転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4163話

 何となく……本当に何となくだが、俺の視線の先にいる男がガンダム開発計画の原作の主人公、コウ・ウラキなのだろうと予想出来た。

 そんな俺の予想は、バニングが口を開いた瞬間に正解であった事を知る。

 

「おう、ウラキ。丁度いいところにきたな」

「え? ……あ、その……」

 

 戸惑った様子で俺とノリスを見るウラキ。

 ウラキにしてみれば、見ず知らずの相手とこうして遭遇するのは予想外だったのだろう。

 とはいえ、バニングの顔の広さを考えれば、そんなにおかしな事ではないと思うのだが。

 

「こっちはアクセル・アルマーだ。そっちにいるのはアクセルの護衛。アクセル、こいつがコウ・ウラキだ」

 

 そう言い、バニングは短くそれぞれを紹介する。

 うーん……それにしても、このいかにも坊ちゃんといった様子のウラキが、原作主人公?

 いやまぁ、坊ちゃんという意味では、キラとかもそうだったが。

 スーパーコーディネイターであっても、結局のところ素人でしかなかったキラと比べれば、ウラキは士官学校を卒業してテストパイロットとなっている分、相応の技術や心構えは持ってるんだろう。

 そういう意味では、キラよりもマシ……か?

 もっとも、スーパーコーディネイターのキラと比べると、身体能力や学習能力という点でどうしても1歩も2歩も劣るのは間違いないが。

 

「えっと、その……アクセルさん、どうかしましたか?」

 

 俺が自分の顔をじっと見ているのを不思議に思ったのか、ウラキがそう聞いてくる。

 

「いや、何でもない。ただ、お前がゼフィランサスを中破……まではいかないが、大きな損傷を与えたんだと思ってな」

「ぐ……」

 

 俺の言葉に、ウラキは何も言い返せない。

 とはいえ、別に俺もその件でウラキを責めようといったつもりはない。

 今回の一件については、しょうがないとすら思っている。

 何しろ、相手はニムバス・シュターゼン、ジオンの騎士なのだから。

 寧ろそういう意味では、大破や撃破までいかずに戻ってこられただけで、十分褒めるべきだとすら思う。

 ただ、坊ちゃん気質のようなウラキだ。

 ここで下手に褒めるような事をすれば、それこそ調子に乗るような事になってもおかしくはない。

 とはいえ、落ち込ませたい訳でもないので、一応フォローはしておいた方がいいか。

 

「とはいえ、ニムバスを相手にして生きて戻ってこられたんだ。機体については修理すればどうにかなるだろうし、そういう意味では筋は悪くないんじゃないか?」

「ニムバスに勝った事があるアクセルがそういう事を言っても、嫌味にしか聞こえんがな」

「え?」

 

 バニングの言葉に、ウラキが俺を驚きの視線で見てくる。

 

「その……今更ですが、貴方は……」

「そう言えば、きちんとした自己紹介はまだだったな。俺はルナ・ジオン軍所属の、アクセル・アルマー中尉だ。ウラキに分かりやすく説明するのなら、1年戦争の時に一時的にだがバニングと同じ部隊で戦っていた。後は、今バニングが言ったように1年戦争の時にニムバスと戦って勝利した事がある。……もっとも、撃破したのはMSであって、パイロットのニムバスには逃げられたけどな」

 

 そんな俺の言葉に、ウラキは信じられないといった表情で視線を向けてくる。

 無理もないか。

 今の俺は10代半ばの姿で、それこそウラキよりも若く……いや、幼く見えるのだから。

 そんな俺が1年戦争を戦ったとなると、一体何歳くらいの時に戦ったのかと、そう思うだろう。

 とはいえ、それでも直接嘘だと、信じられないと言わないのは、バニングがこういう場でそういう事を言うような性格ではないと理解しているからか。

 これについては、コウを責められないが。

 何しろ今の俺は10代半ば。

 そして今は0083で、1年戦争は0079。

 つまり、ウラキにしてみれば俺は10歳かそこらで1年戦争に参加し、その上でニムバスを倒したという事になる。

 バニングの言葉とはいえ、到底すぐに信じられないのは納得出来る。

 

「一応言っておくが、こう見えて俺は20歳にはなってるからな」

「……ああ、そう言えばそうだな。何か不思議だと思ってたんだが、アクセルは俺が1年戦争の時に見た時から成長していないのか」

「いや、成長はしてるぞ。ただ、その成長度合いが小さいだけで」

 

