転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4189話

 ゼフィランサスのコックピットから救出されたウラキは、至急医務室に運ばれた。

 幸い……いや、こういうのは不幸中の幸いと言うべきか? とにかくウラキは怪我はしていたものの、それでもそこまで重傷といった様子ではなかった。

 意識が朦朧としていたのは、ストレスによるものだったらしい。

 ウラキにとって、今回の戦いはそれだけ強いストレスだったのだろう。

 まぁ、無理もないか。

 何を思ったのか、地上仕様のゼフィランサスで宇宙に出たのだから。

 それも敵はゲールとかいうシーマの古馴染み……つまり、相応の強さを持っている者達。

 実際、援軍が来たと判断するや否や、即座に撤退をした。

 手慣れているのは間違いなく、だからこそよりウラキにはストレスがあったのだろう。

 自分の乗っている機体は地上仕様なので宇宙ではまともに動く事が出来ず、敵に一方的に攻撃をされていた。

 それもゲールの部隊が使っているのは、ゲルググM型。

 つまり、海兵隊仕様のゲルググとなる。

 更には、ゲールと思しき相手……敵の隊長だろう相手が乗っていたのは、ゲルググJ型……いわゆる、ゲルググ・イェーガーと呼ばれるタイプだ。

 ジオン軍が開発したゲルググの中では最高峰の性能を持つ機体。

 それこそ現在の最新鋭MSを相手にしても性能では決して劣ってはいない。

 ましてや、それを操縦するのが腕利きのMSパイロットとなると……そんな相手と模擬戦でもなく本当の意味で命のやり取りをする為にぶつかったのだから、まだ軍人としては新米のウラキには厳しかったのだろう。

 一応強敵と遭遇したという意味では、サイサリスを奪取された時に追撃し、ニムバスと軽くやり合ってはいる筈だが。

 ただ。その時はあくまでもニムバスはサイサリスを奪うのを最優先にしていた。

 ……いやまぁ、それでも小破以上中破未満といった被害は受けて、アフリカに向かう途中の補給でパーツを受け取って修理したのだが。

 ただ、それでもやはり脱出を優先したニムバスと本気で撃破するつもりだったゲールという事を考えれば、ウラキがそのストレスによって意識朦朧となってもおかしくはない。おかしくはないが……

 

「信じられる!? 私はウラキ少尉に地上仕様のままだから、宇宙で使うのは無理だって何度も言ったのよ! なのに、設定次第では宇宙でもしっかり使えるって言い張って……しかもキース少尉がモンシア少尉達と訓練をしてる間も、それに出ないで意味のない設定をしてるのよ!?」

 

 アルビオンにある食堂、そこでニナはウラキに対する不満をこれでもかと発散させていた。

 ……格納庫で泣き止んだ時は、自分が俺に抱きついて泣いていたのに気が付き、顔を真っ赤にしていたのだが。

 ただ、俺に抱きついて泣いていたのに驚いた事で、気分を切り替えられたのはニナにとって幸運だったのだろう。

 ウラキがそこまで重傷ではない。それどころか純粋な怪我の具合という意味では軽傷でしかないと分かったのも大きいのかもしれないが。

 そんな訳で、今のニナは溜め込んできたのだろう不満を爆発させていた。

 その爆発がどのくらい凄いのかと言えば、俺とニナの関係――あくまでもそういう振りをしてるだけだが――を知っていながらも、機会があればニナに言い寄ろうとするモンシアが食堂に入ってきてニナを見つけ、近付こうとした時にニナの爆発具合を見て即座に撤退をしたくらいと言えば分かりやすいだろう。

 

「それでも最初は自分がゼフィランサスのパイロットだからと張り切ってるのだと思ってたけど……計算ミスを指摘すると、食事中なのに紙を持って近付いて来てスープに紙を入れたりするし」

「あー……それは……」

 

 それについては、ニナが怒るのも無理はない。

 俺でも怒るだろうし。

 

「そんなウラキ少尉の様子から、もしかしたらと思って一応……本当に一応私の方で設定をしておいたのに、自分のデータに自信があるからって私のデータを無視して。それも本来なら、バニング大尉のジム・カスタムで出る予定だったのに、無理矢理ゼフィランサスで出撃したのよ!?」

 

