転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4192話

 アルビオンとナスカ級は、無事に月に到着した。

 ナスカ級が案内するように移動していたので、当然ながら月の周辺にあるバルジやリーブラ、ジェネシス、ピースミリオンといった軍事基地――ピースミリオンは違うが――から、メギロートやバッタが飛んでくる事はない。

 もしこれで、アルビオンだけ……しかも前もって連絡も何もないまま月に接近していれば、メギロートやバッタによって捕らえられていたんだろうが。

 今のアルビオンでも、メギロートやバッタには敵わないしな。

 メギロートは純粋に機体性能でアルビオンに乗っているMS以上だ。

 唯一上回る可能性があるとすればゼフィランサスかもしれないが、そのゼフィランサスも大破に近い状態だしな。

 バッタは、ジム・カスタムやジム・キャノンⅡであれば撃破出来るかもしれないが、数が圧倒的だ。

 それこそ1機や2機のバッタなら容易に撃破出来るだろうが、それが10機、20機……100機ともなれば、さすがにMSで対処するのも簡単な話ではないだろう。

 

「まぁ、その心配がいらないのは間違いないが」

「うん? アクセル、どうかしたのかい?」

 

 ナスカ級のブリッジ、その艦長席に座っているシーマが、俺の呟きが聞こえたのかそう聞いてくる。

 

「いや、何でもない。月でアルビオンをどこに停泊させるのかとちょっと気になってな」

 

 月……より正確には、ルナ・ジオンの首都であるクレイドルには何種類かの宇宙港がある。

 まず1つは一般の乗客が使う宇宙港。

 クレイドル以外の月面都市……有名どころではフォン・ブラウンやグラナダ、それ以外の月面都市であったり、あるいは他のコロニーから来る一般の乗客が使う宇宙港だ。

 次に、ルナ・ジオン軍が使う宇宙港。いわゆる軍港だな。

 最後にディアナやアルテミスといった兵器開発メーカーやニュータイプ研究所が使う宇宙港。

 特に最後の宇宙港は新兵器を試す為だったり、ニュータイプ能力を使っての兵器の開発だったりと機密度はかなり高い。

 他にも幾つかの種類の宇宙港はあるが、大体はこの3つだ。

 そしてアルビオンがどの宇宙港を使うのかは、この場合大きな意味を持つ事になる。

 

「取りあえず一般の宇宙港はないだろうね。アルビオンの件は色々と表沙汰にしたくない事もあるんだろうし」

「となると、軍用の宇宙港か」

「それもそれで……どうなんだろうね。ルナ・ジオンと連邦の関係が複雑なのはアクセルも知ってるだろう?」

「まぁ、それは否定しない」

 

 ゴップやコーウェンのように俺達と友好的な存在や、強硬派のように明らかに敵視している者達も存在している。

 連邦という大きな……大きすぎる国だけに、意思統一は簡単なことではない。

 

「だろう? アルビオンはうちとも友好的な関係にあるようだけど、だからといって軍港に運ぶのは厳しいだろうね」

「なら、どこに?」

「試作1号機……ゼフィランサスだったかい。その修理を考えれば、やっぱりディアナやアルテミスが使っている宇宙港だと思うよ」

「それこそ、アルビオンの連中に見せてもいいのか?」

 

 アルビオンはそれなりにこちらと友好的な関係なのは間違いない。

 だが、それでもアルビオンにディアナの新兵器だったり、アルテミスのニュータイプ用の兵器が見られる可能性があるのなら、出来る限りそれは阻止した方がいいと思うんだが。

 

「まぁ、上にも色々と考えがあるんだろうさ」

 

 そうした俺とシーマの会話から少し時間が経ち……

 

「うわ、マジだ」

 

 シーマの言葉が当たっていたのは、月……ルナ・ジオン軍からの通信で判明したのだった。

 

 

 

 

 

「あ……アクセル……」

 

 ディアナやアルテミス用の宇宙港にアルビオンが入り、ついでとばかりに俺達が乗っていたナスカ級も同じ宇宙港に入った。

 ちなみに本来ならシーマのナスカ級は軍港に入るべきなのだが……何故アルビオンと同じ宇宙港に入ったかというと、幾つかの理由がある。

 まず、アルビオンと行動を共にする以上、いつ何があってもすぐ一緒に行動出来るようにしておくというものや、現在の俺の乗機であるガーベラ・テトラの整備をするのにそっちの方が便利だからといったように。

