところかしら」

「……へぇ」

 

 ニナの言葉は俺にとっても少し意外だった。

 それこそサイサリスだけではなく、ゼフィランサスまでも奪われたと言われても納得出来たのだから。

 もしくは、サイリスに撃破されたと言われても納得は出来ただろう。

 だが、小破以上中破未満といった様子ではあっても、無事に戻ってきたのだ。

 ゼフィランサスのテストパイロット――実際にはパワード・ジムの操縦が殆どだったが――としては、嬉しい限りだ。

 

「ゼフィランサスが無事に戻ってきたのはいい。それで、現在トリントン基地の指揮は誰が執ってるんだ? 昨日ニナから聞いた話だと、司令官とその側近は全滅したらしいが」

 

 それも、ザメルの攻撃で。

 そう考えると、俺の出迎えに来たのがシナプスだったのはある意味でラッキーだったのかもしれないな。

 ザメルを運用しているのはルナ・ジオンだけである以上、トリントン基地の軍人達にしてみれば、俺達が来たのなら不満を……いや、憎悪をぶつけてもおかしくはないのだから。

 

「現在は取りあえず私が指揮を執っている。階級が一番上なのでな。もっとも、それも追加の人員が来るまでの間になるだろうが」

「……そうか。それでこれからどうする予定なんだ?」

「近いうちに戦力の補充があり、アルビオンで試作2号機……サイサリスの追撃を行う予定になっている。アクセル中尉がどうするのかは、こちらでは決められないが」

 

 ルナ・ジオンの人間である俺に、アルビオンに乗ってニムバスを追撃しろと言っても、所属の違いからそれは無理だ。

 だが、シナプスとしてはフィフス・ルナでの俺の行動によって、その実力を知っている。

 パワード・ジムを操縦した際の映像とかは見ているだろうし、もしかしたら俺が最初にフィフス・ルナに行った時に行った、模擬戦についての映像も見ている可能性はある。

 ニムバスという、異名持ち。それも最新鋭MSのサイサリスに乗っているのを相手にするとすれば、俺を戦力に組み込みたいと思うのはそうおかしな事ではなかった。

 そして、俺にとってもシナプスのその言外の誘いは悪くないものだ。

 何より俺の中ではガンダム開発計画に関する原作が始まったという認識で、ゼフィランサスに乗ったのが主人公なのだろうという風にも思っている。

 原作が始まったと思われる以上、それに介入するのは俺としては当然だろう。

 とはいえ……

 

「出来れば協力したいところだ。何しろ、ニムバスが奪っていったのはサイサリスだしな。しかも、核兵器の砲弾も搭載したままなんだろう」

「……うむ」

「ルナ・ジオンに所属している俺が言うのも何だが、ジオン軍残党はルナ・ジオンを恨んでる者が多い。そうなると、サイサリスが核兵器を使う候補の1つにはハワイもある訳だ」

「では?」

「協力しよう。……ただ、シナプスも知ってると思うが、俺は本来ゼフィランサスのテストパイロットとしてトリントン基地に来るつもりだった。トリントン基地が襲撃されたから、護衛としてノリスを連れてきたし、ノリスの乗るMSも持ってきたが……俺のMSがない」

「それは……」

 

 シナプスにとって俺の言葉は予想外だったのか、戸惑ったような声を上げる。

 勿論、俺がその気になればMSはすぐにでも用意出来る。

 例えば影のゲートを使ってハワイに転移し、そこでMSを用意して貰うといったように。

 もしくは、空間倉庫に入っているミロンガ改を使うとか。

 ニーズヘッグは論外だが、サラマンダーはサラマンダーで、変形するという意味で注目を集めてしまう。

 そうなると、やっぱり空間倉庫の中から使うとすると、ミロンガ改だろう。

 

「連邦軍の方でMSを用意出来るのなら、それはそれで構わないが?」

「……ジム・カスタムなら用意出来る」

 

 ジム・カスタム……ああ、聞いた覚えがある。

 水天の涙の時にシェリーがテストパイロットをしていたMSだったか?

 ジオン軍残党のスパイがテストパイロットをしていた事で、水天の涙が終わった後、ジム・カスタムともう1機種はジム改だったか? とにかく連邦軍で使うかどうかを迷っていたという話を聞いた覚えがあったが、どうやら無事採用になったらしい。

 連邦軍にしてみれば、軍事予算の縮小……というか1年戦争が終わって通常の状態に戻った事によって、新型MSの開発はそう簡単に出来なくなったのだろう。

 その為、ジム・カスタムは正式に採用されたといったところか。

 ともあれ、ジム・カスタムに乗れるというのは俺にとって悪くない話だ。

 連邦軍の最新鋭量産型MSな訳だし。

 後は、上手い具合にこの一件を解決したら、ジム・カスタムを貰えるようにするといったところか。

 