 がああっ! といった様子でニナが叫ぶ。

 ニナにしてみれば、今回のウラキの行動が本当に許せなかったのだろう。

 ……あるいはこれでウラキの怪我が重傷であればニナももう少しウラキを心配したかもしれないが、実際にはウラキの怪我は軽傷だったしな。

 ある意味では、ゼフィランサスがウラキを怪我から守ったと言ってもいいのかもしれない。

 ニナがそれを聞けばどういう反応をするのか予想出来るので、口に出す事はしなかったが。

 

「素直にバニング大尉の指示通りにジム・カスタムに乗っていれば、ゼフィランサスもあそこまで損傷しなくてもよかったのに」

「その件だが……当初の予定ではフィフス・ルナに向かう事になっていたけど、問題ないのか?」

 

 一応、俺の今の身分はルナ・ジオン軍の中尉であって、援軍として派遣されてきたナスカ級の指揮官はシーマという事になっている。

 というか、ルナ・ジオンにおいてセイラとは違うもう1つの顔とも言うべき存在がシーマだ。

 そのシーマがこうして援軍に来ている以上、これからアルビオンとナスカ級がどのように行動するのかを決めるとなると、それは明らかにただの中尉――という事になっている――である俺ではなく、シーマがシナプスと相談して決める事だろう。

 

「……難しいわね。一応フィフス・ルナはゼフィランサスを建造した場所である以上、相応の設備はあるのだけど……やっぱり月の施設と比べれば劣ってしまうわ」

 

 ニナが難しい表情で言う。

 となると……

 

「行くのは月か。俺達にしてみれば、来たばかりの場所なんだが」

 

 アナハイムの本社のある月。

 そこなら施設も十分だろう。

 元々ガンダム開発計画をフィフス・ルナで行っていたのは、アナハイムがガンダム開発計画についての情報をルナ・ジオンに渡さないようにするという建前だった筈だが、実際にはガンダム開発計画で開発されたMSは余分に作られ、それがルナ・ジオンに……正確にはルナ・ジオンを通してシャドウミラーに渡される。

 後は、フィフス・ルナを発展させて第2の月にしようという連邦の狙いもあるんだろうが。

 だが……それでもフィフス・ルナはあくまでも小惑星基地でしかない。

 実際には元々あったフィフス・ルナに別の小惑星を持ってきて接続し、フィフス・ルナそのものを広げてはいるらしいが。

 ア・バオア・クーを想像すると分かりやすいだろう。

 ただ、それでも月と比べるとどうしても小さいのは事実。

 勿論月もその全てを人の住む場所として使えている訳ではなく、月面都市となってる場所は月全体の面積で考えればかなり小さい。

 しかし、それでもフィフス・ルナより広いのも事実で、何よりルナ・ジオンの拠点ということでクレイドルがあるのも大きいだろう。

 クレイドルは北海道と同じくらいの大きさで、それがフォン・ブラウンに代わって現在は月の首都となっている。

 また、クレイドルには異世界の動物とかもいるので、それに興味を持った学者、あるいは単純に趣味でそれを見てみたいと思う観光客まで、多くの者が集まっている。

 アナハイムはガンダム開発計画を任されている関係でフィフス・ルナの中でもかなり優遇されてるのは間違いないが、それでも施設の規模や充実度という意味では、月の方が勝っているのも事実。

 これでゼフィランサスがせめて小破……もしくは中破程度であれば、フィフス・ルナの施設でも修理は可能だろう。

 いやまぁ、実際にはフィフス・ルナで今のゼフィランサスを修理しようと思えば出来る筈だとは思う。

 だが、それでも施設の充実具合だったり、パーツを新造するのに必要な時間や何よりも精度の事を考えると、やはりここは月に向かった方がスムーズに進むのは間違いない。

 

「でも、ゼフィランサスの現在の状況を考えると、やっぱり少しでも早く修理をした方がいいでしょう? それに……ゼフィランサスの面倒を見ているうちに、当初の予定の宇宙仕様よりも、もっと良いアイディアが幾つかあるのよ」

「……つまり、修理じゃなくて改修といった感じか?」

「ええ。ウラキ少尉がこれまでゼフィランサスを操縦してきた事によって集まったデータも反映させる事が出来れば、より高性能になる筈よ」

「そう考えると、ウラキは俺よりもテストパイロット向きって事か」

「ちょっ、違うわよ!? いきなり何を言い出すのよ!」

 

 何故か俺の言葉に過剰に反応するニナ。

 何だ? そこまで激しく反応する理由が何かあったか?