 ディアナの者達は俺が本気でMSを操縦するとどうなるのかを知っている。

 ガーベラ・テトラは手加減をして操縦しているし、何よりゲールだったか? シーマの古馴染みのMS隊と遭遇した時も、援軍が来たと判断すると向こうはすぐに撤退をしたので、戦闘らしい戦闘は行っていない。

 そうである以上、わざわざMSの整備をする必要はないと思うんだが……ディアナのメカニック達にしてみれば、俺の言葉に素直に納得したりは出来ないらしい。

 とはいえ、俺にしてみれば整備をしてくれるのは悪くないのだが。

 月の裏側にあるデブリ帯の中にガーベラ・テトラで突っ込んだ時の事を考えれば、今回の方が明らかに機体の負荷は小さいだろうし。

 ともあれ、そんな訳でガーベラ・テトラがナスカ級の格納庫から運ばれていくのを見ていると、不意に後ろから声が聞こえきた。

 それが誰の声なのかは、考えるまでもないだろう。

 俺にとって十分に聞き覚えのある声だった為だ。

 振り向けば、そこにいたのはやはり予想通りニナだった。

 ニナは俺を見ているものの、どう反応していいのか分からない様子だ。

 それなら声を掛けなければいいのに……とは、俺も言わない。

 シーマやニナと話をした一件で、ニナが俺に対してどのような感情を抱いているのかは分かっているからだ。

 ただし、その上でニナにしてみれば俺がシーマと付き合っており、それ以外にも複数の相手と付き合っているというのを知って、どう反応すればいいのか迷っているのも事実。

 だからこそ先程俺の名前を呼びはしたものの、そこには戸惑いの色があったのだろう。

 

「ゼフィランサスの搬出か?」

 

 そんなニナに気を遣わせないように、何でもないかのように……ニナの部屋の一件は忘れたような感じでそう言う。

 ……だというのに、何故かニナは少しショックを受けた様子を見せる。

 これは選択をミスったか?

 そう思って何かを言おうとしたのだが、それよりも前にニナが口を開く。

 

「ええ。ディアナの施設の一部を貸して貰える事になったの。そこでゼフィランサスの修理と、それと……改修を行おうと思って」

「……改修? 宇宙仕様にするんじゃなくてか?」

「ええ、以前にもちょっと改修については言ったわよね? デラーズ・フリートが狙うのはソロモンの観艦式の可能性が高いんでしょう? そうなると、実際に行動を起こすまではそう時間はないわ。それに……相手はジオンの騎士、ニムバス・シュターゼンよ。それもサイサリスに乗って。そうなると、ただ宇宙仕様にしただけだと、ウラキ少尉の操縦技術で勝ち目がないのは分かるでしょう?」

「まぁ、それはそうだな」

 

 ウラキは潜在能力という意味では高いと思う。

 この原作の主人公なんだろうから、それも当然だろうが。

 そんなウラキだったが、潜在能力が高いからといって、今すぐに強くなれる訳ではないのも事実。

 ニムバスを相手に、今のウラキが正面から戦ってどうにか出来るとは思わない。

 それこそ、ニムバスの機体がサイサリスではなくてザクⅡF2とかであっても、その技量差からウラキは負けるだろうと予想出来た。

 実際、ゲールのゲルググJを相手にゼフィランサスは大破したのだから。

 勿論、それはゼフィランサスが地上仕様のままで、その宇宙用にした設定も本職のニナの設定ではなく、ウラキが自分で設定した状態でゼフィランサスを動かしたのが大きな理由だったのだろうが。

 

「でしょう? パイロットとしての技量で負けている以上、その差を縮めるにはMSの方で対処するしかないわ。幸い、以前から少し考えていたプランがあるから。……出来れば、そのプランを採用したゼフィランサスのテストパイロットはアクセルにやって欲しかった……んだけど」

 

 話の途中で、不意にニナの言葉が詰まる。

 ニナにしてみれば、ウラキがゼフィランサスのパイロットをやっている事に文句はないが、出来ればもっとゼフィランサスの性能を引き出せる人物……例えば俺に操縦して欲しかったのだろう。

 そんなニナの気持ちは分からないでもないが、その辺はもう決まってしまった事である以上、どうしようもない。

 そんな中で俺に出来るのは……

 

「ゼフィランサスの改修が終わったら、俺がウラキの模擬戦の相手をしようか?」

「……いいの?」

「ああ、問題はない。それにこう言ってはなんだが、ガーベラ・テトラの操縦にもっと慣れておく必要もあるしな」

 

