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設定集
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オリジナル機体
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「アクセル!」
ペズンから月に戻ってきた俺は、早速ディアナに向かおうとしていたのだが……ちょうどそのタイミングで声を掛けられる。
声のした方に視線を向けると、そこにいたのは俺の恋人の1人、クリス。
「クリス? どうしたんだ? ……というのは、聞くまでもないか」
「そうね。アクセルの事だから真っ直ぐディアナに行くと思ってたわ。だから私が迎えに来たのよ」
クリスは一応所属はルナ・ジオン軍ではあるが、基本的にはディアナに出向している。
何しろMSの開発技術を持っており、テストパイロットとしても優秀なクリスだ。
兵器開発メーカーのディアナにしてみれば、それこそ喉から手が出る程に欲しい人材だろう。
「って事は、もしかしてガーベラ・テトラのテストパイロットをやっていたのはクリスなのか?」
「ええ。正確には私とシーマの2人でだけど」
「……シーマが? 何でまた?」
シーマもまた、俺の恋人の1人だ。
ただ、それと同時にシーマはセイラとはまた違った意味でルナ・ジオンの象徴とも呼べる人物で、ルナ・ジオン軍に一応は所属しているものの、実質的にはもう1つの軍隊と呼ぶべき海兵隊を指揮している。
宇宙の蜉蝣の異名持ちでもあり……当然ながら、そんなシーマは普段から忙しくしている。
だというのに、そんなシーマがわざわざガーベラ・テトラのテストパイロットをやるというのは……
クリスがいなくて、他にテストパイロットが出来る者がいないとかなら、まだ理由は分からないでもないんだが。
「女の勘、らしいわよ?」
「……そう言われると、俺からは何も言えなくなるんだが」
クリスの言う女の勘というのは、それこそ俺には全く理解出来ない。
出来ないが、千鶴とかを見ていると決して侮っていいようなものではないのも間違いないんだよな。
「まぁ、シーマは今まで色々とあったから」
「ちなみにシーマは分かったが、クリスは女の勘とかそういうのはなかったのか?」
「どうかしらね」
そうして言葉を交わしながら、俺はクリスと共にディアナに向かうのだった。
「へぇ、これが……赤いのは、やっぱり俺が乗るからか?」
ディアナの中でも、特に機密度の高い格納庫。
それこそ無断侵入すれば警備兵に撃たれてもおかしくはない、そんな格納庫の中で、俺は視線の先にあるMSを見て感心しながらそう言う。
MSの外見としては、まず最初にとてもではないがガンダムに見えないというのが大きい。
試作4号機をベースにして改修した機体なのだが、ジオン風に改修したというだけあって、いわゆるガンダムフェイスではなくモノアイになっているし、連邦系MSの特徴である直線的な装甲ではなく、ジオン系MSの特徴である曲線的な装甲が多用されていた。
他に目につくのは、肩の装甲に大きなスラスターが埋め込まれているという事だろう。
これがかなり目立つ。
典型的なジオン系MSなのは間違いなかった。
「ああ、アクセルの乗る機体だからね。ディアナのメカニック達が、喜んで赤く塗っていたよ」
そう言いながら姿を現したのは、シーマ。
いつも手放さない大きな扇子で肩を叩きながら、笑みを浮かべつつそう言う。
「シーマ、ガーベラ・テトラのテストパイロットをやってくれたんだって? 悪いな」
「そのくらいはいいさね。自分の男を支えるのも恋人の役目だろう? それに……何だかこの、ガーベラ・テトラという機体は気になるんだよね」
そう言い、シーマの目はガーベラ・テトラに向けられる。
何でそこまでシーマが気にしてるのかは、俺には分からない。
まぁ、何となく気になったというのはあるので、その辺には突っ込まないでおこう。
「赤って、本来なら赤い彗星の……シャアのパーソナルカラーなんだけどな」
この世界において、赤系のパーソナルカラーを持つのは、赤い彗星のシャアと真紅の稲妻ジョニー・ライデン。
そして1年戦争で月の大魔王の異名を持つようになった、俺。