 

「ニナ?」

「え? あ……その、ごめんなさい。ただ、アクセルとウラキ少尉だと、テストパイロットとしては同じであっても、性質が違うのよ」

「性質?」

「ええ。アクセルの場合は、機体性能を極限まで引き出してデータを取るのに向いているわ。それに対して、ウラキ少尉は機体特性を理解した上で、その機体の性能を引き出すことに長けているの。これはどっちが優れているとかそういう話じゃなくて、どちらが向いているのかといっただけの違いよ」

 

 そう説明するニナの言葉に、そういうものかと納得する。

 

「一応聞いておくけど、それは褒められているって事でいいんだよな?」

「当然でしょう。MSを開発する方にしてみれば、アクセルの存在は非常に大きいわ。ウラキ少尉は機体の特性を理解した上で性能を十分に発揮してくれるけど、本当の意味で機体の限界を知りたいのなら、アクセルにテストパイロットを任せたいと思う人の方が多いと思うわよ。……普通は、あそこまでの操縦は出来ないんだけど」

 

 そう言いつつ、呆れの視線を向けてくるニナ。

 ニナにしてみれば俺の操縦方法は常識の範囲外なのだろう。

 実際、その考えは決して間違っている訳ではない。

 俺が普通の人間であれば、到底出来ないような操縦だろうし。

 あるいは普通の人間でもシャドウミラーの人間なら、魔力や気による身体強化で俺と同じくらいの動きは出来てもおかしくはないと思うが。

 

「その辺は……そうだな、俺が素質に恵まれている感じだ」

 

 取りあえずそう言って誤魔化しておく。

 とはいえ、人というのは個人によって違う。

 生身であっても耐G能力が極端に強い者というのは、珍しいがいない訳ではない。

 俺が知ってる限りだと、ヤザンなんかがそれに当たるな。

 そう言えば、今更……本当に今更の話なんだが、アルビオン隊の援軍としてヤザン達が……待て。

 

「ニナ、アルビオンと一緒に行動していたサラミスが2隻いたな? 撃破された奴だ」

「え? ええ。……いたわね」

 

 俺の言葉に、憂鬱そうな表情を浮かべるニナ。

 ああ、そうか。ニナにしてみれば地上での戦闘はともかく、宇宙での戦闘……それも軍艦が撃破されるのを見るのは初めてだったか。

 月の住人、いわゆるルナリアンであるニナにとって、宇宙というのは馴染み深いものだ。

 しかし……だからこそ、そのような自分にとっては馴染み深い場所で軍艦が2隻も撃破されるという光景は衝撃が大きかったのだろう。

 

「大丈夫か?」

「ええ、問題ないわ。これからの事を考えると、そういうのにも慣れておく必要があるだろうし」

 

 この返事からすると、ニナは恐らくソロモンの観艦式の襲撃を防ぐ戦いにも同行するつもりなのだろう。

 本来なら、ゼフィランサスの開発者の1人とはいえニナがここまでアルビオンと行動を共にする必要はないんだが。

 とはいえ、それでも何か譲れないものがニナにはあるのだろう。

 戦いというのは、人に大きな衝撃を与える。

 その衝撃は良くも悪くもといったもので、だからこそこの一連の戦いがニナに悪い影響を与えないといいんだが。

 

「そうか。……それで、あの2隻のサラミスについてだが、あの2隻のサラミスはもしかしてフィフス・ルナからの援軍だったりしたのか?」

 

 俺が心配した事。

 それは、もしあのサラミスにヤザンが乗っていたら……というものだった。

 ヤザンは1年戦争の時にバニングともそれなりに関わった事があったし、何よりフィフス・ルナはガンダム開発計画の為にコーウェンの派閥の戦力が集まっていた筈だ。

 そうである以上、アルビオンに援軍を派遣するとなれば、フィフス・ルナからの戦力を派遣するというのはそうおかしな話ではない。

 いや、寧ろ当然か。

 コーウェンにしてみれば、サイサリスがソロモンで行われる観艦式の襲撃を止める為、少しでも戦力を必要としている筈だ。

 だからこそ、すぐに動かせる戦力となればフィフス・ルナの戦力を派遣してきてもおかしくはなかった。

 

「あ、それは……え?」

 

 何かを言おうとしたニナだったが、言葉の途中で驚いたように動きを止める。

 そんなニナの視線を追うと……

 

「安心しな、アクセル。撃破されたサラミス級はルナツーから派遣された戦力だったようだよ」

 

 ニナの視線の先にはシーマがいて、俺とニナの会話に笑みを浮かべながらも、そう告げるのだった。

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