「ちょっ、ちょっと待って! アクセルが来たんだから、ゼフィランサスに乗ればいいじゃない!」

 

 シナプスと話をしていると、それを聞いていたニナがそう言ってくる。

 ニナにしてみれば、何で俺がゼフィランサスに乗らないのかという思いなのだろうが……

 

「そもそも、ゼフィランサスは中破とまではいかないものの、ダメージを受けてるんだろう? そうなると、そもそも修理しないと操縦出来ないし、それにこういう状況になってしまうと、修理が終わってもゼフィランサスはサイサリスの追撃任務で使われる。つまり実戦配備される以上、テストパイロットでルナ・ジオン軍の俺が乗るのは難しい」

 

 そう言うと、シナプスとモーラがそれぞれ頷く。

 俺がゼフィランサスに乗るというのは、あくまでもテストパイロットとして……ゼフィランサスが完成するまでの間で、それが終わればゼフィランサスは連邦軍に納入されるのだ。

 今は正式に納入された訳じゃないし、話を聞いた限りだと原作主人公と思しき者が勝手に乗り込んだらしいが、そう考えても既に連邦軍に渡されているという状況なのは明らかなのだ。

 そうである以上、俺がゼフィランサスに乗るのは色々と都合が悪い。

 

「そんな訳で、俺がゼフィランサスに乗るのは色々と不味い訳だ。……ニナもそれで納得出来ないか?」

「でも、あの子は私とアクセルで作り上げたのに、それをあんな何も知らない……」

「ニナ」

 

 ニナの言葉を遮るように、モーラが声を掛ける。

 ゼフィランサスに対するニナの思い入れを考えれば、そんな風に言いたくなるのも分からないではない。

 あるいはこれが、ヤザンのような腕利きのパイロットが乗るのなら、ニナもそれなら……という事で納得出来ただろう。

 それこそヤザン程の技量があれば、サイサリスを奪ったニムバスを捕らえるなり、もしくはそれが無理でも撃破するなりといったことが出来ていた可能性は十分にある。

 だが、結局ニナに話を聞く限りだと、サイサリスには特にダメージらしいダメージを与えることなく、それでいてゼフィランサスが一方的にダメージを負ってしまったのだから、ニナにしてみれば堪ったものではないだろう。

 ゼフィランサスとサイサリス……双方共にガンダム開発計画で開発されたMSだったが、その性能は大きく違う

 ゼフィランサスがRX-78-2の正統後継機と呼ぶべき汎用機であるのに対して、サイサリスはあくまでも核兵器運用を前提にしたMSだ。

 核兵器を抜きで普通に戦った場合、ゼフィランサスの方が間違いなく有利なのだ。

 勿論、サイサリスもフレキシブル・スラスター・バインダーによる高機動力や厚い装甲、強力なビームサーベルといったように、有利な点はあるのだが……ビームライフルを持っていないというのは、この場合はどう考えても致命的だろう。

 そんな状況で戦ったのに、一方的に負けたのだ。

 ニナにしてみれば、我慢出来ないと思ってもおかしくはない。

 ……まぁ、ガンダム開発計画の原作の主人公だと考えれば、そうおかしくはない結果なのもしれないが。

 この世界……1年戦争の時の主人公であったアムロも、最初からMSの操縦が出来た訳ではない。

 もっとも、世の中には妙な噂が広がるもので、中にはアムロがガンダムのコックピットに乗った瞬間にニュータイプの力でガンダムの操縦方法を手に取るように分かった……といったようなものもあるらしいが。

 勿論それはあくまでも噂でしかなく、実際には違う。

 マニュアル片手に何とか戦ったというのが正しい。

 

「落ち着け。とにかく俺が協力するのは約束するから、今はとにかくサイサリスを……ニムバスを追うのを優先する必要がある。それに、戦力も整える必要があるだろう?」

 

 言い聞かせるようにニナに言う。

 実際、ジオン軍残党を倒すとなると、こちらにも相応の戦力が必要となる。

 ましてや、ゼフィランサスの修理もする必要があると考えると、すぐに出撃という訳にはいかないだろう。

 ノリスのグフ・カスタムはともかく、俺の乗るジム・カスタムも用意する必要があるだろうし。

 また、連邦軍としても自分達の基地を襲撃して最新鋭MSを奪ったジオン軍残党の追撃を俺達だけに任せる訳にはいかない。

 そんな事になって俺達がニムバスを捕らえてサイサリスの奪還をしたら、連邦軍の面子はこれ以上ない程に潰されるのだから。

 連邦軍にしては……特に強硬派にしてみれば、そんな状況は絶対に許容出来ない筈だ。

 そうならない為に、しっかりと戦力を用意するのは間違いない。

 ……問題なのは、一体どういう戦力を用意するのかは分からないが。

 もし強硬派から派遣されてきたら、正直なところ上手くやっていける自信がないし。

 そんな風に思いながら、俺はニナやシナプスと会話を続けるのだった。

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