だだ……自分で言うのもなんだけど、1年戦争における俺の活躍は大きかったので、それによってシャアとジョニーが割を食ってる形だ。
まぁ、そのシャアもジョニーも、現在どこにいるのか分からないんだが。
「そうかもしれないけど、ルナ・ジオン軍で赤と言ったら、アクセルだろう?」
自信満々にそう言ってくるシーマ。
クリスもそんなシーマの横で素直に頷いていた。
「まぁ、それは否定しないが。……色はともかくとして、機体の調子はどうだ? 強襲用のMSということで、高い機動力を持つ筈だけど」
「そうさね。機動性と運動性はかなり良いよ。特に肩のスラスターユニット、ショルダー・スラスター・ポッドという名称らしいけど、これがいいね。生半可なパイロットじゃ、機体の動きについていけないと思うよ。……まぁ、アクセルなら心配はいらないだろうけど」
そう言い、ガーベラ・テトラを見るシーマ。
ショルダー・スラスター・ポッドとやらが目立つガーベラ・テトラだが、その点はサイサリスとは違う。
サイサリスの場合は核弾頭を背中に保管する必要があったので、メインスラスターは背中ではなくフレキシブル・スラスター・バインダーがそれだった。
そんなサイサリスと違い、ガーベラ・テトラはショルダー・スラスター・ポッド以外に、普通に背中にもスラスターがある。
もっとも、サイサリスのフレキシブル・スラスター・バインダーと違い、ショルダー・スラスター・ポッドはそこまで大きくはないが。
「純粋な機体性能という点では、それこそデータで回ってきたゼフィランサスよりも明らかに上だろうね」
ここでサイサリスやステイメンを例に挙げなかったのは、サイサリスはあくまでも核兵器用のMSで、ステイメンはデンドロビウムとセット運用されるのが前提だからこそだろう。
つまり、比べる相手はゼフィランサスが相応しいというのがシーマの判断なのだろう。
「武装については?」
「まず、アクセルが注文したというビームマシンガン。……一応ビームマシンガンとビームライフルの使い分けが出来るようにはなってるけど、ビームライフルとして使った場合はエネルギーの消耗はかなり激しいね」
シーマはそう言うとクリスに視線を向ける。
その視線にクリスが頷く。
「そうね。ビームライフルと一口に言っても色々だし、ガーベラ・テトラはEパック方式という、従来とは違う形式なのもあって正確な差異は分からないけど、大雑把に計算した限りだと、普通にビームライフルとして使った場合、1発でガルバルディβの2発……いえ2.5発くらいのエネルギーを消費するわ」
「それはまた……ちなみに、威力は?」
「ガルバルディβより少し強い程度……1.3倍くらいかしら」
「それはまた……」
思わず数秒前と同じ言葉を口にする。
エネルギー消費が激しくなるというのはクレハから聞いてはいた。
聞いてはいたが、エネルギー消費に対して威力が……
「でも、これについてはそもそもアクセルのアイディアなんでしょう?」
「それは否定しない。けど、ここまで燃費が悪くなるというのはちょっと……いや、かなり予想外だった」
「ビームマシンガンとビームライフル、どちらか片方だけならともかく、どちらも使えるようにする。しかも、Eパックという新しい方式でよ? 正直なところ、アナハイムの技術者はよくやったと思うわ」
クリスの言葉に、シーマもまた頷いていた。
そんな様子を見る限り、ビームマシンガンとビームライフルの両方を使えるようにするというのは、少し無茶だったかと思ってしまう。
それでもこうして形にした辺り、クリスが言うようにアナハイムの技術者達もかなり頑張ったのは間違いないのだろう。
「ちなみにだが、ディアナでビームマシンガンを改修するのは出来るか?」
「出来るかどうかと言われれば、間違いなく出来るわ。ただ、当然だけど今日改修をするように言って、明日にはすぐ出来るといったことではないわよ? それこそ、それなりの時間が掛かるのは間違いないわ」
「あー……じゃあ、取りあえず改修出来るように検討してみてくれ。取りあえず今はこのまま使うけど、改修出来るのならそういう風にして欲しいし」
「分かったわ。それで、次の武装だけど……こっちもアクセルの要望ね。両手首の内側にビームサーベル兼ビームガンがあるわ。本来ならガーベラ・テトラのビームサーベルは脚部の付け根付近にあって、実際に使う時にサイドアーマーが展開して、ビームサーベルを使えるようになるといった感じだったらしいけど」