 俺の言葉にバニングが驚いたように言うのに、そう返す。

 勿論それは言葉だけで、実際には10代半ばから成長はしていない。

 ……というか、俺がアクセル・アルマーである事は変わらないんだから、もし20代の姿になれば、シャドウミラーを率いているアクセルと同一人物であるという事になるだろう。

 それは危険だし、この話題を続けるのは不味いので話を逸らすか。

 

「ちなみに他にもウラキに関係ありそうなところでいうと、ガンダム開発計画のテストパイロットとしてルナ・ジオン軍から派遣されている」

「え……」

 

 その言葉はウラキにとってもかなり予想外だったらしい。

 自分が乗ったゼフィランサスの本来のパイロットだと言われれば、それを気にするなという方が無理だろうが。

 

「その……じゃあ、試作1号機はこれからアクセル中尉が?」

「いや、形の上では既に連邦軍に引き渡された事になってるし、俺がゼフィランサス……試作1号機に乗る事はないと思う。ニナはうるさいだろうけど」

 

 ニナの名前に、ウラキは微妙な表情を浮かべる。

 うん、まぁ……だろうな。

 MSオタクであり、強気な性格をしているニナにしてみれば、士官学校を出たばかりのウラキにゼフィランサスのパイロットをして欲しいとは思わない筈だ。

 もし俺がいなくても、その場合はバニングにゼフィランサスのテストパイロットを頼んだと思う。

 実際、バニングは不死身の第4小隊を率いて1年戦争を戦い、モンシア達を誰も殺さなかったという実績がある。

 まぁ、ゼフィランサスのテストパイロットに必要な能力は、部隊を率いるのではなくMSを操縦する技術だろうが。

 ただ、バニングはそちら方面でも決して腕が悪い訳ではない。

 寧ろベテランとしてかなりの技量の持ち主であるのは間違いなかった。

 もっとも今となっては足を骨折しているので、それは無理だろうが。

 不幸中の幸いだったのは、その足の骨折もそこまで酷いものではないし、それ以外の傷も軽傷と呼ぶに相応しいものだったことだろう。

 とはいえ、それでもゼフィランサスのパイロットは難しいだろうが。

 

「えっと、その……まぁ、僕は嫌われているみたいなので」

 

 困った様子で言うウラキ。

 実際には、別にニナもウラキをそこまで極端に嫌っているとか、そういう事ではないと思うんだが。

 良くも悪くも、ニナはMSの事になるとそれに一途というか、熱中しすぎるというか、そんな感じだ。

 それだけに、ニナの事をよく知らない者にしてみれば、誤解されやすいタイプなのは間違いない。

 ポーラを始めとするクラブ・ワークスの面々はそんなニナのことをよく理解して仲良くしていたし、俺も……まぁ、最初は外見からニナにテストパイロットをやれるのか? といったように思われて険悪な雰囲気だったが、実力を示した事や、その後のやり取りでそれなりに親しくはなったと思う。

 それにしても、僕か。

 そういう一人称が、余計にウラキを坊ちゃんという風に思えてしまうのだろうが。

 せめて自分とか私とか俺とか、そういう一人称ならまだ少しは違ったんだろうが。

 

「ニナは色々と誤解されやすい奴だが、仕事に一生懸命なだけ……MSを好きすぎるだけなんだ。そういう面ではウラキも分かるところがあるだろう?」

 

 何しろウラキは、ゼフィランサスを見ただけで性能を大体推測出来ているし、サイサリスを見て核兵器運用を前提としたMSだと推測している。

 パイロットとしての操縦技術はともかく、知識という点では間違いなく新米以上のものを持っているのは間違いない。

 そういう意味では、ニナとウラキは意外と気が合いそうなんだが……いや、でも、うーん、どうだろうな。

 お互いにMSオタクであった場合、お互いに高度な知識を持っている分、それが理由で友好的に接することは出来なくなる、それどころか対立するという可能性は十分にあった。

 だからこそ、上手くやっていけるかどうかは微妙なところだろう。

 この辺については、下手に俺が関与しない方がいいか。

 

「そう、なんですか?」

「ああ。テストパイロットとして俺と会った時も、最初は俺の外見からMSの激しい動きに身体が耐えられるのかと心配されたくらいだしな」

「はっはぁ……あのパープルトンさんがね。アクセルの事を知っていれば、出てこない言葉だ」

 