 ガーベラ・テトラを単純に操縦するだけなら、月の裏にある暗礁宙域の一件で大体問題はなかったりする。

 だが、それはあくまでもMSの操縦であって、MS同士の戦闘という訳ではない。

 だからこそ、ここでしっかりと訓練をしておく必要があるのは間違いなかった。

 

「いいの?」

「ああ。ウラキにとっても、俺を相手に戦っておけば、ニムバスと戦う時の練習にもなるだろうし。……自分で言うのもなんだが、俺はニムバスよりも強い。そんな俺を相手に模擬戦を行えば、ニムバスと戦っても十分に対抗出来るようになる筈だ」

 

 1年戦争の時、俺はニムバスに勝っている。

 勿論、ニムバスも1年戦争が終わってから今まで鍛えていないって訳ではないだろう。

 トリントン基地でニムバスと戦ったデータがゼフィランサスに残っており、それを見る限りでは間違いなく1年戦争の時と比べても強くなっているし。

 そういう意味では、トリントン基地付近での戦いでウラキが生き残れたのはニムバスが脱出を最優先にしていたのと、ゼフィランサスの性能のお陰だ。

 とはいえ、ニムバスが……というか、その後ろにいるキシリアがガチガチのギレン派で、ギレンを暗殺したという意味で不倶戴天の敵と呼ぶに相応しいデラーズと手を組んでいるのは、未だに謎だったが。

 普通なら、とてもではないが信じられない事だ。

 例えるのなら……そう、SEED世界でブルーコスモスのアズラエルと、プラントの強硬派であるパトリックが手を組むようなものだ。

 ……ん? いや、でもパトリックはともかく、アズラエルは商売人として有能なのは間違いないので、手を組む理由があったら一時的にしろプラントと手を組むという可能性はあるのか?

 まぁ、それで手を組んでも一時的な、本当に一時的なものだろうが。

 そう考えると、キシリアとデラーズが手を組むというのとはちょっと違うか。

 もっとも、実際にはこうして手を組んでいる以上、そこに何らかの意味があるのは間違いないのだろう。

 問題なのは、その何らかの意味というのを具体的に分からない事だ。

 

「そうね。私の方からシナプス艦長に話をしてみるわ。ただ……シナプス艦長が許可を出しても、ウラキ少尉が模擬戦をやれるかどうかは別の話よ?」

「ウラキはまだ引き籠もっているのか?」

「ええ」

 

 ニナは俺の言葉に呆れを隠せない様子で頷く。

 あの戦いにおいて、ウラキは怪我らしい怪我はしていなかった。

 精神的なストレスによって気絶したのだ。

 あるいは攻撃を受けた時の衝撃とかもあったかもしれないが。

 ともあれ、ウラキにあったのはせいぜいが打撲や軽い切り傷といった程度でしかないのだが……身体的なダメージはともかく、精神的なダメージは大きかったらしい。

 キースがモンシア達に宇宙での戦闘に慣れさせる為に扱かれていた時も地上仕様のゼフィランサスを宇宙で使えるようにしようとし、襲撃された時も宇宙での適応訓練をしていないにも関わらず戦闘に参加を希望し、バニングのジム・カスタムでの出撃が許可されたのに、自分で設定したデータを使ったゼフィランサスで出撃し……その結果、何も出来ず一方的にやられてしまった訳だ。

 ……うん、こうして考えていると、自分は選ばれた存在だといったように思い込んだウラキの暴走、もしくは鼻が伸びて天狗になっていたのをへし折られたといったところか。

 そうして、初めてウラキは自分のやらかしに気が付き、部屋に引き籠もったのだろう。

 これ、もしかして俺が原作に介入した結果じゃないよな?

 もし俺が原作に介入していなければ、実はウラキはここまでの事をやらかさなかったという可能性も……いや、それはもう今更の話か。

 

「とはいえ、月に来たんだ。気分転換をするにはいいんじゃないか? ニナも、家族は月にいるんだよな? そっちに顔を出すくらいはしてもいいだろう」

「……その、私の両親は少し過保護なのよ。もし私がアルビオンに乗ってると知ったら、間違いなく下りるように言ってくるわ。そうなると、ゼフィランサスの件もこれ以上はどうしようもないでしょうし、それに何より……アクセルとも……」

 

 最後の方の言葉は、ニナとしては口に出すつもりがなかったのだろう。

 だが、混沌精霊の俺の耳にはしっかりと聞こえていた。

 とはいえ、その件については今は触れない方がいいので、聞こえなかった事にしたのだが。

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