「手首の内側と脚部のサイドアーマー内か。どちらにせよ、ガンダムとかと違って外見からビームサーベルを見る事は出来ないんだな」
あるいは、これもまたガーベラ・テトラがガンダム試作4号機をベースにしたMSであるというのを、隠そうとしてのことなのかもしれないな。
個人的にはジオン系の曲面を多用した装甲であったり、モノアイだったりで十分に誤魔化せているとは思うんだが。
アナハイムとしては、徹底的にガーベラ・テトラの出自を隠そうと考えたのだろう。
無理もないか。
そもそもガンダム試作4号機というのは、ガンダム開発計画から外されるまでは、連邦軍の資金で開発していたのだから。
それをそのまま……もしくは誰もが見て分かるようにして俺が使っていたら、連邦軍がアナハイムに猛烈なクレームを入れるだろう。
そうならないよう、徹底的にガーベラ・テトラとして誤魔化したのだろうが……それを言うのなら、最初からするなという意見もある。
もっとも、俺にとっては利益しかないので不満はないが。
「それで、威力の方は?」
ビームマシンガンの時と同じように聞いてみるが、多分これも駄目だろうなという予想はあった。
そもそもの話、これを採用したゼフィランサスにおいても、ビームサーベルはともかく、ビームガンとしての威力は決して強力ではなかった。
それこそドムの拡散ビーム砲よりはマシといった程度だった筈だ。
それを、ガーベラ・テトラが装備したとはいえ、それでそこまで使えるかと言われると……正直、微妙なところといった感じになるだろう。
「期待は出来ないね。至近距離……それこそ密着してるかどうかといったような距離で使えば、ある程度の威力は期待出来るだろうけど。とはいえ、それは相手には分からない筈だから、牽制として使えば十分使い物になる筈だよ」
「アクセル、シーマに感謝した方がいいわよ? 何しろ最初はビームガンをどう使えばいいのか全く分からなかったのに、それをシーマが何とかして使い道を考えて、こういう結論になったんだから」
「クリス!」
クリスの言葉にシーマが鋭く叫ぶ。
……鋭く叫びながらも、その頬が薄らと赤くなっているのを見ると、まず怖がるといった事はないのだが。
「そうか。……悪いな、シーマ」
「ふ……ふんっ、別にこれはアクセルの為だけって訳じゃないよ。あくまでもガーベラ・テトラの運用方法を検討する上で必要なことだったからなんだからね」
これがツンデレ。
そんな風に思っていると、シーマは俺の視線に何かを感じたのか話を逸らす。
「次だよ、次。ビームガンとは逆の場所、腕の外側に装備された110mm機関砲だね。これは頭部バルカンとかで使われているのと比べると倍近い口径の機関砲で、威力は普通にMSを撃破出来る程度には強力だよ。それも一見しただけでは武器だと判断出来ないから、初めて遭遇する敵に対してはかなりの威力を発揮出来るだろうね」
照れ隠しで説明したシーマだったが、その内容はかなり凶悪なものだ。
実際、シーマが言うように相手の意表を突いて致命的なダメージを与えられるというのは、非常に大きな意味を持つだろう。
「武器はこの辺だね。ただ、他にもガーベラ・テトラの特徴的な装備として、シュツルム・ブースター・ユニットがある。これはアクセルにとっても悪くない装備だと思うよ」
そうシーマが言うと、クリスがガーベラ・テトラから少し離れた場所にある細長い三角形の装備品を指さす。
「あれがその、シュツルム・ブースター・ユニットか。……大きいな」
「そうさね。あれはあくまでも推進剤を節約する為に使われるのが一般的で、戦場となる場所に到着したら捨てていくのがいいんじゃないかい? ……アクセルの場合なら、普通に戦闘でも使えそうな気がするけど」
「後ろに装備するとなると、前方から攻撃してくる敵に対しては問題ないか、横と上下といったところから攻撃してくる相手に対しては、被弾面積が増えるからちょっと問題だが」
「それでもアクセルなら何とか出来るんだろう?」
そうシーマに……恋人に言われると、俺も男としてシーマのその言葉に頷かない訳にはいかない。
「そうだな。実際に試してみないと何とも言えないが、多分大丈夫だと思う」
俺の言葉に、シーマとクリスは笑みを浮かべるのだった。