 俺とウラキの話を聞いていたバニングは、我慢出来ないといった様子で吹き出す。

 バニングの場合は、1年戦争で俺と一緒に戦ったので、その実力については十分に理解している。

 だからこそ、今の話を聞いて吹き出したのだろう。

 

「1年戦争が終わってからも成長していない今の俺の身体を見れば、そういう風に思うのはおかしくはないけどな。寧ろそういう風に心配したというのは、ニナの優しさからだろう」

 

 そう言いつつも、その一面もあるにはあるだろうが、実際にはやっぱり俺がゼフィランサスの性能をきちんと発揮出来ないと思ったからというのが大きいのだろうなと思う。

 結局のところ、ニナにとってはゼフィランサスの性能を最大限に活かせるパイロットなら文句はないのだ。

 実際、俺がパワード・ジムを使ってフィフス・ルナに駐留していたMS隊と模擬戦を行って勝利をしてからは、不満を言わなくなったし。

 俺に性格的な問題があれば、ニナも許容出来なかったかもしれないが。

 ……いや、俺も自分を何の問題もない清廉潔白な人物だとは言わない。

 ただ、例えばモンシアのように美人だと判断すれば即座に口説きにいくとか、そういう事はしない。

 クラブ・ワークスはニナやポーラを含めて美人や可愛いといった表現が相応しい、顔立ちの整った者達が集まっている。

 それだけに、もしモンシアがゼフィランサスのテストパイロットをやる事になっていれば、間違いなく問題は多発した筈だ。

 そういう意味では、俺は色々とニナと衝突したが、それだけだ。

 

「そう……ですか。それなら……」

「そう言えば、ウラキ、キースの奴はどうした? いつも一緒のお前達が別々に行動してるとは珍しいな」

 

 話題を変えようと思ったのか、バニングは不意にそんな事を口にする。

 

「キース? 話を聞く限り、それはウラキの同僚か?」

「え? あ、はい。その、キースはMSの修理や整備の件で……」

 

 言葉を濁すのは、自分はゼフィランサスを中破に近いダメージを与えたのに、こうして特に何をするでもなく、ここにいるからか。

 ニムバスの追撃を行った時、ウラキは咄嗟にゼフィランサスに乗っていたのでそれを使ったが、それ以外の面々は普通にトリントン基地にあるMSを使っていたらしいし。

 そして言うまでもない事だが、トリントン基地は半ば左遷先のような場所だけに、MSについても最新鋭の機体が回ってくる事はない。

 それこそゼフィランサスとサイサリスを除くと、最新鋭のMSは恐らく俺が宇宙で乗っていたパワード・ジムだろう。

 ……そのパワード・ジムも、ニムバスの追撃戦でジオン軍残党によって撃破されてしまったらしいが。

 もし無事だったら、俺が乗る機体はジム・カスタムではなくパワード・ジムになっていた可能性も高い。

 自分の乗っていたMSが撃破されたというのは……やはり、思うところがない訳でもなかったが。

 

「ちなみに、そのキースって奴は何に乗ってたんだ?」

「え? あ、はい。ザクです。正確には、ザクⅡF2ですが」

「それは、また……」

 

 ザクⅡF2というのは、簡単に言えばザクⅡF型の後期生産型だ。

 ザクⅡFZ……いわゆるザク改とはまた違う、ザクⅡF型の後継機……いや、後期生産型である以上、後継機という表現はちょっと違うか?

 取りあえずザクⅡF型以上、ザクⅡ改以下の性能と覚えて貰えばそれでいい。

 ……そもそも、ザクⅡ改は純粋な性能ではゲルググに近いものがあるので、ザクと一緒にするのはどうかと思うが。

 また、推力もかなり上がっており、ドムのようにずっとという訳にはいかないが、短時間なら、ホバー移動が出来る程だ。

 もっとも、ホバー移動は出来る程の推力はあるものの、推進剤はザクⅡF型と変わらないので、稼働時間は半分くらいになっているという話だが。

 ともあれ、ザクⅡF2は連邦軍から見ても良い機体だと判断し、1年戦争が終わって結構な数を接収したらしい。

 ジオン共和国を率いるガルマにとっても、実質的に負けた状態であると考えれば接収について強く反対する事は出来なかったのだろう。

 結果として、連邦軍ではMSの操縦訓練とかにもザクⅡF2が使われるようになったらしい。

 そしてトリントン基地のような左遷先となると、最新鋭のMSではなく、そういう接収したMSも使わないと駄目だった、と。

 そう俺はウラキの話を聞いて納得するのだった。 

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